8月 25 2015
一部の相続人からの預金の払い戻し
以前,こんな記事を書きました。
→遺産分割で問題となる事項(法律とは異なる取り扱いの銀行預金編)
ざっくり言うと,法的には預金は預金者の方が亡くなった瞬間に,法定相続分に応じて確定的に相続人に帰属しているのに,金融機関は相続人の一部の人からの預金の払い戻しを受け付けない,というものです。
実際,このような取り扱いを継続している金融機関も多く存在すると思いますが,先日私が問い合わせた金融機関については相続人の一部からの払い戻しを受け付けてくれました。
以下,簡単ではありますが,記載いたします。
・ゆうちょ銀行
全国各地に貯金事務センターがあり,そこの相続専門の部署が管轄内の相続手続きをすべて扱っているようです。したがって,書類の提出はお近くの郵便局でも大丈夫ですが,すべて貯金事務センターに回されますので,少し時間がかかります。貯金センターの方の話によれば大体2~3か月だそうです。
当事務所でお受けした事件については,住所や名前に誤記があったので修正のための時間が別途かかりましたが,それでも3か月程度でした。
必要書類は,一般的な相続と同じく,相続人の関係性を示す戸籍謄本等及び相続人の印鑑証明書となります。
・三菱東京UFJ銀行
こちらも同じように相続センターがありますが,実際に書類を提出するのはお近くの支店で大丈夫です。必要書類についても同様です。ただし,三菱東京UFJ銀行は,相続人の一部からの払い戻し請求に関しては,請求していない他の相続人に対して異議がないかを確かめる手紙を送付します。したがって,もし他の相続人に内緒で手続を進めようとしても知られることになりますし,万が一異議が出れば払い戻しには応じてもらえないようです。
手続を開始してから2か月程度で払い戻しを受けられ,実際に当事務所でお受けした事件は2か月もかからないくらいでした(異議も出ませんでした。)。
【定額郵便貯金に関する重要事項】
普通預金,ゆうちょであれば普通貯金は当然に分割されるため問題ないのですが,郵便局の定額貯金(定額郵便貯金)がある場合は注意が必要です。
定額貯金とは,一定期間払い戻しを請求しないことを条件に貯金するものであり,10年経過すると普通貯金に振り替えられます。
この定額貯金について,平成22年に最高裁は分割債権には該当しないと判示しました。
その理由としては,郵便貯金法において定額貯金は,分割払戻をしない条件で預け入れることになっており,仮に相続によって分割されるとしても分割払戻をしない条件になっている以上,結局は相続人全員で払い戻し請求をしなければならないのだから,郵便貯金法において定額貯金は分割できない性質になっているとしています。
したがって,定額貯金については,原則として相続人に当然に分割されず,遺産分割協議を経た上で,もしくは相続人全員で払い戻し手続きを行うこととなります。
ただ,「基本的に」と書いた通り,例外があります。
(1)満期到来
まず,上記のとおり定額貯金は預け入れから10年経つと満期となって普通貯金に振り替えられます。とすると,その貯金はもう定額貯金ではなく普通貯金ですので,当然に分割されることになります。当事務所がご依頼いただいたケースも,定額貯金がたくさんありましたが,すべて10年の満期を過ぎていましたので,問題なく相続人の一部からの請求が可能となりました。
(2)ゆうちょ銀行になった後の定額貯金
平成19年10月1日にゆうちょ銀行が誕生しましたが,その際に上記最高裁の判決理由となった郵便貯金法が廃止されました。これにより,定額貯金の分割払いを禁じる根拠が無くなったのでゆうちょ銀行になってからの定額貯金については当然に分割されることになります。
なお,郵便貯金法は無くなりましたが,それ以前に預けられた定額貯金についてはそのままこの法律の規定は及びますので,例えば,平成18年10月1日に預け入れられた定額貯金については,現時点では10年が経過していないため,遺産分割をしていただくか相続人全員で払い戻しをしていただく必要があります。
このような相続財産の承継業務も行っておりますので,お困りの際はお問い合わせいただければと思います。
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