12月 16 2014
葬儀に関する法律関係
人が亡くなった場合,その方の財産や負債について相続する旨は何度も記載しておりますが,今回は相続手続のような難しい話ではなく,もっと身近な葬儀に関する法律関係についてまとめてみたいと思います。
葬儀契約とは
葬儀をする場合,基本的には3つの費用がかかります。
1 葬儀会社に対する費用
2 葬儀会社以外に会社に対する費用
3 お寺(お坊さん)に対する費用
1の葬儀会社に対する費用とは,祭壇を用意してもらったり,葬儀の司会をしてもらったり,霊柩車で運んでもらう費用などで,葬儀費用というのは通常この金額を指していると思われます。
2の葬儀会社以外の会社に対する支払いで,いわゆるお花代,仕出しの弁当代,火葬費用などです。葬儀会社によっては,お花代や仕出しのお弁当代などを含んでいることもあります。
3のお寺に対する費用というのは,お布施だったり戒名の費用となります。通常,葬儀費用の中にこれらのお寺に関する費用は入っていないと思われます。
もっとも,不動産の売買契約書のように,国や地方自治体などが定型的な葬儀契約を定めているわけではありません。したがって,葬儀会社と契約をする場合は,やはり契約内容をよく確認し,上記のうちどこまで契約内容に含まれるのかを明確にする必要があります。
葬儀費用は誰が負担するのか
葬儀費用は誰が負担すべきか,という点については法律に規定は無いため,実は結構争いがあります。
今ある考え方は,①相続人全員で負担する,②亡くなった方の財産をもって負担する,③喪主が負担する,④その地方の慣習や条理によって負担する者を決定する,という4つの説があります。
この中でも有力なのが③の喪主が負担するという説です。
その理由としては,
「現代においては葬儀そのものが多様化し,どのような葬儀が亡くなった方にとって相当かという判断が難しくなったため,自ら喪主として葬儀会社を選び手配などをしたものが負担すべき」
というものです。
ただし,喪主となった人のすべてが自ら進んで喪主となっているわけではなく,実際は相続人全員で葬儀内容などを決めたけれども形式上喪主となったような人もいるかと思います。このような場合には,相続人全員が実質的には喪主であり,全員が負担することになります(昭和61年1月28日東京地裁判決)。
香典は誰に帰属するのか
香典というのは,葬儀の際に,亡くなった方の家族に対する金品の贈与を言います。
香典を贈られる方は,亡くなった方から生前受けた行為に対する感謝の意味合いから,亡くなった方へ贈与されているかもしれませんが,少なくとも法律上は,死者が贈与を受けることはできませんので,香典が死者のもの(つまり,相続財産)になることはありません。では,この香典は誰のものになるのでしょうか。
この点,香典を贈る目的は,葬儀費用の一部に充当してもらうことで,遺族の葬儀の負担を軽減することにあると考えられています。とすると,上記のとおり,葬儀費用は原則として喪主が負担することになりますので,この香典も喪主に帰属することになります(平成3年9月30日広島高裁決定)。
では,葬儀費用に充当してほしいという趣旨で贈った香典が,葬儀費用を支払っても余ったような場合はどうなるのでしょうか。
この点,いったん喪主に帰属した香典が,余ったからといって当然別の人に帰属することはありません。したがって,余った香典は,喪主がどのように処分しても構いません。もちろん,亡くなった方の相続財産と同じように扱い,相続人全員で分配しても構いません。ただし,香典は亡くなった方の相続財産ではないため,相続人が喪主に対し,余った香典を分配するよう請求することはできません(昭和43年10月9日神戸家裁)。
葬儀については,精神的にパニックになっている時に契約内容を確認せず契約してしまうことが多分にあると思います。最近は,大手スーパーのイオンが参入するなど,明確化,定型化が進んでおり詐欺的な契約は少なくなってきていると思いますが,それでも他の業種と異なり,まだまだ不透明な費用がまかり通っている業種でもあります。ご家族で葬儀を進めるのであれば関係ありませんが,多くの方が葬儀会社を利用されると思いますので,形式的には年長者が喪主をするにしても,契約自体は比較的冷静な方が葬儀会社との打ち合わせなどを進めた良いかと思います。
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