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9月 04 2013

非嫡出子相続分違憲決定など

6:18 PM ブログ

ネットのニュースでしか見ていないのですが,ついに非嫡出子の相続分について違憲判断が出たようですね。
 
記事 
 
もうおととしの記事になってしまいますが,私もこれについてはおかしいと思っており,やっと違憲判断が出たかという感じです。 
 
 
今日の決定については,ニュースなどで解説されると思いますし,同じようなことを書いても仕方ないので,ちょっと別角度で「違憲判決(決定)」について書いてみたいと思います。 
 
 

今日の決定は,民法900条4項但し書きに「嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一と(中略)する。」と規定されていること自体が憲法14条に違反するという決定で,法令(法律)の規定そのもの(2分の1という部分)が憲法に違反するというものです。 

法律というものは,国民が選挙で選んだ国会議員が制定したものであるため,建前としては国民の信任を得て作られています。したがって,そう簡単に法律の規定そのものが違憲と判断されることは無く,かなり珍しいことです。戦後だと9件目の判決(決定)になります。 

法令違憲判決(決定)はあまり出ないため,法令違憲判決(決定)が出るとすべて有名な判決ということになるんですが,その中でも有名なのが尊属殺重罰規定違憲判決だと思います。 
 
 

尊属殺重罰規定違憲判決

 
 

今はもう削除されていますが,その昔,刑法200条に尊属殺人に関する規定がありました。尊属殺人,つまり殺人の被害者が殺人犯の親や祖父母等の上の世代を殺害した場合は,死刑または無期懲役の2択という極めて厳しい刑罰が定められていました。 
 
その前の199条には殺人罪に関する規定があり,その当時規定されていた刑罰は死刑,無期懲役,3年以上の懲役となっていましたので,被害者が誰であるかでかなり刑罰の重さが異なります。これは,刑法が制定された当時は明治時代であり,家族関係としても今のような個人の尊重というよりは「家」制度のもと,家長たる父親を絶対的な中心とした家族関係であったため,尊属を殺害したものを通常の殺人罪よりも厳罰するということは当時の感覚としては合理的な規定だったものと思われます。
 

そんな中,とある事件が起きました。

極めて簡単に事例を記載すると, 
 

女性であるAさんは14歳から29歳まで実の父であるBから性的虐待を受けており,父親の子を5人出産,6人を中絶させられていました。

しかし,AさんはCさんという男性と恋におち,Cさんと結婚する旨を父親であるBに告げたところ,父親BはAさんを監禁し虐待するなどの行為を行ったため,このような状況を打破するためにAさんは父親Bを殺害した
  

というものです。
 
 

確かに人を殺害すること自体は許されることではありませんが,殺人に至ってしまった原因のすべてが父親Bの行為によるものでありAさんのみを非難することはできません。このような個別事情を考慮すればAさんが再犯する可能性は極めて低いと思われますし,さらに子どももたくさんいることを考えると,Aさんは有罪ではあるけども執行猶予が認められても良いような状況です。ところが執行猶予を受けるためには,懲役刑の場合3年以下でなければなりません(刑法25条)。
 

上記の通り,通常の殺人罪は当時は3年以上の懲役だったため,仮に通常の殺人罪が適用されればAさんは執行猶予が認められる可能性があります。
 

一方,尊属殺人罪だと最低でも無期懲役であり,裁判所が最大限減刑をしたとしても3年6か月の懲役刑となるため執行猶予が認められません
 

そして,本質的な問題として,家制度がなくなり個人が尊重される時代に被害者が殺人犯の尊属だったからといって必ず重罰にしなければならないという根拠も薄くなってきていると思われます。

刑罰についても,通常の殺人罪でも最高刑は死刑なので尊属殺人罪が無くても厳罰対応をすることができ,尊属殺人罪が無くても問題ありません。
 

ということで,刑法200条のうち,刑罰に関する部分(死刑または無期懲役)が違憲と判断され,その後の法改正により刑法200条は削除されました。なお,最高裁判所としては,あくまで重すぎる刑罰が問題というだけであって,尊属殺人罪という規定が存在すること自体は合憲と判断しています。 
 
 

国籍法違憲判決

 
 
 

すごくざっくり解説すると,

法律の規定で,日本国籍を有するのは,出生のときに父または母が日本国籍を有しているときとなっています。つまり,生まれた時に父または母親が日本人であれば,その生まれた子どもも日本人ということです。
 

しかし,この規定には,「出生のときに」となっているので,外国人の母親が出産し,その後に日本人である父親が認知した場合は,規定に該当せず日本国籍が得られないことになります。
 

なお,認知というのは胎児の時点でもすることができます。とすると,出産の前日に認知すれば「出生のときに」を満たし,出産の翌日だと「出生のときに」を満たさないこととなりますので,父親の認知のタイミングで自分の日本国籍が得られないという,非常に不合理な状況ができてしまいます。
 

当然,このままではおかしいということで,国は法律を改正しました。
 

その内容は,「出生後に認知をした場合でも,その後に父母が結婚した場合には,その子どもは日本国籍を取得する」というものです。
 

確かに,出生後の認知でも良いことになりましたが,突然,父母の結婚という条件が付いています。つまり,胎児の時に認知していれば父母の結婚は関係ないのに,出生後に認知だと結婚が条件となるということになり,子どもとしては「差別だ!」ということで訴えたわけですね。
 

そして,判決は,この結婚を条件にしている部分は違憲と判断されました。 
 
 
 
 

本決定の凄いところ

 

今回の違憲判断はこれまでにない凄い判断をしています。
というのは,最高裁判決の判断が過去の事件には及ばないというものです。
 
 

今回の事例は,平成13年7月に亡くなった方の遺産に関する争いであり,最高裁は平成13年7月時点ではすでに当該民法の規定は違憲だったと判断しています。
とすると,憲法に反する規定は無効ですので,素直に考えれば平成13年7月から今日に至るまでに,全国各地で当該規定を前提に遺産分割協議や調停,審判などが行われてきたものがすべて無効ということになってしまいます。
もし,そうなると日本で何件の非嫡出子に関する遺産分割協議等が行われてきたのかわかりませんが,数千件,数万件の遺産分割協議がいきなり無効となり,大パニックになることは想像に難くありません。 

これについて,最高裁が自らも「本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。」としており,日本中がえらいことになると認識しています。 
 

これを踏まえて,「本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない」と判示し,例外的に過去の解決済みの事件には効力が及ばないとされました。
 

こんなことは,これまでの9件にはなく,今後法律を学ぶ者はこの最高裁決定について全員理解しなければならいことになると思います。
 
 
なお,上記の例で言うと,尊属殺人のケースではすでに尊属殺人で確定し服役していた人については恩赦という形で減刑されていますし,国籍法のケースではそれまで父母が未婚ということで日本国籍が認められなかった人についても認められています。
 
 
 
国をけん引するのは,国会議員や内閣総理大臣ですが,その方たちも間違いを犯してしまうことがあります。また,その当時は問題なくても時代の流れによって,その過去に作られた法律がおかしなものになっていることもあります。まさに今回の非嫡出子の規定は時代に合わなくなったということで,裁判所が修正をかけているわけです。そうやって考えると,政治家の皆さんに対する国民の信頼は著しく低下しているような世の中ですが,裁判所が正常な判断ができているのであればまだまだ日本も捨てたものではないですよね。

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