7月 06 2011
裁判所の競売で購入する方法
以前,土地を購入する手段として土地区画整理組合の保留地を購入する方法を記載いたしました。
前回の記事にも書いたのですが,裁判所の競売で購入する方法もありますので,今回はそれを記載してみたいと思います。
そもそも,裁判所が行う競売というのは,債務者の財産を担保として取っていたにもかかわらず返済をしない場合や裁判所で判決が出たにもかかわらずそれに応じて支払わないときに,その人の持っている担保物やその他の財産を裁判所が強制的に売却して現金化し,そのお金を回収して満足を得るという制度です。
そして,一口に「財産」と言っても,テレビやパソコンといった動産や電話会員権といった債権もありますが,これらはあまり高額ではないため費用倒れになってしまう可能性が高いのに対し,不動産は一般的に価値が高いため,動産等と比べると不動産の競売はかなり多くの件数が行われております。
裁判所も多くの人が参加できるよう,全国の裁判所で競売になっている不動産を見るためのホームページまで作っています。
そんな不動産競売ですが,一般的には市場価格よりも2~5割程度安く買えるため,うまく買うことができればこんな得な買い物はありません。ただし,安く買えるということは当然裏があるということですので,まずはその裏というか競売のリスク・デメリットを記載します。
1・所有者・占有者がいることが多い
裁判所に出ている物件には,その所有者が住んでいることが多くあります。また,所有者自身ではなくても家族や賃借人が住んでいることもあります。
賃借人の場合は,落札しても追い出すことができない場合がありますが,所有者等については,簡単な手続を踏めば法的には追い出すことができます。しかし,実際に人が住んでいて家財道具等もたくさんあるわけですから,現実問題として追い出すのには多くの苦労と費用を要するケースがあります。
もちろん当初から誰も住んでいないような物件もありますが,そのような物件は人気がありますので,ほとんど市場価格と変わらないどころか,物件によっては市場価格よりも高い金額で落札されることもあります。そうすると,競売で購入するメリットが無くなってしまいます。
2・中を見ることができない
突然,当該物件を訪ねて所有者の許可のもと中を見ることができるかもしれませんが,競売で無理矢理家を取られてしまう人が中を見せてくれるとは思えませんので,一度も中を見ることなく物件を購入することになります(ただし,執行官が撮影した写真は見ることができます)。ですので,思いも寄らぬところに不具合があるなんていうリスクも存在します。
3・保証金が必要
入札する場合,裁判所が決めた基準価格の20%を保証金として先に支払わなければなりません。基準価格2000万円の不動産に入札しようと思った場合,400万円を予め裁判所に支払う必要があります。この400万円は落札できた場合には購入代金の一部に充当されますし,落札できなかった場合も全額還付されますが,万が一落札できたのに,その後の購入代金を支払わなかった場合は400万円は没収されてしまいます。ですので,落札してしっかり調査してみたらやっぱり欲しくなかったので,購入を止めたという場合はかなり損をしてしまいます。
4・マンションの場合は前所有者の滞納分も引き継ぐことになる
マンションに住んでいると管理費や修繕積立金などを毎月支払う必要がありますが,これは新所有者が前所有者の滞納分を引き継ぐことになっています(区分所有法8条)。
滞納額が大きい場合,裁判所が設定した基準価格もその滞納額を考慮して低い金額になっていますが,単に基準価格の安さだけにひかれて落札してしまうと,ビックリするほどの滞納管理費等の請求を受ける可能性があります(ただし,一定日までの滞納額は入札前にわかります。)。
以上のリスクと・デメリットを考慮した上で,それでも対処できる自信がある方にとっては,こんな良い買い物はありませんので,ぜひチャレンジしてみてください。
個人で購入する場合は,認印,住民票,保証金さえあれば,不動産業の免許など特別な資格は必要なく誰でも入札可能です。また,入札まではしなくても,BITで物件情報を見るだけでも得られるものはあると思いますので,一度ご覧いただければと思います。
ちなみに,私自身も入札をしたことがありますが,残念ながらこれまでに落札できたことはありません。
結局,「いくらで入札するか」が最大のポイントになるのですが,あまり低い金額だと落札できませんし,逆に高い金額で入札して落札できたとしても,市場価格と同じような価格で買ってしまっては競売で購入する意味はありません。また,リフォームなどの手入れが必要な物件がほとんどですが,そのような費用も見込んだ上で入札しなければならないのに,物件内部が見られないわけですから,この点の正確な費用の見積も難しいものになります。
逆に言えば,これが競売の醍醐味なんだろうと思いますが,実際に落札するために,もう少し経験と知識が必要だなぁ,と感じているところです。
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