6月 22 2011
土地区画整理組合が販売する保留地
マイホームを建てるための土地を購入する方法として,不動産業者を通して購入する他に,土地区画整理組合が販売している保留地を購入したり,裁判所や役所が売却する競売・公売で購入するということが考えられます。
このうち,保留地については競売等に比べれば安全な取引であるため,一般の方にもオススメの購入方法です。以下,保留地について記載し,競売等については後日記載します。
<保留地とはなんぞや?>
昔ながらの土地だと,道が「けもの道」のようになっていたり,土地自体も変な形だったりということがあり,現実的にはまったく使えない土地になってしまっていることがあります。これを土地区画整理事業として,整形して道を造ってキレイにすることで土地の価格を上げ,その分みんなから少しだけ土地をもらって(減歩して)土地区画整理組合が売却するのが保留地です。
これだけだと全然わかんないですね。具体的に記載します。
例えば,1区画の中に5人の所有者,5つの土地があり,それぞれ200㎡ずつ合計1000㎡の土地があったとします。
ただし,この土地は1区画としてはキレイな土地であるものの,個々の所有者毎の土地の形はぐにゃぐにゃの形になっており,道も全然整備されていないので200㎡の土地なのに500万円の価値しかなかったとします。
そこで,土地区画整理組合が,1000㎡の土地の中に道路を造り,土地も整形して正方形にして十分家を建てられるような形に整理したとします。しかしながら,土地区画整理事業を行うにもお金がかかるので,お金の代わりに皆さんが持っていた200㎡の土地から30㎡ずつもらうことにします。これを減歩といいます。また,道路の分も差し引かれるので1人当たり50㎡で合計250㎡だとします。
そうすると,この時点でもともと1000㎡だった土地が,元の所有者5人分の土地が1人あたり120㎡で合計600㎡,道路として使われる分として250㎡,そして,土地区画整理組合がもらう分として150㎡に分割されます。
ここでおそらく不思議に思われるのが,元の所有者は道路の分として50㎡,土地区画整理組合に持っていかれる分(減歩された分)として30㎡の合計80㎡を損しているのではないかという点です。
ところが,実は損はしていません。というのは,土地の形を整形にし,道路まで整備されているとなると,土地の値段が上がり,上記の200㎡で500万円だったものが120㎡で600万円とかに値上がりするからです(ただし,デフレの影響などもあり,すべての土地が極端に値上がりするわけではありません)。
そして,土地区画整理組合は,上記の150㎡の土地を一般の方に売却して現金を手に入れ,これを土地区画整理事業の費用に充当します。この土地区画整理組合が売却した土地が「保留地」ということです。
<保留地のメリット>
さて,この保留地ですが,一般の不動産業者を経由して購入するよりもメリットが多くあります。
①比較的安い
土地区画整理組合は,商売をすることがメイン事業ではないので,一般的な土地の相場に比べて安くなる傾向にあり,平均的には2割程度安いようです。
また,土地区画整理組合から購入しますので,不動産業者に仲介手数料を支払う必要もありません。
②住環境が良い
保留地を購入するということは土地区画整理がされた土地を購入するということですので道路が整備されており,また,回りの土地も同じ時期に購入されているので,新築ばかりの景色になります。当事務所の近くだと,長湫南部は家は新築だらけですし,近くにオシャレなカフェが何軒もできているうえ,小学校もできたばかりですので街全体が新鮮な感じがします。
③土地の購入時点では登記費用がかからない
保留地は寄せ集めの土地であるため,その時点では土地の登記簿がなく,土地区画整理事業が一段落するまで(換地まで)は登記簿が作成されませんので,購入に当たって登記にかかる登録免許税を納める必要がありません。また,登記が無い以上,司法書士に支払う報酬なども発生しません。なお,保留地の所有者は登記簿ではなく土地区画整理組合の台帳で管理されています。
④複雑な権利関係が存在しない
通常の売買だと,前所有者に問題があった場合に例え登記をしていたとしても権利が無くなる場合があります(例えば強迫など(民法96条3項))が,保留地は前所有者が土地区画整理組合ですので問題が起こることは通常ありえません。
<保留地のデメリット>
メリットがある以上,やはりデメリットもあります。
①抽選になることが多い
これは,メリット①②の裏返しでもあるわけですが,価格が安くて住環境が良いのであれば,当然人気になり,購入希望者がたくさん現れることがあります。そういった場合には,抽選になることがあり,場合によっては50倍,100倍ということもあるようです。なお,これを逆に言えば,通常の売買と異なり,お金を多く積んだ方が買えるというものではないので,考え方によっては抽選という方法はメリットなのかもしれません。
②住宅ローンを使えない場合がある
これは,メリット③の裏返しになるのですが,登記簿が無い以上,その土地を金融機関が担保とすることができません(抵当権設定登記が出来ない)。ですので,保留地に関しては住宅ローンではなく現金で購入しなければならない場合もあります。なお,土地区画整理組合によっては近隣の金融機関と組んで「保留地ローン」という商品が用意されていることもありますので,住宅ローンをお考えの方は土地区画整理組合にご相談いただければと思います。この場合,土地は担保に入れられませんが,組合の台帳に「権利移動停止願い」や「登記識別情報の代理受領」という申請をして,実質的に担保としているようです。
また,建物は完成すれば登記簿ができ,抵当権設定登記が可能ですので,建物に関する住宅ローンについては通常は問題になりません。
以上から,私は保留地は場所さえ気に入ってしまえば,絶対にデメリットよりメリットの方が大きいと思いますので,一般的な不動産屋さんだけではなく,土地の購入をお考えの地域の土地区画整理組合にお問い合わせいただくのも賢い買い方ではないかと思います。
コメントは受け付けていません。