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1月 25 2023

障害がある方の遺言作成について

先日、聴覚に障害がある方の公正証書遺言作成について関与をさせていただきましたので、今回は聴覚や視覚などの身体障害や精神障害がある方の遺言書の作成についてまとめてみたいと思います。

なお、一般的によく利用される自筆証書遺言と公正証書遺言についてであり、秘密証書遺言や危急時遺言などの例外的な方法については記載しておりません。
 


 
 

1 精神障害について

 

遺言書を作成する場合、その時点で遺言能力(意思能力)が必要となります(民法963条)。

遺言能力とは、端的に言えば「遺言の内容について理解できること」となり、形式的に15歳未満の方は遺言能力は無いとされており(民法961条)、精神障害や認知症等によってご理解いただくことが難しい場合も遺言能力は無いとされています。

もっとも、一律に障害があるからダメだというものではなく、あくまでご本人の状況次第となりますので、精神障害や認知症等の方であっても遺言の内容が理解できるようであれば遺言書の作成は可能です。
 

なお、成年被後見人の方については、遺言の内容を理解できる状況にあり、かつ、医師2名以上の立会いという条件があるものの、成年被後見人ということをもって遺言書の作成が否定されるものではありません民法973条)。また、被保佐人や被補助人の方については、作成できるのはもちろんのこと医師の立会い等も不要です(作成時において遺言能力があることは必要です。)。

ちなみに、私は数名の方の成年後見人に選任されておりますが、これまでに遺言書の作成をしたことはありません。 
 

2 身体障害の場合

 

身体障害がある方の場合においても、上記の遺言能力があることが当然の前提となります。
 

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言は、文字通り「自筆」で遺言書を書く必要がありますので少なくとも文字を書ける必要がありますが、それさえクリアできれば障害は問題となりません

視覚障害があっても自筆で書ければ大丈夫ですし、聴覚障害については一切問題にならないと思います。また、利き手が障害等によって文字を書くのが困難であったとしても、読める字であれば利き手ではない方で書いていただいて大丈夫です。
 

一方、手が震える等の理由により、いわゆる添え手で作成された場合は「自筆」とは言えない可能性があるため、無効になる恐れがあります。

この点についての裁判例として、最判昭62年10月8日があります。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)
 

上記判決においては、添え手においての自筆証書遺言が有効になるための要件として、3点を挙げています。

遺言者が証書作成時に自書能力を有していること。
他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること。
添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できること。
つまり、文章の始めや終わりなどの部分に第三者が本人の手を移動させてあげることは問題ありませんが、文章を書く際に第三者の意思が介入した形跡が少しでもある場合は無効になってしまうことになります。
上記最高裁の事例においては、第三者が第三者が支えを借りただけではなく積極的に書いたものであるとして無効と判断しています。

 

「本件遺言書には、書き直した字、歪んだ字等が一部にみられるが、一部には草書風の達筆な字もみられ、便箋四枚に概ね整つた字で本文が二二行にわたつて整然と書かれており、前記のようなD(遺言者)の筆記能力を考慮すると、E(第三者)がD(遺言者)の手の震えを止めるため背後からD(遺言者)の手の甲を上から握つて支えをしただけでは、到底本件遺言書のような字を書くことはできず、D(遺言者)も手を動かしたにせよ、E(第三者)がD(遺言者)の声を聞きつつこれに従つて積極的に手を誘導し、E(第三者)の整然と字を書こうとする意思に基づき本件遺言書が作成されたものであり、本件遺言書は前記②の要件を欠き無効である」

 

そして、遺言無効の訴訟が起こされた場合、有効だと主張する側が有効であることを立証しなければなりませんので、かなり大変だと思われます。
したがいまして、添え手での遺言書作成はかなりリスクが高いため、自筆証書遺言ではなく次の公正証書遺言を推奨いたします。

 
 

(2)公正証書遺言

公正証書遺言の場合、遺言者が自分の手で書くのではなく、公証人に対してどのような遺言を作成したいのかを伝えられれば良いということになりますので、基本的には遺言者が口頭で公証人に遺言の内容を伝え、公証人が遺言者に対して読み聞かせ、または閲覧させたうえで遺言者が承認したあとに、遺言者と証人が署名押印することで公正証書遺言は完成いたします(民法969条)。
私どもが関与させていただく際には、事前に遺言者の方からご希望を伺い、公証人と事前に打ち合わせをしたうえで、案文を作成してもらったうえで、遺言者の方に確認していただいてから公証役場を訪ねることになりますので、実際に公証役場において遺言者が口頭で公証人に全部を伝えるという事は少なく、確認のために大枠だけ伝えることが多いかと思います。

 

さて、上記のとおり遺言者が口頭で伝えるとなっておりますので、聴覚障害等により口頭で遺言の内容を伝えることができない場合があります。また、最後に署名押印が必要になっているので、身体傷害がある場合に署名ができない場合があります。

 

この点、前者の口頭の部分については、法改正により手話等にて通訳人に伝えてもらうこともできますし、遺言の内容を自書するという事も可能になっており、公証人の読み聞かせについても通訳を介することができるようになりました(民法969条の2)し、内容を閲覧してもらう方法でも大丈夫です。なお、推定相続人は立ち会えないので、推定相続人以外の方が通訳人になる必要があります。

 
 

また、後者の署名押印については、身体障害等の理由により署名ができない場合は、その旨を公証人が記載すれば遺言者の署名押印は不要となっております(民法969条4号ただし書)。

 
 

最初に記載したとおり、先日関与させていただいた公正証書遺言については聴覚障害の方であったため、遺言の趣旨を自書していただいて無事終えることができました。
一般的な公正証書遺言の場合は、遺言書の始まりは、「遺言の趣旨の口述を筆記し」となっています。

 
 

 

しかし、今回の場合は「遺言者は口がきけないため、その自書した遺言の趣旨を筆記し」となっています。

 
 

 

また、上記とは直接関係ありませんが、病院等で入院されていらっしゃる場合においても、公証人に病院等まで来ていただいて公正証書遺言を作成することは可能です。以前、足が不自由な方の遺言を作成するに当たり、公証人に遺言者のご自宅まできていただいたことがあります。
ただし、出張に関する日当がかかりますので、通常の公証人の手数料の1.5倍程度の費用がかかってしまいます。

 

このように、仮に障害をお持ちの方であっても遺言書を作成することは可能ですので、作成をお考えの方はお問い合わせいただければと思います。

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1月 20 2023

はなみずき通信(ブログ)目次

売買に関すること

 

平成25年4月1日よりオンライン減税が無くなります
個人間売買について
農地の売買
住宅ローン減税(2012年版)
家賃と住宅ローンの金額「のみ」を比較してはいけません!
東日本大震災被災地域の不動産を取得した場合の例外措置
住宅ローンの固定金利と変動金利
裁判所の競売で購入する方法
土地区画整理組合が販売する保留地
不動産売買の決済当日に起こるトラブル
権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
住宅ローンの変動金利増加
住宅ローンは人生を賭けたギャンブル(になることもある
権利証に関する誤解を解消してみよう!
印鑑について
地面師と司法書士
司法書士を選びたい
土地を購入し,建物を新築する場合の登記費用について
登記識別情報通知書のシールは剥がすべきか
4月1日から変わるものと変わらないもの(不動産登記的に)
「本人確認情報」と「権利証の再発行」は同じではありません。
登録免許税の減税について
平成29年4月1日からの各種減税措置
地面師暗躍
破産物件の購入
住所のつながりを証明する書類
仮登記について
ハンコについてあれこれ
農地について
現住所を登記したくない場合(極めて例外的)
売買契約書について 
成年後見手続が必要な場合
成年後見選任によるメリット・デメリット
 

贈与に関すること

 

不動産の贈与について
登記の持分と贈与税
相続が得か贈与が得か
権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
財産分与の登記について
相続時精算課税制度を使っての贈与
農地の時効取得
認知症の方が所有されている不動産の売買・贈与
贈与と遺贈
不動産屋さんを通さない不動産の売買について
地面師真っ盛り
成年後見手続が必要な場合
土地の値段(一物四価)
 

相続に関すること

 

遺産分割協議に参加できない方がいるとき①
遺産分割協議に参加できない方がいるとき②
第3順位の相続は波乱となるので,その前に手を打つべき
「相続放棄」はプラスマイナスどっちも放棄です!
お葬式の費用は誰が負担するのか
知らない兄弟がいた!
相続が得か贈与が得か
嫡出子と非嫡出子の相続分の差は違憲(ただし,高裁決定)
「私の相続分は1/2ですよねぇ。」
相続登記の費用についての補足①
相続登記の費用の補足②
遺言を書いた人よりも先に相続予定者が死んでしまった場合
改正原戸籍
登録免許税や相続税等の改正
相続放棄ができなくなってしまう「法定単純承認」
非嫡出子相続分違憲決定など
亡くなる前に相続放棄
財産管理協会「認定司法書士」登録
自分の子どもではないにも関わらず認知した場合(最高裁判決)
遺産分割で問題となる事項(特別受益編)
遺産分割で問題となる事項(法律とは異なる取り扱いの銀行預金編)
遺産分割で問題となる事項(使途不明金編)
遺産分割で問題となる事項(国債編)
生物学的な親と法律上の親
遺産分割協議は早めの方がお得??
葬儀についての法律関係
一部の相続人からの預金の払い戻し
認知症の方がいらっしゃる場合の相続(遺産分割)
失くなった・間違った戸籍
花押は押印ではありません
未来につなぐ相続登記
「法定相続証明制度」の導入
遺贈の放棄
預金も遺産分割の対象に(最高裁判決)
法定相続情報証明制度
相続登記の登録免許税が無料になる(かも)
相続財産管理人の選任
夫婦間における自宅の贈与の特例は得か
相続登記の免税について
配偶者居住権の新設
相続登記の義務化(?)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(遺産分割に関するもの)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(遺言,遺留分に関するもの)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(その他)
相続登記の義務化続報
長期間相続登記等がされていないことの通知
令和2年4月1日から施行される改正民法(相続分野)
成年後見手続が必要な場合
親族が行う必要のある死後の手続と相続手続
相続人の一部の方が行方不明の場合
相続登記の義務化の施行日が決まりました
亡くなった方の遺産や負債の調査
遺言執行者の選任はしておいた方が良いか(登記的に)
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ①
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ②
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③
 

遺言に関すること

 

遺言でできること
自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言のススメ
私の財産のすべてを息子に相続させたい
遺贈に関する注意点
一部の相続人からの預金の払い戻し
農地の時効取得
遺言書の撤回
自筆証書遺言の方式の緩和
法務局における自筆証書遺言書保管制度について 
「贈る」の意味と受遺者の相続人に対する遺贈
予備的遺言のススメ 
遺言書の日付が誤っている場合に無効になるか(最高裁判決) 
成年後見手続が必要な場合
遺言ができる能力(認知症等)
障害がある方の遺言作成について(認知症等)
 
 

抵当権抹消に関すること

 

住所変更登記が必要な場合と要らない場合
遙か昔の抵当権が残っている場合
休眠担保の特定が使えない(根)抵当権抹消
申請期限や有効期限のある書類
50年以上前の登記の抹消
登記完了証と登記事項証明書
消滅時効を原因とした抵当権抹消登記手続訴訟
休眠抵当権に関するページの追加について
されど住所変更登記
「敷地権」とは?
抵当権抹消登記における不動産の個数について 
 

その他

 

会社が知らないうちに無くなっているかもしれません。
大槌町及び南三陸町に行ってまいりました。
司法書士業務賠償責任保険
「借り換え」の費用について
熊本地震により権利書等を紛失された方へ
ご相談について(新型コロナウイルス感染症対策等)
登記情報の利用時間拡大

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1月 13 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③

令和5年4月1日から不動産登記法の改正により、遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記が残っている場合に抹消する方法が簡略化され、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で申請できるようになりました。また、抹消ではありませんが、遺贈の登記に関して単独で申請できる場合が定められました。今回は、この点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記とは

 

不動産の登記簿をご覧いただくと、所有者が誰であるかということが登記されています。所有者が変わっても自動的に所有者が変更されるわけではないため、当事者が登記申請を行い、その時点での所有者を登記して第三者に対抗できるようになります。この登記をしないまま長い月日が経過して実際の所有者が分からないことが大きな問題になっており、それに対応したのが前回の相続土地国庫帰属制度の記事となります。
 

さて、登記簿を見ると、所有者が誰であるかという事以外にもいろんなことが登記されている場合があります。例えば、住宅ローンを組まれて不動産を購入されている場合は、「抵当権」という権利が設定されており、金融機関の担保になっていることが分かります。また、それほど多くはありませんが、第三者に賃貸等をしている場合は「賃借権」の登記や「地上権」の登記がされている場合があります。

こちらも当事者が登記申請をしなければ登記されませんし、逆に権利が無くなった場合(抵当権であれば住宅ローンを完済した場合、賃借権であれば賃貸借契約が終了した場合、など)も自動的には登記は抹消されないため、当事者が抹消登記の申請をする必要があります。

また、登記制度は遥か昔から存在するため、明治時代のお金の貸し借りでも抵当権が設定されることがありました。その後100年以上経過し、本当は完済しているけど登記申請を忘れているのか、完済しないまま時が過ぎてしまっただけのかは分かりませんが、明治時代の抵当権が現代まで抹消されずに残っていることがあります。これが、「遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記」となります。
 

そもそも、登記というのは当事者が協力して手続をしなければならず、当事者が亡くなっている場合は基本的に相続人全員が関与する必要があります。

しかし、100年以上も前の登記だと、恐らく登記の名義人はすでに亡くなっていると思われますし、その相続人を探すことも大変です。加えて、相続人が見つかったとしてもその相続人が協力してくれるかどうかも分かりません。

普通に使っている分には遥か昔の登記が残っていたとしても特に支障は無いかもしれませんが、第三者に売却等をする場合には大きな問題になります(遥か昔の登記が残っている場合、一般的には抹消しなければ売却ができません。)。

ということで、遥か昔の登記が残っているとかなり厄介なことになります。 
 

2 抵当権等の担保権については制度がある

 

当事務所でもページを設けているとおり、抵当権等については比較的簡単に抹消できる場合がありますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 遥か昔に登記された抵当権抹消登記(休眠抵当権) 
 

3 抵当権等の担保権以外の登記

 

すでに存続期間が満了している地上権等の登記買戻期間が満了している買戻登記については、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で抹消できることになりました。
 

以下、各ケースに関して記載いたします。
 

(1)存続期間満了済みの地上権等

必ずしも存続期間が定められている訳ではありませんので、すべての地上権等が該当するわけではありませんが、存続期間が登記されており、かつ、その期間が満了している場合は比較的簡略的に抹消することが可能となりました。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①存続期間が登記されており、かつ、すでに経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。存続期間が登記されていないようであれば残念ですがこちらの制度は使えません
 

②地上権者の調査を行う。

→具体的には地上権者の住民票等の書類上の調査を行う必要がありますが、現地調査までは必要ありません。もし、ここで地上権者等の所在が判明するようであれば簡略的な手続ではなく、通常どおり当事者双方が協力して登記申請を行うことになりますし、万が一協力してくれない場合は訴訟を行う必要があります。
 

③裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を得る。

→難しそうな感じがしますが、裁判所に対して「地上権を抹消しようとしているので、異議がある人は連絡してくださいね。」という趣旨の官報公告を行うことになります。そして、一定期間が経過すると除権決定が出て抹消することができるようになります。
 

④登記申請

→上記の除権決定を添えて、権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 
 

(2)買戻期間満了済みの買戻権

買戻権というのは、いったん売却をするけど、一定期間内であれば買い戻すことができる権利です。最近はあまり見ませんが、昭和や平成初期の売買の際の住宅供給公社等の公社が関係している場合に登記されているのをよく見ます。

さて、この買戻権は特に期間を決めなければ売買契約の日から5年間とされており、当事者の合意によっても最大で10年間とされています。とすると、売買契約の日から10年以上経過している場合は必ず買戻権は消滅していることになりますので極めて簡単に抹消することができます。

※上記の地上権等については存続期間の上限はありませんので、存続期間が定められていたとしてもその後に延長されている場合があります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①買戻権が登記されており、かつ、売買の日から10年が経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。
 

②登記申請

→権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 

③買戻権者への通知

→まったく買戻権者が関与しないところで抹消されてしまうため、買戻権者宛に法務局から抹消した旨の通知がなされます。
 

上記の地上権等の抹消と異なり、権利者の調査や公示催告等の手続も一切不要ですので、極めて簡単に抹消することができます。 
 

4 解散した法人が抵当権等の担保権者の場合の特例

 

上記2のとおり、抵当権等については比較的簡略的に抹消できる特例がありますが、さらに解散した法人が抵当権者等の場合の抹消登記の特例ができました。

解散した会社であっても、清算人という方が存在するはずですので、通常はその清算人に協力してもらって抹消登記を申請することになります。しかし、清算人が行方不明だと協力を得ようがありませんし、清算人が亡くなっているような場合だと裁判所に清算人を選任してもらうなどかなり大変な手続が必要でしたが、今回の改正により比較的に簡略的に抹消が可能であり、さらに従前の特例と異なり供託しなくても良いというメリットもあります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①抵当権等の担保権が登記されており、かつ弁済期から30年以上が経過していることを確認する。

→不動産の登記事項証明書で確認をします。
 

②抵当権者等が解散されてから30年以上経過していることを確認する。

→法人の登記事項証明書で確認をします。
 

③清算人の調査

→法人の登記事項証明書を見れば清算人が誰であるか住所氏名が登記されていますので、清算人の調査を行います。ただし、住民票等の調査のみで大丈夫であり、現地調査までは不要です。もし、清算人が見つかれば、通常どおり共同で申請を行うことになり、万が一協力してもらえない場合は訴訟等他の方法を検討することになります。
 

④登記申請

→清算人が所在不明であることが確認できたら、供託をすることなく、権利者が単独で登記申請を行うことになります。 
 

5 遺贈を原因とした所有権移転登記等

 

簡略的な抹消とは無関係なお話しですが、単独申請という点で共通するのでこちらでまとめます。

遺贈とは、遺言によって財産をあげるというものであり、相続人に対して行うこともできますし、まったくの第三者である個人や法人に対しても行うことができます。当事務所でも日本赤十字社やお世話になった病院へ遺贈するという内容の遺言書の作成に関与させていただいたことがあります。
 

さて、相続登記の場合は取得する相続人が単独で申請できるのに対し、遺贈の登記については相続人全員または遺言執行者が関与して登記をしなければならないとされております。遺言執行者が協力しないということは考えにくいですが、遺言執行者が選任されていない場合は相続人全員が関与する必要があり、その方の協力が得られないと登記ができないことになります。

さらに、相続人であるAが不動産を取得するにしても、遺言に「不動産をAに相続させる(特定財産承継遺言)」という場合はAが単独で登記申請できるのに、「不動産をAに遺贈する」となっている場合はAが単独申請できないことは不合理だと考えられます。

そこで、遺贈の登記全部という訳ではありませんが、遺贈によって財産をもらう人が相続人である場合に限り、当該相続人(受遺者)が単独で申請できることになりました。

一方で、遺言によって自身が取得取得することを認識した場合は3年以内に登記申請を行う義務が生じ、3年以内に登記をしない場合は「10万円以下の過料」という罰金のようなものを課される可能性があります。
 
 

上記のうち、買戻権の抹消は司法書士としてはかなり楽にはなるかと思いますが、一般的にはあまり関係ないと思われます。また、地上権等の抹消や解散法人の抵当権等の抹消については、あまりお目にかかることは無いものの、お目にかかった時には大変な手間がかかりましたので、該当する方にはかなり大きな改正になると思います。

最後の遺贈については、相続人に遺贈するというケースがそもそも多くなく(遺贈するくらいなら特定財産承継遺言を書くことが多い)、仮に遺贈にするようであれば遺言執行者として受遺者を選任していることが多いため、現実的にはあまり該当するケースは多くないかと思います。

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1月 12 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ②

令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まります。今回は、この点についてまとめたいと思います。
なお、新しく「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」という法律ができるため民法改正ではありません。

 
 

1 相続土地国庫帰属制度が出来た理由

 

不動産という財産の多くは高額な財産であり、自宅の不動産を相続することも一般的によくあることです。

すでに社会人として独立していて都会に家を構えており、実家には戻らない予定なので土地が不要という方も多く、そういった場合は第三者に売却することになると思われます。

しかし、そもそも宅地ではなく、山林や農地など第三者には売却ができず、かといって使うこともないため放置されてしまうという土地が日本の至る所にたくさんあり、登記についても相続登記がされないまま亡くなかった方名義のままになっていることがあります。もし、日本中がこのような土地だらけになってしまうと、国や市区町村等が道路を作ったり、公共施設を作る場合などに、土地の所有者から譲ってもらったり、使用することへの承諾を求めようにも誰から土地を譲ってもらえば良いのか分からないため進められなくなってしまいます

そこで、もう今後使用しないような土地については、国に対して引き取ってもらうことができる制度ができました

ただし、単に引き取ってもらえれば良いというものではなく、そのためにはなかなか高いハードルがあります…. 
 

2 制度を使うための条件

 

この制度を満たすためには、次の条件を満たす必要があります。

(1)土地であること

建物は最終的には解体してしまえば無くなるのですが土地はそういう訳にはいきませんので、この制度を使って国に引き取ってもらう不動産は土地でなければなりません。
 

(2)相続・遺贈によって取得したこと

相続や遺贈(受遺者が元の土地所有者の相続人である場合に限る)という、今の所有者の意思で取得していない場合に限ります。したがって、土地を買ったものの使わなくなったので国に引き取ってもらうというようなことはできません。
 

(3)通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

訳アリの土地は国は引き取ってくれません。
 

(4)一定の負担金を国に納めること

国に土地を渡してお金がもらえるどころか逆にお金を負担して引き取ってもらうことになります。
 

以下、それぞれの内容について詳しく見ていきます。 
 

3 土地であること

 

上記のとおり引き取ってもらえるのは土地であり、建物は含まれません土地上に建物が存在している場合は、事前に解体しておく必要があります。 
 

4 相続・遺贈によって取得したこと

 

元の所有者が亡くなったことによって取得した人に限られます。共有の場合は、共有者全員で申請をしなければなりません。

また、共有の場合は、一部の方が相続等で取得していれば問題ありません。例えば、甲さんからAさんとBさんが各1/2ずつを売買で取得しました。その後にAさんが亡くなり、相続人であるCさんがAさんの持分を取得し、Bさん1/2、Cさん1/2となった場合、Bさんは売買で取得していますが、相続で取得したCさんと共同して申請することによりこの制度を利用することができます。 
 

5 通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

下記のような場合は認められないことになります。

①建物が存在している土地

②地上権や抵当権など第三者の権利が設定されている土地

③道路など、権利を持っていない第三者も施用することが想定されている土地(通路、墓地、境内地、水道用地など)

④土壌汚染など特定有害物質によって汚染されている土地

⑤隣地との境界が不明な土地

⑥権利関係に争いのある土地
 

また、下記のような土地は認められない場合があります(全部ではありません。)。

⑦崖がある土地(勾配が30度以上で高さ5メートル以上)

⑧土地の管理ができないような樹木、工作物、その他有体物が地上または地下に存在する土地

⑨土砂崩れの恐れ、鳥獣被害などが起こる恐れのある土地

⑩その他管理が大変な土地 
 

6 一定の負担金を国に納めること

 

土地の種類によって異なりますが、概ね下記の表のとおりとなり、少なくとも20万円はかかることになります。
↓画像をクリックしていただくと大きく表示されます。

 
 
 

ということで、国に土地を引き取ってもらうとは言っても、その条件を満たす土地で無ければなりませんし、前提として建物の解体が必要であれば建物の解体費が、境界が不明であれば測量の費用など、負担金以外にも多くの費用がかかることになります。
ただでさえ価値が無い土地だから放置されているのに、数十万円もかけて土地を引き取ってもらう方がたくさんいらっしゃるのかは分かりませんが、少なくとも国が引き取ってくれるという制度自体が存在しませんでしたので、そういった意味では大きな一歩かと思います。

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1月 11 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ①

令和3年4月28日に公布された民法改正の不動産に関わる部分について、今年の4月1日に施行されます。

今回、この点の改正部分についてまとめたいと思います。ただし、今回の分は当サイトの業務とあまり関係ない部分であるため簡単に記載いたします。
 

 
 

1 相隣関係の改正

相隣関係というのは、端的に言えばお隣さんとの土地利用に関する関係を定めた部分となります。
 

例えば、

「建物の建築や修繕等でお隣さんの承諾を得ればお隣さんに土地に入ってもいいよ(民法209条)」

「隣地から自然に水が流れてくる場合は阻止しちゃダメだよ(民法214条)」

「建物を建築する場合は、境界から50cm以上離して建てなければダメだよ(民法234条※ただし、建築基準法等にて修正されることがあります。)」

隣地の木の枝が越境してきているときは勝手に剪定できないけど、根っこが越境してきている場合は剪定しても良いよ(民法233条)」
 

などになります。このような相隣関係について、ざっくり下記のように変わります。
 

建物の建築や修繕に限らず、収去の場合や境界の調査等においても隣地に立ち入ることができます。
 

越境してきている木の枝についても、場合によっては(隣地の人が行方不明、剪定する期限までに切ってくれない、など)剪定することができます。
 

電気ガス水道などのライフラインを使用するため、隣地の方の土地を使用することができます(ただし、損害が生じる場合は償金を支払う必要があります。)。 
 

2 共有関係の改正

 

複数人で1つの不動産を所有している場合、それを売却する場合(処分行為)は共有者全員の同意が必要ですが、リフォーム等で改良する場合(管理行為)は過半数の同意があれば良く、修繕する場合(保存行為)は他の共有者の同意は要らずに単独で可能です。

このような共有状態が生じている場合にも様々なルールがありますが、この点についてざっくり下記のように変わります。
 

軽微な変更(大規模修繕工事など)であれば処分行為ではなく管理行為として過半数で可能
 

短期の賃貸借であれば過半数の同意で可能。
 

共有者が賛否を表明しない場合は、裁判所の決定+残りの共有者の過半数の同意をもってリフォーム等の管理行為が可能。
 

共有者が行方不明のときに共有物に変更を加える場合(例えば、長期の賃貸)は、裁判所の決定+残りの共有者の全員の同意があれば可能(ただし、行方不明の共有者の持分を失わせるような変更は不可。)。
 

共有物の管理者制度の創設。管理者が選任された場合は、管理行為に当たって共有者に確認すること無く進めることが可能です。
 

不動産が共有の場合に、裁判所の許可を得て行方不明の共有者の持分を取得することが可能になり、また不動産全体を第三者に売却することも可能です。その場合、代金を供託し、持分を失った共有者は供託金を受け取ることになります。 

裁判所に申し立てて不動産の管理者を選任してもらい、その管理者が売却等をすることが可能となります。
 

その他、管理不全土地管理制度の創設など 
 

3 相続制度の改正

 

遺産分割協議がされないことにより、共有関係のまま放置された不動産が多数あることから、遺産の整理を素早く進めてもらうための改正が行われています。

特に下記の②は結構大きな改正になるかと思います。
 

相続人不存在の場合の相続財産管理人制度を相続財産清算人制度に変更し、従前は10か月以上かかっていた手続が最短で半年程度で終わるようになります。
 

相続の開始から10年経過した後は、原則として具体的相続分(親の看病をしたなどを踏まえた相続分)ではなく、法定相続分で行う。しかも、改正法施行前の相続にも適用されます(ただし、5年の猶予がありますので、それまでに遺産分割をしておけばセーフ。)
 

相続開始から10年経過した後は、上記2⑥などの制度により共有持分を取得することができます。
 
 
この中で日常生活において影響がありそうなのは、1③や3②になるかと思います。②に続きます。

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12月 28 2022

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もご依頼いただきましてありがとうございました。

 

 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます

 

 

令和4年12月28日(水)18時まで 通常営業

 

令和4年12月29日(水)~令和5年1月3日(火) 冬期休業

 

令和5年1月4日(水)9時から 通常営業

 

以上、よろしくお願いいたします。 

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10月 28 2022

遺言執行者の選任はしておいた方が良いか(登記的に)

遺言書作成のご相談、ご依頼をいただくことがあり、基本的に当事務所としては公正証書遺言での作成をお勧めしております。

というのは、通常の自筆証書遺言の場合は、紛失、変造等のリスクがあり、そのリスクを軽減する法務局の自筆証書遺言書保管制度も、法務局が遺言の内容のチェックまでしてくれるわけではないので、最悪の場合無効となってしまうリスクがあるためです。

もちろん、公正証書遺言であっても意思能力が無い等の理由で無効になるリスクが無いわけではありませんが、少なくとも形式違背で無効になることはまず考えられませんので、特段の事情が無い限り公正証書での遺言書の作成をお勧めしております。

また、遺言書作成に当たり、遺言執行者の指定についてもご相談いただくことがありますので、今回はこの点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遺言執行者とは

 

そもそも遺言書に記載されている内容は、遺言者ご本人が亡くなったからといって自動的に不動産の名義変更がなされたり、金融機関の預貯金が解約されるわけではありませんので、遺言書の内容を実現する人が必要になってきます。それを実現する人が遺言執行者となります。
 

ただ、遺言執行者は必ず指定しなければならないというものではありませんので、遺言執行者が指定されていなければ、相続人全員が協力して遺言書の内容を実現していくことになりますし、どうしても遺言執行者が必要であれば家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。以前、遺言執行者が選任されておらず、かつ相続人の一部の方が協力してくれなかったため、特定の相続人を遺言執行者に選任してもらうよう家庭裁判所に申立てを行い、その通りに選任されて手続を進めたこともあります。 
 

2 遺言執行者になれる人など

 

遺言執行者は、未成年者及び破産者以外の方であれば、誰でもなることができ、特に資格なども必要ありません。特定の相続人を遺言執行者に指定することもできますし、相続とは無関係な弁護士や司法書士等の専門家を指定しておくことも可能です。

さらに、1名に限られていないため複数指定することも可能ですし、順位を付けて指定することも可能であり、法人であっても可能です。

例えば、「妻と長男を遺言執行者に指定する。」、「妻を遺言執行者と指定するが、遺言者よりも前に妻が亡くなっていた場合は長男を指定する。」、「A株式会社を遺言執行者に指定する。」ということが可能です。
 

なお、あくまで遺言執行者の「指定」に過ぎないため、指定された人は遺言執行者になることを拒否することも可能です。 
 

3 遺言執行者の権利と義務

 

(1)権利

①報酬

法律上の原則としては遺言執行者は報酬を受ける権利はありませんが、当事者間に取決めがあれば報酬を受領しても良いことになっているため、専門家が遺言執行者となる場合は遺言者との間で遺言書を作成する時点で遺言執行に関する報酬についても取り決めてあることが一般的です。これは各専門家によって異なりますが、遺産総額の数パーセントというケースが多いかと思います。
 

②遺言者の代理人として行う権限

権利というよりは権限になりますが、遺言執行者は遺言者の代理人として遺言書の内容を実現していく権限があります。したがって、例えば相続人の一部が反対していたとしても手続を進めることが可能です。
 

(2)義務

① 任務を行う義務
遺言執行者が、遺言書において指定を受けて就職を承諾したときは、直ちに遺言執行の手続を進めなければなりません。もちろん、「仕事を投げ出して最優先でやってください」という意味ではなく、「漫然と放置しないでください」という意味になります。

 

② 財産目録の作成等の義務
遺言執行者は、遺言者の財産を調査の上、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければなりません。この点が一番大変というケースも多いかと思います。

 

③ 善管注意義務
遺言執行者は、善管注意義務をもって遺言執行をしなければなりません。なかなか分かりづらいですが、常識的な判断で進めてくださいという感じかと思います。例えば、不動産を売却して代金を相続人に分配するという清算型の遺言があったときに、不当に安い価格で売却してしまった場合には善管注意義務違反で損害賠償請求される恐れがあります。したがって、このような場合には査定書を複数取ったりして金額が妥当であることの記録を取っておくべきだと思います。

 

④ 報告義務
遺言執行者は、相続人から問い合わせがあった場合には状況を報告し、完了した後にも完了の報告をする必要があります。

 

⑤ 引渡義務
遺言執行者は、遺言執行の任務遂行として相続人のために関係者から受領した金銭その他の物や収受したものがある場合には相続人に引渡さなければなりません。遺言執行者が受け取ったものはあくまで相続人や受遺者のために預かっているだけに過ぎませんので当然ですね。

 

⑥ 補償義務
遺言執行者が相続人に引き渡すべき金額等を使ってしまったり、預かったものを壊してしまった時などは弁償する義務があります。これも当然ですね。

 

4 遺言執行者は指定しておいた方が良いのか

 

やっと今回の記事のメインです。
遺言執行者を選任した方が良いかどうかは、その内容、相続人が自身で手続ができるか、相続人間の関係次第となります。

 

(1)内容
登記と関係ない部分ですと、認知や相続人の廃除等がある場合は必ず遺言執行者の指定が必要ですがそのような遺言はあまり多くないため、一般的には気にしなくて良いかと思います。
まず、遺言の内容に、遺贈がある場合は遺言執行者を指定しておいた方が良いと思われます。遺贈とは、基本的には相続人以外の人や法人に対して遺言者の財産を渡すというものであり、例えば相続人ではない孫、兄弟姉妹、甥姪、お世話になった友人知人、NPOや赤十字などの団体に財産を残したい場合になります。遺言執行者がいない場合は相続人が遺贈の手続を行うことになりますが、相続人としては遺贈がなければ自身の取り分が増えることになりますので、遺贈の手続を放置されてしまう可能性があります。これがもし不動産の場合、相続人全員の印鑑証明書が必要になりますので、途端にハードルが上がります。

 

逆に言えば、「A土地は長男に相続させ、B土地は次男に相続させる。」など、相続人だけが受け取るような内容になっている場合、遺言執行者がいなくてもA土地は長男のみで、B土地は次男のみでそれぞれ手続ができますので、必ずしも遺言執行者の指定は必要ありません。なお、このような場合であっても、遺言執行者が登記手続を進めることは可能です。

 

(2)相続人ができるかどうか
上記のとおり、遺言執行者にはたくさんの義務があり、いろいろと調査をしなければなりません。それには当然多くの時間がかかりますし、専門的な知識が必要な場面もたくさんあります。
この点、「相続人の調査だけ」、「財産の調査だけ」、「登記手続だけ」など、ピンポイントに専門家に依頼するということも考えられますが、丸っと専門家にご依頼いただいた方がスムーズに進むのは間違いありません
ただし、専門家に依頼した場合はそれなりに費用もかかりますので、この点を踏まえてご検討いただくことになります。

 

(3)相続人間の関係性
遺言執行者がいる場合、遺言執行者は相続人全員に対して、就任の通知や財産目録等を送付しなければなりません。
となると、相続人が兄弟のみの場合で、遺言書がある場合に、相続人ではあるけどもう何十年も連絡を取っていない兄弟がいる場合など、あまり関りがない方についても送付しなければならず、それが原因でトラブルが生じる可能性があります(兄弟姉妹には遺留分はありません。)。
上記のとおり、遺言書があっても、相続人単独で名義変更等ができてしまいますので、そのような場合には逆に遺言執行者を指定しておかない方が良いかもしれません。

 

5 まとめ

 

あくまで不動産に関する登記だけで考えると、遺贈があるのであれば遺言執行者を指定しておいた方が良いと思いますが、上記のような「A土地は長男に相続させ、B土地は次男に相続させる。」と具体的に決まっている場合は、必ずしも遺言執行者の指定は必要ないかと思います。もちろん、相続人が自身で手続を行うことが不安なので指定しておきたいという場合も多いので、指定していただいても問題無いかと思います。

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9月 07 2022

登記情報の利用時間拡大

不動産登記や会社の登記についてご相談いただく際に、最新の登記簿の状況を確認するため、インターネットで登記簿の内容の閲覧ができる登記情報を取得したうえで確認をします。
 

→ 登記情報提供サービス
 

 

 
 

実は、こちらのサービスの提供時間が平日の8時半から21時までに限定されていたため土日祝日には取得することができず、土日祝日にご相談をお受けすることが難しくなっていました
 

もちろん、事前に平日の時点で登記簿の情報をすべて取得できれば良いのですが、道路が実は私道だったり、1筆の土地だと思っていたものが実は2筆だったなど、ご相談いただいた際にご相談者の方がご存知では無かった事実が発覚することもあるため、なかなか平日に確実に揃えることが難しいこともありました。
 

この登記情報提供サービスの利用時間が10月から平日は23時まで、土日祝日でも8時半から18時まで利用できることになりましたので、かなり助かることとなります。
 

→ 利用時間の拡大について
 

ということで、もし土日祝日でないとご相談にお越しいただけないという方も10月以降にご相談いただければと思います。

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8月 08 2022

夏季休業について

 

当事務所では、下記の期間について夏季休業とさせていただきます。休業期間にお問い合わせいただきましたメール等につきましては、休業後に順次回答させていただきます。

 

8月10日18時まで  通常業務

 

8月11日から8月14日まで 夏季休業

 

8月15日から  通常業務

 

以上、よろしくお願いいたします。

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3月 11 2022

令和4年4月1日から減税等について

現在、各種登記手続において、登録免許税が減税される制度が多くあります。 

 

例えば、土地を購入された場合、本来は土地の評価額の2%を登録免許税として納めなければならないところ、1.5%に減税されています。たかが0.5%かもしれませんが、3000万円の評価額の土地を購入する場合、本来であれば60万円の税金がかかるところ45万円で済むわけですからかなり大きいと思います。
 

また、中古の居住用建物に関してはもっと減税されており、築年数などの条件を満たせば、本来であれば上記の土地と同様に2%の登録免許税を納めなければならないところ、約1/3の0.3%で良いこととされております。

1000万円の建物の場合、本来20万円のところ、3万円まで減税されますので、これは大変大きいと思います。
 

もっとも、これらの減税は「租税特別措置法」という期間限定の法律によって減税されるため、期間満了により廃止されることもあれば、同じ内容で延長されることもあり、さらには、よりメリットがある内容に改正されることもあります。
 

今回は、比較的良い内容に改正されましたので、この点をまとめたいと思います。
 

 
 

1 中古住宅の適用範囲の拡大

 

上記のとおり、中古の建物に関しては大幅な減税があるのですが、築年数の要件があり、木造や軽量鉄骨造などの場合は新築から20年以内、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの堅い建物については新築から25年以内の建物でなければなりませんでした。
 

また、上記の期間を超えてしまった建物であっても、建築士さんの耐震証明があれば、減税を受けることができました
 

しかし、令和4年4月1日からは、昭和57年1月1日以降に建築された建物についてはすべて条件を満たすこととなりましたので、この改正は大きいと思います。
 

なお、減税を受けるためには上記の築年数の要件以外にも、「居住用の建物であること」、「購入者自身が居住すること」、「床面積が50㎡以上あること」、「取得原因が売買または競落であること(贈与は適用無し)」などの条件を満たすことが必要ですが、居住用として購入される場合にはほとんどのケースで満たしていると思います。 
 

2 相続登記の際の免税対象土地の拡大

 

現在、相続登記を推進するために、比較的安価な土地については登録免許税が非課税になっており、ざっくりいうと、「法務局が指定した区域にあり」、「評価額が10万円以下」を満たす土地であれば登録免許税が非課税となりました。

→ 相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局サイト)
 

ただ、仮に評価額が10万円の土地の相続登記の際にかかる登録免許税は400円ですし、指定された区域外であれば適用されないので、正直なところ微妙な内容でした。
 

ところが、今回の改正により、「すべての土地」、「評価額が100万円以下」となりましたので、かなりメリットが大きくなりました。相続登記を申請するのであれば、令和4年4月まで待った方が良いケースが多くあると思います。
 


 
 

3 まとめ

 

廃止されることなく、現在の内容のまま継続される減税もいくつかあります。上記と重複する部分もありますが、まとめると下記のとおりです。

(1)売買で土地を購入した際の登録免許税の減税(本来2%なのが1.5%)

→ 現在も有効
 

(2)建物の新築、中古住宅の購入等の際の所有権移転登記の登録免許税の減税(本来2%なのが0.3%)

→ 令和4年3月31日までが令和6年3月31日まで延長
 

(3)上記の建物の工事代金や購入代金について住宅ローンを組む場合の抵当権設定に関する登録免許税の減税(本来0.4%なのが0.1%)

→ 令和4年3月31日までが令和6年3月31日まで延長
 

(4)建物を新築した際の保存登記の登録免許税の減税(本来0.4%なのが0.15%)

→ 令和4年3月31日までが令和6年3月31日まで延長
 

(5)上記の場合で、特定長期認定住宅または認定低炭素住宅(本来0.4%なのが0.1%)

→ 令和4年3月31日までが令和6年3月31日まで延長
 
 

上記(2)と(3)については、築年数要件が撤廃され、昭和57年1月1日以降に建築された建物であれば適用あり。ただし、下記の要件を満たす必要があります。

自分自身が居住するための家屋であること
②床面積(区分所有家屋の場合は専有床面積)が50平方メートル以上であること
③併用住宅の場合は、居住部分の割合が90%以上であること
④区分所有家屋の場合は、建築基準法上の耐火または準耐火建築物であること
⑤所有権移転登記の場合は、取得の原因が「売買」または「競落」であること

 
 

以上、改正のまとめでした。

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