愛知・岐阜・三重にお住まいの方で不動産売買登記・相続登記のご相談ならはなみずき司法書士事務所

愛知・岐阜・三重にお住まいの方限定 不動産売買登記・相続登記ドットコム オンライン申請で賢く登記

お気軽にお問い合わせください。電話番号0561-61-1514。ファックス番号0561-61-1535
メールフォームによるお問い合わせはこちら
トップページ » はなみずき通信
>>ブログトップへ

抵当権抹消登記

1月 13 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③

令和5年4月1日から不動産登記法の改正により、遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記が残っている場合に抹消する方法が簡略化され、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で申請できるようになりました。また、抹消ではありませんが、遺贈の登記に関して単独で申請できる場合が定められました。今回は、この点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記とは

 

不動産の登記簿をご覧いただくと、所有者が誰であるかということが登記されています。所有者が変わっても自動的に所有者が変更されるわけではないため、当事者が登記申請を行い、その時点での所有者を登記して第三者に対抗できるようになります。この登記をしないまま長い月日が経過して実際の所有者が分からないことが大きな問題になっており、それに対応したのが前回の相続土地国庫帰属制度の記事となります。
 

さて、登記簿を見ると、所有者が誰であるかという事以外にもいろんなことが登記されている場合があります。例えば、住宅ローンを組まれて不動産を購入されている場合は、「抵当権」という権利が設定されており、金融機関の担保になっていることが分かります。また、それほど多くはありませんが、第三者に賃貸等をしている場合は「賃借権」の登記や「地上権」の登記がされている場合があります。

こちらも当事者が登記申請をしなければ登記されませんし、逆に権利が無くなった場合(抵当権であれば住宅ローンを完済した場合、賃借権であれば賃貸借契約が終了した場合、など)も自動的には登記は抹消されないため、当事者が抹消登記の申請をする必要があります。

また、登記制度は遥か昔から存在するため、明治時代のお金の貸し借りでも抵当権が設定されることがありました。その後100年以上経過し、本当は完済しているけど登記申請を忘れているのか、完済しないまま時が過ぎてしまっただけのかは分かりませんが、明治時代の抵当権が現代まで抹消されずに残っていることがあります。これが、「遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記」となります。
 

そもそも、登記というのは当事者が協力して手続をしなければならず、当事者が亡くなっている場合は基本的に相続人全員が関与する必要があります。

しかし、100年以上も前の登記だと、恐らく登記の名義人はすでに亡くなっていると思われますし、その相続人を探すことも大変です。加えて、相続人が見つかったとしてもその相続人が協力してくれるかどうかも分かりません。

普通に使っている分には遥か昔の登記が残っていたとしても特に支障は無いかもしれませんが、第三者に売却等をする場合には大きな問題になります(遥か昔の登記が残っている場合、一般的には抹消しなければ売却ができません。)。

ということで、遥か昔の登記が残っているとかなり厄介なことになります。 
 

2 抵当権等の担保権については制度がある

 

当事務所でもページを設けているとおり、抵当権等については比較的簡単に抹消できる場合がありますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 遥か昔に登記された抵当権抹消登記(休眠抵当権) 
 

3 抵当権等の担保権以外の登記

 

すでに存続期間が満了している地上権等の登記買戻期間が満了している買戻登記については、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で抹消できることになりました。
 

以下、各ケースに関して記載いたします。
 

(1)存続期間満了済みの地上権等

必ずしも存続期間が定められている訳ではありませんので、すべての地上権等が該当するわけではありませんが、存続期間が登記されており、かつ、その期間が満了している場合は比較的簡略的に抹消することが可能となりました。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①存続期間が登記されており、かつ、すでに経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。存続期間が登記されていないようであれば残念ですがこちらの制度は使えません
 

②地上権者の調査を行う。

→具体的には地上権者の住民票等の書類上の調査を行う必要がありますが、現地調査までは必要ありません。もし、ここで地上権者等の所在が判明するようであれば簡略的な手続ではなく、通常どおり当事者双方が協力して登記申請を行うことになりますし、万が一協力してくれない場合は訴訟を行う必要があります。
 

③裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を得る。

→難しそうな感じがしますが、裁判所に対して「地上権を抹消しようとしているので、異議がある人は連絡してくださいね。」という趣旨の官報公告を行うことになります。そして、一定期間が経過すると除権決定が出て抹消することができるようになります。
 

④登記申請

→上記の除権決定を添えて、権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 
 

(2)買戻期間満了済みの買戻権

買戻権というのは、いったん売却をするけど、一定期間内であれば買い戻すことができる権利です。最近はあまり見ませんが、昭和や平成初期の売買の際の住宅供給公社等の公社が関係している場合に登記されているのをよく見ます。

さて、この買戻権は特に期間を決めなければ売買契約の日から5年間とされており、当事者の合意によっても最大で10年間とされています。とすると、売買契約の日から10年以上経過している場合は必ず買戻権は消滅していることになりますので極めて簡単に抹消することができます。

※上記の地上権等については存続期間の上限はありませんので、存続期間が定められていたとしてもその後に延長されている場合があります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①買戻権が登記されており、かつ、売買の日から10年が経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。
 

②登記申請

→権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 

③買戻権者への通知

→まったく買戻権者が関与しないところで抹消されてしまうため、買戻権者宛に法務局から抹消した旨の通知がなされます。
 

上記の地上権等の抹消と異なり、権利者の調査や公示催告等の手続も一切不要ですので、極めて簡単に抹消することができます。 
 

4 解散した法人が抵当権等の担保権者の場合の特例

 

上記2のとおり、抵当権等については比較的簡略的に抹消できる特例がありますが、さらに解散した法人が抵当権者等の場合の抹消登記の特例ができました。

解散した会社であっても、清算人という方が存在するはずですので、通常はその清算人に協力してもらって抹消登記を申請することになります。しかし、清算人が行方不明だと協力を得ようがありませんし、清算人が亡くなっているような場合だと裁判所に清算人を選任してもらうなどかなり大変な手続が必要でしたが、今回の改正により比較的に簡略的に抹消が可能であり、さらに従前の特例と異なり供託しなくても良いというメリットもあります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①抵当権等の担保権が登記されており、かつ弁済期から30年以上が経過していることを確認する。

→不動産の登記事項証明書で確認をします。
 

②抵当権者等が解散されてから30年以上経過していることを確認する。

→法人の登記事項証明書で確認をします。
 

③清算人の調査

→法人の登記事項証明書を見れば清算人が誰であるか住所氏名が登記されていますので、清算人の調査を行います。ただし、住民票等の調査のみで大丈夫であり、現地調査までは不要です。もし、清算人が見つかれば、通常どおり共同で申請を行うことになり、万が一協力してもらえない場合は訴訟等他の方法を検討することになります。
 

④登記申請

→清算人が所在不明であることが確認できたら、供託をすることなく、権利者が単独で登記申請を行うことになります。 
 

5 遺贈を原因とした所有権移転登記等

 

簡略的な抹消とは無関係なお話しですが、単独申請という点で共通するのでこちらでまとめます。

遺贈とは、遺言によって財産をあげるというものであり、相続人に対して行うこともできますし、まったくの第三者である個人や法人に対しても行うことができます。当事務所でも日本赤十字社やお世話になった病院へ遺贈するという内容の遺言書の作成に関与させていただいたことがあります。
 

さて、相続登記の場合は取得する相続人が単独で申請できるのに対し、遺贈の登記については相続人全員または遺言執行者が関与して登記をしなければならないとされております。遺言執行者が協力しないということは考えにくいですが、遺言執行者が選任されていない場合は相続人全員が関与する必要があり、その方の協力が得られないと登記ができないことになります。

さらに、相続人であるAが不動産を取得するにしても、遺言に「不動産をAに相続させる(特定財産承継遺言)」という場合はAが単独で登記申請できるのに、「不動産をAに遺贈する」となっている場合はAが単独申請できないことは不合理だと考えられます。

そこで、遺贈の登記全部という訳ではありませんが、遺贈によって財産をもらう人が相続人である場合に限り、当該相続人(受遺者)が単独で申請できることになりました。

一方で、遺言によって自身が取得取得することを認識した場合は3年以内に登記申請を行う義務が生じ、3年以内に登記をしない場合は「10万円以下の過料」という罰金のようなものを課される可能性があります。
 
 

上記のうち、買戻権の抹消は司法書士としてはかなり楽にはなるかと思いますが、一般的にはあまり関係ないと思われます。また、地上権等の抹消や解散法人の抵当権等の抹消については、あまりお目にかかることは無いものの、お目にかかった時には大変な手間がかかりましたので、該当する方にはかなり大きな改正になると思います。

最後の遺贈については、相続人に遺贈するというケースがそもそも多くなく(遺贈するくらいなら特定財産承継遺言を書くことが多い)、仮に遺贈にするようであれば遺言執行者として受遺者を選任していることが多いため、現実的にはあまり該当するケースは多くないかと思います。

コメントは受け付けていません。

10月 20 2020

抵当権抹消登記における不動産の個数について

住宅ローンを完済された際に,金融機関から抵当権抹消登記に関する書類を返却され,その中にご自身で行うか,司法書士にご依頼されて抵当権抹消登記をされるよう案内がされているかと思います。
 

そのような場合に当事務所にお見積りのご連絡をいただいた際に,当事務所の報酬は抵当権1つ当たり一律5000円と単純明快なのですが,法務局に納める登録免許税や事前調査の費用に関しては不動産の個数によって異なりますので,必ず不動産の個数をお伺いしております。
もっとも,関係書類をご覧いただいてもなかなか分からないケースもありますので,今回は不動産の個数のみに絞ってまとめたいと思います。
 

 
 

1 基本的なお話し

 


日本の法律では,民法86条において「物」について次のとおり定めています。

「第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。」

つまり,土地はもちろんのこと,その定着物(建物や立木など)は不動産とされております。立木については通常関係ありませんので,不動産と言えば,土地と建物だと思っていただければ良いです。
 

また,マンションに関しては,区分所有法1条において,専有部分(各お部屋部分)も所有権の対象になるとされており,加えて建物を所有している以上,必ず土地の利用権(敷地利用権)も有していることになります。 
 

2 戸建て住宅の場合

 


多くのケースで土地1つ,建物1つの合計2つとなる場合が多いと思います。

ただ,土地が複数の場合はその分土地の数が増えることになりますし,開発業者さんが一体を開発していると,自宅前の道路が私道になっており,その道路(土地)の持分を有していることも多いです。
 

また,あまり見かけませんが,借地上に建物を建築されている場合は土地は担保になることは通常ありませんので,建物だけの1つということもあり得ます。
 

いずれにしても,金融機関から返却された「抵当権設定契約証書」の対象となる物件が記載された箇所に不動産の表示がありますので,こちらをご覧いただければ個数をご確認いただけると思います。 
 

3 マンションの場合

 


上記のとおり,マンションの場合は専有部分とその敷地である土地の利用権を有しています。また,大部分のマンションにおいては「敷地権化」されており,専有部分と敷地利用権が一体となっていることが多いですが,昭和時代のマンションなどは敷地権化されていないこともあります。

→ 敷地権についてはこちら
 

この点についても,上記のとおり「抵当権設定契約証書」をご覧いただき,下記のように「敷地権の目的たる土地の表示」という欄があれば,敷地権化されているということであり,無ければ敷地権化されていないということになります。


 

もし,「敷地権の目的たる土地の表示」があれば,その次に「土地の符号」という項目がありますので,こちらの個数がそのまま土地の個数となります。

上記は「1」しかありませんので,土地の数も1つとなり,専有部分と合わせて不動産の個数は2つとなります。
 

また,下記のようなマンションであれば,「土地の符号」という項目が5つありますので,専有部分と合わせて不動産の個数は6つとなります。大規模なマンションだと敷地の個数が増える傾向にあると思います。


 

一方,敷地権化されていない場合は,上記のような表示がありませんので,戸建ての場合と同様となります。 
 

4 登録免許税等の実費

 


抵当権抹消登記の登録免許税は不動産の個数×1000円ですので,上記の戸建ての場合だと2000円なのに対し,敷地が5つもあるマンションだと専有部分と合わせて6000円になりますので,かなりの差が出てしまいますね。なお,抵当権抹消登記における登録免許税は最大で2万円となっておりますので,なかなかありませんが,敷地が19個以上のマンションの場合は常に2万円となります。
 

また,マンションに限った話となりますが,事前調査の際の登記情報や登記完了後の登記事項証明書について,敷地権化されているマンションの場合は専有部分と敷地が一体化された登記簿となっているため1通分で足りるのに対し,敷地権化されていないマンションの場合は戸建ての場合と同様に専有部分と敷地部分それぞれに費用がかかってしまいますので,敷地権化されているマンションと比べると実費が多くかかることになります。
 
 
 

正直なところ,生きていくに当たって「この知識があって良かった!」というシーンは無いと思いますが,抵当権抹消登記の際には必要となる知識ですので,頭の片隅の中の片隅に置いておいていただければと思います。

コメントは受け付けていません。

1月 18 2017

「敷地権」とは?

マンションに関する登記費用の見積書を作成する際に,登記事項証明書の実費の部分については敷地権化の有無によって費用が変わるためこの点について説明させていただくのですが,そもそも「敷地権」という言葉の意味が良くわからない方がほとんどだと思いますのでまとめてみたいと思います。
 

 
 

マンションの部屋の所有権

 

分譲マンションなど大きな一棟の建物の各部屋ごとに所有権が分かれている建物のことを法律上は,「区分建物」といい,その区分建物の各部屋のことを「専有部分」,専有部分の所有権のことを「区分所有権」といいます。これは,あくまで分譲マンションであり,賃貸アパートなど一棟全体を大家さんが所有している場合は,建物一棟全体に所有権が1つであるため区分建物ではありませんが,二世帯住宅の場合に1階が父親所有で,2階が子ども所有という場合には区分建物ということになります。 
 

土地の利用権も必要

 

建物は空中に浮いているなんてことはありませんので,どこかの土地の上に建っています。ということは,当然ながら建物を建築するためには土地を使用できる権利がなければなりません。一番メジャーなのは土地の所有権ということになりますが,地上権や賃借権ということもありますし,親族の土地に建てる場合は使用借権ということもあります。 

これは分譲マンションにおいても同様であり,専有部分を購入する場合には土地を使用できる権利も併せて取得する必要があります。このようなマンションが建っている土地のことを「敷地」と呼び,敷地を使用できる権利のことを「敷地利用権」と呼びます。なお,敷地は多くの区分所有者が利用しますので,敷地利用権は共有となり,各部屋の大きさに応じて共有持分を取得することが一般的です(区分所有法22条2項,同法14条)。 
 

「敷地利用権」と「敷地権」

 

上記のとおり,専有部分を所有するためには,敷地利用権たる所有権,地上権,賃借権,使用借権のいずれかの共有持分が必要です。 

したがって,専有部分を購入する場合は,専有部分の名義を変えることに加えて,敷地利用権の持分の名義も変えなければなりません。ただし,所有権,地上権及び賃借権については,登記をすることができますが,使用借権については登記をすることが認められていませんので,敷地利用権が使用借権の場合は登記をもって第三者に対抗することができませんが,そもそも分譲マンションの場合は赤の他人同士が所有していると思いますので,敷地利用権が使用借権ということは通常はありえないと思います。 
 

話を戻して,専有部分を購入するためには敷地利用権についての名義も変えることとなりますが,区分所有権はそれで1つの所有権として存在するため各部屋ごとにそれぞれ登記簿が存在するものの,土地については敷地全体を区分所有者全員で共有しているため,登記簿は1つしかありません(敷地が2つ以上あれば,登記簿も同数となります。)。とすると,土地については区分所有者全体の住所や名前が載っていますし,区分所有者が変わるたびに書き換えられていきますので,時の経過とともにものすごく膨大な量になっていきます。さらに,共有持分も「1234万5678分の12万3456」といったように細かい分数で表示されることが多く,何かしらのミスによって全員の持分を合計しても「1」にならないというような事態が生じてしまうことがあります。 
 

また,原則として敷地利用権は専有部分とは別に処分することができません(区分所有法22条1項)。例えば,あるマンションの専有部分及び敷地利用権の共有持分を所有しているAさんが専有部分をBさんに,敷地利用権をCさんに譲渡したとします。しかし,Bさんは敷地利用権がないので専有部分を使用することができませんし,逆にCさんは敷地利用権だけもらっても何もできません。まったくもって無意味です。したがって,法律では,専有部分と敷地利用権は別々に処分することができないことになっています。 
 

とすると,どうせ別々に処分できないのであれば,専有部分の登記簿に敷地利用権もセットにして,専有部分を譲渡すれば敷地利用権も自動的に譲渡したことになるようにすれば簡便ですよね? 

このように専有部分の登記簿に敷地利用権をセットにした時の敷地利用権のことを「敷地権」と呼び,このようなセットにすることを「敷地権化」と呼んでいます。敷地権は登記することが前提となりますので,所有権,地上権,賃借権に限られており,使用借権が敷地権となることはありません。 
 

すべてのマンションが敷地権化されているわけではない

 

現在,新しく建てられている分譲マンションはほぼ間違いなく敷地権化されており,専有部分を譲渡すればセットで敷地利用権もついてきます。しかし,昭和の時代に建てられた分譲の団地などは敷地権化されていないことが結構あります。この敷地権の有無は,登記簿を見て確認するしかありません。以下,それぞれのケースのサンプルとなります。 
 

【敷地権化されているマンションの登記簿】

①専有部分の登記簿
 

専有部分の表示の下に,敷地権の種類(所有権or地上権or賃借権)及び共有持分が記載されています。

 
 

②敷地権化された場合の土地の登記簿

 

敷地権化された後は,上記のとおり土地の持分等は専有部分の登記簿によって反映されていきますので,土地については敷地権化された旨の登記がされ,以降は共有持分の変更などがあっても土地の登記簿はなにも変わりません。

 
 

【敷地権化されていないマンションの登記簿】

敷地権化されていればあるはずの敷地権の記載がありません。

 
 

なぜ実費が変わるのか

 

登記簿謄本(登記事項証明書)は,取得方法によって金額が異なりますが,当事務所では1通当たり500円で取得しており,事前調査のための登記情報は1通当たり335円となります(自動見積もりだと337円と表示されますが,実際に見積書を作成する際には335円となります。システムの変更が追い付いておらず申し訳ございません<(_ _)>)。

 

敷地権化されているマンションの場合,専有部分の登記簿謄本を取得すれば土地に関しても「敷地権に関する表示」として併せて記載されておりますので,専有部分の登記簿謄本を1通のみ取得すれば良いこととなります。

しかし,敷地権化されていないマンションの場合は,専有部分の登記簿謄本に敷地のことが記載されておりませんので,専有部分の登記簿謄本に加えて,敷地である土地の登記簿謄本も取得しなければなりません。そして,敷地が1筆であれば良いのですが,敷地が複数存在する場合は,すべての土地の登記簿を取得しなければなりません。例えば,下記の登記簿謄本は,敷地権化されているので専有部分のみ取得すれば良いこととなりますが,もし敷地権化されていなかった場合は敷地分の登記簿謄本を12通も取得しなければならず,敷地権化されている場合と比べて10倍以上の実費がかかってしまっていたことになります。

 

 

なお,抵当権抹消登記や住所氏名変更登記における登録免許税は不動産の個数×1000円となりますが,これは敷地権化の有無に関係なく同額となります。

したがって,上記の不動産の場合,専有部分と敷地12個で登録免許税は13,000円ということになり,仮に敷地権化されていなくても13,000円となります。

 
 

まとめ

 

以上からざっくりまとめると下記のとおりとなります。

 

敷地利用権 → 専有部分を所有するために必要な土地の利用権(所有権など)

敷地権 → 専有部分の登記簿に一体化されている場合の敷地利用権

登記事項証明書等の取得費 → 敷地権化されていれば専有部分の登記事項証明書1通のみで良いが,敷地権化されていない場合は敷地の登記事項証明書も必要となる。

抵当権抹消登記等の登録免許税 → 敷地権化の有無に関係なく,不動産の個数×1000円

コメントは受け付けていません。

11月 25 2016

されど住所変更登記

登記簿に登記されている所有者の方の住所が現住所と異なる場合,何かの登記申請を行う前に必ず住所変更登記をしなければなりません。

例えば,抵当権抹消登記のご依頼をお受けしたときに,所有者の方のご住所が「名古屋市名東区」になっているが,現在のお住まいが「長久手市」の場合は,名東区から長久手市に住所が変わった旨の登記申請を1件目に申請し,2件目に抵当権抹消登記を申請することになります。
 

この住所変更登記ですが,単に住所が変わっているだけであり,住民票などで住所移転していることはわかるため,司法書士的には比較的簡単な部類の登記となるのですが,実は奥が深く,悪戦苦闘することがあります。
 

また,悪戦苦闘するケースの場合は,その分依頼者の方の費用も余分にかかることとなりますので,今後,依頼者の方に説明させていただく際にも使えるよう,住所変更登記についてまとめておきたいと思います。 

 

オーソドックスなケース

 

(1)転居前の住所が登記されている場合
 

名東区から長久手市に転居した場合,長久手市の住民票を取得すると「前住所」の欄に名東区の住所が記載されていますので,登記簿に名東区の住所が登記されているようであれば,長久手市の住民票があれば登記申請は通ります。
 

(2)何度か転居している場合

最新の住民票を取得しても,「前住所」の欄には直近の住所しか記載されていないため,これでは足りないことから,その前の住民票も取得する必要があります。
 

また,本籍地のある役所において,「戸籍の付票」を取得することでその本籍地に置いてからの転居の履歴の証明書を得ることができますので,「何度も転居はしているが本籍地はずっと同じ」という場合は戸籍の付票ですべて解決することが多いです。
 

(3)地名変更等による場合
 

当事務所の「長久手市杁ケ池106番地2」は数年前まで「愛知郡長久手町杁ケ池106番地2」でしたが,長久手町が長久手市になったという「市制施行」により住所が変わっています。また,「区画整理」により地名が変わることもあります。例えば,長久手市内にあった「根嶽」という地名は3年前に区画整理によって「市が洞」という地名に変わりました。
 

さらに,名古屋市中心部などおいては,「○○番地」という住所が「住居表示実施」により「○番○号」という住所に変わっています。
 

このように,本人の意思に関係なくされた変更の場合,登記申請をする際の登録免許税は無料となっており,地名変更等の証明書の発行も無料となります。もっとも,登記申請を司法書士に依頼した場合の費用はかかってしまいます。 
 

悪戦苦闘するケース

 

(1)住所がつながらない

転居した場合,新住所に異動した後は,旧住所にあった住民票は除票となり,5年経過によって廃棄されてしまいます。したがって,転居を繰り返していらっしゃる場合は,除票の保存期間の経過により,住所の履歴を証明できないことがあります。この点,除票が取得できなくても,「戸籍の付票」で住所の履歴を証明することができる場合がありますが,除籍(改正原戸籍)となった後の付票も除票同様5年の経過により廃棄されてしまうため,住所と本籍地を同時に変更されている場合は,除籍の付票によっても住所の履歴の証明ができないことになります。
 

このような場合,最終的には各法務局の判断とはなりますが,一般的には下記の書類を添付することで登記申請が通ることになります(ただし,必ずしもすべて必要となるものではありません。)。
 

①不在住証明書

→登記簿の住所地に住所がないことの消極的な証明
 

②不在籍証明書

→登記簿の住所地に本籍がないことの消極的な証明
 

③権利証

→不動産の所有者であることを強く推定することができる書類
 

④申述書(印鑑証明書付)

→「除票等の保管期間経過により証明することはできないものの,このような経過で住所移転をしました。」ということをご自身で証明するもので,実印と印鑑証明書が必要となります。
 

⑤固定資産税の納税通知書(納税証明書)

→不動産の所在と所有者の新住所が記載されている
 

(2)住所移転などはしていないが,登記簿に記載された住所が間違っている

登記簿に記載された住所が間違っている場合は,所有者がかかわる登記は何も申請することができないので,前提として正しい住所に直す必要があります。

登記簿に記載された住所が間違っている原因として大きく分けて2つのパターンがあり,1つ目は法務局が登記または移記する時に間違えた場合,2つ目は申請した本人または司法書士が申請書に誤った住所を書いていた場合です。

まず,前者の方は簡単です。法務局のミスなので,直してほしい旨を伝えれば直してもらえます。特段申請書などはありませんし,費用もかかりません。概ね1週間程度で直ります。もっとも,法務局のミスかどうかを確認するためには,閉鎖登記簿や申請書を確認する必要があります。
 

一方,申請者側が間違えてしまった場合は,「住所の更正登記」を申請して正しい住所にしなければなりません。その場合,正しい住民票のみで登記申請が通ることもありますが,上記のとおりの不在住証明書等を要求されることもあります。 
 

住所変更登記に関する細かい話

 

住所にマンションやアパートを登記するか否かは自由ですが,マンション名を登記した場合に同じマンション内で部屋を変わったときは住所変更登記が必要になります。
 

住所移転→町名変更の場合は登録免許税は不要となりますが,町名変更→住所移転の場合は登録免許税は必要となります。
 

「○番屋敷(○番戸,○番邸)」から「○番地」となった場合は変更登記が必要です。
 

当事務所の変更のように,町→市への変更だけで町名(杁ケ池)や地番(106番地2)等に変更がない場合は,そもそも変更登記の申請はしなくても良いことになっています。また,住所に「字」が追記された場合,住所変更登記は不要であり,あえて住所変更登記をする場合も登録免許税は無料です。逆に「字」が無くなった場合も同様です。
 

何度住所変更をされていても,最新の住所のみを登記すればよく,登記費用も1回分しかかかりません。
 

申し出や役所の職権により,住民票が訂正された場合は,錯誤による更正登記が必要です。なお,職権による変更でも登録免許税がかかってしまいます。
 

何度も転居を繰り返し,結果的に登記簿に記載されている住所に戻ってきた場合は,住所変更登記は不要です。

コメントは受け付けていません。

9月 18 2016

休眠抵当権に関するページの追加について

以前,ブログでもまとめておりましたが,全国よりたくさんのお問い合わせをいただいていたため,休眠抵当権に関するページを追加いたしました。 
 


 
 


 

こちらの手続については,通常の抵当権抹消登記やその他の登記と異なり,登記簿の内容は千差万別であり,ご入力いただく項目が膨大になってしまうため相談フォームを設けることができませんでした。
 

つきましては,休眠抵当権のご相談につきましては,大変お手数をお掛け致しますがお電話にてお問い合わせいただきますようお願いいたします。

コメントは受け付けていません。

3月 28 2016

消滅時効を原因とした抵当権抹消登記手続訴訟

最近,抵当権抹消登記訴訟のお問い合わせをいただく機会が多いため,先日当事務所が代理人として訴訟手続等を行った事件を基に,大体の流れを記載いたします。 

こちらをお読みいただければ,手続の開始から終了までの大体の流れがお分かりいただけるかと思います。 
 

 
 

登記簿の調査

 

抵当権の抹消登記を行う場合,登記簿に記載されている抵当権者から抹消登記のための書類をいただくのが原則です。ただ,遥か昔の登記となるとすでに抵当権者が亡くなっていることが多く,その場合は抵当権者の相続人を探し出す必要があります。そして,その相続人の方も亡くなっていればその相続人,また亡くなっていればその相続人・・・というように時間が経てば経つほど関係者が多数になっていくことになります。
 

ということで,まずはどなたが抵当権者になっているのか登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して調査を行います。多くのケースで抵当権者は1名(1社)なのですが,先日行った事件では抵当権者が5名だったため,抵当権者全員または抵当権者5名の相続人全員を探し出す必要がありました。
 

なお,すでに弁済期から20年以上経過しているので,休眠担保の特例を使える可能性もありましたが,その事件では債権額が100万円と高額でしたので当初から特例の利用は考えていませんでした(特例を使う場合は20年分以上の利息を支払う必要があり,利息だけで数百万円になる計算になります。)。もっとも,特例を使うためには抵当権者が行方不明であるという要件もありますが,抵当権者の相続人がいることはわかっていましたので,いずれにしても特例の利用はできませんでした。  
 

抵当権者の調査

 

さて,抵当権の抹消関係書類にご署名等をいただくためには,相続人全員を探し出すため戸籍謄本等を取得する必要があります。
 

調査の結果,抵当権者5名中3名の方の相続人は探し出すことはできたものの,残る2名の方についてはまったくわかりませんでした。ちなみに,相続人の総数はその時点で判明しているだけで約25名となりました。  
 

まずはお手紙

 

相続人の方に対して,抵当権抹消登記について協力をお願いする手紙を発送いたします。

 
行方不明の方がいる時点で抵当権者の相続人全員から書類をいただくという選択肢が無くなったので,基本的には相続人の方全員を相手として訴訟を行うこととなります(行方不明者が1人でもいれば訴訟を提起せざるを得ませんし,行方不明者がいなくても訴訟になることが大多数だと思います。)。
 

ただ,いきなり訴訟を起こされてしまうと相手の方も驚いてしまいますし何より失礼ですので,手紙には今回の手続の説明に加えて,「金銭的にも時間的にも何らご迷惑を掛けることはありませんので安心してください。疑問点などがあれば誠心誠意回答させていただきますのでお問い合わせください。」という趣旨の事が記載されています。
 

この手紙を送っても,私の経験上,大体1割程度の方には書類が届かず,上記事件についても3名の方に書類が届きませんでした。また,2~3割程度の方から手紙についての質問の連絡をいただきますが,説明させていただくとみなさん安心して電話を切られます。  
 

訴訟提起

 

相続人全員の方を相手として訴訟を提起いたします。凄く細かい話ですが,訴訟を提起する際は,訴訟の相手(被告)となる方全員分の訴状を作成して裁判所に持参します。つまり,今回の場合だと25通以上の訴状やら証拠書類を提出することになります。しかし,訴状に誤字や脱字があったり訂正があったりすると,すべての書類を訂正する必要がありとても大変です。そこで,裁判所に対してまずは1通のみ訴状等を提出し,定型的な審査が終わった後に,残りを提出することになります。  
 

裁判官からの呼び出しと取下げ

 

後にも先にもこの1回だけなのですが,訴訟の期日の数日前に裁判官から打ち合わせがしたいと言われ裁判所へ行きました。
 

内容としては,相続人が見つけられなかった抵当権者について,裁判官としては確実に亡くなっていると判断しているので,相続人の有無をもう少し調べてほしいというものでした。とすると,次の裁判期日には調査が確実に間に合いませんので,いったん取り下げることとしました。  
 

再度の調査

正直なところ,役所等で行うべき調査はすべて行っていたので,あとはもう現場に行くしかありません。そこで,登記簿に記載されていた古い住所を基に現在の住所地に赴きました。すると,同じ苗字の家がありましたのでまったくのアポなしで訪ねてみたところ,まさかの抵当権者の子孫の方であり,今回の件について説明させていただきました。当初は,間違いなく不審な目で見られていましたが,とりあえずこちらが進めようとしていることについては理解していただけたと思います。この時,積極的にご協力いただける旨の回答はありませんでしたが,何もしなければ勝手に抵当権が消える流れになるということについては特に異論はないとのことでしたので,事実上,ご協力いただけたと思います。同様に,もう1人の方も見つけることができ,これで抵当権者5名全員の相続人が見つかりました。  
 

再度の訴訟提起と登記申請

 

改めて訴訟を提起したところ,2か月程度先に口頭弁論期日が設定されました。そして,口頭弁論期日には被告は誰も出頭せず,即日結審となり,1週間程度経って無事勝訴判決が出されました。
 

勝訴判決が確定すると抹消登記を行うことができるため,勝訴判決の確定を待って法務局に申請し,無事完了となりました。
 

なお,裁判手続及び登記申請手続に際して,依頼者の方に裁判所や法務局へお越しいただく必要はありません(ただし,140万円以下の抵当権の場合。)。  
 

かかった時間と費用

 

上記の事件だと,相続人の人数も多く,日本全国さまざまなところにいらっしゃったため,戸籍等の調査に2か月程度かかっています。
 

そこから,お手紙を作成して発送し,1か月程度回答を待ちます。
 

その後,訴訟提起し,通常であれば判決まで2~3か月程度だと思いますが,上記の事件だと1回取り下げているため,1か月程度余分に時間がかかっています。
 

勝訴判決が出てから確定するまで大体1か月程度かかり,登記手続は1週間程度で完了となります。
 

以上から,抵当権抹消登記が完了するまでは,相続人の人数などにもよりますが,調査の開始から抵当権の抹消登記完了まで大体半年前後ではないかと思います。
 

また,かかる費用についても相続人の人数が大きく影響しますが,戸籍謄本等の取得費用などの実費及び当事務所の報酬を含めて大体30~50万円程度であり,上記の事件は相続人が多かったため45万円程度でした。

コメントは受け付けていません。

5月 08 2015

登記完了証と登記事項証明書

抵当権抹消登記をご依頼いただく際に,登記事項証明書の必要性についてご質問いただくことがありますので,今回は似たような性質の登記完了証も併せて書いてみたいと思います。
 

 
 

登記完了証とは

 

登記完了証は,登記申請をした際に,その申請した登記が完了したことを証する書面となり,登記申請後に無料で法務局から発行されます。
 

登記完了証の役目としては,申請した登記が完了したことそのものを証明するのみであり,いわゆる権利証(登記識別情報通知書)のような重要な書類ではありません。また,再発行はされません。
 

正直なところ,私も登記完了証についてはあまり重要ではないと思っており,お返しする際にも「不要であれば捨ててもらっても大丈夫です。」と申し上げております。 
 

登記事項証明書とは

 

いわゆる登記簿謄本というもので,その時点での不動産に関するすべての情報が記載されたものとなります。
 

具体的には,その不動産の面積や構造,所有者,担保権(抵当権等)の有無などです。
 

したがいまして,抵当権抹消登記申請後に登記事項証明書を取得すれば,抵当権がいつ抹消されたかといったような情報も記載されておりますので,登記完了証よりも情報量は多いです。
 

また,誰でもいつでも法務局に行けば何度でも発行してもらえますが,1通取得するごとに600円の費用がかかります

※オンラインで請求すると500円かつ送料無料で送付してくれますし,情報だけであればネットの画面で見ることもできます(登記情報提供サービス)。

なお,「事後謄本」とは申請が終わった後に取得する登記事項証明書(登記簿謄本)のことを指しております。 
 

登記事項証明書(事後謄本)は取得した方が良いのか

 

情報量の多さで言えば,登記事項証明書の方が圧倒的に多いですが,生活していくうえで所有されている不動産の情報を確認する必要性に迫られることはほとんどないと思いますので,抵当権抹消登記が完了したことさえわかれば良いということであれば,登記事項証明書は不要だと思います。ただ,逆にいえば,こんなときで無いと不動産の情報を確認する機会も無いと思いますので,そういう意味では登記事項証明書を取得しても良いかもしれません。
 

以下,相違点をまとめてみましたので,参考にしていただければと思います。
 

【登記完了証】

・再発行されない

・抵当権が抹消されたことだけがわかる

無料である
 

【登記事項証明書】

・いつでも誰でも法務局に行けば発行してもらえる

・抵当権が抹消されたことだけではなくすべての情報が記載されている

有料である

コメントは受け付けていません。

3月 02 2015

50年以上前の登記の抹消

およそ半年がかりで,権利関係が錯綜している不動産の登記をきれいにする手続が完了しました。様々な手続を行って完了したため,今後の備忘録の観点も含めて記載したいと思います。
 

 

登記記録(登記簿)の状況

 
 

所有者はすでに亡くなった方の名義になっていました。
 

いわゆる仮登記担保として,所有権に関する仮登記が複数なされていました。
 

抵当権が設定されていました。
 

※仮登記権利者及び抵当権者は個人であり,かつ,存命であり,かつ,連絡が取れる状況にありました。
 

さらに,賃借権が設定された上で,その賃借権の転借権も登記されていました。
 

※賃借権者は個人でしたが行方不明で生死不明であり,転借権者は会社でしたが遥か昔に会社登記簿が閉鎖されており法的には存在しない会社の名義になっていました。
 

この登記を現状に合わせるための登記のご依頼をいただきました。  
 

なすべき登記

 
 
以上の状況でなすべきことは,
 

不動産の名義を相続人名義に変える

仮登記,抵当権,賃借権及び転借権の各登記を抹消する。

ということになります。
 

このうち,①は難しいことではありません。当事務所が通常行っている相続登記ですので,相続人間で話し合っていただき,どなたが相続するかを決めていただければすぐにでも登記は可能です。
 

→ 相続による所有権移転登記について
 

また,②と③については,仮登記権利者が抵当権者と連絡が付くため,登記原因証明情報や委任状,登記済証(登記識別情報)をその方からいただければ良いですし,仮に登記済証が無くても本人確認情報などを用意したり事前通知をすることで抹消登記は十分可能です。
 

→ 権利証を失くしてしまった場合
 

問題は賃借権設定登記の抹消です。 すでに会社自体が無くなってしまっているため,会社の復活など様々な手続が必要になってきます。 
 

登記名義人が行方不明になっている登記の抹消

 
 

賃借権者が行方不明ですので,上記②や③のように書類をいただいて抹消することができません。また,抵当権などと異なり,賃借権は休眠担保の特例を使って簡易に抹消することができません
 

→ 休眠担保の特例
 

とすると,基本的には訴訟によって抹消することになります。
 

また,転借権も問題でした。転借権は②と③などと同様に転借権の抹消登記を申請することもできますし,賃借権を抹消するに際して承諾書を添付して職権で抹消してもらうこともできます
 

ただ,いずれにしても転借権者から印鑑をもらう必要がありますが,転借権者は会社であり,しかも法的には存在しないことになっている会社ですので当然ながら代表者も存在せず,誰から印鑑をもらえば良いのかという話になります。
 

【賃借権の抹消】
 

まず,賃借権の抹消登記訴訟を提起しますが,現在の相手の所在がわからないので,現時点で分かっている住所(登記簿に記載されている住所)を訪ね,近隣の方に聞き込みなどを行います。これを行うことで,相手の現在の住所がわからなくても訴訟を進めることが可能となります。 

また,賃借権の抹消登記訴訟については,土地の場合は不動産の評価額が土地のみであれば評価額が560万円以下,建物のみであれば280万円以下であれば代理人として手続を進め,それ以上の金額であれば書類作成者として関与させていただくこととなり,書類作成者として関与させていただいた場合は,所有者の方(今回だと所有者は亡くなっているのでその相続人)のどなたか1名で構わないので法廷までお越しいただく必要があります。
 

この点,「法廷で難しいことを聞かれるのではないか」とご心配される方も多いと思いますが,一番件数が多い抵当権抹消登記訴訟については遥か昔の貸金ですので時効によって消滅していることにほぼ疑いの余地はなく,法的に難しい話しはまったく出てきません。さらに,相手が裁判所に来ることもほぼあり得ませんので,裁判所から難しい質問があることはまずありません。
 

今回は,140万円どころか数千万円の不動産でしたので,書類作成者として関与させていただき,相続人の一人の方に法廷までお越しいただきましたが,ものの3分程度ですべて終了となり,その1週間後には無事勝訴判決が出ました。 
 
 

【転借権の抹消】
 

会社が存在しないので,まずは会社を代表する人を探し出す必要があります。もし,見つからないようであれば裁判所に「特別代理人」もしくは「清算人」を選任してもらい,その人を相手に訴訟を起こすことになります。
 

裁判所に相談したところ,費用的には特別代理人の方が安く済むそうですので,知り合いの弁護士さんに特別代理人になっていただく予定で進めていたところ,無事会社の代表者の方が見つかりましたので,まずは会社を復活させた上でその方から転借権抹消の承諾書をいただきました。
 

ということで,勝訴判決の判決正本と転借権を抹消する旨の承諾書を添付して,無事賃借権を抹消することができました。  
 

かかる費用

 

もともと,依頼者の方は弁護士さんにご依頼されることを検討されており,見積書も出してもらわれていたようですが,今回当事務所で進めたことで数十万円以上安い報酬で進めることができました。とは言っても,何十万円単位の報酬となってしまいましたので,決して安い費用ではないと思います(弁護士さんにご依頼された場合の見積額は百数十万円の金額でした。)。
 

さらに,今回はたまたま抵当権者や転借権者である会社の代表者の方と連絡が取れた上にご協力いただけたのですが,見つからない場合も多いですし,見つかったとしてもご協力いただけないケースも多々あるかと思います。とすると,さらに時間も費用もかかりますので,古い登記は早めに抹消されておいた方が良いと思います。

コメントは受け付けていません。

4月 09 2014

申請期限や有効期限のある書類

相続登記や抵当権抹消登記のご依頼をいただく際に,登記の申請期限や書類の有効期限に関するご質問をいただくことがあるため,この「期限」に関するものについてまとめてみます。 
 

 
 

登記申請の期限(締切)



実は,相続登記や抵当権抹消登記に限らず,司法書士が行う登記について登記申請の期限というものは一切存在しません
 

というのは,登記というのはあくまで自分の権利を守るための制度であるため,登記するかどうかは権利者の自由となっています。いつまでに登記をしなければならないというものはありませんし,逆に長年放っておいたとしても書類さえ揃っていればいつでも申請することができます。
 

現実的には売買などであれば二重売買の危険がありますので登記をしないというケースはまず無いと思いますが,相続登記が30年間放置されているとか,すでに完済しているのに明治時代の抵当権が抹消されずに残っているなんていうのは結構よくあることです。
 

ただし,相続登記や抵当権抹消登記ができるのにしないまま放置しておくと,実際に登記するときにびっくりするくらい大変な場合がありますので,可能であれば早めに登記申請はした方が良いと思います。
 

遥か昔の抵当権が残ってる場合
休眠抵当の特例が使えない場合
 

※建物を新築した場合の建物表題登記など土地家屋調査士さんの業務に関する登記については申請期限の定めがある登記もあります。 
 
 

書類の期限

 

上記の通り申請期限はありませんが,書類について有効期限が定められている場合があります。ただし,これも極々例外でほとんどの書類に有効期限はありません。
 
 

【有効期限がある書類】

抵当権抹消登記の際の抵当権者の資格証明書(代表者事項証明書)

→有効期限3か月
 
 

【有効期限のない書類(主なもの)】

抵当権解除証書

委任状

登記済証

登記識別情報通知書

変更証明書(抵当権者の住所や商号が変わっている場合)

相続登記の際の戸籍謄本・除籍謄本等

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書

住所変更登記の際の住民票
 
 
 

特に,戸籍や住民票,印鑑証明書などは3か月の有効期限があると誤解されて入らっしゃる方が多いと思いますが,少なくとも抵当権抹消登記,相続登記においては3か月以上前のものでもまったく問題ありません。
 

また,唯一有効期限のある資格証明書については法務局でいつでも誰でも取得できますので,例え3か月経過してしまっていたとしても登記申請ができないということはありません。
 

ただし,有効期限はなくても実際に書類が使えない場合があります。
 

例えば,抵当権抹消登記の際の抵当権解除証書や委任状は,その当時の代表取締役の名前で発行されていると思いますが,何十年も経っていると資格証明書に記載されている代表取締役と異なっていることがありますので,その際は,再度抵当権者に再発行してもらうことが多いです。
 

ということで,特に申請期限はありませんが,書類の有効期限の関係で余分に費用がかかってしまう場合がありますので,やはり早めに登記申請された方が良いと思います。

コメントは受け付けていません。

2月 21 2014

休眠担保の特例が使えない(根)抵当権抹消

明治時代から昭和初期くらいまでに抵当権などの担保権が設定され,全額完済したにも関わらず担保権が抹消されず,今に至るまで残っていることがあります。  
 

 

休眠担保の特例

 

原則としては,担保権者を探し出して担保権者本人から,もし亡くなっているのであれば相続人全員から関係書類を発行してもらい抹消手続をしなければなりません。
 

しかし,現実問題として,明治時代の方が現在も生きていらっしゃる可能性はかなり低く,さらにその相続人を探し出すというのも大変です。
 

したがって,そのような場合は休眠担保の特例という制度を使うことで,比較的簡単に担保権を抹消することができます。
 

詳細は,当事務所の以前のブログに記載しておりますのでこちらをご覧ください。
 

ブログ記事
 

上記の記事を簡単に説明すると,その当時設定された担保権の債権額を現在に至るまでの利息を付加して支払えば良いということです。
 

明治時代から考えると100年以上経過していますので,利息が付くとなると凄い金額になりそうですが,その当時の設定金額は50円とか500円など少額である場合が多いため,利息が付いても数百円から数千円程度にしかなりません。そして,明治時代の貨幣価値を考慮する必要はありませんので,単純に数百円から数千円のお金を供託することで抹消することが可能となっています。  
 

特例が使えないケース

 

①抵当権者(またはその相続人)が行方不明ではない
 

休眠担保の特例は,法律上,抵当権者が行方不明でなければなりません。この点,ある程度は調査をしなければなりませんので,調査をした結果,行方がわかった場合にはこの方法は使えないことになります。 
 

②弁済期から20年未満の場合
 

弁済期から20年以上経過していないと特例が使えないため,今だと平成初期以降に設定されたものについては特例が使えません。この点については,時の経過を待てばいずれ使えることにはなりますので,もう少しで20年経過するようであれば待っていただくのも一つの手だと思います。
 

賃借権や地上権など担保権ではない場合
 

特例はあくまで担保権(抵当権や根抵当権,質権など)の抹消に限られており,賃借権などの抹消にはこの特例は使えません。
 

④物の引渡し等,金銭で表示されていない場合
 

抵当権については,ほぼすべてにおいて金銭で債権額が表示されておりますが,極々稀に金銭ではない債権が表示されていることがあります。当事務所では過去に「玄米の引渡し」というものがありましたが,このようなケースでは供託ができない(いくら弁済すれば良いかわからない)ため,特例が使えません
 

⑤金額が高い場合
 

上記4つは,特例を使いたくても法律上使うことができません。しかしながら,法律上の要件を満たしていたとしても,設定金額が高額の場合には現実的に特例が使えません。例えば,平成元年に設定されたものであれば20年以上という特例を使う要件を満たしていますが,設定金額が1000万円とかだとこれに26年分の利息が付くことになりますので,数千万円を供託しなければならず現実的に支払うのは困難です。
 

以上のような特例が使えない場合,どうすれば良いかというと訴訟をして抹消することになります
 

先日,上記うち設定金額が高すぎて特例が使えないため裁判を行ったケースがありました。
 
 

 
 

上記裁判に関する担保権(根抵当権)は平成4年に設定されたものであるため,休眠担保の特例を使うこともできます。しかし,設定金額が高く,供託するためのお金で数百万円が必要となるため,現実的ではありません。そこで,裁判を行って裁判所から登記を抹消せよ,との判決をもらって抹消することになります。  
 

訴訟が開始するまでが大変だけど開始すれば比較的簡単

 

裁判を行うためには,原則として相手に書類が届かなければなりません。これは相手の反論の機会を与えないと不公平だからです。ざっくり言えば,知らないうちに裁判が行われて,知らないうちに敗訴することを避けるためです。
 

しかし,相手が行方不明の場合で裁判ができなくなってしまうとなると,今度は訴える側が困ってしまいます。
 

そこで,頑張って相手の住所を探したけど,どうしても見つかりませんでしたということを報告書の形にして裁判所に提出することで行方不明でも裁判ができることになっています。これを公示送達と言います。
 

送達についてはこちら→債権回収相談室
 

逆に言えば,公示送達さえ認めてもらえれば,相手は欠席となりますので証拠がきっちり揃っていれば基本的には負けることはありませんし,裁判自体も1回で,しかもわずか数分で結審します。なお,通常の欠席裁判と異なり証拠が不要という訳ではありませんので,裁判官に納得してもらえる程度の証拠は準備する必要があります。 
 

抹消登記訴訟に関する費用

 
 
どの程度調査が必要なのかがケースバイケースであるため,画一的な費用を設定することが困難です。また,訴訟をするに当たり収入印紙を裁判所に納めなければなりませんが,担保権の金額や不動産の価値によって大きく異なります。
ただ,これだと何も情報が無いので,ざっくりとした金額を記載するとすれば,裁判費用等の実費も含めて20万円程度から高くても50万円程度だと思います。
 

なお,弁護士さんと異なり,司法書士が代理人になれないケースが多く,その場合は所有者の方に裁判所までお越しいただく必要があります。
 

もっとも,司法書士は書類作成に過ぎませんので弁護士さんより費用はかなり安くなっており,一般的な弁護士さんにご依頼されると上記金額の倍以上はかかると思います。
 

いずれにしても,個々の事案によって大きく費用が異なるため,ご相談いただければと思います。
 

訴訟になった場合の具体的な流れについて(消滅時効を原因とした抵当権抹消登記手続訴訟)

50年以上も前の登記の抹消

コメントは受け付けていません。

Next »

  • なぜオンライン申請だと費用を抑えられるのか 理由はこちら
  • 所有権移転登記
    • 売買による所有権移転登記
    • 相続による所有権移転登記
    • 当事務所にご依頼いただく場合
    • 当事務所の費用一覧表
    • 私の場合はいくらなの?
  • 抵当権の抹消登記
    • 住宅ローン完済時の抵当権の抹消登記
    • 遙か昔に登記された抵当権抹消登記
    • 裁判手続きによる抵当権抹消登記
    • 抵当権抹消登記の費用
    • 抵当権抹消登記の流れと簡単WEB見積り
  • よくあるご質問
  • はなみずき通信

はなみずき司法書士事務所

お気軽にお問い合わせください。電話番号0561-61-1514。ファックス番号0561-61-1535

お問い合わせはこちら

事務所案内はこちら

〒480-1116
愛知県長久手市杁ヶ池106番地2
1階
TEL: 0561-61-1514
FAX: 0561-61-1535

対応地域

名古屋市、岐阜県、愛知県、三重県

Copyright © Hanamizuki. All Rights Reserved.