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7月 31 2018

配偶者居住権の新設

相続法が大改正され,新しい制度や大きく改正された制度がいくつかあります。
 

今後何回かに分けて,改正された点についてまとめていきたいと思います。
 


 

いきなりですが,具体的な事例を挙げてみます。
 

被相続人(亡くなった方)→ Aさん(夫)
相続人 → B(後妻),C(前妻との子)
 

Aさんが亡くなったときには,預貯金等のめぼしい財産は一切なく,唯一残されたのがAさん名義の自宅(3000万円相当)でした。
Aさんが亡くなるまで,Bさんも一緒に生活しておりましたが,Cさんはすでに結婚して別で家族を築いていました。
Bさんは,自身の預貯金は500万円程度であり,これを元手に自分が亡くなるまでは自宅で生活していきたいと考えておりましたが,前妻の子であるCさんは自宅を相続することを譲らず,相続について話し合いで解決するのは難しい状況でした。

このようなケースを前提として,新しく新設された配偶者居住権についてまとめたいと思います。 
 

今までは

 

相続人は後妻であるBさんと前妻の子であるCさんの2名であるため,法定相続分としては2分の1ずつとなり,遺産が自宅のみということであれば,自宅に対する持分を各自2分の1ずつ相続することとなります。
預貯金など簡単に分けることができる財産で有れば単純に分割すれば良いのですが,不動産の場合は,その後の管理や処分の問題があるため,遺産分割協議を行ったうえで,相続人のどなたかに相続させることが多いかと思います。
 

今回のケースの場合,遺産分割が行われるまでの間に関しては,とりあえずはBさんは居住し続けることができます。というのは,共有者である以上,自宅を利用する権限があるからです。また,平成8年12月17日最高裁判決により,少なくとも遺産分割協議がまとまるまでの間に関しては,Cさんに使用料などを支払うことなく居住することができることとされています。
 

この点,相続人間の関係が良好であり,特に揉めていないようであれば何も問題はありません。
 

しかしながら,今回のケースのようにもめているということであれば,いずれ遺産分割調停などを起こされ,遺産分割を迫られることは容易に想定できます。
 
 

遺産分割協議にしても遺産分割調停にしても,このような状況になれば法定相続分をベースに話し合いを行うことになるかと思われ,下記の2つが考えられます。
 

(1)自宅を売却したうえで,BさんとCさんで1500万円ずつ分ける(換価分割)。

(2)BさんまたはCさんが自宅を相続し,相手方に1500万円を支払う(代償分割)。
 

Bさんとしては今後も自宅で生活していきたいと考えているということであれば,上記(2)で自宅を相続することになりますが,Cさんに対して1500万円を支払わなければなりませんがそのようなお金を用意することができませんので解決ができません。

Cさんが相続し,Bさんとの間で賃貸借契約を締結するということも考えられますが,毎月の賃料の支払いが必要となりますし,Bさんは契約解除による退去のリスクがあります。

BさんとCさんとの間で,Bさんが相続するが,Bさんが死亡した場合にはCさんに遺贈する内容の遺言書を書くことで合意するということも考えられますが,遺言書はいつでも書き換えることができますので,Cさんに大きなリスクがあります。 
 

配偶者居住権とは

 

配偶者居住権とは,「配偶者である相続人が,被相続人の遺産である建物を無償で使用及び収益することができる権利」です。

したがって,上記のケースにおいては,自宅はCさんが相続するものの,Bさんは一生無償で自宅で生活することができます
 

これにより,賃貸借契約と異なり,Bさんは契約の解除によって退去しなければならないというリスクを負わなくて済みますし,CさんとしてはBさんから遺贈を受けるのではなく,Aさんの自宅をすぐに相続することができますので,遺言書の書き換えのリスクを負うこともなくなります。 
 

配偶者居住権が成立するための条件

 

配偶者居住権が権利として成立するためには,以下の条件が必要となります。
 

(1)被相続人が亡くなった時点で,被相続人が所有する自宅に配偶者が居住していたこと。

→被相続人が死亡した時点で配偶者が自宅に居住していなければなりません。もし別居していたということであれば,自宅以外の生活の本拠が存在するということになるますので,配偶者居住権を認める必要がないからです。
 

(2)下記のいずれかにより配偶者居住権を取得すること

①被相続人が配偶者居住権を遺贈したとき

遺産分割協議により配偶者が配偶者居住権を取得することとされたとき(遺産分割調停,遺産分割審判を含む)

③被相続人と配偶者との死因贈与契約において,配偶者居住権を取得することとされたとき 
 

配偶者居住権の効果

 

配偶者居住権が認められた場合,以下の効果が生じます。

(1)被相続人の配偶者は,自己所有ではない自宅に無償で居住することができる。
→賃貸借契約と異なり,賃料の支払い義務はありません。ただし,下記のとおり必要費を負担しなければなりません。

(2)配偶者居住権を第三者に対抗するために,所有者に対して登記をするよう請求することができます。
→当事者の合意次第とはなりますが,一般的には配偶者側が登記費用を負担することになると思います。 
 

一方,下記の注意点もあります。
 

(1)配偶者は自宅を維持するための必要費を負担する義務を負います。

→自宅に居住し続ける以上は,それに伴う費用は負担するのが当然だからです。
 

(2)配偶者居住権を第三者に譲渡することはできません。

→ 配偶者のみに認められた権利であるためです。
 

ポイントとしては,配偶者居住権は登記が対抗要件となっていることです。賃貸借契約は「引渡し」が対抗要件,つまり居住している事実そのもので第三者に対抗することができますが,配偶者居住権は,登記がされていないと第三者に対抗することができます。
 

上記のケースにおいて,配偶者居住権の登記をしない間にCさんが第三者に自宅を売却してしまうと,当該第三者からBさんは退去を迫られることになってしまいます。

配偶者居住権を取得する場合は,配偶者居住権の登記もセットになるかと思いますので,お気軽にご相談いただければと思います。

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7月 31 2018

ブログ目次

売買に関すること

 
平成25年4月1日よりオンライン減税が無くなります
個人間売買について

農地の売買

住宅ローン減税(2012年版)

家賃と住宅ローンの金額「のみ」を比較してはいけません!

東日本大震災被災地域の不動産を取得した場合の例外措置

住宅ローンの固定金利と変動金利

裁判所の競売で購入する方法

土地区画整理組合が販売する保留地

不動産売買の決済当日に起こるトラブル

権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合

住宅ローンの変動金利増加

住宅ローンは人生を賭けたギャンブル(になることもある

権利証に関する誤解を解消してみよう!
印鑑について

地面師と司法書士
司法書士を選びたい
土地を購入し,建物を新築する場合の登記費用について
登記識別情報通知書のシールは剥がすべきか
4月1日から変わるものと変わらないもの(不動産登記的に) 
「本人確認情報」と「権利証の再発行」は同じではありません。 
登録免許税の減税について 
平成29年4月1日からの各種減税措置  
地面師暗躍 
破産物件の購入 
住所のつながりを証明する書類 
 

贈与に関すること

不動産の贈与について

登記の持分と贈与税

相続が得か贈与が得か

権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合

財産分与の登記について

相続時精算課税制度を使っての贈与
農地の時効取得 
認知症の方が所有されている不動産の売買・贈与 
贈与と遺贈  
不動産屋さんを通さない不動産の売買について 
地面師真っ盛り 
 

相続に関すること

遺産分割協議に参加できない方がいるとき①

遺産分割協議に参加できない方がいるとき②

第3順位の相続は波乱となるので,その前に手を打つべき

「相続放棄」はプラスマイナスどっちも放棄です!

お葬式の費用は誰が負担するのか

知らない兄弟がいた!

相続が得か贈与が得か

嫡出子と非嫡出子の相続分の差は違憲(ただし,高裁決定)

「私の相続分は1/2ですよねぇ。」

相続登記の費用についての補足①

相続登記の費用の補足②

遺言を書いた人よりも先に相続予定者が死んでしまった場合

改正原戸籍

登録免許税や相続税等の改正

相続放棄ができなくなってしまう「法定単純承認」

非嫡出子相続分違憲決定など

亡くなる前に相続放棄

財産管理協会「認定司法書士」登録

自分の子どもではないにも関わらず認知した場合(最高裁判決)

遺産分割で問題となる事項(特別受益編)

遺産分割で問題となる事項(法律とは異なる取り扱いの銀行預金編)

遺産分割で問題となる事項(使途不明金編)
遺産分割で問題となる事項(国債編)
生物学的な親と法律上の親
遺産分割協議は早めの方がお得??
葬儀についての法律関係
一部の相続人からの預金の払い戻し 
認知症の方がいらっしゃる場合の相続(遺産分割) 
失くなった・間違った戸籍 
花押は押印ではありません 
未来につなぐ相続登記
「法定相続証明制度」の導入
遺贈の放棄
預金も遺産分割の対象に(最高裁判決) 
法定相続情報証明制度 
相続登記の登録免許税が無料になる(かも) 
相続財産管理人の選任
夫婦間における自宅の贈与の特例は得か 
相続登記の免税について 
配偶者居住権の新設

 

遺言に関すること

遺言でできること

自筆証書遺言と公正証書遺言

遺言のススメ

私の財産のすべてを息子に相続させたい
遺贈に関する注意点
一部の相続人からの預金の払い戻し
農地の時効取得 
遺言書の撤回 
「贈る」の意味と受遺者の相続人に対する遺贈 
 
 

抵当権抹消に関すること

住所変更登記が必要な場合と要らない場合
遙か昔の抵当権が残っている場合
休眠担保の特定が使えない(根)抵当権抹消
申請期限や有効期限のある書類
50年以上前の登記の抹消
登記完了証と登記事項証明書 
消滅時効を原因とした抵当権抹消登記手続訴訟 
休眠抵当権に関するページの追加について
されど住所変更登記
「敷地権」とは?

抵当権設定登記に関すること

「借り換え」の費用について 
 

その他

会社が知らないうちに無くなっているかもしれません。
大槌町及び南三陸町に行ってまいりました。
司法書士業務賠償責任保険
熊本地震により権利書等を紛失された方へ

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4月 02 2018

相続登記の免税について

条件を満たすと,相続登記の際に納める登録免許税が無料(免税)になることになりました。実際のところ該当する事案がそれほど多いようには思えませんが,それでも免税になるのは相続登記の推進に関しては良いことだと思います。 

この件については,以前まだ法案だった頃に記事を書いたのですが,少し内容が変わっておりますので再度まとめたいと思います。
 


 
 

今回免税になる相続登記は2つのケースがありますが,1つはほとんどの方に関係がなく,かつ,あまりメリットもないため割愛し,影響がありそうな方のみ記載いたします。
 

①相続の対象が土地であること。
 

登記が絡んでくる時点で,ほぼ土地か建物になる訳ですが,免税の可能性があるのは土地のみです。
 

②原因が相続または遺贈であること。

あくまで相続の際の免税措置であるため,名義変更の原因は相続または遺贈でなければなりません。ただし,遺贈に関しては相続人に対する遺贈に限定されますので,第三者に対する遺贈は免税されません
 

③所有権の登記名義人の相続人がすでに亡くなっていること(二次相続が生じていること)

すべての相続登記が無料になるわけではなく,相続登記をしないままに相続人も亡くなってしまった場合である必要があります。

例えば,土地の所有者として登記されているAさんが死亡し,その相続人がAさんお子どもであるBさんただ一人でしたが,Bさんもその後死亡しており,そのBさんの相続人C(孫)がいる場合ということになります。なお,分かりやすい事例として子や孫を登場させただけであり,中間の相続人が死亡していれば配偶者,甥や姪などにも適用されます。
 

④亡くなった相続人名義にすること

上記の例で言うと,Aさん名義の土地を亡Bさん名義に変える相続登記に関する登録免許税が免税されます。

したがって,いったんBさん名義に変えた後に,Cさんに変える場合には登録免許税はかかりますし,各種条件を満たしてAさんから直接Cさんに相続登記する場合には免税になりません
 

⑤決められた期間内に登記申請をすること

平成30年4月1日~平成33年3月31日までに登記申請をしなければなりません。

なお,この期間内に申請をすれば良いだけであって,所有者や相続人が亡くなった日は関係ありません。

以上から,①土地の,②相続または遺贈で,③所有者の相続人も亡くなっており,④その亡くなった相続人に名義を変える登記を,⑤一定期間内に申請する場合,に免税されることとなります。
 

なお,あくまで登記申請の際の登録免許税が免税されるだけであり,役所等で取得する戸籍謄本等の取得費用が無料になるものではありませんし,司法書士にご依頼された場合の手続に関する報酬が無料になるものでもありませんのでご注意ください。

以上については,法務省のサイトにも記載してありますので,こちらもご覧ください。

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3月 30 2018

住所のつながりを証明する書類

登記における所有者等の特定は,住所と氏名で行います。 

例えば,平成20年にA市B町1番地に住む甲野太郎さんが不動産を購入した場合,登記簿には,
 

住所 A市B町1番地

氏名 甲野太郎
 

と登記されています。
 

平成30年になり,甲野さんが不動産を売却する際に,甲野さんがC市に転居している場合,当該不動産を売却する登記の際に提出する甲野さんの印鑑証明書には当然ながらC市の住所が記載されていますので,登記簿に記載されている甲野太郎さんと今回登記手続に関与している甲野太郎さんは別人だと判断され,売却に関する名義変更の登記(所有権移転登記)申請は却下されることになります。
 

そこで,まずは登記簿に記載されている甲野さんの住所をA市からC市に変更する登記を申請し,その後に売買による所有権移転登記を申請することになります。
 

一見,単なる住所の変更なので簡単なようですが,実は奥が深く,場合によってはかなりややこしい手続だったりするので,今回はこちらについてまとめてみたいと思います。
 

 
 

住所の変更は基本的には住民票

 

(1)住所移転が1回

上記の例で言うと,甲野太郎さんは現在お住まいのC市の住民票を取得すれば「前住所」の欄に「A市B町1番地」という住所が記載されていますので,C市の住民票があれば簡単に証明できます。
 

(2)同じ市内(区内)で複数回の住所移転

A市の中でB町,C町,D町,E町と複数回の住所移転がある場合,最新のA市E町での住民票を取得しても前住所としてはD町の住所しか記載されていないことがありますので,これだけでは証明ができません。この場合,履歴が載っている住民票を請求するとすべて記載されている場合があります

具体的には,名古屋市名東区内で複数の移転があった場合,名東区内でのすべての住所が履歴として記載されています。ただし,他の区での履歴は記載されないため,同じ名古屋市内でも区が変わってしまうと,次の(3)以降のケースで住所を繋げるしかありません。
 

(3)異なる市内(区内)での複数回の住所移転

A市→B市→C市と住所移転をしている場合,C市の住民票を取得しても前住所としてはB市の住所しか記載されていないのでA市とのつながりが分かりません。

そこで,次にB市にて住民票除票を請求すると,そこには,「前住所」の欄にA市の住所が記載されており,さらに転出先の住所としてC市の住所が記載されているため,A市→B市→C市のすべてのつながりが証明できることになります。
 

しかし,この住民票除票は転出等により除票になったときから5年が経過すると消除(抹消)されてしまい取得することができなくなります(住民基本台帳施行令第34条1項)。

つまり,本日の平成30年3月30日で考えると,B市からC市に転居したのが平成25年3月30日よりも前だった場合,B市に行ってもすでに住民票除票は消除されているため,取得することができなくなります。

なお,一部の市区町村においては5年以上前の除票でも取得できる場合がありますが,あくまで例外ですので過度の期待はできません。少なくとも名古屋市では絶対に出ませんので別の方法を考える必要があります。
 

(4)戸籍の附票で繋げる

同じ本籍地にある期間に住所移転した場合,その住所の履歴が記載されているものが戸籍の附票という書類です。

例えば,A市B町1番地に本籍地がある方が,本籍地を変えないまま,A市→B市→C市→D市と移転した場合,年数に関係なくすべての住所移転の履歴が記載されていますので,戸籍の附票だけですべての住所を繋げることができる場合があります。
 

ただし,あくまで同じ本籍地内での住所移転しか記載されませんので,転籍により本籍地が変わった場合はそこで途切れてしまいますし,結婚や離婚などにより新しく戸籍が作成された時も途切れてしまいます。加えて,最近よくあるのが電算化(簿冊→コンピューター化)による改正で役所によって勝手に戸籍が作成されている場合です。この場合も途切れてしまいます。

そして,何より厳しいのが,転籍,結婚や離婚,電算化などによって新しく戸籍が作成された場合,従前の戸籍の附票についても住民票除票と同様に5年経つと消除されてしまって取得することができなくなってしまいます。

平成に入り,多くの役所において戸籍の電算化が進んでいますので,昭和時代の住所移転については戸籍の附票で証明することが難しくなっています
 

(5)最後の手段の申述書(上申書)

このように,役所で取得できる書類については保存期間の経過により取得できないこともありますので,完全に住所の繋がりを証明することができないケースもあります。そのような場合には最後の手段として,申述書による自己証明が認められています。

これは,「私は,A市→B市→C市→D市と住所移転をしているところ,A市からB市への住所移転については保管期間の経過について証明することができませんが,登記簿に記載されている甲野太郎は私であることに間違いありません。」というような趣旨の書類を出すことで住所移転登記を認めてもらうということです。
 

もっとも,申述書だけで認められるわけではなく,所有者であることに間違いないことを証明する資料(権利証や固定資産税の納税証明書)を提出したり,「不在籍・不在住証明書」などを提出することもあります。
 

(6)住所移転によらない変更

市町村合併による住所の変更や住居表示実施による変更など,役所の都合で住所が変わる場合があります。

この場合でも住民票で証明することもありますが,役所で変更の証明書が無料でもらえますので,こちらで証明していくことになります。 
 

氏名変更は基本的には戸籍

 

住所と異なり,氏名変更は戸籍謄本等を取得すればすべて繋がります。

氏が変わる場合としては,結婚や離婚が一番多いかと思いますが,その旨はすべて戸籍に記載されています。また,養子縁組によって氏が変わることもありますが,これもまた戸籍に記載されています。さらに,家庭裁判所の許可を得て,氏や名が変わることがありますが,これもまた戸籍に記載されます。
 

そして,戸籍や除籍,改正原戸籍など過去の戸籍については,住民票除票の5年とは異なり,戸籍謄本は永遠に,除籍謄本や改正原戸籍は150年間保存されているため,取得できないケースはあまり多くありません。
 

もっとも,戦災により焼失していたり,すでに保存期間経過で廃棄されている場合(平成22年までは除籍等の保存期間は80年でした。)には,上記のとおり申述書等によって証明していくことになります。
 
 

ということで,住所や氏名の変更は結構地味な登記なのですが,この登記をしないと名義が変えられない重要な登記だったりしますし,結構奥が深いものです。

なかなか住所変更登記にお困りの方は多くないと思いますが,もしお困りの場合はぜひご相談ください。

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2月 27 2018

夫婦間における自宅の贈与の特例は得か

夫婦間でのご自宅の贈与のご相談をお受けすることがありますが,基本的にはあまりお勧めはしておりません
 

というのは,将来的に相続が生じたときと比べて費用がかなり高くなるからです。とはいえ,まったくメリットが無いわけでもないので,金銭的な面も踏まえてまとめておきたいと思います。
 

 

相続税と贈与税

 
人が亡くなると相続が発生し,配偶者や子どもなどの相続人が遺産を相続することになります。

その際,亡くなった方の遺産が多いと相続税が発生するんですが,配偶者の場合は1億6000万円まで無税で相続することができます。一般的に,なかなか1億6000万円もの遺産をお持ちの方は少ないかと思われますので,多くの方が配偶者に関する相続税はかからないこととなります。
 

また,小規模宅地の場合は8割減で評価してもらえるという特例がありますので,1億円の不動産だった場合は2000万円で評価してもらうことができます。
 

一方,贈与に関しては,基礎控除の110万円を超える部分については贈与税がかかってしまいますが,夫婦間の贈与の場合は下記の条件を満たすと2000万円まで(基礎控除も含めると2110万円まで)は贈与税が無税となります。

夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
 

配偶者から贈与された財産が,自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
 

贈与を受けた年の翌年3月15日までに,贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に贈与を受けた者が現実に住んでおり,その後も引き続き住む見込みであること
 

同一の配偶者からの特例をすでに使っていないこと(同一の配偶者間では一生に1回のみです)
 

また,この特例は自動的に適用されるわけではありませんので,戸籍謄本等の必要書類と併せて贈与税の申告をする必要があります。

ということで,遺産が1億6000万円以下の方については,わざわざ贈与しなくても相続の時に無税で取得することができますので,贈与に関してのメリットはあまりありません。 
 

不動産取得税

 
不動産を取得した場合,一度だけですが不動産取得税という都道府県税が課され,原則として固定資産税評価額の3%が課されます。したがって,一般的な戸建住宅だと数十万円程度かかりますし,比較的小さめのマンションでも10万円以上かかることが多いかと思います。

ただし,様々な特例があり,土地に関しては宅地だと半額で評価されたり,居住用住宅だと評価額から一定額控除されたりします。
 
この不動産取得税ですが,贈与の場合は課税されるものの,相続の場合は課されないことになっています。

したがって,この点からも贈与よりは相続の方が費用がかからないこととなります。 
 

登録免許税等の登記費用

 
不動産の名義を変える場合,法務局に登録免許税という税金を納めなければなりませんが,名義を変える理由(原因)によって税率が異なります。
 
この点,贈与に関しては不動産の評価額に対して2%であるのに対し,相続の場合は0.4%とされています。実に5倍違いますので,圧倒的に相続の方が得です。

ただし,贈与に関しては贈与契約書があれば良いものの,相続の場合は亡くなった方の戸籍謄本等が必要になりますので,評価額が高く無い不動産の場合は相続の方が費用がかかる可能性もあります。 
 
 

それでも贈与を行う場合

 
上記のとおり,費用的には相続の方が得であることが多いのですが,以下のような場合には贈与をすることが考えられます。
 

1 相続人間で揉める可能性がある

相続の場合は,基本的には相続人間で話し合い(遺産分割協議)を行い,最終的にまとまった内容の遺産分割協議書を作成します。ここには相続人全員の実印+印鑑証明書が必要となりますので,相続人のうち1名でも協力しない人がいると名義を変えることができません。一方,贈与は夫婦だけで進めることができ,子どもや親など,他の親族の協力は必要ありません。

したがって,相続になったときに揉める可能性があるようであれば贈与をしておくということも考えられます。
 

2 贈与者がリスクのあることを始めようとしている

例えば,夫が定年退職後に一念発起して商売を始めようとしている場合に,もし商売に失敗してしまうと夫名義の自宅を差し押さえなどによって失う可能性があります。したがって,商売を始める前に妻名義に変えておくことで最低限自宅だけは守るということができます

なお,上記の場合,妻が金融機関からの融資などで連帯保証人になっている場合や妻名義にした後に自宅を担保として入れてしまうと自宅は守れなくなってしまう可能性はあります。また,商売を始めて業績が悪くなった後に名義を変えた場合は,贈与が詐害行為となり,取り消される(夫の名義に戻る)可能性があります。
 

3 1億6000万円以上の遺産がある

上記のとおり,配偶者は1億6000万円までは非課税となりますが,それよりも多額の遺産がある場合は贈与した不動産の分だけ相続税を得することになります。

 

4 現金で贈与する場合

上記の不動産取得税,登録免許税はあくまで自宅そのものを贈与する場合であり,自宅の購入や建築費用としての現金を贈与する場合には課されません。

 
5 お金じゃないよ,気持ちだよ
贈与税がどうとか不動産取得税がどうとかではなく,長年連れ添った配偶者に対して感謝の気持ちをモノとして現したい,という場合です。素敵なことだと思います。
 
 

以上のとおり,単に「夫婦間の自宅の贈与は税金がかからない特例がある!」とは言っても,あまりメリットがない場合もありますので,一度司法書士や税理士さんなどにご相談いただいてから進められた方が良いかと思います。

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1月 30 2018

破産物件の購入

当事務所は,従前から破産物件(破産者が所有している不動産)を取り扱うことが比較的多いのですが,特にここ数か月は多くの破産物件の手続を行ったため,破産物件についてまとめたいと思います。
 


 
 

破産の登記

 
とある個人の方(株式会社等の法人ではない自然人)が破産した場合,当該破産者は不動産を含めた財産の処分が自由にできなくなります破産法78条1項)。
 

このことを示すため,所有している不動産には,「平成○○年○○月○○日○○時 ○○地方裁判所破産手続開始決定」というように破産の登記がなされます。この登記が入ることで,この不動産を買いたい方はご本人ではなく破産管財人と連絡を取って交渉などを行うことになりますし,一方,破産者が勝手に不動産を売却することを防ぐことができます。ちなみに,会社等の法人が破産した場合は,法人の登記簿に破産の登記がされますので不動産の登記簿には破産の登記は入りません。 

 
 

不動産の処分権者

 
上記のとおり,破産者は所有している不動産を自由に売ることはできず,破産管財人が売却することになります。さらに,一定の財産に関しては破産管財人も自由に売却することが出来ず,裁判所の許可を得なければならないことになっており,不動産も許可が必要な財産のひとつとなっています(破産法78条2項1号)。
 

したがって,破産物件を購入するためには,破産管財人と交渉して売買の合意が得られたうえで,破産管財人が裁判所に不動産売却の許可を求め,その許可が出たときに初めて購入することができることとなります。なお,「破産管財人と交渉」と書いておりますが,実際には仲介の不動産業者が入っていることがほとんどですので,値段交渉などは不動産業者を通じて行うこととなり,この点は通常の不動産の購入と同様です。 
 

登記に必要な書類

 
登記的に,買主さんに必要な書類は特に変わりなく,ご本人確認のための免許証等の身分証明書及び住民票となります。
 

一方,売主さんについては,本来であれば所有者の方の印鑑証明書や権利証などが必要となりますが,所有者の方には処分権限が無いため,下記の書類となります。

・裁判所の売却許可決定書

・破産管財人の印鑑証明書兼資格証明書

・破産管財人の本人確認書類 
 

破産の登記や担保権の登記,差押え,仮差押えの登記などの処理

 
裁判所の許可があるといっても,自動的に登記がされるわけではなく,売買に基づく移転登記を当事者の申請によって行います。ただ,移転登記を行っても,破産の登記などは自動的に消えることはありません。ですので,不動産を購入し,登記が完了しても破産の登記等が残っているため,これらを抹消してもらう必要があります。以下,登記の種類ごとに抹消の仕方をまとめます。
 

・破産の登記

売却によって破産者の財産ではなくなりましたので,破産管財人が登記完了後の登記簿謄本を添付して裁判所に破産の登記を抹消してほしい旨の申立てを行います。その後,裁判所書記官が登記所に嘱託して破産の登記を抹消します。通常,1週間から2週間程度で完了します。
 

・抵当権や根抵当権などの担保権

通常の抵当権抹消登記と同様に,抵当権解除証書や登記済証などを添付して売買に基づく移転登記と同時に抵当権等の担保権抹消登記を申請することが多いです。特に破産物件だからといって手続が変わるものではなく,強いて言えば,登記権利者が所有者ではなく破産管財人になる程度です。

もっとも,任意売却は,抵当権の抹消を強制するものではないので,抵当権者が抵当権抹消登記に協力しないということも考えられます。その場合は,破産管財人が「担保権消滅許可の申立て」を行い,裁判所が認めれば,抵当権者の承諾が無くても抹消することが可能です(破産法186条)。この方法によると,抵当権抹消登記は裁判所書記官の嘱託によってなされます。
 

・仮差押,差押(強制執行)などの登記

破産ではない場合の任意売却と同様に,仮差押債権者または差押債権者が裁判所に取下書を提出し,裁判所書記官からの嘱託によって抹消されます。
 

しかし,上記の抵当権者等と同様に,任意の取下げには応じない債権者もいます。この場合,破産管財人が執行裁判所(仮差押命令や差押命令を発令した裁判所)に所有者の破産手続が開始した旨を上申することで,裁判所書記官から抹消登記の嘱託がなされます。というのは,破産手続が開始することで,基本的には仮差押等は効力を失うためです(破産法42条2項)。
 

先日当事務所で手続をさせていただいた件も,仮差押債権者が任意の取下げには応じないとのことでしたので破産管財人である弁護士さんに裁判所に上申書を提出していただき裁判所書記官からの嘱託によって抹消されました。
 

なお,抵当権などの担保権は「別除権」として,破産手続とは関係なく回収することができますので,差押の登記を裁判所に抹消してもらうことはできず,抵当権者と取下げのための交渉を行う必要があります。
 
 

このように,破産物件であることによって通常の手続と異なるところがありますが,「お金を払ったのに自分の物にならなかった!」というようなトラブルが起こることはまず考えられませんので,安心して破産物件をご購入いただき,ぜひ登記は当事務所へよろしくお願いいたします(笑)

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12月 28 2017

年末年始の業務について

本日(12/28)の18時をもって本年の業務は終了となります。今年1年ありがとうございました。
 

当事務所の年末年始は下記のような予定となっており,当該期間中にいただいたお問い合わせにつきましては,1/4に回答させていただきます。

 
 

平成29年12月28日18時まで 通常業務

 
 

平成29年12月28日18時から平成30年1月4日午前9時まで お休み

 
 

平成30年1月4日午前9時から 通常業務

 
 

それでは皆様,良いお年をお迎えください<(_ _)>

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12月 25 2017

「贈る」の意味と受遺者の相続人に対する遺贈

不動産をお持ちの方がご自身の死後にどなたかに対して不動産を渡したい場合,遺言書にその旨を書いておくことで相続人や遺言執行者によって実行されます。 

法律的にはいくつか方法があり,相続人に対して渡す場合は「遺産分割方法の指定(相続)」,相続人及び相続人以外の方に対しては「遺贈」や「死因贈与」が考えられます。このうち,死因贈与はあまり見かけることはなく,相続または遺贈が多いように思います。 

 
 

遺言書の文言

 

さて,この相続と遺贈ですが,過去に書いた記事のとおり,登記手続に際してかなり異なります。基本的には相続の方が費用も安く,関与する人数も少なくなりますので,遺言書の作成に関与させていただく場合ももできる限り相続で進められるよう進めてまいります。しかしながら,専門家が関与していない場合,どちらで解釈すべきか分からない文言があります。
 

例えば,

「やる」,「あげる」,「与える」,「譲る」,「譲渡する」,「譲与する」,「渡す」,「贈る」,「分ける」,「分配する」,「~の所有とする」,「~の名義にする」,「~の権利とする」,「~のものとする」,「~が取得する」,「任せる」
 

などは,遺贈する趣旨なのか,遺産分割方法の指定の趣旨なのかその文言のみでは判断がつきにくく,このような文言で書かれている場合,登記実務では「遺言書の全文から遺言者の真意を総合的に判断する」とされております。

なお,あくまで一般論となりますが,「やる」,「あげる」,「譲渡する」,「贈る」は遺贈と解釈されやすく,「分ける」,「分配する」,「の名義にする」,「が取得する」は遺産分割方法の指定と解釈されやすいように思います。
 

今回当事務所で手続をさせていただいた件では「贈る」とされており,法務局と協議をした結果,「遺贈」となりました。 
 

財産をもらう方の順序

 

遺産分割方法の指定や遺贈をする場合,順序というか財産をもらう方が亡くなったときの対処を書くことがあります。
 

例えば,遺言者(父)には長男A次男Bがおり,長男Aには妻Cと子Dがいたとします。

この場合に,遺言者が「名古屋市の土地については長男Aが相続する。ただし,遺言者より長男Aが先に死亡している場合は次男Bが相続する。」という遺言を書いたとします。この場合,遺言者が亡くなったときに長男Aが生きていれば長男Aが土地を相続し,長男Aが亡くなっている場合は次男Bが土地を相続することとなります。
 

また,「名古屋市の土地については長男Aが相続する。ただし,遺言者より長男Aが先に死亡している場合は長男Aの子Dが相続する。」というように,遺言書を書いた時には相続人ではない孫に相続させることも可能です(長男Aが遺言者より先に死亡した場合,孫であるDは遺言者の代襲相続人となります。)。

では,「名古屋市の土地については長男Aが相続する。ただし,遺言者より長男Aが先に死亡している場合,長男Aの相続人が取得する。」となっていた場合はどうなるでしょうか。

遺言者より長男Aが先に死亡した場合,子Dは代襲相続人となりますが,Aの妻Cは相続人とはなりません。この場合,「遺言者の相続人となりうる人に土地を渡す趣旨だから,この場合は子Dだけが土地を取得する。」という解釈もできそうですし,「あくまで長男Aの相続人に土地を渡す趣旨であるからAの妻Cも土地を取得する。」という解釈もできそうです。
 

今回当事務所で手続をさせていただいた件に関して法務局と協議したところ,法務局の判断としてはCも取得するということになりました。もし,子Dだけであれば登記の際の登録免許税は評価額の4/1000になるのに対し,妻Dに関しては評価額の20/1000となりますし,遺贈となると権利証や印鑑証明書が必要となりますので必要書類も多くなります。
 

ということで,遺言書の文言一つで登記費用が何倍にもなってしまうことがありますし,もしかしたらご自身の思いとは異なる解釈をされてしまって想定外の方に財産が渡ってしまう可能性がありますので,遺言書を作成される際は弁護士や司法書士などの専門家にご相談いただいた方が良いかと思います。

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11月 29 2017

相続財産管理人の選任

先日,相続放棄に関連して,相続財産管理人選任の手続(書類作成)を行いましたので,こちらについてまとめたいと思います。 

 
 

相続財産管理人とは

 

ある方が亡くなると,その方の財産はその方の相続人が相続します。 

しかし,相続は不動産や預貯金のようなプラスの財産のみならず,借金などマイナスの財産も相続することとなるため,場合によっては相続すると損をする場合もあります。このような場合には,相続放棄の申述民法938条)を家庭裁判所にすることで,財産関係に関しては相続人ではなかったこととなり,同順位の他の相続人または次順位の相続人が相続するかどうかを考えることとなります(親族関係がなくなるわけではありません。)。
 

例えば,父親Aさんが亡くなり,相続人が子どもBさんとCさんの2名だった場合,Bさんが相続放棄をすれば残るCさんがAさんのすべての財産を相続することとなりますし,Cさんも相続放棄をすれば次順位の相続人であるAさんの両親等の直系尊属の方が相続人となります(民法889条)。そして,すでに直系尊属の方が亡くなっている場合や両親等も相続放棄をした場合は次順位の兄弟姉妹が相続人となります。
 

では,兄弟姉妹も全員が相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか。また,そもそもAさんが天涯孤独な方で,当初から相続人が存在しない場合はどうなるのでしょうか。このような場合,法律上はAさんの財産は法人となり(民法951条),相続財産管理人が管理等を行うこととなっています(民法952条)。とはいえ,自動的に相続財産管理人が選任されるわけではなく,利害関係人等が家庭裁判所に選任の申立てをして初めて選任されることとなりますので,相続人がいないけど相続財産管理人もいないという状況は普通に存在することとなります。
 

では,相続人はいないし相続財産管理人もいないという場合において,亡くなった方が所有していた建物が老朽化によって倒壊して第三者に損害を与えた場合は誰が損害を賠償するのでしょうか。
 

上記のとおり全員が相続放棄をした結果相続人がいないような状況となった場合であり,相続財産管理人が選任されていない場合だと,せっかく相続放棄をしたにも関わらず当該(元)相続人は責任を負わされることがあります。というのは,相続放棄をした場合でも次順位の相続人または相続財産管理人が選任されて管理が開始されるまでの間は,相続放棄をした(元)相続人に被相続人の財産を管理する義務があるからです(民法940条)。
 

したがって,単に負債が多くて特に財産もないというような場合であれば相続放棄をすることで解決できますが,管理が必要な財産がある場合は相続放棄だけでは解決せず,財産の管理義務を免れるために相続財産管理人の選任まで併せて行う必要があります。 
 

相続財産管理人の選任に関する費用

 

相続財産管理人の選任申立てに際して,一番のキモは予納金です。
予納金とは,文字どおり「予め」裁判所に「納める」「お金」のことであり,相続財産を管理するための費用だったり,相続財産管理人の報酬に充てられるお金です。

多くの裁判所において,相続財産管理人として選任されるのは弁護士さんであり,裁判所によっては司法書士が選任されることがあります。いずれにしても,法律の専門家が選任されますので,その専門家の報酬が必要になってきます。もし,亡くなった方が預貯金などをお持ちであればそこから相続財産管理人の報酬を払えば良いため,申立てのときにはそれほど多額の予納金は求められません。しかし,まったく財産が無い方の場合は遺産から相続財産管理人の報酬が捻出できませんので,その負担は申立人がすることになります。予納金の額は事案によって変わりますが,数十万円から場合によっては100万円程度になることもあります。
 

とすると,まったく財産はないが古い建物など管理が必要なものが残されている場合は,大変心苦しいのですが相続放棄をしたにもかかわらず,多額の費用をご負担いただくこととなってしまいます。
 

その他の費用としては,申立書に貼付する収入印紙が800円,予納郵券が数千円,官報公告費用も数千円程度(恐らく3775円)ですので,合計しても1万円程度であり,申立ての際に必要な戸籍謄本等の取得費用を含めても2万円前後かと思います。
 

なお,相続財産管理人選任申立てに関して,弁護士や司法書士(書類作成)にご依頼される場合は,当該専門家の報酬が別途かかります。これは各事務所によって異なりますが,弁護士さんだと20万円~40万円程度,司法書士だと10万円~30万円程度ではないかと思います。
 

今回申立書を作成したケースでは,それほど財産の調査が必要ではなかったため当事務所の報酬は10万円とさせていただきましたが,その数倍の予納金がかかっております・・・。

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11月 22 2017

地面師真っ盛り

先日,地面師の話を書きましたが,その後もたくさんの地面師事件が報道されています。
 

→ アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口
 

→ 弁護士まで騙されたのか——不動産詐欺事件の最高裁判断で問われる役割
 
 


 

地面師事件のキモの部分は,売主の本人確認であり,そのための書類としては免許証や権利証,印鑑証明書をどうやって地面師側が用意するかとなります。
このうち印鑑証明書については,方法は書きませんが比較的容易に手に入ると思われます(犯罪です)。しかも偽造ではなく本物を入手することが可能ですので,当然ながら何も事情を知らない司法書士が見抜くことは不可能です。もし,偽造したものであれば,コピーすることで見抜ける場合があります。
 

あとは免許証と権利証ということになりますが,免許証は精巧に偽造する組織があるそうですので,何らかの誤りがあれば別ですが,これもまた見抜くことはかなり厳しいかと思います。
なお,誤りを見抜く方法として,比較的有名な以下の方法で発覚する場合があります。
 

(1)最初の2桁は,最初の免許取得地
最初の2桁は初めて免許を取得した都道府県(北海道はさらに細かい)となっています。すべての都道府県の番号を覚えるのは大変ですが大まかな地方としては,10番台が北海道,20番台が東北,30番が東京,40番台が東京以外の関東甲信越,50番台が中部,60番台が関西,70番台が中国,80番台が四国,90番台が九州沖縄となっています。
このうち,30番台は東京の30番のみですので,31とか32とかであれば一発で偽造と判明します。また,2桁目が6以上の大きい数字は新潟(46),山梨(47),長野(48),静岡(49),鹿児島(96),沖縄(97)しかありませんので,40番台または90番台以外の大きい数字の時点で偽造と判明します。
もちろん,最初の免許取得地を聞いて,番号が異なれば偽造を疑う一つの要素となります。
 

(2)次の2桁は初めて免許を取得した西暦の下2桁
免許証番号の下に原付や自動車などの取得年月日が書いてありますが,そことのズレで偽造が判明する場合があります。
例えば,私が初めて免許を取得したのは平成8年(1996年)であるため,3桁目と4桁目は「96」になっています。
 

(3)最後の数字は発行回数
紛失等により再発行した回数が記載されます。多くても2くらいだと思いますので,7とか8だと疑った方が良いと思います。
 

残る権利証についてですが,権利証と言っても,従前の権利証と平成17年から始まった登記識別情報通知の2種類があり,そのどちらかによって対応が変わります。

まず,先に登記識別情報通知について説明すると,これは紙そのものが重要なのではなく,その紙に記載されているパスワードが重要となります。そして,登記申請をする前にそのパスワードがちゃんと発行されているのかどうか(失効確認),また,パスワードが分かれば登記申請前にそのパスワードが有効かどうかを確認することができます(有効確認)。登記申請の全件において有効確認をすることは無いと思いますが,地面師がかかわるような大きな金額の取引であれば,事前に有効確認をすることで未然に防ぐことができます。
もっとも,当該登記識別情報が盗まれたものだとすると,パスワードも正しいものですので司法書士が見抜くことは不可能です。
 

最後に,従前の権利証の場合,紙そのものが重要ではあり,特に偽造防止措置がとられているわけではありませんので,カラーコピーをすることは可能です。しかしながら,経年劣化による紙の質感の変化などで気付くことはあるかと思いますので,他の書類よりは比較的見抜きやすいと思います。
 
 

上記の弁護士さんが騙された事件は,権利証を偽造するのではなく,弁護士さんに本人確認情報を作成してもらい,登記申請をしています。

そもそも,本人確認情報とは,登記申請を代理人として申請する司法書士または弁護士が,売主さん本人であることを確認して「本人確認情報」という書類を作成すると,それが権利証の代わりになるというものです。正確には違いますが,一時的に権利証を再発行するようなものです。したがって,司法書士や弁護士が地面師側と組むと容易に権利証を作り出すことができることになります。実際に,地面師側についた司法書士が逮捕されている事件もあります(もちろん,犯罪です。)。
 

上記の弁護士さんの事件は,弁護士さんが地面師側だったのではなく地面師側に騙されたものですが,正直なところ,司法書士であればもっと深く調査をしたと思います。例えば,本人確認を行う場所を事務所ではなくこちらから売主さんの自宅にお伺いして室内に飾ってあるものなどからも情報を収集します。以前私が売主さんのご自宅にお伺いしたときは,賞状が飾ってあったのでその賞状の取得の経緯を聞いたり,置いてあるDVDを見てその話しの内容を伺ったりもしました。
 

もちろん,これにより100%防げるものでもありませんが,その可能性を少しでも減らすべく調査を行わなければなりません。
 

と,いろいろ書いておりますが,幸いにして私は地面師事件に巻き込まれたことが無いので偉そうなことを書いているにすぎず,実際に巻き込まれた時に本当に見抜けるかどうかは分かりません。ただ,そうなったときに見抜ける可能性を高めるよう,日々様々な情報を収集するしかありませんね。

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