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不動産売買に関すること

3月 03 2021

土地の値段(一物四価)

売買や相続による所有権移転登記を申請する際に、登録免許税という税金を法務局に納めなければなりません。
 

この登録免許税は、土地の値段を基に移転する原因に応じた税率を掛けて算出します。

例えば、土地の値段が1000万円だとした場合に、売買で所有権移転をする場合は15万円(1.5%)、贈与で所有権移転する場合は20万円(2%)、相続で所有権移転する場合は4万円(0.4%)です。ただし、上記の税率は改正によって変わることがあり、土地の所有権移転については本来は2%であるところ租税特別措置法により1.5%に軽減されています。
 

さて、簡単に「土地の値段」と言いましたが、実は土地の値段は一律に決まっているものではなく、状況に応じて同じ土地なのにその値段が変わります

例えば、上記の登録免許税に用いる土地の値段は、正確には「固定資産課税評価額(通常は単に「評価額」と言います。)」を基に計算することになります。
 

また、相続税を計算する場合に用いる土地の値段は、「相続税路線価(通常は単に「路線価」といいます。)となり、贈与税でもこちらを用いることになります。

このように、単に「土地の値段」と言っても、どの意味で使っているかを誤るとトラブルになる可能性がありますので、今回はこの土地の値段についてまとめてみたいと思います。
 

 
 

一物四価

 

一般的に、土地の値段は4種類あると言われており、「一」つの土地(物)に「四」つの「価」格があるので、このことを指して一物四価と呼ばれることがあります。
 

この4つの種類は、一般的に高い順にならべると以下のとおりとなります。
 

①流通価格(市場価格・実勢価格)

②公示価格(公示地価)

③路線価(相続税路線価)

④固定資産税評価額
 

ただ、実際には上記の順番は逆転することがあります。例えば、まったく買い手が付かないような土地だと路線価や評価額よりも低い金額で取引されることはあります。 
 

流通価格(市場価格・実勢価格)

 

これは、一般的に取引される金額となります。不動産業者に仲介を依頼し、第三者から土地を購入するような場合はこちらの金額となります。

「隣の土地は借金をしても買え」という格言もあるくらいですので相場よりも高いこともあれば、親族間や知人間の売買等の理由により相場より安く取引されることもありますが、最終的には当事者が合意した金額が正しい金額となりますので、一言で言えば「時価」となります。
 

なお、他の価格と比べると一番高いことが多いと思います。 
 

公示価格

 

地価公示法を根拠として公示されるものであり、特定の地域等において標準的な場所を選定し、その場所に関する土地の値段を公示するものです。

つまり、個々の土地ごとの金額が出るのではなく、その周辺地域の目安となる金額ということになります。
 

一般的には、流通価格より低く、路線価より高い金額になる傾向にあります。

こちらの金額は、公共事業による土地の収用等の際の補償金を計算するのに用いられており、司法書士が関与することはあまりありません。

この公示価格は国土交通省のサイトで確認することができます。

→ 国土交通省地価公示・都道府県地価調査 
 

路線価(相続税路線価)

 

こちらは、道路に接した土地についての平米単価となり、国税局長によって定められたものです。

路線価は、接している道路を基準としていますので、国道などの大きな道路に接しているほど金額が高くなりますし、角地など複数の道路に接している場合も金額が高くなります。また、基本的には市街地にしか定められませんので、都市部から離れると路線価が無いことも多く、そのような土地は固定資産税評価額の1.1倍とされることが多いです(倍率地域)。
 

一般的には、公示価格より低く、固定資産税評価額よりは高くなり、概ね公示価格の8割程度になります。

相続税や贈与税の計算をする際には、こちらの金額を基に算出いたしますので、通常は税理士さんが一番目にするものとはなりますが、贈与の際にどの程度贈与税がかかるかを判断し、場合によっては贈与自体をキャンセルすることもありますので、司法書士もよく目にする価格となります。

この路線価は、国税庁のサイトで確認することができます。

→ 路線価図・評価倍率表 
 

固定資産税評価額

 

総務大臣が告示した固定資産評価基準を基に各自治体(市町村)が固定資産税を課すために個々の不動産(土地及び建物)について定めるものであり、この評価額に1.4%を掛けた金額が毎年1月1日時点の所有者に課されることとなります。なので、年の途中で所有者が変わったとしても1月1日時点の所有者が1年分を納める必要があるため、通常は日割計算をして新旧の所有者で精算することになります。
 

一般的には路線価よりも低くなる傾向があり、公示価格の7割程度になります。
 

登記申請の際に、不動産の価格を基に登録免許税を計算する場合は、まさにこの固定資産課税評価額を基に計算しますので、司法書士が毎日のように目にする価格となります。

公示価格や路線価は毎年変わるのに対し、固定資産課税評価額は3年に一度しか変わりません。そして、令和3年4月1日に新しい価格に変わりますので、現時点(令和3年3月時点)においては、4月1日以降に登記申請する場合の登録免許税の計算はできないことになります。とはいえ、それだと見積書が作成できないため、暫定的に現時点での固定資産課税評価額で費用を計算させていただき、4月1日以降に改めて正確な費用をお知らせすることとなります。
 

この固定資産課税評価額は、公示価格や路線価と異なり、ピンポイントで各不動産の価格がわかることとなるため、第三者が自由に調べることは基本的にはできません

不動産の所有者であれば毎年4月から5月頃に不動産のある自治体から固定資産税の通知書が送付されてきますので、こちらで固定資産課税評価額を確認することができますし、第三者であっても裁判に利用するなどの正当な理由があれば、自治体の税務課において評価証明書を取得することで評価額を調べることができます。
上記のとおり、司法書士は登記申請の際に利用しますので、すべての自治体ではないものの多くの自治体において所有者からの委任状を添付することなく評価証明書や評価通知書を取得することが認められています。 
 

まとめ

 

以上のとおり、単に「土地の値段」と言っても色々な意味がありますが、通常は流通価格を指すことが多いかと思います。ただ、万が一誤解して話を進めてしまうとトラベルになってしまうこともありますので、どの土地の値段のことを話しているかを確認してから話を進められた方が安全かと思います。

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2月 01 2021

成年後見手続が必要な場合

当事務所では成年後見業務を行っており、累計で数十人、現時点でも数名の方の成年後見人に就任しております。
 

売買や贈与、相続等において、成年後見が関係することがあるため、今回はこの点に絞ってまとめたいと思います。
 

 
 

1 意思能力について

 

(1)意思能力とは
不動産の売買や贈与をする場合など、何らかの法律上の行為をする場合、その方に「意思能力」があることが必要です。
この意思能力を言い換えると判断能力のようなものであり、平たく言えば、自分が行っている行為がどういう意味なのかを理解できる能力ということになります。
 

意思能力は各個人によって異なりますが、一般的には10歳くらいになれば意思能力があると判断されます。また、成人においてもお酒を飲んで泥酔してしまっている場合や覚せい剤でおかしくなってしまった方も一時的に意思能力がないと判断されることがあります。
 

もっとも、10歳の子が不動産の売買をするということは考えにくいですし、泥酔している人が契約をすることは通常あり得ませんので、一番現実的なお話しとしては、①認知症の方、②精神障害がある方、のどちらだと思います。
ただし、認知症や精神障害については、いずれも症状の程度や波がありますので、あくまで契約等を行う際に意思能力があれば良いということになります。
 
したがって、例えば認知症とは言っても少し物忘れがあるという程度だったり、精神障害と言っても服薬によって特に問題ないということであれば、意思能力は大丈夫だと判断されやすいと思います。
 

(2)意思能力がない方が契約をするには
ご自身で判断することができない状態にある方(意思能力がない方)については、仮に契約を締結したとしても無効となってしまいます(民法3条の2)。
 
そこで、法律では意思能力がない方についても問題なく契約等ができるよう法定代理人という制度を定めており、ご本人に代わって法定代理人が契約等を行います
具体的には、未成年者であれば親権者(場合によっては未成年後見人)が、認知症や精神障害がある方については成年後見人(場合によっては任意後見人や保佐人等)が代理人として契約することで有効な契約等を行うことができます。 
 

2 売買や贈与で成年後見が必要となる場合

 

不動産の売買というのは極めて大きな財産が動くことになりますので、契約締結後に意思能力が問題になってしまうと大変なことになります

したがって、意思能力の判断は、かなり慎重に行う必要があります。
 

(1)売主側

ご本人が不動産を所有しており、売却や贈与をする場合、認知症等で意思能力に不安がある場合は成年後見制度を使って、成年後見人が代理人として売却することが考えられます。基本的には、成年後見人が売却の適否や価格等についてご自身で判断し、最終的に売却することは可能です。
 

ただし、成年後見人が選任されていたとしても、すべての不動産の売却等ができるわけではありません。
 

例えば、自宅等の居住用不動産について売却するためには、事前に裁判所の許可を得る必要があります(民法859条の3)。これは、一時的に施設等に入所されているときに、自宅を売却してしまうと戻る家がなくなってしまうからです。したがって、裁判所の許可を得るためには、①施設などの入所費用を工面する必要がある、②医師の判断によれば自宅に戻って生活できる見込みはかなり低い、③売却価格は周辺相場からいって妥当である、など売却が必要である旨を裁判所に説明して許可を得ることになります。
 

また、成年後見人はご本人の権利を守るために選任される者ですので、積極的に財産を減らす行為は認められません
 

とすると、ご本人が所有している財産を第三者に贈与するという行為は基本的には認められないことになります。
 

もっとも、贈与することが却ってが本人の資産を守ることになるのであれば贈与であっても認められます。当事務所が成年後見人になっている方について、ご本人が所有していた別荘(建物のみで土地は借地)があったのですが、当該別荘を利用する見込みが無かったので、裁判所に相談をしたうえで、第三者に贈与しました。このケースでは、そもそも何もしなくても毎月の借地料の支払いが必要になりますし、また、かなり建物が老朽化していたので取り壊すという選択肢があったものの数百万円の取り壊し費用がかかり、売却しようにも数百万円程度の費用をかけてリフォームをする必要があったことから、現状で引き受けてくれる方に贈与をしました。
 

なお、直接今回の記事とは関係ありませんが、親族に対するお年玉や結婚祝い、就職祝い等の社会生活上の妥当な範囲であれば贈与であっても認められます。
 

(2)買主側

成年後見人の選任がされている方が不動産を購入するというケースはあまり無いかと思いますが、もしそのような事態になったときには成年後見人が本人に代わって契約等をすることになり、この行為について裁判所の許可等は必要ありません。ただし、後見監督人が選任されているようであれば監督人の同意が必要となります(民法864条)。
 

もっとも、不動産を購入するということは、多額の現金を支出することになりますので、事前に裁判所に相談をした方が良いと思います。 
 

3 相続で成年後見人が必要となる場合

 

(1)相続人が1人のみの場合
相続人がお一人の場合、特に成年後見人を選任する必要はなく、ご本人が手続を進めることができるようであれば進めていただくことは可能です。ただし、相続の手続は難しいので誰かに依頼することが多いと思いますが、意思能力が無いとその依頼ができない(委任契約が締結できない)ので、結果として成年後見人の選任が必要になる場合が多いと思います。
 

なお、事実上親族の方がご本人に代わって手続を進めるということであれば、成年後見人を選任しないこともあるかと思います。
 

(2)相続人が複数いる場合
複数の相続人の中に、意思能力が問題になる方がいらっしゃる場合、相続人間の話し合いである遺産分割協議ができませんので、成年後見人を選任していただく必要があります。そして、ご本人に代わって、成年後見人が他の相続人との間で遺産分割について話し合いを行うことになります。
 

成年後見人はご本人の権利を守る立場にありますので、ご本人が遺産を一切取得しないという遺産分割は特別な理由がない限り難しいです。
 

また、成年後見人は弁護士や司法書士といった専門職ではなく、親族の方がなることができます。その際に、遺産分割協議に参加する方が成年後見人になってしまうと利益相反が生じているので別の手続が必要となります。
 

具体的には、父親Aさんが亡くなり、妻Bさんと子Cさんの2人が相続人である場合、Bさんの成年後見人としてCさんが就任することはできますが、BさんとCさんはAさんの遺産分割について利益相反の関係にありますので、Cさんは遺産分割協議においてBさんを代理することができません。

この場合、成年後見監督人が選任されていれば、当該監督人がBさんを代理することとなり、監督人が選任されていないようであれば裁判所に特別代理人を選任してもらってその特別代理人がBさんを代理することになります(民法851条4号)。
 

4 遺言について

 
遺言については、必ずご自身でする必要があり、第三者が代理して遺言をすることはできません。

したがって、遺言書の作成を目的として成年後見人の選任をすることはありませんし、すでに成年後見人が選任されていたとしても、成年後見人が代理することはできませんので、必ずご自身で遺言書を作成することになります。

ただ、意思能力が不安な方だからこそ成年後見人が選任されているのであり、なんとかしてご本人が遺言書を作成したとしても、意思能力がないときに作成したのであればやはり無効になってしまいます。 
 

そこで、法律では、成年後見人が選任されている場合においては、①意思能力が一時的に回復していること、②医師2名以上の立ち合いがあること、③当該立ち会った医師が「遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨」を遺言書に付記すること、の要件を備えれば遺言書を作成することが可能であるとしています(民法973条)。

 
 
  

以上のように、認知症の方や精神障害がある方について売買や相続が生じると成年後見が必要になる場合があり、何もせずに進めてしまうと事後的に無効となる可能性がありますので、契約や遺産分割をされる前に一度専門家にご相談された方が良いと思います。

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11月 19 2020

売買契約書について

当事務所では、知人間や親族間での売買など、不動産業者を通さずに直接売買する場合の登記手続に関与させていただくことがあります。 

その際、登記手続に関する書類を当方で作成することはもちろんですが、登記手続には直接必要とはならないものの、売買契約書の作成も合わせて行うことが多く、当事務所でも今週だけで2件の不動産業者を通さない個人間の売買手続を行っています。
 

売買契約書の中には、定型で決まってほぼ変わることの無い条項もあれば、契約によって大きく変わる部分もありますので、今回はこの点についてまとめたいと思います。
 

 
 

1 売買契約書

 

法律上、不動産に限らず、売買契約を行う際には特に契約書等は必要ありません。例えば、コンビニで飲み物を購入する際に契約書など作成しませんよね。

ところが、自動車や不動産など比較的高価なものを購入される際は、ほとんどのケースで契約書を作成すると思います。その理由は、後でトラブルになったときに必要となるからです。
 

上記のとおり、コンビニで飲み物を買って、もしその飲み物が不良品だった場合は、恐らくコンビニに言えば対応してくれると思いますし、仮に対応してくれなかったとしても100円~200円程度の話ですので、それほど大事にはなりません。

しかし、自動車や不動産などの場合はトラブルになった場合は、対応するにも修理費や工事費など多額の費用がかかることがありますし、泣き寝入りするにもかなりの損失になってしまいます。

なので、そういったトラブルが起きたときのために、どのように対応するのかが契約書に書かれています。
 

もっとも、契約書が無くても民法等の法律によって当然に適用されるものもありますが、逆に契約によって民法の適用を排除することもできますので、そういう意味でも契約書を作成する意義があります。
 

また、不動産の場合は税金の関係もありますので、売買代金を税務署等の官公署に説明する証拠としても重要になり、まず間違いなく契約書は作成することになります。 
 

2 売買契約書で絶対必要な条項

 

不動産の売買契約書を作成するに当たって、どのような契約書にも必ず入っており、むしろ入っていないと契約書を作成した意味がないレベルで必ず必要な条項は以下のとおりです。
 

①当事者の氏名及び住所

→ 契約の当事者が誰であるかが分からないと、契約の内容を誰が守れば良いのか分かりません。
 

②売買の対象物

→ どの不動産を購入したのかを明確にする必要があります。
 

③売買価格

→ 売買価格が0円だと贈与になってしまいますし、税金の観点からも売買代金は必須です。
 

④日付

→ その日から契約の内容をお互いに守る必要があるからです。 
 

3 多くのケースで入っており、契約ごとにあまり内容が変わらない条項

 

定型の契約書等には必ず入っており、契約書ごとにあまり無いように差がない条項です。大きな理由がない限り、特に触れる必要はないと思います。
 

①引き渡し義務と登記手続

②所有権の移転時期

③負担消除

④契約費用・印紙税の負担

⑤危険負担

⑥債務不履行解除

⑦手付解除

⑧反社会的勢力の排除

⑨諸規約の承継

⑩管轄裁判所

⑪協議 
 

4 契約の内容によって大きく変わる条項

 

個々の契約によってまったく内容が異なる条項となります。この部分は、変更可能であることがほとんどですので、契約の条件として提示することもあると思います。
 

①実測売買または公簿売買
 

実測売買というのは、売買の前提として測量を行い、その測量結果によって売買価格を決定または精算するというものです。

一般的には、まずは公簿(登記簿)に記載されている地積(面積)や床面積を基に売買価格を決定したうえで、その後の測量によって増減があった場合は売買価格も増減するというものであり、売主さん買主さん双方にとって公平だと思います。ただ、測量するためには数十万円の費用がかかりますので、必ず行うという訳ではありません。

公簿売買というのは、登記簿に記載されている地積等のまま売買することであり、基本的には売買に際して測量は行いません。また、仮に測量の結果、登記簿の地積等と異なったとしても精算を行いません。売買価格や坪単価が低い場合は公簿売買が多い傾向があります。
 

したがって、より正確に不公平なく売買をしたいということであれば実測売買ということになりますし、あまり費用を掛けたくないということであれば公簿売買ということになります。

なお、実測売買の場合は売主さんが測量費用を負担することが多いですが、買主さんの希望で測量を行う場合は買主さんが負担することもあります。
 

②公租公課の負担・精算及び計算期間(起算日)
 

公租公課は、固定資産税及び都市計画税がほとんどであり、売買代金を決済する前日までを売主さんが負担し、決済日以降が買主さんの負担とすることが多いです。

ただし、法律上は毎年1月1日付の所有者に納税義務があるのであり、買主さんには納税義務はなく、精算することが義務付けられている訳でもありません。したがって、契約内において精算しないとすることも可能です。比較的価格が低い不動産の場合は年間の固定資産税が数千円という場合もありますし、親族間や知人間という関係性がある場合は精算しないこともあります。
 

また、仮に精算をすることとなった場合、年間の固定資産税等の起算日をいつにするか揉める場合があり、これは法律によって定められているのではなく地域の慣習によって分かれます。

愛知県や関西地方では4月1日から翌年3月31日までを計算期間とする傾向がありますが、関東地方や北海道などでは1月1日から12月31日までとする傾向があるもののどちらが正しいというものでもありませんので、この点は各契約によって定めることとなります。

なお、4月1日からと1月1日からとを比べた場合、前者の方が売主さんの負担が少なく(買主さんの負担が多く)なり、後者の方が売主さんの負担が多く(買主さんの負担が少なく)なります。

③特別な解除権
 

不動産の売買契約においては手付解除、債務不履行解除、危険負担による解除、反社に該当することによる解除が定型で定められていると思いますが、それ以外にも個々の契約で特別な解除を認める特約を定めることがあります。

よくあるのが「ローン特約」であり、住宅ローンが組めなかった場合には、契約を違約金等無しで白紙解除できます。もっとも、個人間の売買だと住宅ローンを組めないことが多いため、不動産業者が仲介しない場合はあまり見かけることはありません。

それ以外にも、「測量した結果〇〇㎡以下だった場合は白紙解除」、「土地の占有者が〇〇までに立ち退かなかったら白紙解除」、「〇月〇日までに転勤の辞令が出たら白紙解除」など、自由に定めることができます。もっとも、あくまで当事者が合意すればの話であるため、一方が認めない場合は特約とすることはできません。
 

④契約不適合責任
 

民法改正により今年の4月から新しく定められた責任ですが、従前も「瑕疵担保責任」として似たような条項が定められていました。

端的に言うと、購入した不動産に何らかの不具合があったときに、売主さんが代金の減額、修繕の負担をしたり、最悪の場合は契約自体を解除することができるというものです。

これは売主さんの負担が大きい責任であり、特約が無ければ最大で10年間も責任を負い続けることになるため、責任期間を短縮(1か月~1年程度)することが多く、さらには契約不適合責任自体を負わないとすることもあります。実際に、私が作成した契約書では、ほとんどのケースで契約不適合責任は負わないとしております。
 

ただし、これには例外があり、売主が不動産業者である場合は、最低でも引き渡しから2年間は契約不適合責任を負わなければならないとされています(宅建業法40条)。
 
 

親族間・知人間等の個人間での売買をされる際は、登記手続だけでなく、上記のような契約書についても当方で作成いたしますので、お考えの際はお問い合わせいただければと思います。
なお、個人間売買に要する費用についてはこちらをご覧ください。

→ 個人間売買について

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10月 21 2020

現住所を登記したくない場合(極めて例外的)

当事務所では,弁護士さんとのお付き合いもたくさんあり,弁護士さん経由で登記のご依頼をお受けすることがあります。

例えば,遺産分割調停が成立した後の相続を原因とする移転登記,離婚訴訟が終わった後の財産分与による移転登記,当事務所でも行っている訴訟を得た後の抵当権抹消登記など多岐に渡ります。
 

今回も弁護士さんが裁判手続を経た後,当事務所にご依頼があったのですが,当事者の欄を見ると住所が「秘匿」となっており,ご住所を明らかにしたくない何らかの事情があることが窺えました。

そこで,今回は住所を登記したくない場合についてまとめてみました。ただし,限定的,例外的な取り扱いであり,実際に該当するケースは極めて少ないと思います。
 

 
 

1 登記における「住所」

 

不動産を取得したり,抵当権を設定した場合など,誰が所有者(権利者)であることを登記簿上明らかにする必要がありますが,その際,誰が権利者であるかは原則として住所及び氏名で特定することになります。

例えば,不動産を購入された場合の所有権移転登記を申請する際には,新所有者となる買主さんがどなたであるかを証明するために住民票等の公的書面を添付して申請することになります。
 

また,不動産を売却する場合,名義が無くなる所有者本人が手続に関与していることを証明するために,権利書及び印鑑証明書(+実印が押印された書面)を添付して申請します。もし,登記されている住所が現住所と異なる場合は,所有権移転登記の前提として登記簿上の住所から現住所への住所変更登記を申請したうえで,その後に所有権移転登記を申請いたします。

これは,印鑑証明書をは現住所の役所で発行してもらう書類であり,登記簿上の住所を現住所に変更し,登記簿上の住所と現住所が一致していないと本当に登記された所有者が手続に関与しているか法務局が判断できないからです。
 

このように,住所というのは結構大事な情報となります。 
 

2 住所を登記しないことは特殊な事例を除きできない

 

上記のとおり,住所は誰が権利者であるかを特定するための大事な情報となりますので,住所を登記しないということは原則としてできません

例えば,まだ出生していない胎児の名義でも所有者として登記できる場合がありますが,その場合も住所の登記は必要になりますし,慶応生まれで昭和初期に亡くなった方への相続登記などで住所を証明する書類が一切ない場合もありますが,その場合でも本籍地を住所として登記することになります。
 

特殊な事例として住所の登記が不要な場合がありますが,これは国や地方公共団体が権利者になる場合です。

平成24年頃,一般の方が所有されていた尖閣諸島について,東京都が購入すると表明し,最終的には東京都ではなく国が購入することになりました。この場合,管轄する国土交通省の名義で購入したのですが,下記のとおり国土交通省の住所は登記されません。 

 
 

上記のとおり,住所は誰が権利者なのかを特定するための情報であり,逆に言えば,住所が無くても特定できるのであれば住所は不要ということになります。そして,国土交通省名義で登記してあれば,一見して国有化された土地だということは分かりますので,住所を登記する必要はないということになります。 
 

3 現住所ではなく,前住所の登記を例外的に認める場合(新たに権利を取得する場合)

 

ここからが今回の本題になるのですが,個人の方が様々な理由で自分の住所を登記したくないということがあります。例えば,「親族と仲が悪い」,「ストーカーやDVの被害に遭っている」,「芸能人などの有名人である」などいろいろあるかと思います。
 

一般的に,住所を証明する一番の書類は住民票となりますが,基本的に第三者の住民票を勝手に取得することはできません。しかし,不動産の登記簿は公開されるのが原則であり誰でも不動産の登記事項証明書を自由に取得することができますので,不動産の所有者として載っている住所を調べることで間接的に第三者が住所を調べることができてしまいます

とはいっても,住所を登記しないと誰が権利者なのかを特定することができなくなってしまいます。
 

そこで,極めて例外的ではありますが,下記の書類を提出した場合に限り,現住所ではなく前住所や前々住所を登記することによって現住所を特定されないようにすることができるようになっています(平成27年3月31日民二第196号)。
 

住民票上の住所を秘匿する必要があり「住民票に現住所として記載されている住所地は、配偶者等からの暴力を避けるために設けた臨時的な緊急避難地であり、あくまで申請情報として提供した住所が生活の本拠である」旨を内容とする上申書(登記権利者の実印で押印されたものであり,印鑑証明書も必要
上記の前住所や前々住所等が記載された住民票や戸籍の附票等
いわゆる「DV防止法」,「ストーカー規制法」及び「児童虐待防止法」で支援を受けていることを証明する書面
 

つまり,この制度を利用できるのはDV,ストーカー及び児童虐待の被害者の方に限定されているため,単に「有名人だから」という理由では利用できないということになります。 
 

4 住所変更を省略できる場合(権利を失う場合)

 

上記のとおり,不動産を売却等して名義が無くなる場合,現住所の役所から発行してもらう印鑑証明書に記載されている住所と登記簿上の住所が一致していなければなりませんので,登記簿上の住所が前住所である場合は,前提として現住所に変更したうえで名義変更の登記を申請する必要があります。
 

ただし,下記の書類を提出した場合に限り,住所変更登記をすることなく,名義変更の登記を申請することができるようになっています(平成25年12月12日民二第809号)。
 

登記簿上の住所と現住所までの変遷が分かる住民票や戸籍の附票等

いわゆる「DV防止法」,「ストーカー規制法」及び「児童虐待防止法」で支援を受けていることを証明する書面
 

こちらも,制度を利用できるのはDV,ストーカー及び児童虐待等の被害者の方に限定されているため,単に「有名人だから」という理由では利用できないということになります。 
 

5 まとめ

 

以上の次第で,現住所を登記しないで登記手続を行うというのはハードルが高いのですが,もし該当される方は,被害発生防止の観点からもぜひ利用すべき制度だと思いますので,ぜひご検討ください。

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9月 07 2020

農地について

絶対数として多い訳ではありませんが,当事務所においても農地(田や畑)に関する登記をご依頼いただくことがあります。 

農地については様々な制約があり,私どもとしてもかなり注意して取引に関与させていただくのですが,一般の方が勘違いされていることが多いので,一度まとめておきたいと思います。
 

 
 

1 農地とは

 

私どもが言う農地とは,端的に申し上げると耕作の目的に供される土地のこと(農地法2条1項)であり,用水を用いて耕作する土地が「田」,用水を用いないで耕作する土地が「畑」となります(不動産登記事務取扱手続準則第68条)。
 

この農地を売買や贈与をするためには,農地法所定の手続を踏まないと売買等をすることができないことになっており,もし,手続を踏まずに売買をしたとしても,法律上は無効となります。無効である以上,登記名義を変えることもできません。ただし,農地法所定の許可が得られることを条件とする条件付仮登記は可能です。
 

なお,登記手続においては,登記簿の地目が「田」や「畑」になっている場合はもちろんのこと,登記簿の地目が「宅地」や「雑種地」になっていても,評価証明書の現況地目が「田」や「畑」になっていれば農地と判断されますので,下記の手続を踏まないと登記申請は却下されてしまいます。 
 

2 農地法所定の手続

 

農地を売買等をする場合,以下のいずれかの手続が必要です。
 

農地法3条の許可 → 農地を農地のまま売買,贈与等をする。

農地法5条の許可 → 農地を農地ではないものに変更したうえで売買,贈与等をする。
 

なお,間にある農地法4条の許可は,農地を農地以外に変更するための許可であり,所有者は変わりません。したがって,農地法3条と4条の許可を合わせたものが5条の許可ということになります。
 

ただ,この許可はそう簡単に出るものではなく,特に5条の許可についてはやむを得ない事情がないと基本的には許可がされません。例えば,農地の所有者の子どもが家を建てようと思っているが,他の土地は無く,他の土地を取得するような費用も無いので,やむを得ず農地を宅地に変更したいというような場合になります。 
 

3 許可の例外

 

原則として上記のようにハードルが高い許可を取る必要があるのですが,許可が無くても良い場合があります。大きく分けて以下の2種類があります。
 


(1)市街化区域の場合

土地が所在する場所が市街化区域に指定されている土地の場合は,農業委員会に「宅地に変えますよ」という届出をすれば良いことになっております。許可だと農業委員会の判断を仰ぐことになりますが,届出は単に届出書を出せば良いだけですので,ほぼ無条件だと思ってもらって良いと思います。



 

(2)許可を必要としない原因等の場合

売買や贈与などで第三者に譲渡する場合は許可が必要になるのですが,許可が不要な原因があります。

例えば,相続の場合は許可は必要ありません。これは農地の所有者が亡くなることによって,民法の規定に基づき相続人が相続するのであって,農業委員会の判断が入る余地が無いからです。なので,相続人がまったく農業をやっていなくても農地を相続することはできます。
 

また,相続人と同じ権利義務を有することになる包括受遺者についても許可は必要ありません。しかし,相続人以外の者が特定遺贈として農地をもらい受ける場合は許可が必要になるので注意が必要です。
 

さらに,時効取得や共有持分の放棄なども農地法の許可は必要ありません
 

加えて,農地を担保として取る場合(抵当権設定)についても農地法の許可は不要です。というのは,あくまで担保に取るだけであって,実際に使っているのは元の所有者であって,現状と何も変更が無いからです。 
 

4 まとめ

 

上記を大まかにまとめると以下のとおりとなります。

【原則】

農地の名義を変えるためには許可が必要
 

【例外】

①市街化区域であれば許可は不要

②相続,包括遺贈,時効取得であれば許可は不要

③抵当権設定であれば許可は不要
 
 

つい先日も,借金が返せないということで,弁済してもらう代わりに債務者が所有する農地の名義を変えたい(代物弁済)というご相談があったのですが,こちらは農地法の許可が必要であり,かつ,許可が得られる見込みはないため,抵当権設定登記にしておくといった事例もあります。
 

農地は,当事者の思い通りに処分できないことの方が多いので,お近くの司法書士・行政書士にご相談ください。

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5月 30 2019

ハンコについてあれこれ

日頃何気なく使っている,「ハンコ」や「印鑑」,重要な時に使う「実印」や「認印」,はたまた契約書などの書類にハンコを押すときの「押印」や「捺印」,複数のページになる場合の「割印」や「契印」など,ハンコに関して実は本来の意味とは違う意味で使っていることがあります。 

今日は,ハンコに関する情報をまとめてみたいと思います。
 

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ハンコは印鑑ではなく印章

 

朱肉を付けて書類にポチっとするハンコ。あれは正式には「印章」と言います。もちろんハンコでも構いません。この点,「印鑑」と呼ぶこともあるかと思いますが,実は「印鑑」は誤りです。

「印鑑」というのは,名前が彫ってあるハンコの事ではなく,朱肉を付けて押したときに映る「印影」を登録している紙のことを言います。その紙が役所に保管されておりますので,「役所に登録してある印影(印鑑)の証明書」が印鑑証明書ということになります。もっとも,現在は紙で登録されていることはなく,データとして登録されています。

ただ,実際にはハンコのことを印鑑と呼ぶことが多いので,私もハンコのことを印鑑と呼んでいます。 
 

実印と認印は登録の有無

 

上記のとおり,役所に印影を登録してあるハンコのことを俗に「実印」と呼び,そうでないハンコのことを「認印」と呼びます。したがって,すごく立派なハンコを作成しても役所に登録していなければ認印ですし,100円ショップで買ってきたハンコを登録すればそれが実印となります。なお,実印,認印ともに法律用語ではなく俗称となります。
 

また,重要な契約のときに実印での押印を求められることがあるかと思いますが,法的な効力としては実印でも認印でも効力が変わることはありませんし,もっと言えばハンコでの押印がなくても署名があれば有効な書面となります(民事訴訟法228条4項)。よく,「今日ハンコを忘れたので指で押します。」みたいなことがありますが,法的にはあってもなくても効力は同じです(ただし,本人が署名したことを否認した場合に指印で立証することはあると思います。)。
 

ただ,署名の場合は本当に本人が書いたのかどうかの判断が難しく,認印だと第三者が押印したものも同じ印影であるため,本人しか持っていないだろう実印を押印した方が本人の関与を立証しやすくなるため,重要な契約では実印での押印を求めることが多いと思います。
 

なお,法的な効力は別問題として,手続的にご本人が関与していることを証明するために必ず実印での押印を求められることがあり,その場合は必ず印鑑証明書(通常は発行から3か月以内)の添付を求められます。例えば,不動産の売買に関する登記申請の際には売主さんの印鑑証明書が必要書類となっておりますし,自動車の売買だと当事者双方の印鑑証明書の提出を求められます。 
 

押印と捺印は基本的に同じ

 

ハンコを押すことを「押印」と言ったり「捺印」と言ったりしますが,どちらもハンコを押すという意味は同じでありどちらでも正しいです。両方の頭文字をとって「押捺」と呼ぶこともありますが,これも同様です。
 

ただ,使い方として押印は「記名押印(ゴム印やすでに印字してあるものにハンコを押す)」として使われることが多く,捺印は「署名捺印(自ら署名をしたうえでハンコを押す)」として使われることが多く,押捺は「ハンコを押すことに加えて指印を押すことも含む」と微妙に違いがありますが,いずれも「ハンコを押す」という意味としては同じですので,結局はどれでも良いということになります。 
 

割印と契印は複数の紙に跨って押印

 

契約書が2ページになるときに,1ページ目の裏と2ページ目を重ね合わせてハンコを押すことがあります。一般的に「契印」や「割印」と呼ばれていますが,これは「契印」となり「割印」は誤りとなります。
 

契印は当事者が知らぬ間に契約書の一部が抜き取られたり加えられることを防ぐためにハンコで痕跡を残しておくことに加えて,一連一体の契約書等であることの証明にもなり,契印がないと役所での申請が通らないことがありますので結構重要な行為です。
 

一方,割印とは正副など同じ書類がある場合に,どちらも同じ内容の書類であることを示すために正副の書類に重なるように押印したり,関連する書類について重なるように押印することを指しますので,実生活上では割印をするケースというのはあまり多くないと思います。
 

なお,切手や収入印紙などが使用済みであることを示すためにハンコを押すことを「割印」と呼ぶことがありますが,これも誤りであり正しくは「消印」と呼びます。
 

ということで,雑学的な内容になってしまいましたが,この仕事をしていると間違って使ってしまうと恥ずかしいケースがありますのでまとめてみました。

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5月 09 2019

仮登記について

登記簿を見て,たまに仮登記が入っていることがあります。

当事務所で,数年前に仮登記を申請した件がやっと本登記できることになったので,今日は仮登記についてまとめてみたいと思います。
 

 
 

通常の登記(本登記)と仮登記

 

不動産を購入した場合,売主さんの名義から買主さんの名義に登記を変更します。これを所有権移転登記といい,登記をすることによって第三者に対する対抗力を持ち,裁判上でも所有者であると推定されます。これにより,売主が第三者に売却していたとしても,登記をしておけば自分が正当な所有者だと主張することができますし,裁判上でも反証がなければ所有者であると認定されます。

ただ,このようにすぐに登記ができれば良いのですが,中にはすぐに登記できないケース登記しないケースもあります。 

例えば,登記申請に必要な権利書等がないけど,とりあえず何らかの登記はしておきたいという場合や,条件付売買や売買予約などまだ売買契約が成立しておらずすぐには登記しないという場合もあります。このうち,前者については不動産登記法105条1号に規定されているため「2号仮登記」,後者が同条2号に規定されているため「2号仮登記」と呼んでいます。
もっとも,権利書が無いような場合には本人確認情報事前通知等によってすぐに登記申請をすることができますので現実的にはなかなか使われない仮登記であり,世の中にある仮登記の大部分が2号仮登記となります。 
 

仮登記のメリット

 

上記のとおり,仮登記には第三者への対抗力はありませんし,所有者であると推定されるわけでもありません(そもそも2号仮登記は所有権は取得していません。)。また,仮登記がされていても所有者は第三者に売却することもできますし,仮登記の存在を無視して当該第三者に登記(本登記)することもできます。 

では,仮登記を行うメリットは何でしょうか。 

これは,条件が成就していないので通常の登記(本登記)をすることはできないが,仮登記をしておいて,後日条件を満たしたときに本登記をすれば,仮登記後に現れた所有者に勝つことができることにあります。
具体的には,1番でAさんの登記が入っており,2番にBさんの条件付仮登記,3番にCさんの登記(AさんがCさんに売却した)があるとします。Bさんは現時点では所有権は得ていないのでCさんが利用することは何ら差し支えありません。
その後,Bさんが条件を満たし,Aさんと共同して2番にある仮登記の本登記をすることでCさんの登記は抹消され,Bさんの登記だけが残ることになり,名実ともにBさんは所有者になることができます。 

なお,このケースで仮登記の本登記を行う場合はCさんの承諾書が必要となり,実体としてもCさんには承諾義務があるのですが,Cさんが承諾してくれない場合はCさんを訴えて勝訴することで本登記をすることができます。 
 

2号仮登記が行われるケース

 

2号仮登記が申請されるケースはたくさんありますが,以下のようなケースが多いかと思います。
 

・死因贈与
自身が亡くなった場合に特定の人に不動産を承継させる場合,遺言が使われることが多いかと思いますが,「死因贈与」という形態で承継されることもあります。
この場合,不動産の所有者が亡くなることによっては初めて贈与の効力が生じることとなりますのですぐに登記をすることはできず,「所有者の死亡」という不確定期限付の仮登記を申請することができます(相続や遺贈については仮登記を申請することができません)。
 

・農地の売買
農地を売買する場合,農地法の許可が必要になります。この許可を得るのに時間がかかることが多々ありますので,「農地法の許可」を条件とした条件付仮登記を申請することができます。
 

・担保としての仮登記
金銭の貸し借りで,貸金が返済されない場合には貸主に不動産の所有権が移転するという「代物弁済予約」を原因として仮登記の申請を行うことがあります。もっとも,弱みに付け込んで,少ない金銭で高価な不動産を取得する事例が多く発生したことから,「仮登記担保法」によって規制されています。
 

・つなぎ融資
更地に建物を建築する場合,契約金,着手金,中間金,最終金など,建築状況に応じてそれなりの金額を建築会社に支払わなければならないケースがあります。
多くの方が住宅ローンを組んで支払うことが多いかと思いますが,住宅ローンによっては建物が完成しなければ融資できないというケースが多く,上記の中間金などは自己資金で賄う必要があります。それが用意できれば何も問題ないのですが,そのような方ばかりではないため一時的に融資してくれる会社があります。その融資のことを「つなぎ融資
」といい,最終的に住宅ローンが銀行から振り込まれた場合は,そのお金でつなぎ融資分を返済し,以降は毎月住宅ローンを返済していくことになります。
この場合において,つなぎ融資の会社も多額の融資を行いますので,土地を担保に取ることがあるのですが,通常の抵当権を設定すると融資額の0.4%の登録免許税がかかってしまいます。そこで,仮登記の出番となります。
 

というのは,抵当権の仮登記の場合は融資額に関係なく一律1000円の登録免許税で良いことになっているからです。
このように,すぐに抹消する予定の抵当権のために何万円も税金を支払って登記をするのはもったいないので仮登記で済ませようということです。
 

・自社従業員への貸付
最近はあまり見かけませんが,サラリーマンの方がご自身が勤める会社から融資を受けるような場合も,上記のように通常の抵当権ではなく仮登記であるケースがあります。 
 

買う予定の不動産に仮登記が入っていたら

 

上記のとおり仮登記の本登記がされてしまうと登記としては負けてしまい,最悪の場合は所有権を失う可能性があります。
したがいまして,ご自身への所有権移転登記に際して仮登記が抹消されるかどうかを確認する必要があります。
もっとも,仮登記どころか抵当権が設定されたままの不動産が売りに出され,売買代金でローンを返済して抵当権を抹消するというケースは普通にあります。
したがって,仮登記が入っていたとしても,抹消されることがほとんどですので,それほど構える必要はないかと思います。

以上,仮登記のお話でした。

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4月 16 2019

事前通知について

権利書(登記識別情報通知を含む。以下同じ。)を紛失等し,申請の際に提供できない場合の代替手段として3つの方法が規定されております。

→ 権利書(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
 

このうち,一番多く使われるのが司法書士等が作成する本人確認情報を提供して申請する場合だと思いますが,稀に事前通知を用いる場合があります。
 

先日,私自身が遺言執行者に就任し,登記義務者となって事前通知で進める機会がございましたので,今後,事前通知の具体的な流れを依頼者の方に説明させていただくために,画像付きでまとめておきたいと思います。
 

 
 

1 事前通知とは

 

そもそも事前通知とは何かというと,上記のとおり登記申請に際して権利書が必要であるにも関わらず紛失等で手元に無い場合に行う手続です。

権利書は,本人確認を行う上での重要な書類の一つであり,権利書を提供することで所有者等の権利者自身が手続に関与していることを示すことができます。逆に言えば,権利書が無くても権利者自身が手続に関与していることが確実なのであれば登記を進めても良いということになります。

そこで,登記申請後,法務局から本当に権利者自身が手続に関与しているのかの通知を送って確認し,問題なければ登記が完了することとなります。

登記が完了する前に法務局から通知が来るので「事前通知」という手続になります(不動産登記法第23条第1項)。
 

なお,上記の本人確認情報は,法務局が事前に通知して確認する代わりに,資格者代理人(通常は司法書士)が本人確認をすればほとんどのケースで事前通知はされず,そのまま登記が完了することになります。あくまで「ほとんどケース」というだけであり,法務局が本人確認の内容が相当でないと判断したときは事前通知はなされますが,私自身及び私の周りで司法書士が本人確認したのに事前通知がなされたというケースは聞いたことがありませんので,ある意味司法書士の本人確認が権利書の代替になると考えていただいても良いです。

その分,責任が重く,故意に虚偽の本人確認情報を提供した場合は,虚偽提供罪として2年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになっており,実際に実刑になった司法書士も存在します(不動産登記法第160条)。
 

したがって,司法書士が本人確認情報を作成する場合にはそれなりの報酬が発生することとなりますので,可能な限り権利書は紛失されませんよう大切に保管してください。 
 

2 事前通知と本人確認情報

 

権利書が無い場合,事前通知であれば費用はかかりませんので本人確認情報の出番は少ないように思われるかもしれませんが,現実的には本人確認情報を提供する場合が多いと思います。それは,大きなお金が動くためです。

売買を想定していただくと,Aさんが所有する土地をBさんに売却する場合,通常は,金融機関でBさんがAさんに対して売買代金を支払い,立ち会った司法書士が権利書等の必要書類を受領してすぐに登記申請を行います。

ところが,権利書が無い場合に事前通知の方法を執ったとすると,Bさんは売買代金を支払ったにも関わらず,確実に登記がされるとは限りません。なぜなら,法務局の事前通知の手続が残っており,Aさんが事前通知の手続を無視してしまうと登記は却下されてしまうからです。そうなると,Bさんは売買代金を支払ったのに登記ができないという恐ろしい事態に陥ってしまいます。

そこで,事前通知が終わってから売買代金を支払えば良いという考え方もあり,実際にこのような方法で売買手続を進めることもありますが,Aさんとしては売買代金をもらっていないのに権利書以外の重要な書類(印鑑証明書など)を提供する必要がありますし,所有権移転時期の特約が入っている場合に実際の登記の日と登記の日がずれることになってしまいます。

この点,本人確認情報を提供すれば,権利書を提供した時とほぼ同様に進むことになりますので,実際には本人確認情報を提供することが多いかと思います。

したがって,事前通知で進めるのは,特に新たな利害関係を生むわけではない抵当権抹消登記だったり,トラブルが生じる可能性が低い親族間の贈与や遺贈などに限られると思います。 
 

3 事前通知の具体的な流れ

 
 

(1)登記申請時
 

登記申請時においては,権利書を提供しないこと以外には特に変わることはありません。強いて言えば,抵当権抹消登記のように本来であれば印鑑証明書が不要な申請でも印鑑証明書が必要になる程度です。
 

(2)郵便局からの通知
 

登記申請をしてから1週間から2週間程度で,住所地宛に郵便局から「本人限定受取郵便」のお知らせが届きます。


 

(3)受け取り
 

上記書面及び免許証等の本人確認書類を持って通知のあった郵便局に受け取りに行くか,郵便局に連絡して自宅に配達してもらい,下記の本人限定受取郵便を受け取ります。「本人限定」となっておりますので,たとえご家族でも代理で受け取ることはできませんのでご注意ください。


 

(4)記入
 

中には,登記申請の内容が記載されており,この内容に間違いが無いか確認してください。問題ないようであれば,回答欄のご署名いただき,ご実印でご捺印ください。


 

(5)法務局への返送
 

この事前通知に関する書類には期限があり,法務局が発送してから2週間以内に法務局に届く必要があります(書面に期限の記載があります。)。

したがいまして,法務局に直接持参されるようであれば大丈夫だと思いますが,法務局に郵送する場合は余裕をもってご返送ください。特に,平成の終わりから令和の始まりにかけて長期連休がございますので,返送期限にご注意ください。
 

(6)登記の完了
 

上記の書面が法務局に到着すると登記手続が再開され,数日後に完了となります。
 

以上,事前通知についてでした。

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3月 30 2018

住所のつながりを証明する書類

登記における所有者等の特定は,住所と氏名で行います。 

例えば,平成20年にA市B町1番地に住む甲野太郎さんが不動産を購入した場合,登記簿には,
 

住所 A市B町1番地

氏名 甲野太郎
 

と登記されています。
 

平成30年になり,甲野さんが不動産を売却する際に,甲野さんがC市に転居している場合,当該不動産を売却する登記の際に提出する甲野さんの印鑑証明書には当然ながらC市の住所が記載されていますので,登記簿に記載されている甲野太郎さんと今回登記手続に関与している甲野太郎さんは別人だと判断され,売却に関する名義変更の登記(所有権移転登記)申請は却下されることになります。
 

そこで,まずは登記簿に記載されている甲野さんの住所をA市からC市に変更する登記を申請し,その後に売買による所有権移転登記を申請することになります。
 

一見,単なる住所の変更なので簡単なようですが,実は奥が深く,場合によってはかなりややこしい手続だったりするので,今回はこちらについてまとめてみたいと思います。
 

 
 

住所の変更は基本的には住民票

 

(1)住所移転が1回

上記の例で言うと,甲野太郎さんは現在お住まいのC市の住民票を取得すれば「前住所」の欄に「A市B町1番地」という住所が記載されていますので,C市の住民票があれば簡単に証明できます。
 

(2)同じ市内(区内)で複数回の住所移転

A市の中でB町,C町,D町,E町と複数回の住所移転がある場合,最新のA市E町での住民票を取得しても前住所としてはD町の住所しか記載されていないことがありますので,これだけでは証明ができません。この場合,履歴が載っている住民票を請求するとすべて記載されている場合があります

具体的には,名古屋市名東区内で複数の移転があった場合,名東区内でのすべての住所が履歴として記載されています。ただし,他の区での履歴は記載されないため,同じ名古屋市内でも区が変わってしまうと,次の(3)以降のケースで住所を繋げるしかありません。
 

(3)異なる市内(区内)での複数回の住所移転

A市→B市→C市と住所移転をしている場合,C市の住民票を取得しても前住所としてはB市の住所しか記載されていないのでA市とのつながりが分かりません。

そこで,次にB市にて住民票除票を請求すると,そこには,「前住所」の欄にA市の住所が記載されており,さらに転出先の住所としてC市の住所が記載されているため,A市→B市→C市のすべてのつながりが証明できることになります。
 

しかし,この住民票除票は転出等により除票になったときから5年が経過すると消除(抹消)されてしまい取得することができなくなります(住民基本台帳施行令第34条1項)。

つまり,本日の平成30年3月30日で考えると,B市からC市に転居したのが平成25年3月30日よりも前だった場合,B市に行ってもすでに住民票除票は消除されているため,取得することができなくなります。

なお,一部の市区町村においては5年以上前の除票でも取得できる場合がありますが,あくまで例外ですので過度の期待はできません。少なくとも名古屋市では絶対に出ませんので別の方法を考える必要があります。
 

(4)戸籍の附票で繋げる

同じ本籍地にある期間に住所移転した場合,その住所の履歴が記載されているものが戸籍の附票という書類です。

例えば,A市B町1番地に本籍地がある方が,本籍地を変えないまま,A市→B市→C市→D市と移転した場合,年数に関係なくすべての住所移転の履歴が記載されていますので,戸籍の附票だけですべての住所を繋げることができる場合があります。
 

ただし,あくまで同じ本籍地内での住所移転しか記載されませんので,転籍により本籍地が変わった場合はそこで途切れてしまいますし,結婚や離婚などにより新しく戸籍が作成された時も途切れてしまいます。加えて,最近よくあるのが電算化(簿冊→コンピューター化)による改正で役所によって勝手に戸籍が作成されている場合です。この場合も途切れてしまいます。

そして,何より厳しいのが,転籍,結婚や離婚,電算化などによって新しく戸籍が作成された場合,従前の戸籍の附票についても住民票除票と同様に5年経つと消除されてしまって取得することができなくなってしまいます。

平成に入り,多くの役所において戸籍の電算化が進んでいますので,昭和時代の住所移転については戸籍の附票で証明することが難しくなっています
 

(5)最後の手段の申述書(上申書)

このように,役所で取得できる書類については保存期間の経過により取得できないこともありますので,完全に住所の繋がりを証明することができないケースもあります。そのような場合には最後の手段として,申述書による自己証明が認められています。

これは,「私は,A市→B市→C市→D市と住所移転をしているところ,A市からB市への住所移転については保管期間の経過について証明することができませんが,登記簿に記載されている甲野太郎は私であることに間違いありません。」というような趣旨の書類を出すことで住所移転登記を認めてもらうということです。
 

もっとも,申述書だけで認められるわけではなく,所有者であることに間違いないことを証明する資料(権利証や固定資産税の納税証明書)を提出したり,「不在籍・不在住証明書」などを提出することもあります。
 

(6)住所移転によらない変更

市町村合併による住所の変更や住居表示実施による変更など,役所の都合で住所が変わる場合があります。

この場合でも住民票で証明することもありますが,役所で変更の証明書が無料でもらえますので,こちらで証明していくことになります。 
 

氏名変更は基本的には戸籍

 

住所と異なり,氏名変更は戸籍謄本等を取得すればすべて繋がります。

氏が変わる場合としては,結婚や離婚が一番多いかと思いますが,その旨はすべて戸籍に記載されています。また,養子縁組によって氏が変わることもありますが,これもまた戸籍に記載されています。さらに,家庭裁判所の許可を得て,氏や名が変わることがありますが,これもまた戸籍に記載されます。
 

そして,戸籍や除籍,改正原戸籍など過去の戸籍については,住民票除票の5年とは異なり,戸籍謄本は永遠に,除籍謄本や改正原戸籍は150年間保存されているため,取得できないケースはあまり多くありません。
 

もっとも,戦災により焼失していたり,すでに保存期間経過で廃棄されている場合(平成22年までは除籍等の保存期間は80年でした。)には,上記のとおり申述書等によって証明していくことになります。
 
 

ということで,住所や氏名の変更は結構地味な登記なのですが,この登記をしないと名義が変えられない重要な登記だったりしますし,結構奥が深いものです。

なかなか住所変更登記にお困りの方は多くないと思いますが,もしお困りの場合はぜひご相談ください。

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1月 30 2018

破産物件の購入

当事務所は,従前から破産物件(破産者が所有している不動産)を取り扱うことが比較的多いのですが,特にここ数か月は多くの破産物件の手続を行ったため,破産物件についてまとめたいと思います。
 


 
 

破産の登記

 
とある個人の方(株式会社等の法人ではない自然人)が破産した場合,当該破産者は不動産を含めた財産の処分が自由にできなくなります破産法78条1項)。
 

このことを示すため,所有している不動産には,「平成○○年○○月○○日○○時 ○○地方裁判所破産手続開始決定」というように破産の登記がなされます。この登記が入ることで,この不動産を買いたい方はご本人ではなく破産管財人と連絡を取って交渉などを行うことになりますし,一方,破産者が勝手に不動産を売却することを防ぐことができます。ちなみに,会社等の法人が破産した場合は,法人の登記簿に破産の登記がされますので不動産の登記簿には破産の登記は入りません。 

 
 

不動産の処分権者

 
上記のとおり,破産者は所有している不動産を自由に売ることはできず,破産管財人が売却することになります。さらに,一定の財産に関しては破産管財人も自由に売却することが出来ず,裁判所の許可を得なければならないことになっており,不動産も許可が必要な財産のひとつとなっています(破産法78条2項1号)。
 

したがって,破産物件を購入するためには,破産管財人と交渉して売買の合意が得られたうえで,破産管財人が裁判所に不動産売却の許可を求め,その許可が出たときに初めて購入することができることとなります。なお,「破産管財人と交渉」と書いておりますが,実際には仲介の不動産業者が入っていることがほとんどですので,値段交渉などは不動産業者を通じて行うこととなり,この点は通常の不動産の購入と同様です。 
 

登記に必要な書類

 
登記的に,買主さんに必要な書類は特に変わりなく,ご本人確認のための免許証等の身分証明書及び住民票となります。
 

一方,売主さんについては,本来であれば所有者の方の印鑑証明書や権利証などが必要となりますが,所有者の方には処分権限が無いため,下記の書類となります。

・裁判所の売却許可決定書

・破産管財人の印鑑証明書兼資格証明書

・破産管財人の本人確認書類 
 

破産の登記や担保権の登記,差押え,仮差押えの登記などの処理

 
裁判所の許可があるといっても,自動的に登記がされるわけではなく,売買に基づく移転登記を当事者の申請によって行います。ただ,移転登記を行っても,破産の登記などは自動的に消えることはありません。ですので,不動産を購入し,登記が完了しても破産の登記等が残っているため,これらを抹消してもらう必要があります。以下,登記の種類ごとに抹消の仕方をまとめます。
 

・破産の登記

売却によって破産者の財産ではなくなりましたので,破産管財人が登記完了後の登記簿謄本を添付して裁判所に破産の登記を抹消してほしい旨の申立てを行います。その後,裁判所書記官が登記所に嘱託して破産の登記を抹消します。通常,1週間から2週間程度で完了します。
 

・抵当権や根抵当権などの担保権

通常の抵当権抹消登記と同様に,抵当権解除証書や登記済証などを添付して売買に基づく移転登記と同時に抵当権等の担保権抹消登記を申請することが多いです。特に破産物件だからといって手続が変わるものではなく,強いて言えば,登記権利者が所有者ではなく破産管財人になる程度です。

もっとも,任意売却は,抵当権の抹消を強制するものではないので,抵当権者が抵当権抹消登記に協力しないということも考えられます。その場合は,破産管財人が「担保権消滅許可の申立て」を行い,裁判所が認めれば,抵当権者の承諾が無くても抹消することが可能です(破産法186条)。この方法によると,抵当権抹消登記は裁判所書記官の嘱託によってなされます。
 

・仮差押,差押(強制執行)などの登記

破産ではない場合の任意売却と同様に,仮差押債権者または差押債権者が裁判所に取下書を提出し,裁判所書記官からの嘱託によって抹消されます。
 

しかし,上記の抵当権者等と同様に,任意の取下げには応じない債権者もいます。この場合,破産管財人が執行裁判所(仮差押命令や差押命令を発令した裁判所)に所有者の破産手続が開始した旨を上申することで,裁判所書記官から抹消登記の嘱託がなされます。というのは,破産手続が開始することで,基本的には仮差押等は効力を失うためです(破産法42条2項)。
 

先日当事務所で手続をさせていただいた件も,仮差押債権者が任意の取下げには応じないとのことでしたので破産管財人である弁護士さんに裁判所に上申書を提出していただき裁判所書記官からの嘱託によって抹消されました。
 

なお,抵当権などの担保権は「別除権」として,破産手続とは関係なく回収することができますので,差押の登記を裁判所に抹消してもらうことはできず,抵当権者と取下げのための交渉を行う必要があります。
 
 

このように,破産物件であることによって通常の手続と異なるところがありますが,「お金を払ったのに自分の物にならなかった!」というようなトラブルが起こることはまず考えられませんので,安心して破産物件をご購入いただき,ぜひ登記は当事務所へよろしくお願いいたします(笑)

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