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8月 04 2017

地面師暗躍

先日,司法書士業界が震撼した,全国的にも報道される大きな事件がありました。 


 

「積水ハウス,63億円詐欺被害・・・地面師か」
 

以下,読売新聞の記事( http://www.yomiuri.co.jp/national/20170802-OYT1T50136.html )を引用します。

大手住宅メーカー「積水ハウス」(本社・大阪市)が東京都内の土地取引を巡り、購入代金63億円を支払ったにもかかわらず、土地を取得できない事態になっていることが、同社などへの取材でわかった。同社から相談を受けた警視庁は詐欺事件として、捜査を始めた。関係者によると、所有者になりすまして不動産取引を持ちかける「地面師」の被害に遭った可能性が高いという。
 

以上引用終わり 

 

この事件について,様々な報道がされておりますが,取引には司法書士が関与していましたので,司法書士的な観点から書いてみようと思います。 
 

不動産取引に関する司法書士の関与

 

不動産の売買を行う場合,多くのケースでは不動産仲介業者が間に入って売買契約を締結し,その後金融機関などで代金の決済を行います。代金決済が終わったら,法務局にて現在は売主さん名義になっている不動産の所有者について買主さんに変更する登記を申請します。
 

このとき,司法書士が登記申請を代理して行いますが,その前の段階の代金決済にも関与し,その時に買主さんや売主さんご本人に間違いないか,物件は合っているかなどを確認して,関係書類にご署名ご捺印等をいただきます。通常,司法書士がすべての書類をチェックし,OKが出た時点で代金決済が行われますので,司法書士の確認というものはかなり重要であり,日本中で行われている不動産取引の大部分に司法書士が関与しています。 
 

名義変更に必要な書類

 

不動産の名義変更に必要な書類はいくつかありますが,その中でも重要なのは売主さんの書類であり,特に権利証と印鑑証明書は重要です。

そして,登記申請そのものに必要ありませんが,ご本人であることを確認しなければなりませんので,運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要となります。
 

以下,それぞれの書類について細かく書いていきます。
 

(1)権利証

「権利証」という名称は俗称であり,正式には「登記済証」または「登記識別情報通知」という書類になります。法務局によって移行時期は異なりますが,概ね平成17年から平成20年頃までに「登記済証」から「登記識別情報通知」に変わっております。

まず,登記済証という書類は,登記が完了したときに法務局から発行される書類であり,昭和の時代だと薄い和紙で作成されていることが多いと思います。権利証に有効期限等はありませんので,40年や50年前に作成された書類でも有効な書類となります。そのような時代に偽造防止技術は発達しておりませんので,悪い人が偽造しようとすると,比較的偽造しやすい書類かと思います。

一方,登記識別情報通知は,パスワードが記載された書類であり,書面そのものに効力があるわけではありません。また,事前にパスワードを教えてもらえれば,そのパスワードが有効か無効かを調べることもできますので,こちらの偽造という行為そのものにはあまり意味がなく,悪い人も登記識別情報通知を偽造するということを恐らく少ないと思われます。
 

(2)印鑑証明書

役所から発行してもらう書類であり,偽造防止が施されていますので,偽造することは簡単ではないと思いますが,悪い人は精巧に偽造するようです。

ただ,私の印象としては,印鑑証明書は偽造されるというよりも,本人に成りすまして勝手に印鑑証明書を取得するということの方が多いと思います。この場合は,当然本物の印鑑証明書です。
 

(3)本人確認書類

ご本人であることを確認するために,運転免許証やパスポートなどを拝見しますが,やはりこちらも偽造されたものが出回っているようです。完璧に偽造されてしまうと,弁護士や司法書士でも見抜くことは困難だと思います。 
 

司法書士の責任

 
 

司法書士は登記手続の専門家であるため,万が一,事故が起こってしまうと賠償責任を負うことがあります。

賠償責任を負うのはあくまで過失や故意がある場合に限られますので,司法書士がどう頑張っても見抜けないような場合には賠償責任を負わないこともあります。とはいえ,専門家である以上,まったくのゼロということは少ないと思われます。
 

以下,司法書士に賠償責任を認めた事例をいくつか挙げてみます。
 
①運転免許証の有効期限がおかしい

現在,運転免許証の有効期限は「誕生日の1ヶ月後まで」となっていますが,詐欺師が持っていた免許証は異なる日付でした。
 

②どこが偽造されているのか特定されていないがしっかり確認しなかった

免許証が偽造されていたものの,免許証ケースに入ったまま司法書士が確認し,OKと判断した。この裁判例は,どのような偽造がされていたのか,おかしな点があったのかはわからないのですが,司法書士の確認が甘かったということをもって賠償責任を負うこととなりました。

③免許証と印鑑証明書が偽造されていたが,住所などの部分に擦れやインクのシミがあり,しかも司法書士会が注意喚起をしていた

一見してすぐにわかるようなものではないのですが,注意深く見れば見抜ける内容であり,司法書士会が注意喚起をしていたので,司法書士としては見抜くべき事案ということでした。
 

①と③は見抜けなかった司法書士に落ち度があるのは分かるのですが,②についてはケースから出していたとしても見抜けたかどうかは不明であり,司法書士的にはなかなか厳しい判断です。 
 

司法書士は賠償できるのか

 

仮に裁判等で司法書士に賠償を命じる判決が出たとしても,その司法書士にお金が無ければ賠償することができません。特に不動産は高価な財産ですので,賠償できないケースもあると思います。
 

このような事態に備えて,司法書士は保険に入っており,通常はその保険から賠償されますので,万が一事故が起こったとしても被害者の方は保険会社から回収することができることになっています。もっとも,車の保険のように任意保険であるため,もしかしたら保険に加入していない司法書士もいるかもしれませんので,ご依頼される際には一応ご確認いただいた方が良いかもしれません。
 

なお,当事務所はしっかり保険に加入しております。もちろん,保険に頼らなければならないような事態に陥らないことがベストなのは言うまでもありません。 
 

今回の事件について

 

さて,今回の事件ですが,ネット上の記事によれば本人確認のためのパスポート及び印鑑証明書が偽造だったようです。

まだ捜査中の段階であるため,事件とは無関係な私ではどのような偽造をされていたのか知る由もありませんが,法務局の職員が見抜いたということは,司法書士でも見抜くべき事案だったと推測されます。そして,司法書士的に恐ろしいのは,賠償責任です。上記のとおり,司法書士は保険に入っていますが,最大で10億円程度です。この事件において司法書士の責任がどの程度認められるのかわかりませんが,保険で賄いきれない可能性も十分あると思います。 
 

いくつかの疑問点

 

ここからは,単に思うことを書き綴るだけですので,結論がないのですが,いくつかある疑問点について書いてみます。  
  
・仮登記は通っている

登記簿を見ると,I社の仮登記がされており,その後I社の仮登記の移転請求権仮登記が上記のS社名義でされています。仮登記は文字どおり「仮」の登記であるため,書類も少なくて済むのですが,それでも所有者の印鑑証明書が必要になります。この時は法務局は印鑑証明書の偽造を見抜けなかったのでしょうか。それとも,このときは本物の印鑑証明書があったのでしょうか。
 

・相続登記の早さ

この事件の後,真の所有者が亡くなっており,その後に相続人名義の登記がされているのですが,相続登記が亡くなってからわずか10日で申請されています。何か事情が無い限り,こんなに早く申請することはありません。もしかしたら,新たな被害者が生まれることを防ぐために,すぐに相続人名義に変えたのでしょうか。ちなみに,評価額が分からないので正確ではありませんが,この登記を申請する際に法務局に納める登録免許税だけでも1000万円以上の現金が必要です。
 

・中途半端な送金額

売買価格70億円に対して,63億円を送金しているようです。上記のとおり,代金決済とは全額支払うことを意味しますので,なぜ売買代金の9割だけしか払っていないのかよくわかりません。もしかしたら,買主側として登記ができるか怪しく思っており,全額の支払いを登記完了後とする合意をしていたのかもしれませんが,それだったら9割ではなく5割でも良かったはずです。いずれにしても売買代金の9割だけ払って登記申請をするというのは通常無い話です。
 

・犯人はどうやって現金を手にするのか

数十億円もの現金を引き出すことは現実的にかなり難しいですし,どこかの銀行に送金しているのであればすぐに凍結されてしまいます。記事によれば5億円は現金だったそうですので,その分は得ることができますが,残り数十億円はどうやって手に入れるんでしょうね。
 
 

幸いにして,私は地面師に遭遇したことはありませんが,今後も気を付けて業務を進めていきたいと思います。

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