9月 21 2012
不動産の贈与について
当事務所のサイト名は「不動産売買登記・相続登記ドットコム」ですが,売買や相続以外の登記も当然ながら行っております。
その中でも,贈与に関する登記のご依頼が多いため,贈与のメリットやデメリット,税金などについて記載いたします。
相続との比較
贈与の登記については,多くのケースが親族間での贈与となります。さらに,その中でも多いのが年長者から年少者への贈与です。例えば,親から子へ,祖父から孫へ,伯父から甥へなどです。この場合に比較するのが相続との関係になります。
<贈与のメリット>
1 紛争が未然に防げる
相続よりも優れている点としては,まずは相続人間の争いを未然に防ぐことにあります。
例えば,親が亡くなった場合,多くのケースではその子どもが相続することになりますが,兄弟間の仲がすこぶる悪く遺産分割協議がまったくまとまらないというケースが考えられます。また,今は仲が悪くなくても,親の面倒をよく看た長男とまったく看ていない次男との間に相続分の差はありませんので,お亡くなりになった後に揉めるというケースも考えられます。
こういった場合に生前贈与として,子どものうちの誰かに贈与しておけば亡くなった後に遺産分割協議をする必要がなくなりますので未然に争いを防ぐことができます(ただし,遺留分減殺請求の余地はあります。)。
2 相続人以外の者に財産を遺すことができる
相続に関しては,法律で定められた相続人しか相続をすることができません。ですので,本来の相続人がいるにも関わらず,その相続人をとばして祖父から孫へ相続ということはあり得ませんし,伯父や伯母から相続するということもあり得ません(本来の相続人がすでに亡くなっていて代襲相続することはあり得ます。)。
そのような方に財産を遺す方法として生前贈与が考えられます。
なお,遺言書に財産を遺贈する旨記載することもできますが,原則として相続人が協力してくれないと遺贈の登記申請をすることができませんので,もし協力してくれない場合は裁判をするか,遺言執行者を裁判所に選任してもらう必要が出てきてしまいます。
生前贈与であれば,贈与をする方ともらう方だけで登記申請ができ,第三者の関与は必要ありませんので,これも生前贈与のメリットになります。
<贈与のデメリット>
1 税金が高い
何はともあれ税金が高いです!!
まず,登記名義を変えるの際に登録免許税という税金がかかりますが,相続は不動産の評価額に対して0.4%であるのに対し,贈与は2%です。
仮に評価額が2000万円の不動産を相続もしくは贈与した場合,相続の際にかかる登録免許税は8万円ですが,贈与の場合は40万円もかかってしまいます。
贈与の場合は贈与税がかかります。もちろん,相続の場合に相続税がかかるケースもありますが,その差は歴然としています。
相続税に関しては,現行法上は基礎控除で最低でも6000万円3600万円(※平成27年1月1日以降)を控除することができますので,仮に2000万円の不動産であれば相続税は0円です。
一方,贈与税に関しては,基礎控除として110万円しか控除できませんので,仮に2000万円の不動産であれば差し引き1890万円について贈与税がかかってしまい,なんと720万円も贈与税を納める必要があります。
※ただし,推定相続人に贈与する場合,相続時精算課税の適用を受けることで2500万円まで控除できますので,上記の場合だと贈与税は0円になります。 →相続時精算課税とは
さらに,相続の場合は不動産取得税はかかりませんが,贈与の場合は不動産取得税がかかってしまいます。
不動産取得税は,原則として評価額の3%となりますので,仮に2000万円の不動産であれば60万円もかかってしまいます。ただし,不動産取得税は軽減措置がかなりあります(例えば,土地は半額で計算されます)ので,不動産取得税がかからないケースも多くあります。
2 意思能力が無いと贈与ができない
相続の場合は,財産をお持ちの方が亡くなった場合は,自動的に相続が開始しますが,贈与を行う場合は,贈与をする方の意思がハッキリしてなければなりません。贈与をされる方は比較的高齢の方が多いため,認知症等を患っている場合には贈与ができないことになります。
売買との比較
人がお亡くなりになった際に当然に開始する相続と異なり,売買も贈与も当事者の合意によって行われるものですので,相続と比べるとあまり差はありません。
<贈与のメリット>
1 不動産を取得する方が用意する金額が少なくて済む
仮に2000万円の不動産を購入する場合,当然ですが2000万円を用意する必要があります。一方,贈与の場合は贈与税がかかるものの間違いなく2000万円よりは少ない金額であるため,不動産を取得する際にかかる費用が少なくて済みます。また,上記のとおり,相続時精算課税の適用を申請すれば贈与税が0円になることもありますので,取得する方の費用負担がかなり少なくなります。
<贈与のデメリット>
1 税金が高い
売買と異なり贈与の場合は贈与税がかかりますので,税金だけの観点で見れば税金が高くなります。
また,登記をする際の登録免許税に関しては,贈与が土地・建物に関係なく2%であるのに対し,売買は土地であれば1.5%,建物については居住するか否かに応じて0.3%もしくは2%と,贈与よりは少なくなります。
不動産取得税に関しては,贈与も売買も同じです。
当事務所の費用
基本的に,手続自体は土地のみの売買と同じであるため,当事務所の受贈者(もらう側)の方に関する登記手数料は土地のみの売買と同じ5万円です。
なお,上記の表の ↑の部分 には,「土地の評価額の1.5%」となっておりますが,贈与の場合は,「土地も建物も評価額の2%」になります。
一方,贈与者(あげる側)の方に関する費用は必ずかかる費用とそうでない費用との2つに分かれます。
<必ずかかる費用>
①登記原因証明情報
10,000円(税別)
②事前調査費用
不動産の1つ当たり 332円
<該当する場合にかかる費用>
③(根)抵当権が設定されている場合
抵当権1つ当たり10,000円(税別)+登録免許税(不動産1つ当たり1000円)
④登記されている売主さんの住所やお名前が現在と異なる場合
9,000円(税別)+登録免許税(不動産1つ当たり1000円)+1000円
※上記③・④については,下記に詳細の記載がございます。
⑤権利証(登記識別情報)を紛失している場合
本人確認情報作成料 80,000円(税別)
→本人確認情報とは
⑥当事者の方が当事務所に来られない場合
1か所当たり30,000円(税別)+高速料金等の実費
贈与に際して当事者の方の意思確認をしなければならないことになっており,基本的には当事務所にお越しいただいて確認させていただいておりますが,入院されている等の理由で当方からお伺いする場合の費用となります。なお,上記⑤の本人確認情報作成料とは重複しませんので,権利書を紛失されている場合は当方からお伺いしても,こちらの費用はかかりません。
⑦登記原因証明情報のほかに贈与契約書を作成される場合
30,000円(税別)+200円の収入印紙×通数
なお,あくまで贈与者の方にかかる費用というだけであって,実際に費用をお支払いされるのは受贈者の方でも問題ありません。
まとめ
贈与を選択される場合の最大の問題点は,税金の高さに尽きると思います。
相続時精算課税で非課税になるようであれば問題ありませんが,そうでない場合は,よほどの理由が無い限り贈与を選択するメリットは少ないと思います。この点を十分ご検討されたうえで,贈与をされるか否かをご検討いただければと思います。
以上,贈与に関するお知らせでした。
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