9月 20 2012
農地の売買
当事務所で取り扱っている案件のほぼ全てが宅地や戸建住宅,マンションなど,人が居住するための不動産になります。
しかし,土地の場合は,駐車場として利用するためだったり,資材置場として利用するためだったり,野菜等を作るための畑として購入する場合など,人が住むためのもの以外の利用目的で購入される場合があります。
このうち,駐車場や資材置場であればあまり問題になることはありませんが,田んぼや畑などの農地を購入する場合,農地法の壁が出てきてしまいます。
農地法とは
→農地法
農地法という法律は,ざっくり申し上げると,国土の狭い日本において農地は限られた資源であるため,農地を農地以外のものにすることを規制し,また,農地を取得する場合もちゃんと農地を農地として利用してもらえるような人でないと取得できないように規制しています。
したがって,農地を宅地等に転用する場合は原則として農地法の許可が必要になりますし,農地を農地のまま購入する場合も農地法の許可が必要になります。もし,許可を得ないまま売買契約をしたとしても,その契約は効力が生じませんので,許可があるまではずっと売主さんの所有物ということになりますし,それどころか許可を受けないで勝手に譲渡などしてしまうと懲役等の刑罰に処される可能性もあります。
そして,農地かどうかの判断は登記簿の記載ではなく,現実的な今の状況によって判断されます。つまり,登記簿には「宅地」として登記されていたとしても,現実的には畑になっている場合,その土地は農地法の適用を受けることになります。
ですので,本来は宅地として購入したものの,家を建てる必要が無くなったのでご自身で耕作等を行い畑にしてしまったような場合には,農地法の適用を受けてしまい,以降は勝手に売却することができなくなってしまいます。
農地法の許可等
さて,上記の許可についてですが,その土地の場所が土地計画法上の市街化区域にあるのか市街化調整区域(以下,「調整区域」)にあるのかによって手続が変わります。
市街化区域とは,ざっくり言うと市街化,つまり人がたくさん住むような町並みになっているか,そのような町並みにする方向に進んでいる区域のことで,この辺りだと名古屋市内のほとんど(総面積の約93%)は市街化区域になります。
一方,調整区域は市街化区域とは逆で,市街化を抑制する地域であり,原則として家を建てることもできません。なので,比較的田舎の地域は調整区域が多いと思います。
まず,市街化区域の場合,市街化を推進する地域ですので,農地を宅地として転用するような場合にも許可ではなく,単に届出をすれば良いということになっています。したがって,手続としては比較的簡単です。一方,調整区域の場合は,そもそも調整区域は原則として家が建てられないような地域ですので,農地を宅地として転用する場合も届出ではなく,許可を得る必要があります。
次に,農地を農地として譲渡する場合は,市街化区域・調整区域に関係なく許可を得る必要があります。
この許可を得るのがかなり大変であり,農地を得る人が本気で農業をやる方でなければなりません。
具体的には,名古屋市の場合だと,「150日以上農業に従事しなければならない」とか「最低でも20アール(約600坪)の農地を経営しなければならない」などの条件があります。ですので,「これまで家庭菜園をやっていたけど,もう少し大きめの土地でやりたい」というような方は明らかに許可の条件を満たしませんので,農地を取得することはできないことになります。こういった場合には,農地ではなく宅地や雑種地を購入して,ご自身で耕作して農地にしていただく必要があります。もっとも,上記の通り耕作によっていったん農地になった場合,以降は農地法の適用を受けるため,再度宅地に戻したり,売却する場合には農地法の届出や許可が必要となってしまいます。
以上のとおり,いったん農地になってしまうとその後の手続がかなり大変です。また,上記の通り,農地かどうかの判断は登記簿の記載ではなく,現在の状況によって決まりますので,もしご自身の土地の現況の判断が微妙な場合には,一度固定資産税の通知書等の「現況」欄や「課税地目」欄をご覧いただければと思います。