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不動産売買に関すること

11月 22 2017

地面師真っ盛り

先日,地面師の話を書きましたが,その後もたくさんの地面師事件が報道されています。
 

→ アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口
 

→ 弁護士まで騙されたのか——不動産詐欺事件の最高裁判断で問われる役割
 
 


 

地面師事件のキモの部分は,売主の本人確認であり,そのための書類としては免許証や権利証,印鑑証明書をどうやって地面師側が用意するかとなります。
このうち印鑑証明書については,方法は書きませんが比較的容易に手に入ると思われます(犯罪です)。しかも偽造ではなく本物を入手することが可能ですので,当然ながら何も事情を知らない司法書士が見抜くことは不可能です。もし,偽造したものであれば,コピーすることで見抜ける場合があります。
 

あとは免許証と権利証ということになりますが,免許証は精巧に偽造する組織があるそうですので,何らかの誤りがあれば別ですが,これもまた見抜くことはかなり厳しいかと思います。
なお,誤りを見抜く方法として,比較的有名な以下の方法で発覚する場合があります。
 

(1)最初の2桁は,最初の免許取得地
最初の2桁は初めて免許を取得した都道府県(北海道はさらに細かい)となっています。すべての都道府県の番号を覚えるのは大変ですが大まかな地方としては,10番台が北海道,20番台が東北,30番が東京,40番台が東京以外の関東甲信越,50番台が中部,60番台が関西,70番台が中国,80番台が四国,90番台が九州沖縄となっています。
このうち,30番台は東京の30番のみですので,31とか32とかであれば一発で偽造と判明します。また,2桁目が6以上の大きい数字は新潟(46),山梨(47),長野(48),静岡(49),鹿児島(96),沖縄(97)しかありませんので,40番台または90番台以外の大きい数字の時点で偽造と判明します。
もちろん,最初の免許取得地を聞いて,番号が異なれば偽造を疑う一つの要素となります。
 

(2)次の2桁は初めて免許を取得した西暦の下2桁
免許証番号の下に原付や自動車などの取得年月日が書いてありますが,そことのズレで偽造が判明する場合があります。
例えば,私が初めて免許を取得したのは平成8年(1996年)であるため,3桁目と4桁目は「96」になっています。
 

(3)最後の数字は発行回数
紛失等により再発行した回数が記載されます。多くても2くらいだと思いますので,7とか8だと疑った方が良いと思います。
 

残る権利証についてですが,権利証と言っても,従前の権利証と平成17年から始まった登記識別情報通知の2種類があり,そのどちらかによって対応が変わります。

まず,先に登記識別情報通知について説明すると,これは紙そのものが重要なのではなく,その紙に記載されているパスワードが重要となります。そして,登記申請をする前にそのパスワードがちゃんと発行されているのかどうか(失効確認),また,パスワードが分かれば登記申請前にそのパスワードが有効かどうかを確認することができます(有効確認)。登記申請の全件において有効確認をすることは無いと思いますが,地面師がかかわるような大きな金額の取引であれば,事前に有効確認をすることで未然に防ぐことができます。
もっとも,当該登記識別情報が盗まれたものだとすると,パスワードも正しいものですので司法書士が見抜くことは不可能です。
 

最後に,従前の権利証の場合,紙そのものが重要ではあり,特に偽造防止措置がとられているわけではありませんので,カラーコピーをすることは可能です。しかしながら,経年劣化による紙の質感の変化などで気付くことはあるかと思いますので,他の書類よりは比較的見抜きやすいと思います。
 
 

上記の弁護士さんが騙された事件は,権利証を偽造するのではなく,弁護士さんに本人確認情報を作成してもらい,登記申請をしています。

そもそも,本人確認情報とは,登記申請を代理人として申請する司法書士または弁護士が,売主さん本人であることを確認して「本人確認情報」という書類を作成すると,それが権利証の代わりになるというものです。正確には違いますが,一時的に権利証を再発行するようなものです。したがって,司法書士や弁護士が地面師側と組むと容易に権利証を作り出すことができることになります。実際に,地面師側についた司法書士が逮捕されている事件もあります(もちろん,犯罪です。)。
 

上記の弁護士さんの事件は,弁護士さんが地面師側だったのではなく地面師側に騙されたものですが,正直なところ,司法書士であればもっと深く調査をしたと思います。例えば,本人確認を行う場所を事務所ではなくこちらから売主さんの自宅にお伺いして室内に飾ってあるものなどからも情報を収集します。以前私が売主さんのご自宅にお伺いしたときは,賞状が飾ってあったのでその賞状の取得の経緯を聞いたり,置いてあるDVDを見てその話しの内容を伺ったりもしました。
 

もちろん,これにより100%防げるものでもありませんが,その可能性を少しでも減らすべく調査を行わなければなりません。
 

と,いろいろ書いておりますが,幸いにして私は地面師事件に巻き込まれたことが無いので偉そうなことを書いているにすぎず,実際に巻き込まれた時に本当に見抜けるかどうかは分かりません。ただ,そうなったときに見抜ける可能性を高めるよう,日々様々な情報を収集するしかありませんね。

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9月 21 2017

不動産屋さんを通さない不動産の売買について

最近,親族間での売買や友人知人,またはご近所さんなど,不動産業者を通さない不動産の売買についてのご相談を多くいただいておりますので,今日は不動産業者を通さないことのメリット及びデメリットについてまとめてみたいと思います。 

 

そもそも不動産屋さん(不動産仲介業者)とは何か

 

不動産を購入される方の多くが,自宅に入ったチラシやインターネットでの検索,場合によっては現地に立ててある看板などを見て購入されていると思います。中には,欲しい不動産の目星を付けて登記簿で所有者を確認し,直接売主さんと交渉を行うという方もいらっしゃるかもしれませんが,極々少数です。
 

一方,不動産を売却しようと思っている方も,インターネットや新聞広告などを行って自ら買主さんを探すこともできるでしょうが,現実的にはほぼあり得ません。
 

また,不動産を購入される方にとって,もともとお住まいの地域であればご存知かもしれませんが,小中学校の学区,用途地域(住居専用地域や商業地域など)などの調査も必要ですし,売買契約が成立した際の契約書もなかなかご自身で作成するのは難しいです。

このように,購入を希望される方と売却を希望される方の間を取り持って売買を仲介するのが不動産屋さん(不動産仲介業者)です。 
 

不動産屋さんに依頼するメリット

 

【売主さん】
 

①売買契約が成立するまで無料で買主さんを探してくれる

→仲介手数料は,原則として売買契約が成立したときに発生する費用であるため,広告費用などはすべて不動産屋さんが負担します。

②売買代金の妥当性

→不動産屋さんは過去の周辺相場を知ることが出来ますので,特殊な事情が無い限りある程度妥当な金額での価格で成立する可能性が高いです。

③買主さんに知らせるべき情報を調査して説明してもらえる

→不動産屋さんは,契約前に契約内容に関する「重要事項説明」を売主さん買主さん双方にしなければならないこととなっているため,様々な調査を行ったうえで説明してもらえます。
 

【買主さん】
 

①売買契約が成立するまで無料で案内してもらえる

→上記のとおり,仲介手数料は,原則として売買契約が成立しないと発生しませんので,気に入る不動産が出てくるまで何度でも無料で案内してもらえます。

②売買代金の妥当性

→上記のとおり,特殊な事情が無い限り妥当な金額での売買価格になります。

③必要な情報説明してもらえる

→上記のとおり,重要事項説明がありますので,ご自身で調べなくても不動産屋さんが説明してくれます。

④リスク回避

→まったく面識がない売主さんに対して直接大金を支払うことに躊躇する方が多いかと思いますが,不動産屋さんが入ることで詐欺などのリスクを軽減することができます。

⑤保証がある場合がある

→すべての不動産屋さんではありませんが,一部の不動産屋さんは耐震保証や地盤に関する保証をしてくれることがあります。

⑥責任追及できる場合がある

→購入した不動産に問題があった場合,売主さんに責任追及するのみならず仲介した不動産屋さんにも責任追及できる場合があります。一般的に売主さん個人よりも不動産屋さんの方が資金力があるため,売主さんと不動産屋さん双方に責任追及できた方が有利です。 

なお,売主さんが不動産屋さんに仲介を依頼している場合,買主さんが直接売主さんから購入することは非常に困難です。 
 

不動産屋さんに依頼するデメリット

 

売主さん及び買主さんともに不動産屋さんに仲介手数料を支払わなければならないことです。

仲介手数料は不動産の価格によって異なりますが,一般的には400万円を超える価格になることが多いため,「売買価格の3%+6万円+消費税」が上限となります。

例えば,1000万円の不動産であれば388,800円が上限となり,通常はこの金額を売主さん買主さんそれぞれが不動産屋さんに支払うこととなります。 
 

不動産屋さんを通さない売買を行うケース

 

最初に書いておりますが,親族間や知人間での売買であれば詐欺などのリスクはほとんどありませんし,小中学校の学区や用途地域などはすでにご存知かと思われます。また,知人間であれば違うかもしれませんが,親族間であれば売買価格の妥当性もあまり必要がありません(例えば,親が子どもに不動産を売却する場合,相場よりも安く売却することが多いかと思います。)。

とすると,税金の申告等の際に必要となる契約書の作成と不動産屋さんも関与しない不動産の名義変更(所有権移転登記)さえできれば,仲介手数料を支払ってまで不動産屋さんに仲介してもらう必要がないという方も多くいらっしゃると思います。
 

そこで,当事務所では,売主さん及び買主さんから直接ご依頼を受けて,①契約書の作成,②名義変更等の登記関係全般の業務を行っております。以下,かかる費用について記載いたします。なお,当事務所の報酬には別途消費税がかかります。
 

【売主さんにかかる費用】
 

・実費部分

①売買契約書に貼付する収入印紙

→売買価格によって変わりますが,多くのケースで1000円から3万円の範囲内になるかと思います。

②事前調査費用

→不動産の数などによって異なりますが,1000円から2000円程度です。

③郵送料

→数百円程度です。
 
 

・当事務所の報酬部分

④売買契約書作成費用

→ページ数や内容などに関係なく一律2万円

※ご自身で作成される場合は不要です。

⑤登記原因証明情報作成費用

→ページ数などに関係なく1万円

【場合によっては売主さんにかかる費用】

⑥住所やお名前の変更登記が必要な場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して1万円から2万円程度です。

⑦抵当権抹消登記が必要な場合

→内容次第となりますが,問題なく抹消できる場合は実費及び報酬を合計して1万円から2万円程度です。ただし,古い抵当権などの場合は簡単に抹消できませんので,費用や時間がかかります。詳細についてはこちらをご覧ください(遥か昔に登記された抵当権抹消登記)。 
 
⑧権利証が無い場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して5万円から10万円程度です。
 
 

【買主さんにかかる費用】

・実費部分

①売買契約書に貼付する収入印紙

→売買価格によって変わりますが,多くのケースで1000円から3万円の範囲内になるかと思います。

②登録免許税

→不動産の評価額や減税の可否によっても変わります。通常であれば,土地は評価額の1.5%,建物は評価額の2%となります。

③登記事項証明書

→不動産の数によって異なりますが,1000円~2000円前後になることが多いです。

④郵送料

→1500円程度です。
 
 

・報酬部分

⑤売買契約書作成費用

→ページ数や内容などに関係なく一律2万円

※ご自身で作成される場合は不要です。

⑥所有権移転登記報酬

→不動産の数に関係なく1登記申請当たり5万円

【場合によっては買主さんにかかる費用】

⑦抵当権設定登記がある場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して数万円から15万円程度です。
 
 

なお,登記簿の内容によっては,上記では該当しないことも稀にございますので,お問い合わせいただければと思います<(_ _)>

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8月 04 2017

地面師暗躍

先日,司法書士業界が震撼した,全国的にも報道される大きな事件がありました。 


 

「積水ハウス,63億円詐欺被害・・・地面師か」
 

以下,読売新聞の記事( http://www.yomiuri.co.jp/national/20170802-OYT1T50136.html )を引用します。

大手住宅メーカー「積水ハウス」(本社・大阪市)が東京都内の土地取引を巡り、購入代金63億円を支払ったにもかかわらず、土地を取得できない事態になっていることが、同社などへの取材でわかった。同社から相談を受けた警視庁は詐欺事件として、捜査を始めた。関係者によると、所有者になりすまして不動産取引を持ちかける「地面師」の被害に遭った可能性が高いという。
 

以上引用終わり 

 

この事件について,様々な報道がされておりますが,取引には司法書士が関与していましたので,司法書士的な観点から書いてみようと思います。 
 

不動産取引に関する司法書士の関与

 

不動産の売買を行う場合,多くのケースでは不動産仲介業者が間に入って売買契約を締結し,その後金融機関などで代金の決済を行います。代金決済が終わったら,法務局にて現在は売主さん名義になっている不動産の所有者について買主さんに変更する登記を申請します。
 

このとき,司法書士が登記申請を代理して行いますが,その前の段階の代金決済にも関与し,その時に買主さんや売主さんご本人に間違いないか,物件は合っているかなどを確認して,関係書類にご署名ご捺印等をいただきます。通常,司法書士がすべての書類をチェックし,OKが出た時点で代金決済が行われますので,司法書士の確認というものはかなり重要であり,日本中で行われている不動産取引の大部分に司法書士が関与しています。 
 

名義変更に必要な書類

 

不動産の名義変更に必要な書類はいくつかありますが,その中でも重要なのは売主さんの書類であり,特に権利証と印鑑証明書は重要です。

そして,登記申請そのものに必要ありませんが,ご本人であることを確認しなければなりませんので,運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要となります。
 

以下,それぞれの書類について細かく書いていきます。
 

(1)権利証

「権利証」という名称は俗称であり,正式には「登記済証」または「登記識別情報通知」という書類になります。法務局によって移行時期は異なりますが,概ね平成17年から平成20年頃までに「登記済証」から「登記識別情報通知」に変わっております。

まず,登記済証という書類は,登記が完了したときに法務局から発行される書類であり,昭和の時代だと薄い和紙で作成されていることが多いと思います。権利証に有効期限等はありませんので,40年や50年前に作成された書類でも有効な書類となります。そのような時代に偽造防止技術は発達しておりませんので,悪い人が偽造しようとすると,比較的偽造しやすい書類かと思います。

一方,登記識別情報通知は,パスワードが記載された書類であり,書面そのものに効力があるわけではありません。また,事前にパスワードを教えてもらえれば,そのパスワードが有効か無効かを調べることもできますので,こちらの偽造という行為そのものにはあまり意味がなく,悪い人も登記識別情報通知を偽造するということを恐らく少ないと思われます。
 

(2)印鑑証明書

役所から発行してもらう書類であり,偽造防止が施されていますので,偽造することは簡単ではないと思いますが,悪い人は精巧に偽造するようです。

ただ,私の印象としては,印鑑証明書は偽造されるというよりも,本人に成りすまして勝手に印鑑証明書を取得するということの方が多いと思います。この場合は,当然本物の印鑑証明書です。
 

(3)本人確認書類

ご本人であることを確認するために,運転免許証やパスポートなどを拝見しますが,やはりこちらも偽造されたものが出回っているようです。完璧に偽造されてしまうと,弁護士や司法書士でも見抜くことは困難だと思います。 
 

司法書士の責任

 
 

司法書士は登記手続の専門家であるため,万が一,事故が起こってしまうと賠償責任を負うことがあります。

賠償責任を負うのはあくまで過失や故意がある場合に限られますので,司法書士がどう頑張っても見抜けないような場合には賠償責任を負わないこともあります。とはいえ,専門家である以上,まったくのゼロということは少ないと思われます。
 

以下,司法書士に賠償責任を認めた事例をいくつか挙げてみます。
 
①運転免許証の有効期限がおかしい

現在,運転免許証の有効期限は「誕生日の1ヶ月後まで」となっていますが,詐欺師が持っていた免許証は異なる日付でした。
 

②どこが偽造されているのか特定されていないがしっかり確認しなかった

免許証が偽造されていたものの,免許証ケースに入ったまま司法書士が確認し,OKと判断した。この裁判例は,どのような偽造がされていたのか,おかしな点があったのかはわからないのですが,司法書士の確認が甘かったということをもって賠償責任を負うこととなりました。

③免許証と印鑑証明書が偽造されていたが,住所などの部分に擦れやインクのシミがあり,しかも司法書士会が注意喚起をしていた

一見してすぐにわかるようなものではないのですが,注意深く見れば見抜ける内容であり,司法書士会が注意喚起をしていたので,司法書士としては見抜くべき事案ということでした。
 

①と③は見抜けなかった司法書士に落ち度があるのは分かるのですが,②についてはケースから出していたとしても見抜けたかどうかは不明であり,司法書士的にはなかなか厳しい判断です。 
 

司法書士は賠償できるのか

 

仮に裁判等で司法書士に賠償を命じる判決が出たとしても,その司法書士にお金が無ければ賠償することができません。特に不動産は高価な財産ですので,賠償できないケースもあると思います。
 

このような事態に備えて,司法書士は保険に入っており,通常はその保険から賠償されますので,万が一事故が起こったとしても被害者の方は保険会社から回収することができることになっています。もっとも,車の保険のように任意保険であるため,もしかしたら保険に加入していない司法書士もいるかもしれませんので,ご依頼される際には一応ご確認いただいた方が良いかもしれません。
 

なお,当事務所はしっかり保険に加入しております。もちろん,保険に頼らなければならないような事態に陥らないことがベストなのは言うまでもありません。 
 

今回の事件について

 

さて,今回の事件ですが,ネット上の記事によれば本人確認のためのパスポート及び印鑑証明書が偽造だったようです。

まだ捜査中の段階であるため,事件とは無関係な私ではどのような偽造をされていたのか知る由もありませんが,法務局の職員が見抜いたということは,司法書士でも見抜くべき事案だったと推測されます。そして,司法書士的に恐ろしいのは,賠償責任です。上記のとおり,司法書士は保険に入っていますが,最大で10億円程度です。この事件において司法書士の責任がどの程度認められるのかわかりませんが,保険で賄いきれない可能性も十分あると思います。 
 

いくつかの疑問点

 

ここからは,単に思うことを書き綴るだけですので,結論がないのですが,いくつかある疑問点について書いてみます。  
  
・仮登記は通っている

登記簿を見ると,I社の仮登記がされており,その後I社の仮登記の移転請求権仮登記が上記のS社名義でされています。仮登記は文字どおり「仮」の登記であるため,書類も少なくて済むのですが,それでも所有者の印鑑証明書が必要になります。この時は法務局は印鑑証明書の偽造を見抜けなかったのでしょうか。それとも,このときは本物の印鑑証明書があったのでしょうか。
 

・相続登記の早さ

この事件の後,真の所有者が亡くなっており,その後に相続人名義の登記がされているのですが,相続登記が亡くなってからわずか10日で申請されています。何か事情が無い限り,こんなに早く申請することはありません。もしかしたら,新たな被害者が生まれることを防ぐために,すぐに相続人名義に変えたのでしょうか。ちなみに,評価額が分からないので正確ではありませんが,この登記を申請する際に法務局に納める登録免許税だけでも1000万円以上の現金が必要です。
 

・中途半端な送金額

売買価格70億円に対して,63億円を送金しているようです。上記のとおり,代金決済とは全額支払うことを意味しますので,なぜ売買代金の9割だけしか払っていないのかよくわかりません。もしかしたら,買主側として登記ができるか怪しく思っており,全額の支払いを登記完了後とする合意をしていたのかもしれませんが,それだったら9割ではなく5割でも良かったはずです。いずれにしても売買代金の9割だけ払って登記申請をするというのは通常無い話です。
 

・犯人はどうやって現金を手にするのか

数十億円もの現金を引き出すことは現実的にかなり難しいですし,どこかの銀行に送金しているのであればすぐに凍結されてしまいます。記事によれば5億円は現金だったそうですので,その分は得ることができますが,残り数十億円はどうやって手に入れるんでしょうね。
 
 

幸いにして,私は地面師に遭遇したことはありませんが,今後も気を付けて業務を進めていきたいと思います。

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3月 30 2017

平成29年4月1日からの各種減税措置

去る3月27日に参院本会議にて平成29年度税制改正関連法案が可決成立いたしました。これにより,新たな減税措置が講じられることになったり,平成29年3月31日をもって期限切れになる各種減税措置について延長されることになりました。
 

上記のリンク先を辿っていくとどのような内容になるのかはわかるのですが,たどり着くのが大変なので,一般的に関係がありそうなものを以下にまとめておきます(日本酒造組合の特例などは省略しております。)。
 

 

(1)租税特別措置法72条関係(延長)

 

土地売買で取得する場合,本来は土地の評価額の2%の登録免許税を納めなければなりませんが,現在は1.5%に軽減されております。これが平成31年3月31日まで延長されました。
 

土地のみ関するものであり,かつ売買に限られます。したがって,建物については,下記(2)に該当しなければ減税措置はなく,取得原因が売買以外(贈与,相続など)の場合には減税されません。 
 

(2)租税特別措置法72条の2,73条,75条関係(延長)

 

建物新築した場合,本来は建物の評価額の0.4%の登録免許税を納めなければなりませんが,現在は0.15%(長期優良だと0.1%)に軽減されております。

また,建物売買で取得した場合,本来は建物の評価額の2%の登録免許税を納めなければなりませんが,0.3%(長期優良だと0.2%または0.1%)に軽減されております。

そして,建物の建築や売買での取得に際して住宅ローンを組む場合,本来は融資額の0.4%の登録免許税を納めなければなりませんが,0.1%に軽減されております。
 

以上について,平成32年3月31日まで延長されました。
こちらは平成32年までの延長です。 
 

(3)災害に関する税制上の措置(新設)

 

被災者生活再建支援法が摘要される自然災害の被災者等が当該自然災害で滅失した建物に代わるものとして新築等をした場合の保存登記や土地の取得に関する移転登記等,さらに新築等のための住宅ローンに関する抵当権設定登記について,当該自然災害が発生した日から5年間はすべて登録免許税を免税とする。 
 

この免税措置は平成28年4月1日以降に起こった自然災害に適用されますので熊本地震についても適用があります。また,あくまで平成29年4月1日以降に登記をする場合に免税されることとなっておりますが,平成28年4月1日から平成29年3月31日までに登記したものについては納めた登録免許税が還付されることとなっております(ただし,別途還付に関する申請が必要です。)。
 

なお,東日本大震災はこの免税措置には該当しませんが,そもそも東日本大震災に関しては,別途免税となる法律(震災特例法)がありますので,こちらをご覧ください(平成33年3月31日まで)。
東日本大震災で被災した建物・船舶・航空機を再取得した場合の登録免許税の免除特例について(PDF)

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3月 01 2017

登録免許税の減税について

こちらのページで簡単に紹介させていただいているとおり,一定の条件を満たすと登記の際の登録免許税が大幅に減税されます。

→ 減税のための条件

ただ,実際にはここで紹介させていただいている条件以外にも細かな条件があったりしますので,ここでまとめておきたいと思います。
 

 
 

どのような減税措置なのか

 
住宅用の家屋を取得を促進するため,一定の条件を満たした場合に登記の際に以下のとおり減税されます。
 

①建物保存登記

建物を新築した場合,本来であれば登録免許税は建物の評価額の0.4%となっておりますが,一般的な住宅の場合は0.15%に,長期優良住宅の場合は0.1%に減税されます。
 

②所有権移転登記

いわゆる建て売りの物件だったり中古の戸建て住宅を購入する場合,本来であれば登録免許税は評価額の2%となっておりますが,一般の住宅であれば0.3%に,長期有料住宅であれば0.1%に減税されます。本来の税率の約1/7~1/20ですので,かなり大きな減税になると思います。
 

③抵当権設定登記

住宅を購入される方の多くが住宅ローンを組まれると思いますが,その際の抵当権設定登記について,本来であれば登録免許税は融資額の0.4%のところ0.1%に減税されます。 
 

減税のための一般的な条件

 
減税のための条件のページより細かく条件を記載いたします。
 

①戸建ての家またはマンションを購入する場合であること

つまり,新築の家を建てるために土地を購入した場合は残念ですが土地の購入に関する所有権移転登記や抵当権設定登記に関しては減税されません

また,戸建ての一軒家(新築建売や中古物件問わず)を購入された場合やマンションを購入された場合でも,土地(敷地権)の所有権移転登記部分については減税されません。ただし,抵当権設定登記の登録免許税に関しては土地と建物の両方を購入するためのローンであっても全額減税されます。

さらに,取得の原因は「購入」に限られておりますので,「売買」または「競落(不動産競売で落札)」のみとなります。したがって,相続,遺贈,贈与,財産分与,共有物分割などの原因の場合は減税されません。
 

②購入される方がその建物に住むこと

そもそもこの減税措置は住宅用の家屋を購入する場合に減税されるものであるため,いわゆる別荘だったり賃貸用の投資物件を購入された場合には減税されません。

したがって,購入された方がその物件にお住まいになる必要があります。つまり,住民票を当該物件の住所に移す必要があります。なお,事後的に転勤や買い替えなどでその物件の住所から移転したとしても,減税分を納め直す必要はありません。また,住む予定ではあるものの何らかの事情で登記の時に住民票が移せない場合にはその理由を記載した申立書を提出することで認められる場合があります。
 

③建物の床面積が50㎡以上であること

あまりにも小さいワンルームのようなマンションの場合は減税されませんが,ほとんどの戸建てやマンションはこの条件は満たしていると思います。
 

④購入する建物が建築してから所定の年数以内であること

基本的には,新築されてから20年以内の建物しか減税されないものの,下記構造の建物に限り25年以内であれば減税されます。

※石造・れんが造・コンクリートブロック造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造

マンションの場合は鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造であることがほとんどであるため,マンションについてはほぼ25年であることが多いのですが,戸建ての場合だと木造や軽量鉄骨造の場合が多いため20年であるケースが多くなります。

なお,この日付は建築年月日の日付で判断するため,建築日からちょうど20年であれば減税されるものの1日でも超過してしまうと減税されなくなってしまいます。
 

⑤併用住宅の場合は床面積の90%超が居宅であること

条文では,「専ら個人の住宅に供する建物」と規定されており,この「専ら」が90%ということになります。

したがって,事務所兼自宅を建築された場合に,事務所部分が10%未満であれば減税されることとなります。

なお,減税されるのは居宅部分ではなく事務所部分も含めたすべてについて減税されますが,居宅部分が90%以下の場合は,居宅部分についてもすべて減税されないということになります。
 
 
ここからは,手続的な条件です。

⑥住宅用の家屋であることの証明書を役所から取得すること

名古屋市であれば市税事務所,他の地方自治体であれば役所の税務課で取得することができます。ほとんどの自治体で手数料は1300円となっております。
 

⑥1年以内に登記すること

建物を新築して,または建物を購入して1年以内に登記しなければ減税されません。 
 

特殊なケースあれこれ

 
①共有の場合

夫婦や親子など親族と共同で購入することがあるかと思います。この場合,購入される方全員がその物件にお住まいになるようであれば何も問題ありませんが,共有者の一部が当該物件に住まないケースもあります。その場合は,住む方の共有持分に限り減税されることになります。したがって,子どもの持分が2/3,親の持分が1/3で子だけが住むという場合は,2/3に限り減税されることとなります。
 

②共同住宅の場合

アパートを購入し,そのうちの一部屋に住むという場合は,「専ら個人の住宅に供する建物」ではないため減税されません。
 

③建築から20年または25年を超過している場合

基本的には減税されませんが,建築士さんなどが発行する「耐震基準適合証明書」があれば,期間を超過していても減税されます
 

④いわゆる借り換えの場合

マイナス金利の影響などで,住宅ローンの借り換えをされるケースがあるかと思いますが,この場合は,「新築または取得するための資金の貸付」ではないため,減税はされません。
 

⑤貸主が金融機関以外の場合

一般的には住宅ローンを組む際は銀行や信用金庫などの金融機関から借り入れると思いますが,特に貸主に関する制限はありませんので,例えば親から購入資金を借り,親名義で抵当権を設定する場合でも減税されます。
 

⑥根抵当権の場合

上記のとおり,「新築または取得するための資金の貸付」に限定されているところ,根抵当権だと債権の内容が特定できないため減税されません
 
 

このほかにも様々な細かい条件がありますが,多くの場合は上記内容で解決できると思います。

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4月 28 2016

認知症の方が所有されている不動産の贈与・売買

本日,日経新聞に成年後見に関する記事がありました。
 

成年後見の申し立て最多 第三者選任7割、最高裁まとめ
 

以下,日経新聞(http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG27H7U_Y6A420C1000000/)からの引用です。 
 


 
 

ざっくりと内容を説明すると,現在は成年後見人として選任されるのは,約7割が第三者で親族が後見人になるのは残りの3割となっているそうです。また,第三者たる後見人のうち一番多い職業は司法書士となっており,弁護士と司法書士と合わせて5割になります。

現在,私も数名の方の成年後見人や成年後見監督人に就任しており,その中で不動産について扱うことがたびたびあります。また,先天性の障害により比較的若い方が成年後見制度を利用されることもありますが,大多数は認知症等による高齢者の方になります。

ということで,今回は認知症等に罹患されている方の不動産の贈与や売買等についてまとめてみたいと思います。

 
 

意思能力があればすべて自由です

 
一般論として,ご自身で所有されている不動産を売却したり,贈与することは基本的には自由です(農地等については一定の制限があります)。認知症と一言で言っても,軽度の方から重度の方までいらっしゃるわけですから,例え,認知症の方であっても,しっかりと売却や贈与について理解されていれば問題なく売却や贈与をすることは可能です。
 

この「売却や贈与について理解する」という能力のことを意思能力と呼び,意思能力がない方が契約等した場合は,法律上の規定はありませんが当然に無効ということになっています。
 

ただし,「意思能力」というものは目に見えるものではありませんので,その判断はなかなか難しいものがあり,時には親族同士で揉め事に発展することもあります。 
 

意思能力に不安がある場合

 
不動産の贈与や売却に関する登記をする際,多くのケースで司法書士が関与します。登記申請についてご依頼を受ける際に,司法書士は必ず所有者の方の意思確認を行いますが,もしご本人の意思能力が低下しており,贈与や売却についてご理解いただけないような状況であると判断すると登記申請はできなくなります。
 

私は,過去に意思能力が無いとして売買手続を進めなかったことは何度もありますし,その逆もありますが,やはり進めないという判断をして皆さんに告げるときには気が重くなります・・・。
 

判断するための方法として,後見等でも用いられる長谷川式認知症スケール等もありますが,後見の申立てをするわけではないので,私はより具体的な方法で意思能力の確認をしています。売買であれば売買代金や売買の相手方の確認,贈与であれば相手方の確認に加えて,その方との関係性,そもそもの不動産の取得経緯などを確認します。また,わざと売買等の不動産ではない別の不動産の写真や登記事項証明書をお見せして「この不動産を売買(贈与)されるんですよね?」など確認して,訂正されるかどうかなども行っています。
 

とはいえ,単なる勘違いで間違えるということもありますので,結局は総合的に判断し,司法書士が責任を持つしかありません。 
 

意思能力が無いと判断した場合

 
意思能力があると判断できるようであれば,通常の売買ですので特に問題はありません。
 

しかし,意思能力がないと判断される場合は,売買等を諦めるか,成年後見制度の利用を考えなければなりません。もっとも,成年後見制度を利用すれば必ず売却できるかというとそうではありません。
 

成年後見制度を細かく分けると,(狭義の)成年後見,保佐,補助と3つの類型があります。いずれも,成年後見人等の保護者が選任され,ご本人に代わって契約をしたり,ご本人の行う契約等に同意することによって有効な契約をすることができます。

もっとも,保護者が勝手に契約等ができるわけではなく,あくまでご本人のためになる行為でなければ代理等を行うことはできません

例えば,特にお金に困っていないのにご本人所有の不動産を売却することは問題になる可能性ありますし,ましてや贈与などしてしまったら問題になる可能性が極めて高いです。さらに,不動産の中でも「居住用」と判断されるような不動産だと,家庭裁判所の許可が必要になってきますので,ますます売却は難しくなります。 
 

売却すべき事情がある場合の手続

 
ご本人さんが老人ホームへの入所等で資金が必要である等の理由により,成年後見人等が代理人となって売却する場合,以下のようになります。
 

【居住用不動産ではない場合】
 

基本的には通常の売買と同じ書類が必要となりますが,売主さん側の必要書類としては,成年後見人の印鑑証明書+実印,成年後見の登記事項証明書,権利証が必要となり,ご本人さんの印鑑証明書等は不要になります(そもそも成年後見が開始されると印鑑登録ができませんし,すでに登録されている印鑑は自動的に廃止されます。)。
 

【居住用不動産の場合】
 

売主さん側の書類としては,上記同様,成年後見人の印鑑証明書等に加えて裁判所の許可書が必要になります。また,重要な点としては,裁判所の許可書があるため,権利証は不要となります。
 

なお,「売却すべき事情がある場合」としており,贈与のことは触れておりません。これは,上記の通り成年後見において贈与が正当化される事案は極めて少ないと思われるためです。したがって,意思能力があるときに贈与をすることは問題ありませんが,意思能力がないと判断される場合は,贈与をすることはまず不可能だと思われます。
 

当事務所では,不動産に関することに限らず,成年後見に関する業務も行っておりますので,お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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4月 01 2016

紛らわらしい「登記○○」という書類など

先日,事務所に「登記簿謄本」を落としてしまったのですが,どうしたらいいですか?!不動産を取られてしまったり,悪用されませんか?!」という慌てた感じのご相談をいただきました。結論としては,登記簿謄本を紛失しても,不動産を取られる等,大変なことになってしまうことはありませんが,一般の方はどのような書類がどの程度大事なものなのかということをご存じないと思いますので,今回は「登記○○」という書類についてまとめたいと思います。
 
 

 
 

一番大切な書類「登記識別情報通知書」

 

これまで何度も書いておりますが,「登記識別情報」というパスワードが書かれた書類で,従前の権利証に相当するものです。
 

こちらを紛失してしまうと,今後の登記の際に本人確認手続や事前通知が必要になってしまいますし,万が一,印鑑証明書と一緒に紛失してしまうと,勝手に名義が変えられてしまう恐れがあるくらい,とても大切な書類となります(もちろん,勝手に名義を変えるのは犯罪です。)。
 

ですので,登記識別情報を外出先で落としたことが間違いないようであれば,直ちに警察に届け出た方が良いと思います。
 

紛失後に登記手続きを行う場合はこちら 
 

登記が完了したことを証する,文字通りの「登記完了証」

 

何らかの登記を申請した場合,登記が完了したことを証するために法務局が発行する書類です。
 

特にこの書類に何らかの効力があるわけではないため,私も返却する際は「捨てていただいても大丈夫です。」と説明しています。 
 

誰でも取得できる「登記事項証明書」

 

現在の不動産の現況や権利関係が記載されている書類で,従前の「登記簿謄本」と同じものです。
 

これは,法務局に行けば誰でも取得できる書類ですので,紛失したからといって問題になることはありません。ただし,登記をした当時の住所等が記載されていますので,むやみに他人には見せない方が良いと思います。 

なお,「証明書」という名前のとおり,確定申告など何らかの手続に使う場合はこの登記事項証明書が必要となります。 
 

登記事項証明書の簡略版「登記事項要約書」

 

要約書という名前のとおり,上記の登記事項証明書について要約した内容が記載がされた書類となります。
 

例えば,登記事項証明書については,過去の所有者やすでに抹消された抵当権等が載っていることもありますが,要約書は現在のことしか記載されていません
 

また,登記事項証明書と異なり,法務局の印鑑が押されていないため,確定申告等の手続などの証明書として使うことはできません。単に今の状況を確認するためだけに利用することになりますね。 
 

インターネットで見られる「登記情報」

 

上記の登記事項証明書と同じ情報量が記載されていますが,要約書同様,法務局の証明がなされていないもので,インターネット上の情報となります。
 

私たち司法書士は日々登記の内容を確認しますが,その度に法務局に行くのは大変ですので,事務所のパソコンからインターネットで確認をしています。私が,この業界に入ったころは,その度に法務局に行かなければならず,一般的に法務局は交通の便の悪いところにあるので,そのころを思うと本当に便利になったと思います。

登記情報提供サービス 
 

「登記簿」と「登記記録」

 

昔は,不動産の所有者等の権利関係については,法務局にある「登記簿」という紙に記録されていました。しかし,現在はすべてデータ化されているため,登記「簿」という表現から登記「記録」という名称に変わっています。これらの内容を紙に印刷したものが,上記の登記事項証明書や登記事項要約書であり,そのままネット上で見るのが登記情報ということになります。

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1月 26 2016

「本人確認情報」と「権利証の再発行」は同じではありません。

不動産に関するとても大事な書類である「登記済証」。不動産を譲渡したり,担保に入れたりする場合に必要になる重要な書類であり,一般的には「権利証」とか「権利書」と呼ばれています。
 

また,平成17年から登記済証に代わる書類として「登記識別情報通知書」という書類が発行されるようになり,同様に不動産を譲渡したり担保に入れる場合に必要となり,現在はこちらのことを「権利証」や「権利書」と呼んでいます。
 
 

この「権利証」に関して,何度か記事を書いておりますので,こちらについては以下をご覧いただければと思います。
 

権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合
 

権利証に関する誤解を解消してみよう!
 
 


 
 

ところで,よく「権利証の再発行の手数料はいくらかかりますか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
 

まず,上記記事にも書いてある通り,権利証(登記済証や登記識別情報通知書)は,いかなる理由があっても再発行をすることはできません
 

ただ,再発行ができないだけで,一定の手続を踏むことで権利証が無くても登記手続を進めることはできます。この点は,「権利証(登記識別情報通知書)を失くしてしまった場合」をご覧ください。
 
 
 

さて,この権利証を失くしてしまった場合に一番多く使われる手続が,「資格者代理人による本人確認手続」だと思われます。売買等の登記手続に関しては,司法書士または弁護士しか代理できませんので,登記手続を代理する司法書士等が所有者の方が本人であるかどうかを確認し,ご本人であることに間違いないと判断すれば「本人確認情報」という書類を作成して登記申請を行います。ある意味,この「本人確認情報」という書類が権利証の代わりとなって,登記手続が進むことになります。
 

しかし,この「本人確認情報」は権利証を再発行したわけではありませんので,以下のとおりの差異があります。
 

・本人確認情報は,あくまでその登記申請専用であって,別の登記申請に使いまわすことはできません。と言いますか,本人確認情報は法務局に提出してしまうと返却されませんので,使いまわそうにも書類が手元にありませんし,仮に司法書士に頼んで余分に作成してもらったとしてもその書類には何の効力もありません。
 

・本人確認情報は,当該登記申請の代理人である司法書士等しか作成できませんので,本人確認情報の作成だけを司法書士等に依頼することはできません
 

 

最後に,本人確認情報の作成に関しては,不動産の価格等によって大きく変わりますので一概にはわかりませんが,一般的には5万円から10万円程度の費用が通常の手続の費用とは別途で発生してしまいます。さらに,本人確認情報を作成するために司法書士等との面談が必要になりますので,やはり権利証は失くさないよう大切に保管してください。

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10月 21 2015

農地の時効取得

先日,農地の時効取得に関する登記手続をさせていただきました。 

通常の土地の売買と比べ,「農地」であり,かつ「時効取得」というレアなケースでしたので,どなかたの参考になるやもしれず,念のためまとめておきたいと思います。
 

 
 

農地は簡単に売買,贈与,賃貸(譲渡等)をすることはできず,勝手に農地以外に変更することもできません

 
 

自分が所有している土地については,原則として誰に売ろうが,誰にあげようが,誰に貸そうが自由です。また,自分が持っている土地に家を建てようが駐車場にしようが資材置き場にしようが役所にあれこれ言われる筋合いのものではありません(ただし,建物の建築については建築基準法の制限等があります。)。
 

しかしながら,農地(田んぼや畑など)はこのようなことが原則許されないことになっています。
 

その理由は,農地を農家ではない人に譲渡等をしてしまったり,譲渡等をしないまでも農地を宅地にどんどん変えられてしまうと,将来的に日本から農地が無くなってしまい,国民の食料の安定供給を確保することができなくなってしまうためです。 
 
 

農地の譲渡等をする場合や農地以外のものに変えるためには許可が必要です

 
 

食料の安定供給が農地法の目的ではありますが,農地を宅地として利用したいケースもありますし,農地を農地のまま売りたいこともあります。このような場合は,農業委員会の許可があればできることになっています。
 

農地法3条の許可→農地を農地のまま農家の方に譲渡等をする場合

同4条の許可→農地を農地以外(宅地等)に変える場合

同5条の許可→農地を農地以外に変えて,第三者に譲渡等をする場合(3条と4条の合わせ技)
 

このうち,4条と5条の許可については,農地を農地ではないものに変えますので「農地転用」と呼ばれていますが,農地転用については,その土地が市街化区域にある場合は許可は要らず,単に届出を出せば,農地を宅地に変えたり,第三者に譲渡等をすることができます。
 
 

※市街化区域とは

都市計画法に規定があり,ざっくり言えば,農地ではなく市街化を推進している地域です。愛知県内だと名古屋市は市内の大部分(面積の約93%)が市街化区域ですが,飛島村は市街化区域は半分もありません(約39%)。
 

※許可制と届出制

許可というのは,役所に申請をして許可が出た時に効力が発生しますが,届出は役所からの応答は必要なく,単に届出さえすれば良いものですので圧倒的に届出の方が楽です。
 

ちなみに,農地法の許可なく譲渡等をした場合は,その契約が無効になるのみならず3年以下の懲役または300万円以下の罰金というかなり重い刑罰を科される可能性があります。 
 
 

農地を取得することについて例外的に許可が要らない場合

 
 

農地を取得する場合は,農地法3条の許可が必要であり,売買や贈与を原因として取得する場合は,取得する人は基準を満たした農家の人でなければなりません。しかし,例外的に3つのケースにおいては農家ではない人でも農地を取得することができます。
 

(1)相続で取得する場合

亡くなった人の財産は,法律の規定により当然に相続人が相続する(取得する)ことになっており,これは農地であっても変わりません。
 

(2)遺贈で取得する場合

相続人に対する特定遺贈や相続人以外の者に対する包括遺贈の場合は許可は不要となります。相続人に対する特定遺贈は相続とほぼ同じ状況ですし,包括遺贈は例え第三者であっても相続人と同一の権利義務を有すると規定されているためです(民法990条)。

逆に言えば,第三者に対する特定遺贈の場合にはやはり許可が必要となります。これは,実質的には(死因)贈与と同じだからです。
 

(3)時効で取得する場合

20年以上の間,第三者所有の土地を占有し続けると自分の物になるという制度があります(民法162条)。
 

ただ,法律上は「原始取得」と言って,20年経ったときに自分の物になるのではなく,「占有し始めた時から自分の物だった」ということになっています。とすると,始めから自分のものだったものに許可が要るというのは筋が通らないので,許可は不要となっています。 
 
 

時効取得で取得する場合の登記手続

 
 

裁判所の判決で登記する場合は別ですが,当事者間で合意して登記する場合は以下の書類等が必要となります。
 

【現在の名義人の方】

・権利証

・印鑑証明書

・実印
 

【取得する方】

・住民票

・認印
 

さらに,上記に加えて登記原因証明情報を作成する必要がありますが,時効の要件を満たしていることを証明する書類は必要ありません
 

当事務所にご依頼いただいた場合,取得する方にかかる費用は,役所との打ち合わせの回数にもよりますが,当事務所の報酬が6~8万円(税別)と登録免許税(土地の評価額の2%)と2~3000円程度の諸費用(登記情報の取得費など)となります。また,現在の名義人の方に関しては,住所変更等があれば住所変更登記の費用(1万円強)と登記原因証明情報の作成費(1万円程度)が必要となります。 
 
 

時効取得の裁判

 

20年以上占有していても相手(現在の登記名義人)が登記手続に応じてくれないようであれば訴訟を行って登記手続を進めるしかありません。その際,相手が争わないのであれば問題ありませんが,争ってくる場合は20年以上占有していることを証拠によって立証する必要があります。 

例えば,土地上に建物が建っているようであれば建物の登記事項証明書が証拠になると思いますし,土地の固定資産税を支払っているのであれば,納税証明書なども有力な証拠になります。 

このような訴訟手続については,弁護士または司法書士が代理人となって手続を行うことができますが,司法書士には土地の評価額が280万円以下であるケースに限られます。もっとも,一般的には農地は宅地と比べて評価額が低くなっているため,多くのケースで司法書士が代理人となって裁判手続を行うことができます。
また,代理人になれないケースでも書類作成を通じて裁判手続きに関与させていただくことができます。
当事務所では,時効に関する訴訟も多く手掛けておりますので,お気軽にご相談いただければと思います。
 

脱法移転の防止

 
 

すでに述べたとおり,農地の譲渡等をする場合は原則として農地法3条の許可が必要となりますが,時効取得の場合は許可は必要ありません。そして,時効取得の登記申請に際して時効の要件を満たしていることを証明する書類は不要ですので,当事者が合意してしまえば本当は時効取得の要件は満たしていないにも関わらず,時効取得を原因として登記をしてしまおうと考える方が出てくることは想像に難くないと思います。
 

そこで,そのような不正な登記を防止するために役所において様々な防止策が取られています。
 

農水省の通達(PDF)
 

ざっくりまとめると以下のとおりです。

時効取得を原因とする農地の移転登記の申請→申請を受けた法務局が農業委員会に通知→農業委員会が調査→問題ないようであればそのまま登記を進め,問題ありの場合は取下げ等を勧告する。
 

場合によっては刑事告発されることもありますので,時効が成立していないにも関わらず,時効取得を原因とする登記申請はしないようにしてください。
 

なお,当事務所でご依頼をお受けしたケースも,ちゃんと登記申請前に時効取得を裏付ける資料について確認をしており,かつ,農業委員会と登記申請前に打ち合わせをしています。
 

なかなか時効に関する登記は多いケースではありませんが,当事務所はなぜか時効に関する登記(時効に基づく所有権移転,時効に基づく抵当権抹消登記等)のご依頼が多いため,お困りの際は遠慮なくお問い合わせいただければと思います。

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7月 17 2015

印鑑手帳(カード)>実印>権利証

先日,取引先の金融機関の担当者さんと不動産の登記に関してお話しているときに,印鑑手帳(印鑑カード),実印,権利証でどれが一番大事か,という話になりました。
 

当然ながら,すべて大事に保管していただくべきものとなりますが,あえて順位を付けるとしたら,私は①印鑑手帳(カード),②実印,③権利証という順番だと思います。
 

以下,簡単に理由を書いてみたいと思います。

 
 

それぞれの物

 

<印鑑手帳(印鑑カード)>

お住まいの役所にて印鑑証明書を発行してもらうために必要な手帳(カード)となります。

名古屋市の場合だと手帳が発行されますが,豊田市だとカードが発行され,各自治体によって異なります。この手帳(カード)と来庁者の本人確認書類(運転免許証等)があれば役所にて印鑑証明書を発行してもらうことができます。

なお,印鑑手帳等を紛失した場合は,役所において再発行してもらうこともできます
 

<実印>

「実印」という印鑑が売っているのではなく,お住まいの役所に登録している印鑑のことを実印と言います。

100円ショップに売っているような量産されている印鑑は本来は印鑑登録できないのですが,役所の担当者に量産されているものなのかそうでないものなのかは判断できませんので,現実的には100円ショップの印鑑でも登録してしまえば,その瞬間からその印鑑は「実印」ということになります。

→ 印鑑について

実印を紛失した場合,役所において印鑑登録の廃止をするか,別の印鑑を再登録することによって失くした印鑑は「実印」ではなくなります。
 

<権利証>

不動産を購入した際に法務局から発行される書類であり,平成17年以前は物々しい感じの紙で表紙が付いていることが多いと思いますが,平成17年以降,登記識別情報通知書という緑色の紙にパスワードが書かれた紙が発行されるようになりました。この権利証が無いと,不動産を売却したり担保に入れたりするのが大変です。

この権利書はいかなる理由においても絶対に再発行されません。


 

権利証が無くても不動産は売却できるが,印鑑証明書が無ければ不動産は売却できない

 
さて,話を戻し,どれが大事かという点についてですが,印鑑手帳は再発行してもらえるし,実印も別の印鑑を登録することで解決できますが,権利証は絶対に再発行してもらえませんので,権利証を一番大切にしておかなければならないような気もします。
 

しかしながら,権利証が無くても不動産の売却はできます。というのは,もし権利証を失くしたら売却できないということになると,権利証は再発行されない書類ですので何があっても売却できないことになってしまいますよね。それでは困ってしまいますので,権利証が無くても売却するための方法がいくつか定められています。

→ 権利証を失くしてしまった場合
 

したがって,権利証を紛失してしまっていても不動産を売却することは可能です。
 

一方,印鑑証明書はそういう訳にはいきません。権利証があっても無くても絶対に必ず必要になります。実印も同様ですし,これに例外はありません。 
 

悪用される可能性

 

では,印鑑登録や実印,権利証が盗難にあった場合に悪用される可能性を考えてみます。
 

まず,印鑑手帳が盗難にあった場合,印鑑証明書を取得することができます。その際,窓口に行った人の身分証明書は必要ですが,本人からの委任状は必要ありません。とすると,事実上,印鑑手帳が悪意ある人に盗まれてしまった場合,簡単に印鑑証明書を取得されてしまいます。とすると,実印そのものの偽造もできてしまいますので,印鑑証明書と実印のセットが悪用されてしまう可能性があります。印鑑証明書と実印があれば,自動車の名義変更ができてしまいますし,不動産の名義変更ももう1つステップを踏めばできてしまいます
 

次に,実印が盗難にあった場合ですが,印鑑証明書が盗まれていない限りあまり大きな問題になりませんが,日本は印鑑社会ですので,たとえ印鑑証明書が無くても実印が押された偽造の契約書が出てきた場合には大問題となります。
 

最後に権利証についてですが,正直なところ盗まれたからと言って悪用される可能性はほぼありません

というのは,権利証だけでは何もできないからです。上記のとおり,不動産の名義変更や担保権の設定をする場合,権利証の有無に関係なく印鑑証明書及び実印が必要になりますからね。

また,誤解されている方も多いのですが,権利証はあくまで名義変更や担保権の設定等の際に必要になるだけの書類であり,所有権を証明する書類でもありません(所有権の証明は「登記事項証明書」で行います。)。

さらに,権利証が盗まれた場合に,変な登記申請があった場合は登記手続がストップして本人確認をする,という不正登記防止申出制度もありますので,ますます権利証が悪用される可能性は低くなります(不動産登記法24条)。ちなみに,不正登記防止申出制度は印鑑証明書の盗難でもできます。
 
 

以上から,ども書類等も大事ではありますが悪用の危険性を考えると,①印鑑手帳>②実印>③権利証の順ではないかと思います。
なお,すべてのものをまとめて保管していると,一気にいろんなことをされてしまうため,印鑑手帳,実印,権利証はそれぞれ別のところに保管されることを強くおススメいたします。

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