愛知・岐阜・三重にお住まいの方で不動産売買登記・相続登記のご相談ならはなみずき司法書士事務所

愛知・岐阜・三重にお住まいの方限定 不動産売買登記・相続登記ドットコム オンライン申請で賢く登記

お気軽にお問い合わせください。電話番号0561-61-1514。ファックス番号0561-61-1535
メールフォームによるお問い合わせはこちら
トップページ » はなみずき通信
>>ブログトップへ

9月 22 2023

不動産の交換について

個人の方が所有されている不動産の名義変更を行う場合、多くの場合が売買または相続というケースであり、たまに贈与ということがあります。

また、法人の場合だと、合併や会社分割といった組織再編によって名義変更を行う場合もあります。
 

今回、上記にはいずれも当てはまらない「交換」にて名義変更を行いましたので、税金の特例なども踏まえてまとめておきたいと思います。 
 

1 交換とは

 

売買とは、物をもらう対価として金銭を支払うことであり、この対価として支払うものが金銭ではない場合はすべて交換となります。

今回は不動産の名義変更の話であるため当然ながら一方は不動産である必要がありますが、もう片方は必ずしも不動産である必要は無く、株式等の有価証券だったり、目に見えない権利などでも構いません。もちろん、不動産同士を交換しても構いません。いずれにしても、金銭以外の対価であればすべて交換ということになります。 
 

2 交換差金

 

交換の対象となっている物同士が完全に等価であれば問題ありませんが、通常は完全に価値が一致しているという事は少ないと思います。
 

例えばAさんが所有している甲土地が1000万円、Bさんが所有している乙土地が1200万円でこの甲土地と乙土地を交換する場合、完全な等価では無いためAさんは甲土地を譲渡することに加えて現金200万円も合わせてBさんに支払うことがあります。この200万円が交換差金と呼ばれるもので、交換を成立させるための調整となるお金になります。 
 

3 登記手続

 

基本的には通常の売買の登記手続と変わりはなく、不動産の所有者の方は権利書(登記識別情報通知)や印鑑証明書等が必要になります。
 

なお、不動産同士の交換の場合、当事者双方が不動産の所有者であるため双方が権利書や印鑑証明書等をご準備いただく必要があります。
 

また、土地の名義変更に関しては、売買の場合は登録免許税の税率が15/1000という軽減措置があるものの、交換の場合は軽減措置の適用が無いため20/1000と少し高めの税率になっております(租税特別措置法第72条第1項第1号)。さらに、売買であれば1件の登記で良いところ、不動産同士の交換の場合は少なくとも2件以上の登記が必要となりますので、必然的に売買と比べると登記費用が高くなります。 
 

4 譲渡所得税の軽減措置

 

交換の場合は、譲渡所得税について交換が無かったものとする「固定資産の交換の特例」という制度があります。こちらの適用があると譲渡所得税がかかりません

なお、私は税理士ではなく司法書士であるため、詳細については税理士さんにお尋ねいただきますようお願いいたします。
 

今回は不動産の交換を前提としているため不動産に限定してまとめておりますが、実際には不動産に限らず固定資産全般について適用があります。 
 

1 交換により譲渡する資産及び取得する資産が、いずれも不動産(土地または建物)であること。

ただし、不動産業者などが販売するために所有している土地などの資産は固定資産ではなく棚卸資産であるため特例の対象にはなりません。

 

2 交換により譲渡する資産及び取得する不動産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
ただし、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備および構築物は建物の種類に含まれます。

 

3 交換により譲渡する不動産は、双方が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
この交換特例を受けるためだけに第三者から不動産を取得して交換の対象にした場合は、この特例は受けられないということになります。

 

4 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
例えば、田として利用していた土地を交換により譲渡する場合は、交換により取得した土地も田として使用する必要があります。

 

5 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20パーセント以内であること。
上記の例でAさんが所有している甲土地が1000万円、Bさんが所有している乙土地が1200万円である場合、甲土地と乙土地の差額は200万円であるのの対し、高い方の土地である乙土地の価格の20パーセントは240万円であるため、このケースであれば大丈夫ということになります。
ただし、交換差金として200万円の現金を支払っている場合は、この部分についての譲渡所得税はかかります。

 

6 確定申告をすること
特例を受けるわけなので、その旨の申告が必要となります。

 
 

以上、なかなかお目にかかることが少ない交換のお話しでした。

コメントは受け付けていません。

9月 19 2023

相続登記義務化の事務の取り扱いについて

過去に記事にさせていただいたとおり、令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。

→ 相続登記の義務化
 

実際に義務化された場合に具体的な事務を取り扱うのは法務局になりますので、法務局の事務の取扱いを確認しておくことは大変有意義だと思われます。

先週、法務省から法務局に対する事務取扱の通達がありましたので、この点についてまとめたいと思います。

→ 令和5年9月12日民二第927号(PDF)
 

 
 

1 基本的な点

 

相続登記義務化の基本となる点についてのまとめとなります。

(1)とある不動産の所有者について相続が発生し、自身が相続人であり、かつ、当該不動産を相続により取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある。
 

(2)相続登記の申請ができない場合であっても、自身が相続人であることを申告することでも良い。
 

(3)相続人が遺言により取得することになった場合も同様である。
 

(4)相続人による遺産分割協議が成立した場合は、その成立した日から3年以内に相続登記を申請する義務がある。
 

(5)代位や嘱託によってされた場合には適用しない。
 

(6)義務に違反した場合は10万円以下の過料という罰金のようなものを課される可能性がある。
 

(7)令和6年4月1日以前に生じた相続にも適用があり、すでに(1)や(4)の条件を満たす場合は令和9年3月31日までに相続登記を行う義務がある。 
 

2 過料の手続

 

上記(6)に記載のとおり、義務に違反した場合には過料が課される可能性があります。

通達によれば、次のような流れです。
 
 

(1)法務局の職員が義務違反を見つける。

・遺言書(または遺産分割協議書)を添付してなされた相続登記を受け付けたところ、法務局の職員が遺言書(または遺産分割協議書)に、まだ申請していない不動産が記載されていることを見つけた

ということは、この通達だけで判断すると、逐一法務局が調べるわけではなく遺言書や遺産分割協議書によってたまたま見つけたときにだけ催告が行くことになると思われます。

 

(2)相当期間内に相続登記をするよう相続人に通知を出す。

・「相当期間」が具体的にどれほどの期間になるのかは不明ですが、数日ということは考えにくいので、数か月程度になるのではないかと思います。

 

(3)正当な事由が無いのに相当期間内に相続登記がされない場合は、法務局から裁判所に対して過料の処分をするよう通知を出す。

・「正当な事由」の具体例 → 相続人が多過ぎてすぐには申請できない、遺言の有効性や相続財産の範囲について争われている重病等で申請できない、DV等で避難していてすぐには申請できない、経済的に困窮していて費用が用意できないなど

 

(4)裁判所から過料を納めるよう書類が届く

基本的には過料の通知が届いたら納めていただくことになると思いますが、過料処分の理由がおかしいなどの場合は、通知が届いてから1週間以内であれば裁判所に対して異議申し立てを行うことも可能です。
 
 
 

まだ改正法が施行されるまでに半年程度ありますので、今後も情報が出次第まとめていきたいと思います。

コメントは受け付けていません。

9月 17 2023

はなみずき通信(ブログ)目次

売買に関すること

 

平成25年4月1日よりオンライン減税が無くなります
個人間売買について
農地の売買
住宅ローン減税(2012年版)
家賃と住宅ローンの金額「のみ」を比較してはいけません!
東日本大震災被災地域の不動産を取得した場合の例外措置
住宅ローンの固定金利と変動金利
裁判所の競売で購入する方法
土地区画整理組合が販売する保留地
不動産売買の決済当日に起こるトラブル
権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
住宅ローンの変動金利増加
住宅ローンは人生を賭けたギャンブル(になることもある
権利証に関する誤解を解消してみよう!
印鑑について
地面師と司法書士
司法書士を選びたい
土地を購入し,建物を新築する場合の登記費用について
登記識別情報通知書のシールは剥がすべきか
4月1日から変わるものと変わらないもの(不動産登記的に)
「本人確認情報」と「権利証の再発行」は同じではありません。
登録免許税の減税について
平成29年4月1日からの各種減税措置
地面師暗躍
破産物件の購入
住所のつながりを証明する書類
仮登記について
ハンコについてあれこれ
農地について
現住所を登記したくない場合(極めて例外的)
売買契約書について 
成年後見手続が必要な場合
成年後見選任によるメリット・デメリット
不動産の交換について
 

贈与に関すること

 

不動産の贈与について
登記の持分と贈与税
相続が得か贈与が得か
権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
財産分与の登記について
相続時精算課税制度を使っての贈与
農地の時効取得
認知症の方が所有されている不動産の売買・贈与
贈与と遺贈
不動産屋さんを通さない不動産の売買について
地面師真っ盛り
成年後見手続が必要な場合
土地の値段(一物四価)
 

相続に関すること

 

遺産分割協議に参加できない方がいるとき①
遺産分割協議に参加できない方がいるとき②
第3順位の相続は波乱となるので,その前に手を打つべき
「相続放棄」はプラスマイナスどっちも放棄です!
お葬式の費用は誰が負担するのか
知らない兄弟がいた!
相続が得か贈与が得か
嫡出子と非嫡出子の相続分の差は違憲(ただし,高裁決定)
「私の相続分は1/2ですよねぇ。」
相続登記の費用についての補足①
相続登記の費用の補足②
遺言を書いた人よりも先に相続予定者が死んでしまった場合
改正原戸籍
登録免許税や相続税等の改正
相続放棄ができなくなってしまう「法定単純承認」
非嫡出子相続分違憲決定など
亡くなる前に相続放棄
財産管理協会「認定司法書士」登録
自分の子どもではないにも関わらず認知した場合(最高裁判決)
遺産分割で問題となる事項(特別受益編)
遺産分割で問題となる事項(法律とは異なる取り扱いの銀行預金編)
遺産分割で問題となる事項(使途不明金編)
遺産分割で問題となる事項(国債編)
生物学的な親と法律上の親
遺産分割協議は早めの方がお得??
葬儀についての法律関係
一部の相続人からの預金の払い戻し
認知症の方がいらっしゃる場合の相続(遺産分割)
失くなった・間違った戸籍
花押は押印ではありません
未来につなぐ相続登記
「法定相続証明制度」の導入
遺贈の放棄
預金も遺産分割の対象に(最高裁判決)
法定相続情報証明制度
相続登記の登録免許税が無料になる(かも)
相続財産管理人の選任
夫婦間における自宅の贈与の特例は得か
相続登記の免税について
配偶者居住権の新設
相続登記の義務化(?)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(遺産分割に関するもの)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(遺言,遺留分に関するもの)
令和元年7月1日からの相続法改正の施行について(その他)
相続登記の義務化続報
長期間相続登記等がされていないことの通知
令和2年4月1日から施行される改正民法(相続分野)
成年後見手続が必要な場合
親族が行う必要のある死後の手続と相続手続
相続人の一部の方が行方不明の場合
相続登記の義務化の施行日が決まりました
亡くなった方の遺産や負債の調査
遺言執行者の選任はしておいた方が良いか(登記的に)
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ①
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ②
令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③
相続土地国庫帰属制度が始まります
住所・氏名変更登記の義務化の日が決まりました
相続登記で被相続人の住所が繋がらない
相続登記義務化の事務の取り扱いについて
 

遺言に関すること

 

遺言でできること
自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言のススメ
私の財産のすべてを息子に相続させたい
遺贈に関する注意点
一部の相続人からの預金の払い戻し
農地の時効取得
遺言書の撤回
自筆証書遺言の方式の緩和
法務局における自筆証書遺言書保管制度について 
「贈る」の意味と受遺者の相続人に対する遺贈
予備的遺言のススメ 
遺言書の日付が誤っている場合に無効になるか(最高裁判決) 
成年後見手続が必要な場合
遺言ができる能力(認知症等)
障害がある方の遺言作成について(認知症等)
 
 

抵当権抹消に関すること

 

住所変更登記が必要な場合と要らない場合
遙か昔の抵当権が残っている場合
休眠担保の特定が使えない(根)抵当権抹消
申請期限や有効期限のある書類
50年以上前の登記の抹消
登記完了証と登記事項証明書
消滅時効を原因とした抵当権抹消登記手続訴訟
休眠抵当権に関するページの追加について
されど住所変更登記
「敷地権」とは?
抵当権抹消登記における不動産の個数について 
 

その他

 

会社が知らないうちに無くなっているかもしれません。
大槌町及び南三陸町に行ってまいりました。
司法書士業務賠償責任保険
「借り換え」の費用について
熊本地震により権利書等を紛失された方へ
ご相談について(新型コロナウイルス感染症対策等)
登記情報の利用時間拡大

コメントは受け付けていません。

9月 13 2023

相続登記で被相続人の住所が繋がらない

相続登記のご依頼をいただくことが多いのですが、相続登記で大事なこととして、「戸籍謄本に記載されている被相続人と登記簿に記載されている所有者が同一人物である」ということを証明する必要があります。

ただ、この同一人物であることを証明するのに楽な場合と大変な場合がありますので、状況に応じてまとめたいと思います。

1 登記簿上の住所と本籍地が同一

 
例えば、土地を所有されていたAさんがお亡くなりになり、Aさんの相続人名義に登記をしたいとします。

この場合、登記簿を確認すると「名古屋市〇〇区〇〇町1番地 A」と登記されていました。このAさんが亡くなったことを証明するためにはAさんの戸籍謄本が必要になりますが、戸籍謄本の本籍地が「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」となっており、Aさんが死亡した旨の記載があれば、これだけで同一人物であるという事を証明できます
 
本来、登記簿上の住所と戸籍謄本に記載されている本籍地には関係が無いのですが、昔は本籍地と住所地が同一であったため追加の書類は不要になっているのだと思います。

 
 

2 登記簿上の住所と本籍地が異なるが住所は同一

 

登記簿を確認すると「名古屋市〇〇区〇〇町1番地 A」と登記されていました。このAさんが亡くなったことを証明するためにはAさんの戸籍謄本が必要になりますが、戸籍謄本の本籍地が「長久手市〇〇町1番地」となっていた場合、これだけでは登記簿上のAさんと戸籍謄本のAさんが同一人物であるかどうかは分かりません。
この場合、Aさんの住民票除票(本籍地の記載有り)を取得します。もし、ここに最後の住所として、「名古屋市〇〇区〇〇町1番地 A」と記載されていればこれで大丈夫です。

 

つまり、
(1)戸籍謄本を見れば、本籍地が「長久手市〇〇町1番地」であるAさんが死亡したことが分かる。
(2)除票を見れば、本籍地が「長久手市〇〇町1番地」であるAさんの住所は「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」であることが分かる。
(3)登記簿を見れば、住所が「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」のAさんが所有していることが分かる。
ということで、登記簿上のAさんと戸籍謄本に記載されているAさんが除票を介して同一人物であるということを証明できます。
 
 

3 登記簿上の住所と本籍地が異なるうえ住所も異なる

 

上記と同様に、登記簿を確認すると「名古屋市〇〇区〇〇町1番地 A」と登記されていました。このAさんが亡くなったことを証明するためにはAさんの戸籍謄本が必要になりますが、戸籍謄本の本籍地が「長久手市〇〇町1番地」となっていた場合、これだけでは登記簿上のAさんと戸籍謄本のAさんが同一人物であるかどうかは分かりません。

Aさんの住民票除票(本籍地の記載有り)を取得して確認したところ、最後の住所は「長久手市〇〇町1番地」となっている場合、除票でも繋がらないことになります。
この場合は、まずは除票に記載のある「前住所」を確認します。もしそこに「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」と書かれていれば、「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」のAさんが転居して「長久手市〇〇町1番地」に変わったという事が分かりますので、これで大丈夫です。
 

つまり、
(1)戸籍謄本を見れば、本籍地が「長久手市〇〇町1番地」であるAさんが死亡したことが分かる。
(2)除票を見れば、本籍地が「長久手市〇〇町1番地」であるAさんの以前の住所が「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」であったことが分かる。
(3)登記簿を見れば、住所が「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」のAさんが所有していることが分かる。
ということで、登記簿上のAさんと戸籍謄本に記載されているAさんが除票を介して同一人物であるということを証明できます。
 

なお、Aさんが「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」→「日進市〇〇町1番地」→「長久手市〇〇町1番地」と転居を繰り返している場合、長久手市の除票の前住所を見ても日進市の住所しか出てきません。この場合は、さらに日進市役所で除票を取得すれば、その前住所として「名古屋市〇〇区〇〇町1番地」が出てきますので、すべての除票があれば証明できます
さらに、住所の変遷は住民票除票ではなく戸籍の附票でも調べることもできますので、除票で繋がらない場合は、戸籍の附票の調査をしてみるということもあります。

 
 

4 登記簿上の住所と本籍地が異なるし住所も異なるうえに証明書も出ない

 
登記簿上の住所と本籍地が異なる場合は上記のとおり住民票除票や戸籍の附票が必要になります。この除票等について、法改正により現在は保存期間が150年とされておりますが、数年前まで除票等の保存期間が5年と定められておりましたので、死亡や転居から5年程度経過してしまうと除票や戸籍の附票が取得できないという事があります。
 

例えば、名古屋市の場合だと平成26年3月31日以前に死亡や転居などにより除票になった方については保存期間の経過により除票や戸籍の附票を取得することができません
→ 除票
→ 戸籍の附票
 

ただし、役所によっては必ずしも5年経過によって廃棄しているとは限らないため、まずは役所に確認をされた方が良いと思います。
さて、除票等で同一人物であることを証明できないとなると別の方法で同一人物であることを証明しなければなりません。
この場合、当該不動産の権利書があれば除票等が無くても同一人物であると判断してもらえます。というのは、権利書というものは不動産の所有者以外の人が所持していることは通常は考えられないため、登記申請に権利書を添付してきたという事は、その不動産の所有者の相続人が関与していることが強く推認できるからです。
もっとも、不動産を取得されたのが数十年前であるという場合、権利書を紛失しているという事もかなりあります。
この場合は、下記の書類のうちの1通または複数を提出することで相続登記が認められますが、どの書類が必要になるかは各法務局によって判断が異なりますので、必ず事前に確認をする必要があります。私の経験上は①と②をセットということが多いですが、それに加えて③~⑤から1点ということもあります。

①相続人全員が「登記簿上の所有者が戸籍謄本に記載されている被相続人と同一人物であること」を記載した上申書+相続人全員の印鑑証明書
②登記簿上の所有者に関する不在籍証明書・不在住証明書
③固定資産税の納税証明書数年分(年数はケースバイケースですが3年分ということが多いです。)
④被相続人が名宛人となった固定資産税の納税通知書
⑤除票等が廃棄されていて発行できない旨の証明書


 

ということで、登記簿上の所有者の住所と戸籍謄本の本籍地が統一である場合、または登記簿上の所有者の住所と除票の住所が同一である場合は比較的スムーズですが、いずれも異なる場合はその調査に大変苦労する場合があります。
以前まとめたとおり、令和8年から転居された場合は、所有する不動産についての住所変更登記申請が義務になっておりますので、転居をされた際には必ず住所変更登記もされますようお願いいたします。

コメントは受け付けていません。

8月 07 2023

夏季休業について

 

当事務所では、下記の期間について夏季休業とさせていただきます。休業期間にお問い合わせいただきましたメール等につきましては、休業後に順次回答させていただきます。

 

8月7日18時まで  通常業務

 

8月8日から8月15日まで 夏季休業

 

8月16日から  通常業務

 

以上、よろしくお願いいたします。

コメントは受け付けていません。

7月 28 2023

住所・氏名変更登記の義務化の日が決まりました

相続登記の義務化が来年に迫ってきておりますが、住所及び氏名が変更した場合の変更登記の義務化についても法律の施行日が決まりました。

まず、法律の施行日は、令和8年(2026年)4月1日となります。

その他、注意点は次のとおりです。 

 

1 住所の変更のみならず、氏名の変更(婚姻・離婚・養子縁組など)の場合も登記が必要です。
 

2 変更してから2年以内に変更登記の申請を行う必要があります。
 

3 施行日である令和8年4月1日よりも前に住所や氏名を変更している場合も適用があります。その場合は、施行日の2年後である令和10年3月31日までに申請が必要です。
 

4 自宅のみならず、所有しているすべての不動産について変更登記の申請が必要です。
 

5 変更から2年以内に変更登記を申請しなかった場合は、5万円以下の過料という罰金のようなものを課される可能性があります。
 

 

前住所が登記されており、新しい住所に転居した場合は住民票があれば大丈夫ですので、申請自体はそんなに難しくないと思います。

しかし、数十年レベルで住所変更登記をしていない場合は、住民票では住所が繋がらない可能性がありますので、そのような場合はお近くの司法書士にご相談いただいた方が良いかと思います。

コメントは受け付けていません。

4月 27 2023

相続土地国庫帰属制度が始まります

先日簡単にまとめました相続土地国庫帰属制度が本日から始まります。 

相続土地国庫帰属制度について 


 
 

先日、簡単にまとめておりますが、大事なこととしては次のとおりです。
 

1 相続または遺贈によって取得した土地であること

2 無償で引き取ってくれるわけではなく一定の費用がかかること

3 土地の状況によっては引き取ってもらえないこと
 

となっております。
 

まず、1については、あくまで相続をきっかけとして取得した土地で無ければなりませんので、売買等で取得した土地は対象になりません。例えば、数十年前に流行った別荘地などをお持ちの場合、通常は売買で取得されていると思いますので対象になりません。もちろん、そのような土地を相続にて取得されているのであればこちらの制度は利用可能です。また、建物は含まれておりません(建物を解体しておく必要があります。)
 

2については、10年分の管理費用として最低でも20万円以上の費用がかかるうえ、申請時点で審査手数料として14000円の費用がかかります。さらに、手続を司法書士等にご依頼いただく場合はその報酬もかかります。
 

3については、定期的に伐採する必要がある竹林、熊などの鳥獣が生息する場所については引き取ってもらえません。
 
 

したがって、触れ込みとしては「不要な土地を国が引き取ってくれる」となっておりますが、実際にはかなりハードルが高いものと思われますので、手続をお考えいただく場合には要件を慎重にご検討いただく必要があると思います。

とはいえ、これまでは国が土地を引き取ってくれるという制度はありませんでしたので大きな一歩かと思います。

コメントは受け付けていません。

1月 25 2023

障害がある方の遺言作成について

先日、聴覚に障害がある方の公正証書遺言作成について関与をさせていただきましたので、今回は聴覚や視覚などの身体障害や精神障害がある方の遺言書の作成についてまとめてみたいと思います。

なお、一般的によく利用される自筆証書遺言と公正証書遺言についてであり、秘密証書遺言や危急時遺言などの例外的な方法については記載しておりません。
 


 
 

1 精神障害について

 

遺言書を作成する場合、その時点で遺言能力(意思能力)が必要となります(民法963条)。

遺言能力とは、端的に言えば「遺言の内容について理解できること」となり、形式的に15歳未満の方は遺言能力は無いとされており(民法961条)、精神障害や認知症等によってご理解いただくことが難しい場合も遺言能力は無いとされています。

もっとも、一律に障害があるからダメだというものではなく、あくまでご本人の状況次第となりますので、精神障害や認知症等の方であっても遺言の内容が理解できるようであれば遺言書の作成は可能です。
 

なお、成年被後見人の方については、遺言の内容を理解できる状況にあり、かつ、医師2名以上の立会いという条件があるものの、成年被後見人ということをもって遺言書の作成が否定されるものではありません民法973条)。また、被保佐人や被補助人の方については、作成できるのはもちろんのこと医師の立会い等も不要です(作成時において遺言能力があることは必要です。)。

ちなみに、私は数名の方の成年後見人に選任されておりますが、これまでに遺言書の作成をしたことはありません。 
 

2 身体障害の場合

 

身体障害がある方の場合においても、上記の遺言能力があることが当然の前提となります。
 

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言は、文字通り「自筆」で遺言書を書く必要がありますので少なくとも文字を書ける必要がありますが、それさえクリアできれば障害は問題となりません

視覚障害があっても自筆で書ければ大丈夫ですし、聴覚障害については一切問題にならないと思います。また、利き手が障害等によって文字を書くのが困難であったとしても、読める字であれば利き手ではない方で書いていただいて大丈夫です。
 

一方、手が震える等の理由により、いわゆる添え手で作成された場合は「自筆」とは言えない可能性があるため、無効になる恐れがあります。

この点についての裁判例として、最判昭62年10月8日があります。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)
 

上記判決においては、添え手においての自筆証書遺言が有効になるための要件として、3点を挙げています。

遺言者が証書作成時に自書能力を有していること。
他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること。
添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できること。
つまり、文章の始めや終わりなどの部分に第三者が本人の手を移動させてあげることは問題ありませんが、文章を書く際に第三者の意思が介入した形跡が少しでもある場合は無効になってしまうことになります。
上記最高裁の事例においては、第三者が第三者が支えを借りただけではなく積極的に書いたものであるとして無効と判断しています。

 

「本件遺言書には、書き直した字、歪んだ字等が一部にみられるが、一部には草書風の達筆な字もみられ、便箋四枚に概ね整つた字で本文が二二行にわたつて整然と書かれており、前記のようなD(遺言者)の筆記能力を考慮すると、E(第三者)がD(遺言者)の手の震えを止めるため背後からD(遺言者)の手の甲を上から握つて支えをしただけでは、到底本件遺言書のような字を書くことはできず、D(遺言者)も手を動かしたにせよ、E(第三者)がD(遺言者)の声を聞きつつこれに従つて積極的に手を誘導し、E(第三者)の整然と字を書こうとする意思に基づき本件遺言書が作成されたものであり、本件遺言書は前記②の要件を欠き無効である」

 

そして、遺言無効の訴訟が起こされた場合、有効だと主張する側が有効であることを立証しなければなりませんので、かなり大変だと思われます。
したがいまして、添え手での遺言書作成はかなりリスクが高いため、自筆証書遺言ではなく次の公正証書遺言を推奨いたします。

 
 

(2)公正証書遺言

公正証書遺言の場合、遺言者が自分の手で書くのではなく、公証人に対してどのような遺言を作成したいのかを伝えられれば良いということになりますので、基本的には遺言者が口頭で公証人に遺言の内容を伝え、公証人が遺言者に対して読み聞かせ、または閲覧させたうえで遺言者が承認したあとに、遺言者と証人が署名押印することで公正証書遺言は完成いたします(民法969条)。
私どもが関与させていただく際には、事前に遺言者の方からご希望を伺い、公証人と事前に打ち合わせをしたうえで、案文を作成してもらったうえで、遺言者の方に確認していただいてから公証役場を訪ねることになりますので、実際に公証役場において遺言者が口頭で公証人に全部を伝えるという事は少なく、確認のために大枠だけ伝えることが多いかと思います。

 

さて、上記のとおり遺言者が口頭で伝えるとなっておりますので、聴覚障害等により口頭で遺言の内容を伝えることができない場合があります。また、最後に署名押印が必要になっているので、身体傷害がある場合に署名ができない場合があります。

 

この点、前者の口頭の部分については、法改正により手話等にて通訳人に伝えてもらうこともできますし、遺言の内容を自書するという事も可能になっており、公証人の読み聞かせについても通訳を介することができるようになりました(民法969条の2)し、内容を閲覧してもらう方法でも大丈夫です。なお、推定相続人は立ち会えないので、推定相続人以外の方が通訳人になる必要があります。

 
 

また、後者の署名押印については、身体障害等の理由により署名ができない場合は、その旨を公証人が記載すれば遺言者の署名押印は不要となっております(民法969条4号ただし書)。

 
 

最初に記載したとおり、先日関与させていただいた公正証書遺言については聴覚障害の方であったため、遺言の趣旨を自書していただいて無事終えることができました。
一般的な公正証書遺言の場合は、遺言書の始まりは、「遺言の趣旨の口述を筆記し」となっています。

 
 

 

しかし、今回の場合は「遺言者は口がきけないため、その自書した遺言の趣旨を筆記し」となっています。

 
 

 

また、上記とは直接関係ありませんが、病院等で入院されていらっしゃる場合においても、公証人に病院等まで来ていただいて公正証書遺言を作成することは可能です。以前、足が不自由な方の遺言を作成するに当たり、公証人に遺言者のご自宅まできていただいたことがあります。
ただし、出張に関する日当がかかりますので、通常の公証人の手数料の1.5倍程度の費用がかかってしまいます。

 

このように、仮に障害をお持ちの方であっても遺言書を作成することは可能ですので、作成をお考えの方はお問い合わせいただければと思います。

コメントは受け付けていません。

1月 13 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③

令和5年4月1日から不動産登記法の改正により、遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記が残っている場合に抹消する方法が簡略化され、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で申請できるようになりました。また、抹消ではありませんが、遺贈の登記に関して単独で申請できる場合が定められました。今回は、この点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記とは

 

不動産の登記簿をご覧いただくと、所有者が誰であるかということが登記されています。所有者が変わっても自動的に所有者が変更されるわけではないため、当事者が登記申請を行い、その時点での所有者を登記して第三者に対抗できるようになります。この登記をしないまま長い月日が経過して実際の所有者が分からないことが大きな問題になっており、それに対応したのが前回の相続土地国庫帰属制度の記事となります。
 

さて、登記簿を見ると、所有者が誰であるかという事以外にもいろんなことが登記されている場合があります。例えば、住宅ローンを組まれて不動産を購入されている場合は、「抵当権」という権利が設定されており、金融機関の担保になっていることが分かります。また、それほど多くはありませんが、第三者に賃貸等をしている場合は「賃借権」の登記や「地上権」の登記がされている場合があります。

こちらも当事者が登記申請をしなければ登記されませんし、逆に権利が無くなった場合(抵当権であれば住宅ローンを完済した場合、賃借権であれば賃貸借契約が終了した場合、など)も自動的には登記は抹消されないため、当事者が抹消登記の申請をする必要があります。

また、登記制度は遥か昔から存在するため、明治時代のお金の貸し借りでも抵当権が設定されることがありました。その後100年以上経過し、本当は完済しているけど登記申請を忘れているのか、完済しないまま時が過ぎてしまっただけのかは分かりませんが、明治時代の抵当権が現代まで抹消されずに残っていることがあります。これが、「遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記」となります。
 

そもそも、登記というのは当事者が協力して手続をしなければならず、当事者が亡くなっている場合は基本的に相続人全員が関与する必要があります。

しかし、100年以上も前の登記だと、恐らく登記の名義人はすでに亡くなっていると思われますし、その相続人を探すことも大変です。加えて、相続人が見つかったとしてもその相続人が協力してくれるかどうかも分かりません。

普通に使っている分には遥か昔の登記が残っていたとしても特に支障は無いかもしれませんが、第三者に売却等をする場合には大きな問題になります(遥か昔の登記が残っている場合、一般的には抹消しなければ売却ができません。)。

ということで、遥か昔の登記が残っているとかなり厄介なことになります。 
 

2 抵当権等の担保権については制度がある

 

当事務所でもページを設けているとおり、抵当権等については比較的簡単に抹消できる場合がありますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 遥か昔に登記された抵当権抹消登記(休眠抵当権) 
 

3 抵当権等の担保権以外の登記

 

すでに存続期間が満了している地上権等の登記買戻期間が満了している買戻登記については、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で抹消できることになりました。
 

以下、各ケースに関して記載いたします。
 

(1)存続期間満了済みの地上権等

必ずしも存続期間が定められている訳ではありませんので、すべての地上権等が該当するわけではありませんが、存続期間が登記されており、かつ、その期間が満了している場合は比較的簡略的に抹消することが可能となりました。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①存続期間が登記されており、かつ、すでに経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。存続期間が登記されていないようであれば残念ですがこちらの制度は使えません
 

②地上権者の調査を行う。

→具体的には地上権者の住民票等の書類上の調査を行う必要がありますが、現地調査までは必要ありません。もし、ここで地上権者等の所在が判明するようであれば簡略的な手続ではなく、通常どおり当事者双方が協力して登記申請を行うことになりますし、万が一協力してくれない場合は訴訟を行う必要があります。
 

③裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を得る。

→難しそうな感じがしますが、裁判所に対して「地上権を抹消しようとしているので、異議がある人は連絡してくださいね。」という趣旨の官報公告を行うことになります。そして、一定期間が経過すると除権決定が出て抹消することができるようになります。
 

④登記申請

→上記の除権決定を添えて、権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 
 

(2)買戻期間満了済みの買戻権

買戻権というのは、いったん売却をするけど、一定期間内であれば買い戻すことができる権利です。最近はあまり見ませんが、昭和や平成初期の売買の際の住宅供給公社等の公社が関係している場合に登記されているのをよく見ます。

さて、この買戻権は特に期間を決めなければ売買契約の日から5年間とされており、当事者の合意によっても最大で10年間とされています。とすると、売買契約の日から10年以上経過している場合は必ず買戻権は消滅していることになりますので極めて簡単に抹消することができます。

※上記の地上権等については存続期間の上限はありませんので、存続期間が定められていたとしてもその後に延長されている場合があります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①買戻権が登記されており、かつ、売買の日から10年が経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。
 

②登記申請

→権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 

③買戻権者への通知

→まったく買戻権者が関与しないところで抹消されてしまうため、買戻権者宛に法務局から抹消した旨の通知がなされます。
 

上記の地上権等の抹消と異なり、権利者の調査や公示催告等の手続も一切不要ですので、極めて簡単に抹消することができます。 
 

4 解散した法人が抵当権等の担保権者の場合の特例

 

上記2のとおり、抵当権等については比較的簡略的に抹消できる特例がありますが、さらに解散した法人が抵当権者等の場合の抹消登記の特例ができました。

解散した会社であっても、清算人という方が存在するはずですので、通常はその清算人に協力してもらって抹消登記を申請することになります。しかし、清算人が行方不明だと協力を得ようがありませんし、清算人が亡くなっているような場合だと裁判所に清算人を選任してもらうなどかなり大変な手続が必要でしたが、今回の改正により比較的に簡略的に抹消が可能であり、さらに従前の特例と異なり供託しなくても良いというメリットもあります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①抵当権等の担保権が登記されており、かつ弁済期から30年以上が経過していることを確認する。

→不動産の登記事項証明書で確認をします。
 

②抵当権者等が解散されてから30年以上経過していることを確認する。

→法人の登記事項証明書で確認をします。
 

③清算人の調査

→法人の登記事項証明書を見れば清算人が誰であるか住所氏名が登記されていますので、清算人の調査を行います。ただし、住民票等の調査のみで大丈夫であり、現地調査までは不要です。もし、清算人が見つかれば、通常どおり共同で申請を行うことになり、万が一協力してもらえない場合は訴訟等他の方法を検討することになります。
 

④登記申請

→清算人が所在不明であることが確認できたら、供託をすることなく、権利者が単独で登記申請を行うことになります。 
 

5 遺贈を原因とした所有権移転登記等

 

簡略的な抹消とは無関係なお話しですが、単独申請という点で共通するのでこちらでまとめます。

遺贈とは、遺言によって財産をあげるというものであり、相続人に対して行うこともできますし、まったくの第三者である個人や法人に対しても行うことができます。当事務所でも日本赤十字社やお世話になった病院へ遺贈するという内容の遺言書の作成に関与させていただいたことがあります。
 

さて、相続登記の場合は取得する相続人が単独で申請できるのに対し、遺贈の登記については相続人全員または遺言執行者が関与して登記をしなければならないとされております。遺言執行者が協力しないということは考えにくいですが、遺言執行者が選任されていない場合は相続人全員が関与する必要があり、その方の協力が得られないと登記ができないことになります。

さらに、相続人であるAが不動産を取得するにしても、遺言に「不動産をAに相続させる(特定財産承継遺言)」という場合はAが単独で登記申請できるのに、「不動産をAに遺贈する」となっている場合はAが単独申請できないことは不合理だと考えられます。

そこで、遺贈の登記全部という訳ではありませんが、遺贈によって財産をもらう人が相続人である場合に限り、当該相続人(受遺者)が単独で申請できることになりました。

一方で、遺言によって自身が取得取得することを認識した場合は3年以内に登記申請を行う義務が生じ、3年以内に登記をしない場合は「10万円以下の過料」という罰金のようなものを課される可能性があります。
 
 

上記のうち、買戻権の抹消は司法書士としてはかなり楽にはなるかと思いますが、一般的にはあまり関係ないと思われます。また、地上権等の抹消や解散法人の抵当権等の抹消については、あまりお目にかかることは無いものの、お目にかかった時には大変な手間がかかりましたので、該当する方にはかなり大きな改正になると思います。

最後の遺贈については、相続人に遺贈するというケースがそもそも多くなく(遺贈するくらいなら特定財産承継遺言を書くことが多い)、仮に遺贈にするようであれば遺言執行者として受遺者を選任していることが多いため、現実的にはあまり該当するケースは多くないかと思います。

コメントは受け付けていません。

1月 12 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ②

令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まります。今回は、この点についてまとめたいと思います。
なお、新しく「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」という法律ができるため民法改正ではありません。

 
 

1 相続土地国庫帰属制度が出来た理由

 

不動産という財産の多くは高額な財産であり、自宅の不動産を相続することも一般的によくあることです。

すでに社会人として独立していて都会に家を構えており、実家には戻らない予定なので土地が不要という方も多く、そういった場合は第三者に売却することになると思われます。

しかし、そもそも宅地ではなく、山林や農地など第三者には売却ができず、かといって使うこともないため放置されてしまうという土地が日本の至る所にたくさんあり、登記についても相続登記がされないまま亡くなかった方名義のままになっていることがあります。もし、日本中がこのような土地だらけになってしまうと、国や市区町村等が道路を作ったり、公共施設を作る場合などに、土地の所有者から譲ってもらったり、使用することへの承諾を求めようにも誰から土地を譲ってもらえば良いのか分からないため進められなくなってしまいます

そこで、もう今後使用しないような土地については、国に対して引き取ってもらうことができる制度ができました

ただし、単に引き取ってもらえれば良いというものではなく、そのためにはなかなか高いハードルがあります…. 
 

2 制度を使うための条件

 

この制度を満たすためには、次の条件を満たす必要があります。

(1)土地であること

建物は最終的には解体してしまえば無くなるのですが土地はそういう訳にはいきませんので、この制度を使って国に引き取ってもらう不動産は土地でなければなりません。
 

(2)相続・遺贈によって取得したこと

相続や遺贈(受遺者が元の土地所有者の相続人である場合に限る)という、今の所有者の意思で取得していない場合に限ります。したがって、土地を買ったものの使わなくなったので国に引き取ってもらうというようなことはできません。
 

(3)通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

訳アリの土地は国は引き取ってくれません。
 

(4)一定の負担金を国に納めること

国に土地を渡してお金がもらえるどころか逆にお金を負担して引き取ってもらうことになります。
 

以下、それぞれの内容について詳しく見ていきます。 
 

3 土地であること

 

上記のとおり引き取ってもらえるのは土地であり、建物は含まれません土地上に建物が存在している場合は、事前に解体しておく必要があります。 
 

4 相続・遺贈によって取得したこと

 

元の所有者が亡くなったことによって取得した人に限られます。共有の場合は、共有者全員で申請をしなければなりません。

また、共有の場合は、一部の方が相続等で取得していれば問題ありません。例えば、甲さんからAさんとBさんが各1/2ずつを売買で取得しました。その後にAさんが亡くなり、相続人であるCさんがAさんの持分を取得し、Bさん1/2、Cさん1/2となった場合、Bさんは売買で取得していますが、相続で取得したCさんと共同して申請することによりこの制度を利用することができます。 
 

5 通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

下記のような場合は認められないことになります。

①建物が存在している土地

②地上権や抵当権など第三者の権利が設定されている土地

③道路など、権利を持っていない第三者も施用することが想定されている土地(通路、墓地、境内地、水道用地など)

④土壌汚染など特定有害物質によって汚染されている土地

⑤隣地との境界が不明な土地

⑥権利関係に争いのある土地
 

また、下記のような土地は認められない場合があります(全部ではありません。)。

⑦崖がある土地(勾配が30度以上で高さ5メートル以上)

⑧土地の管理ができないような樹木、工作物、その他有体物が地上または地下に存在する土地

⑨土砂崩れの恐れ、鳥獣被害などが起こる恐れのある土地

⑩その他管理が大変な土地 
 

6 一定の負担金を国に納めること

 

土地の種類によって異なりますが、概ね下記の表のとおりとなり、少なくとも20万円はかかることになります。
↓画像をクリックしていただくと大きく表示されます。

 
 
 

ということで、国に土地を引き取ってもらうとは言っても、その条件を満たす土地で無ければなりませんし、前提として建物の解体が必要であれば建物の解体費が、境界が不明であれば測量の費用など、負担金以外にも多くの費用がかかることになります。
ただでさえ価値が無い土地だから放置されているのに、数十万円もかけて土地を引き取ってもらう方がたくさんいらっしゃるのかは分かりませんが、少なくとも国が引き取ってくれるという制度自体が存在しませんでしたので、そういった意味では大きな一歩かと思います。

コメントは受け付けていません。

Next »

  • なぜオンライン申請だと費用を抑えられるのか 理由はこちら
  • 所有権移転登記
    • 売買による所有権移転登記
    • 相続による所有権移転登記
    • 当事務所にご依頼いただく場合
    • 当事務所の費用一覧表
    • 私の場合はいくらなの?
  • 抵当権の抹消登記
    • 住宅ローン完済時の抵当権の抹消登記
    • 遙か昔に登記された抵当権抹消登記
    • 裁判手続きによる抵当権抹消登記
    • 抵当権抹消登記の費用
    • 抵当権抹消登記の流れと簡単WEB見積り
  • よくあるご質問
  • はなみずき通信

はなみずき司法書士事務所

お気軽にお問い合わせください。電話番号0561-61-1514。ファックス番号0561-61-1535

お問い合わせはこちら

事務所案内はこちら

〒480-1116
愛知県長久手市杁ヶ池106番地2
1階
TEL: 0561-61-1514
FAX: 0561-61-1535

対応地域

名古屋市、岐阜県、愛知県、三重県

Copyright © Hanamizuki. All Rights Reserved.