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相続に関すること

1月 25 2023

障害がある方の遺言作成について

先日、聴覚に障害がある方の公正証書遺言作成について関与をさせていただきましたので、今回は聴覚や視覚などの身体障害や精神障害がある方の遺言書の作成についてまとめてみたいと思います。

なお、一般的によく利用される自筆証書遺言と公正証書遺言についてであり、秘密証書遺言や危急時遺言などの例外的な方法については記載しておりません。
 


 
 

1 精神障害について

 

遺言書を作成する場合、その時点で遺言能力(意思能力)が必要となります(民法963条)。

遺言能力とは、端的に言えば「遺言の内容について理解できること」となり、形式的に15歳未満の方は遺言能力は無いとされており(民法961条)、精神障害や認知症等によってご理解いただくことが難しい場合も遺言能力は無いとされています。

もっとも、一律に障害があるからダメだというものではなく、あくまでご本人の状況次第となりますので、精神障害や認知症等の方であっても遺言の内容が理解できるようであれば遺言書の作成は可能です。
 

なお、成年被後見人の方については、遺言の内容を理解できる状況にあり、かつ、医師2名以上の立会いという条件があるものの、成年被後見人ということをもって遺言書の作成が否定されるものではありません民法973条)。また、被保佐人や被補助人の方については、作成できるのはもちろんのこと医師の立会い等も不要です(作成時において遺言能力があることは必要です。)。

ちなみに、私は数名の方の成年後見人に選任されておりますが、これまでに遺言書の作成をしたことはありません。 
 

2 身体障害の場合

 

身体障害がある方の場合においても、上記の遺言能力があることが当然の前提となります。
 

(1)自筆証書遺言

自筆証書遺言は、文字通り「自筆」で遺言書を書く必要がありますので少なくとも文字を書ける必要がありますが、それさえクリアできれば障害は問題となりません

視覚障害があっても自筆で書ければ大丈夫ですし、聴覚障害については一切問題にならないと思います。また、利き手が障害等によって文字を書くのが困難であったとしても、読める字であれば利き手ではない方で書いていただいて大丈夫です。
 

一方、手が震える等の理由により、いわゆる添え手で作成された場合は「自筆」とは言えない可能性があるため、無効になる恐れがあります。

この点についての裁判例として、最判昭62年10月8日があります。

→ 最高裁サイト

→ 判決全文(PDF)
 

上記判決においては、添え手においての自筆証書遺言が有効になるための要件として、3点を挙げています。

遺言者が証書作成時に自書能力を有していること。
他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること。
添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できること。
つまり、文章の始めや終わりなどの部分に第三者が本人の手を移動させてあげることは問題ありませんが、文章を書く際に第三者の意思が介入した形跡が少しでもある場合は無効になってしまうことになります。
上記最高裁の事例においては、第三者が第三者が支えを借りただけではなく積極的に書いたものであるとして無効と判断しています。

 

「本件遺言書には、書き直した字、歪んだ字等が一部にみられるが、一部には草書風の達筆な字もみられ、便箋四枚に概ね整つた字で本文が二二行にわたつて整然と書かれており、前記のようなD(遺言者)の筆記能力を考慮すると、E(第三者)がD(遺言者)の手の震えを止めるため背後からD(遺言者)の手の甲を上から握つて支えをしただけでは、到底本件遺言書のような字を書くことはできず、D(遺言者)も手を動かしたにせよ、E(第三者)がD(遺言者)の声を聞きつつこれに従つて積極的に手を誘導し、E(第三者)の整然と字を書こうとする意思に基づき本件遺言書が作成されたものであり、本件遺言書は前記②の要件を欠き無効である」

 

そして、遺言無効の訴訟が起こされた場合、有効だと主張する側が有効であることを立証しなければなりませんので、かなり大変だと思われます。
したがいまして、添え手での遺言書作成はかなりリスクが高いため、自筆証書遺言ではなく次の公正証書遺言を推奨いたします。

 
 

(2)公正証書遺言

公正証書遺言の場合、遺言者が自分の手で書くのではなく、公証人に対してどのような遺言を作成したいのかを伝えられれば良いということになりますので、基本的には遺言者が口頭で公証人に遺言の内容を伝え、公証人が遺言者に対して読み聞かせ、または閲覧させたうえで遺言者が承認したあとに、遺言者と証人が署名押印することで公正証書遺言は完成いたします(民法969条)。
私どもが関与させていただく際には、事前に遺言者の方からご希望を伺い、公証人と事前に打ち合わせをしたうえで、案文を作成してもらったうえで、遺言者の方に確認していただいてから公証役場を訪ねることになりますので、実際に公証役場において遺言者が口頭で公証人に全部を伝えるという事は少なく、確認のために大枠だけ伝えることが多いかと思います。

 

さて、上記のとおり遺言者が口頭で伝えるとなっておりますので、聴覚障害等により口頭で遺言の内容を伝えることができない場合があります。また、最後に署名押印が必要になっているので、身体傷害がある場合に署名ができない場合があります。

 

この点、前者の口頭の部分については、法改正により手話等にて通訳人に伝えてもらうこともできますし、遺言の内容を自書するという事も可能になっており、公証人の読み聞かせについても通訳を介することができるようになりました(民法969条の2)し、内容を閲覧してもらう方法でも大丈夫です。なお、推定相続人は立ち会えないので、推定相続人以外の方が通訳人になる必要があります。

 
 

また、後者の署名押印については、身体障害等の理由により署名ができない場合は、その旨を公証人が記載すれば遺言者の署名押印は不要となっております(民法969条4号ただし書)。

 
 

最初に記載したとおり、先日関与させていただいた公正証書遺言については聴覚障害の方であったため、遺言の趣旨を自書していただいて無事終えることができました。
一般的な公正証書遺言の場合は、遺言書の始まりは、「遺言の趣旨の口述を筆記し」となっています。

 
 

 

しかし、今回の場合は「遺言者は口がきけないため、その自書した遺言の趣旨を筆記し」となっています。

 
 

 

また、上記とは直接関係ありませんが、病院等で入院されていらっしゃる場合においても、公証人に病院等まで来ていただいて公正証書遺言を作成することは可能です。以前、足が不自由な方の遺言を作成するに当たり、公証人に遺言者のご自宅まできていただいたことがあります。
ただし、出張に関する日当がかかりますので、通常の公証人の手数料の1.5倍程度の費用がかかってしまいます。

 

このように、仮に障害をお持ちの方であっても遺言書を作成することは可能ですので、作成をお考えの方はお問い合わせいただければと思います。

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1月 13 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ③

令和5年4月1日から不動産登記法の改正により、遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記が残っている場合に抹消する方法が簡略化され、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で申請できるようになりました。また、抹消ではありませんが、遺贈の登記に関して単独で申請できる場合が定められました。今回は、この点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記とは

 

不動産の登記簿をご覧いただくと、所有者が誰であるかということが登記されています。所有者が変わっても自動的に所有者が変更されるわけではないため、当事者が登記申請を行い、その時点での所有者を登記して第三者に対抗できるようになります。この登記をしないまま長い月日が経過して実際の所有者が分からないことが大きな問題になっており、それに対応したのが前回の相続土地国庫帰属制度の記事となります。
 

さて、登記簿を見ると、所有者が誰であるかという事以外にもいろんなことが登記されている場合があります。例えば、住宅ローンを組まれて不動産を購入されている場合は、「抵当権」という権利が設定されており、金融機関の担保になっていることが分かります。また、それほど多くはありませんが、第三者に賃貸等をしている場合は「賃借権」の登記や「地上権」の登記がされている場合があります。

こちらも当事者が登記申請をしなければ登記されませんし、逆に権利が無くなった場合(抵当権であれば住宅ローンを完済した場合、賃借権であれば賃貸借契約が終了した場合、など)も自動的には登記は抹消されないため、当事者が抹消登記の申請をする必要があります。

また、登記制度は遥か昔から存在するため、明治時代のお金の貸し借りでも抵当権が設定されることがありました。その後100年以上経過し、本当は完済しているけど登記申請を忘れているのか、完済しないまま時が過ぎてしまっただけのかは分かりませんが、明治時代の抵当権が現代まで抹消されずに残っていることがあります。これが、「遥か昔の権利(所有権以外)に関する登記」となります。
 

そもそも、登記というのは当事者が協力して手続をしなければならず、当事者が亡くなっている場合は基本的に相続人全員が関与する必要があります。

しかし、100年以上も前の登記だと、恐らく登記の名義人はすでに亡くなっていると思われますし、その相続人を探すことも大変です。加えて、相続人が見つかったとしてもその相続人が協力してくれるかどうかも分かりません。

普通に使っている分には遥か昔の登記が残っていたとしても特に支障は無いかもしれませんが、第三者に売却等をする場合には大きな問題になります(遥か昔の登記が残っている場合、一般的には抹消しなければ売却ができません。)。

ということで、遥か昔の登記が残っているとかなり厄介なことになります。 
 

2 抵当権等の担保権については制度がある

 

当事務所でもページを設けているとおり、抵当権等については比較的簡単に抹消できる場合がありますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 遥か昔に登記された抵当権抹消登記(休眠抵当権) 
 

3 抵当権等の担保権以外の登記

 

すでに存続期間が満了している地上権等の登記買戻期間が満了している買戻登記については、権利者(一般的には不動産の所有者)が単独で抹消できることになりました。
 

以下、各ケースに関して記載いたします。
 

(1)存続期間満了済みの地上権等

必ずしも存続期間が定められている訳ではありませんので、すべての地上権等が該当するわけではありませんが、存続期間が登記されており、かつ、その期間が満了している場合は比較的簡略的に抹消することが可能となりました。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①存続期間が登記されており、かつ、すでに経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。存続期間が登記されていないようであれば残念ですがこちらの制度は使えません
 

②地上権者の調査を行う。

→具体的には地上権者の住民票等の書類上の調査を行う必要がありますが、現地調査までは必要ありません。もし、ここで地上権者等の所在が判明するようであれば簡略的な手続ではなく、通常どおり当事者双方が協力して登記申請を行うことになりますし、万が一協力してくれない場合は訴訟を行う必要があります。
 

③裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を得る。

→難しそうな感じがしますが、裁判所に対して「地上権を抹消しようとしているので、異議がある人は連絡してくださいね。」という趣旨の官報公告を行うことになります。そして、一定期間が経過すると除権決定が出て抹消することができるようになります。
 

④登記申請

→上記の除権決定を添えて、権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 
 

(2)買戻期間満了済みの買戻権

買戻権というのは、いったん売却をするけど、一定期間内であれば買い戻すことができる権利です。最近はあまり見ませんが、昭和や平成初期の売買の際の住宅供給公社等の公社が関係している場合に登記されているのをよく見ます。

さて、この買戻権は特に期間を決めなければ売買契約の日から5年間とされており、当事者の合意によっても最大で10年間とされています。とすると、売買契約の日から10年以上経過している場合は必ず買戻権は消滅していることになりますので極めて簡単に抹消することができます。

※上記の地上権等については存続期間の上限はありませんので、存続期間が定められていたとしてもその後に延長されている場合があります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①買戻権が登記されており、かつ、売買の日から10年が経過していることを確認する。

→登記事項証明書を見ればすぐに分かります。
 

②登記申請

→権利者が単独で登記申請を行うことになります。
 

③買戻権者への通知

→まったく買戻権者が関与しないところで抹消されてしまうため、買戻権者宛に法務局から抹消した旨の通知がなされます。
 

上記の地上権等の抹消と異なり、権利者の調査や公示催告等の手続も一切不要ですので、極めて簡単に抹消することができます。 
 

4 解散した法人が抵当権等の担保権者の場合の特例

 

上記2のとおり、抵当権等については比較的簡略的に抹消できる特例がありますが、さらに解散した法人が抵当権者等の場合の抹消登記の特例ができました。

解散した会社であっても、清算人という方が存在するはずですので、通常はその清算人に協力してもらって抹消登記を申請することになります。しかし、清算人が行方不明だと協力を得ようがありませんし、清算人が亡くなっているような場合だと裁判所に清算人を選任してもらうなどかなり大変な手続が必要でしたが、今回の改正により比較的に簡略的に抹消が可能であり、さらに従前の特例と異なり供託しなくても良いというメリットもあります。
 

手続の流れとしては概ね以下のとおりとなります。

①抵当権等の担保権が登記されており、かつ弁済期から30年以上が経過していることを確認する。

→不動産の登記事項証明書で確認をします。
 

②抵当権者等が解散されてから30年以上経過していることを確認する。

→法人の登記事項証明書で確認をします。
 

③清算人の調査

→法人の登記事項証明書を見れば清算人が誰であるか住所氏名が登記されていますので、清算人の調査を行います。ただし、住民票等の調査のみで大丈夫であり、現地調査までは不要です。もし、清算人が見つかれば、通常どおり共同で申請を行うことになり、万が一協力してもらえない場合は訴訟等他の方法を検討することになります。
 

④登記申請

→清算人が所在不明であることが確認できたら、供託をすることなく、権利者が単独で登記申請を行うことになります。 
 

5 遺贈を原因とした所有権移転登記等

 

簡略的な抹消とは無関係なお話しですが、単独申請という点で共通するのでこちらでまとめます。

遺贈とは、遺言によって財産をあげるというものであり、相続人に対して行うこともできますし、まったくの第三者である個人や法人に対しても行うことができます。当事務所でも日本赤十字社やお世話になった病院へ遺贈するという内容の遺言書の作成に関与させていただいたことがあります。
 

さて、相続登記の場合は取得する相続人が単独で申請できるのに対し、遺贈の登記については相続人全員または遺言執行者が関与して登記をしなければならないとされております。遺言執行者が協力しないということは考えにくいですが、遺言執行者が選任されていない場合は相続人全員が関与する必要があり、その方の協力が得られないと登記ができないことになります。

さらに、相続人であるAが不動産を取得するにしても、遺言に「不動産をAに相続させる(特定財産承継遺言)」という場合はAが単独で登記申請できるのに、「不動産をAに遺贈する」となっている場合はAが単独申請できないことは不合理だと考えられます。

そこで、遺贈の登記全部という訳ではありませんが、遺贈によって財産をもらう人が相続人である場合に限り、当該相続人(受遺者)が単独で申請できることになりました。

一方で、遺言によって自身が取得取得することを認識した場合は3年以内に登記申請を行う義務が生じ、3年以内に登記をしない場合は「10万円以下の過料」という罰金のようなものを課される可能性があります。
 
 

上記のうち、買戻権の抹消は司法書士としてはかなり楽にはなるかと思いますが、一般的にはあまり関係ないと思われます。また、地上権等の抹消や解散法人の抵当権等の抹消については、あまりお目にかかることは無いものの、お目にかかった時には大変な手間がかかりましたので、該当する方にはかなり大きな改正になると思います。

最後の遺贈については、相続人に遺贈するというケースがそもそも多くなく(遺贈するくらいなら特定財産承継遺言を書くことが多い)、仮に遺贈にするようであれば遺言執行者として受遺者を選任していることが多いため、現実的にはあまり該当するケースは多くないかと思います。

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1月 12 2023

令和5年4月から施行される民法改正等のまとめ②

令和5年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まります。今回は、この点についてまとめたいと思います。
なお、新しく「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」という法律ができるため民法改正ではありません。

 
 

1 相続土地国庫帰属制度が出来た理由

 

不動産という財産の多くは高額な財産であり、自宅の不動産を相続することも一般的によくあることです。

すでに社会人として独立していて都会に家を構えており、実家には戻らない予定なので土地が不要という方も多く、そういった場合は第三者に売却することになると思われます。

しかし、そもそも宅地ではなく、山林や農地など第三者には売却ができず、かといって使うこともないため放置されてしまうという土地が日本の至る所にたくさんあり、登記についても相続登記がされないまま亡くなかった方名義のままになっていることがあります。もし、日本中がこのような土地だらけになってしまうと、国や市区町村等が道路を作ったり、公共施設を作る場合などに、土地の所有者から譲ってもらったり、使用することへの承諾を求めようにも誰から土地を譲ってもらえば良いのか分からないため進められなくなってしまいます

そこで、もう今後使用しないような土地については、国に対して引き取ってもらうことができる制度ができました

ただし、単に引き取ってもらえれば良いというものではなく、そのためにはなかなか高いハードルがあります…. 
 

2 制度を使うための条件

 

この制度を満たすためには、次の条件を満たす必要があります。

(1)土地であること

建物は最終的には解体してしまえば無くなるのですが土地はそういう訳にはいきませんので、この制度を使って国に引き取ってもらう不動産は土地でなければなりません。
 

(2)相続・遺贈によって取得したこと

相続や遺贈(受遺者が元の土地所有者の相続人である場合に限る)という、今の所有者の意思で取得していない場合に限ります。したがって、土地を買ったものの使わなくなったので国に引き取ってもらうというようなことはできません。
 

(3)通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

訳アリの土地は国は引き取ってくれません。
 

(4)一定の負担金を国に納めること

国に土地を渡してお金がもらえるどころか逆にお金を負担して引き取ってもらうことになります。
 

以下、それぞれの内容について詳しく見ていきます。 
 

3 土地であること

 

上記のとおり引き取ってもらえるのは土地であり、建物は含まれません土地上に建物が存在している場合は、事前に解体しておく必要があります。 
 

4 相続・遺贈によって取得したこと

 

元の所有者が亡くなったことによって取得した人に限られます。共有の場合は、共有者全員で申請をしなければなりません。

また、共有の場合は、一部の方が相続等で取得していれば問題ありません。例えば、甲さんからAさんとBさんが各1/2ずつを売買で取得しました。その後にAさんが亡くなり、相続人であるCさんがAさんの持分を取得し、Bさん1/2、Cさん1/2となった場合、Bさんは売買で取得していますが、相続で取得したCさんと共同して申請することによりこの制度を利用することができます。 
 

5 通常の管理ができない土地や処分をするのに多額の費用や管理が必要となる土地では無いこと

下記のような場合は認められないことになります。

①建物が存在している土地

②地上権や抵当権など第三者の権利が設定されている土地

③道路など、権利を持っていない第三者も施用することが想定されている土地(通路、墓地、境内地、水道用地など)

④土壌汚染など特定有害物質によって汚染されている土地

⑤隣地との境界が不明な土地

⑥権利関係に争いのある土地
 

また、下記のような土地は認められない場合があります(全部ではありません。)。

⑦崖がある土地(勾配が30度以上で高さ5メートル以上)

⑧土地の管理ができないような樹木、工作物、その他有体物が地上または地下に存在する土地

⑨土砂崩れの恐れ、鳥獣被害などが起こる恐れのある土地

⑩その他管理が大変な土地 
 

6 一定の負担金を国に納めること

 

土地の種類によって異なりますが、概ね下記の表のとおりとなり、少なくとも20万円はかかることになります。
↓画像をクリックしていただくと大きく表示されます。

 
 
 

ということで、国に土地を引き取ってもらうとは言っても、その条件を満たす土地で無ければなりませんし、前提として建物の解体が必要であれば建物の解体費が、境界が不明であれば測量の費用など、負担金以外にも多くの費用がかかることになります。
ただでさえ価値が無い土地だから放置されているのに、数十万円もかけて土地を引き取ってもらう方がたくさんいらっしゃるのかは分かりませんが、少なくとも国が引き取ってくれるという制度自体が存在しませんでしたので、そういった意味では大きな一歩かと思います。

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10月 28 2022

遺言執行者の選任はしておいた方が良いか(登記的に)

遺言書作成のご相談、ご依頼をいただくことがあり、基本的に当事務所としては公正証書遺言での作成をお勧めしております。

というのは、通常の自筆証書遺言の場合は、紛失、変造等のリスクがあり、そのリスクを軽減する法務局の自筆証書遺言書保管制度も、法務局が遺言の内容のチェックまでしてくれるわけではないので、最悪の場合無効となってしまうリスクがあるためです。

もちろん、公正証書遺言であっても意思能力が無い等の理由で無効になるリスクが無いわけではありませんが、少なくとも形式違背で無効になることはまず考えられませんので、特段の事情が無い限り公正証書での遺言書の作成をお勧めしております。

また、遺言書作成に当たり、遺言執行者の指定についてもご相談いただくことがありますので、今回はこの点についてまとめたいと思います。

 
 

1 遺言執行者とは

 

そもそも遺言書に記載されている内容は、遺言者ご本人が亡くなったからといって自動的に不動産の名義変更がなされたり、金融機関の預貯金が解約されるわけではありませんので、遺言書の内容を実現する人が必要になってきます。それを実現する人が遺言執行者となります。
 

ただ、遺言執行者は必ず指定しなければならないというものではありませんので、遺言執行者が指定されていなければ、相続人全員が協力して遺言書の内容を実現していくことになりますし、どうしても遺言執行者が必要であれば家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。以前、遺言執行者が選任されておらず、かつ相続人の一部の方が協力してくれなかったため、特定の相続人を遺言執行者に選任してもらうよう家庭裁判所に申立てを行い、その通りに選任されて手続を進めたこともあります。 
 

2 遺言執行者になれる人など

 

遺言執行者は、未成年者及び破産者以外の方であれば、誰でもなることができ、特に資格なども必要ありません。特定の相続人を遺言執行者に指定することもできますし、相続とは無関係な弁護士や司法書士等の専門家を指定しておくことも可能です。

さらに、1名に限られていないため複数指定することも可能ですし、順位を付けて指定することも可能であり、法人であっても可能です。

例えば、「妻と長男を遺言執行者に指定する。」、「妻を遺言執行者と指定するが、遺言者よりも前に妻が亡くなっていた場合は長男を指定する。」、「A株式会社を遺言執行者に指定する。」ということが可能です。
 

なお、あくまで遺言執行者の「指定」に過ぎないため、指定された人は遺言執行者になることを拒否することも可能です。 
 

3 遺言執行者の権利と義務

 

(1)権利

①報酬

法律上の原則としては遺言執行者は報酬を受ける権利はありませんが、当事者間に取決めがあれば報酬を受領しても良いことになっているため、専門家が遺言執行者となる場合は遺言者との間で遺言書を作成する時点で遺言執行に関する報酬についても取り決めてあることが一般的です。これは各専門家によって異なりますが、遺産総額の数パーセントというケースが多いかと思います。
 

②遺言者の代理人として行う権限

権利というよりは権限になりますが、遺言執行者は遺言者の代理人として遺言書の内容を実現していく権限があります。したがって、例えば相続人の一部が反対していたとしても手続を進めることが可能です。
 

(2)義務

① 任務を行う義務
遺言執行者が、遺言書において指定を受けて就職を承諾したときは、直ちに遺言執行の手続を進めなければなりません。もちろん、「仕事を投げ出して最優先でやってください」という意味ではなく、「漫然と放置しないでください」という意味になります。

 

② 財産目録の作成等の義務
遺言執行者は、遺言者の財産を調査の上、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければなりません。この点が一番大変というケースも多いかと思います。

 

③ 善管注意義務
遺言執行者は、善管注意義務をもって遺言執行をしなければなりません。なかなか分かりづらいですが、常識的な判断で進めてくださいという感じかと思います。例えば、不動産を売却して代金を相続人に分配するという清算型の遺言があったときに、不当に安い価格で売却してしまった場合には善管注意義務違反で損害賠償請求される恐れがあります。したがって、このような場合には査定書を複数取ったりして金額が妥当であることの記録を取っておくべきだと思います。

 

④ 報告義務
遺言執行者は、相続人から問い合わせがあった場合には状況を報告し、完了した後にも完了の報告をする必要があります。

 

⑤ 引渡義務
遺言執行者は、遺言執行の任務遂行として相続人のために関係者から受領した金銭その他の物や収受したものがある場合には相続人に引渡さなければなりません。遺言執行者が受け取ったものはあくまで相続人や受遺者のために預かっているだけに過ぎませんので当然ですね。

 

⑥ 補償義務
遺言執行者が相続人に引き渡すべき金額等を使ってしまったり、預かったものを壊してしまった時などは弁償する義務があります。これも当然ですね。

 

4 遺言執行者は指定しておいた方が良いのか

 

やっと今回の記事のメインです。
遺言執行者を選任した方が良いかどうかは、その内容、相続人が自身で手続ができるか、相続人間の関係次第となります。

 

(1)内容
登記と関係ない部分ですと、認知や相続人の廃除等がある場合は必ず遺言執行者の指定が必要ですがそのような遺言はあまり多くないため、一般的には気にしなくて良いかと思います。
まず、遺言の内容に、遺贈がある場合は遺言執行者を指定しておいた方が良いと思われます。遺贈とは、基本的には相続人以外の人や法人に対して遺言者の財産を渡すというものであり、例えば相続人ではない孫、兄弟姉妹、甥姪、お世話になった友人知人、NPOや赤十字などの団体に財産を残したい場合になります。遺言執行者がいない場合は相続人が遺贈の手続を行うことになりますが、相続人としては遺贈がなければ自身の取り分が増えることになりますので、遺贈の手続を放置されてしまう可能性があります。これがもし不動産の場合、相続人全員の印鑑証明書が必要になりますので、途端にハードルが上がります。

 

逆に言えば、「A土地は長男に相続させ、B土地は次男に相続させる。」など、相続人だけが受け取るような内容になっている場合、遺言執行者がいなくてもA土地は長男のみで、B土地は次男のみでそれぞれ手続ができますので、必ずしも遺言執行者の指定は必要ありません。なお、このような場合であっても、遺言執行者が登記手続を進めることは可能です。

 

(2)相続人ができるかどうか
上記のとおり、遺言執行者にはたくさんの義務があり、いろいろと調査をしなければなりません。それには当然多くの時間がかかりますし、専門的な知識が必要な場面もたくさんあります。
この点、「相続人の調査だけ」、「財産の調査だけ」、「登記手続だけ」など、ピンポイントに専門家に依頼するということも考えられますが、丸っと専門家にご依頼いただいた方がスムーズに進むのは間違いありません
ただし、専門家に依頼した場合はそれなりに費用もかかりますので、この点を踏まえてご検討いただくことになります。

 

(3)相続人間の関係性
遺言執行者がいる場合、遺言執行者は相続人全員に対して、就任の通知や財産目録等を送付しなければなりません。
となると、相続人が兄弟のみの場合で、遺言書がある場合に、相続人ではあるけどもう何十年も連絡を取っていない兄弟がいる場合など、あまり関りがない方についても送付しなければならず、それが原因でトラブルが生じる可能性があります(兄弟姉妹には遺留分はありません。)。
上記のとおり、遺言書があっても、相続人単独で名義変更等ができてしまいますので、そのような場合には逆に遺言執行者を指定しておかない方が良いかもしれません。

 

5 まとめ

 

あくまで不動産に関する登記だけで考えると、遺贈があるのであれば遺言執行者を指定しておいた方が良いと思いますが、上記のような「A土地は長男に相続させ、B土地は次男に相続させる。」と具体的に決まっている場合は、必ずしも遺言執行者の指定は必要ないかと思います。もちろん、相続人が自身で手続を行うことが不安なので指定しておきたいという場合も多いので、指定していただいても問題無いかと思います。

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1月 18 2022

亡くなった方の遺産や負債の調査

当事務所では、不動産の相続手続のみならず、預貯金や株式の相続手続、さらには負債の調査なども行っております。この点、専門家にご依頼いただければ、基本的にはすべて進めさせていただくのですが、ご自身で行う場合はどのように調べて良いか分からないことも多いかと思います。
 

そこで、今回は財産や負債の調査についてまとめてみたいと思います。なお、完璧にすべての財産を探し出す方法は存在しませんのでご注意ください
 

 
 

1 不動産

 

まず、一番大きな財産である不動産ですが、所有しているかどうかは基本的には法務局にある登記で確認することになります。

ただ、いわゆる登記簿謄本である登記事項証明書を請求する場合、正確な地番等が必要であり、ご自宅であればまだしも別荘だったり、田畑などの場合には番地が分からないことがあります。そのような場合、各市町村役場の税務課に対し、亡くなった方(被相続人)の「名寄帳」(なよせちょう)「名寄証明書」(なようせしょうめいしょ)を請求すると良いと思います。
 

なお、必ずしも「名寄(なよせ)」という名称ではなく、例えば名古屋市だと「課税明細書」という名称になりますが、役所の担当者に「名寄が欲しい」とお話しいただければ分からない人はいないと思います。

この名寄は、端的に言えば、「被相続人が当該市町村内に所有している不動産の一覧表」です。名寄には地番や家屋番号等が記載されていますので、こちらを基に登記事項証明書を取得していただければ、正確な所有関係が分かります。ただ、あくまで「当該市町村内」という限定がありますので、日本全国色んな場所に不動産をお持ちの場合は、それぞれの市町村で請求をしなければならず、まったく手掛かりが無いような市町村に不動産をお持ちの場合は、見つからないということもあり得ます。
 

さらに、この名寄は課税される不動産についてしか載らないことが多いため、非課税の不動産だと名寄でも見つからないこともあります。 
 

2 預貯金

 

預貯金の有無については、残念ですが全金融機関の一覧表などは存在しないため、資料が手元に無ければ手あたり次第調査をするしかありません
 

ただ、金融機関次第ではありますが、口座の有無についてだけであれば電話で聞いても答えてくれるところもありますし、1つの支店に聞くと全支店の口座の有無が分かりますので、まったくどうにもならないものではありません。
 

通帳等の資料があれば問題無いのですが、遠方に居住している兄弟の相続などのケースにおいてはまったく分からないということもありますので、被相続人の最後の住所地の近隣にある全金融機関を周って調査をすることも多いです。過去にご依頼いただいた件では、そのような調査をして相続人の方がまったく認識していなかった金融機関で1000万円以上の預金を見つけたこともあります。 
 

3 株式

 

証券保管振替機構において、個々の株式の銘柄までは分かりませんが、どこの証券会社に口座を持っているかということを調査することができます
 

この調査により証券会社名が分かりますので、あとは個々の証券会社において相続人から残高証明書を請求すれば個々の株式の銘柄等が判明します。

→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(証券保管振替機構) 
 

4 生命保険

 

生命保険も上記の株式と同様に、個々の保険の内容までは分かりませんが、どこの生命保険会社に契約があるかについて、生命保険協会において調査をすることができます。調査を請求すると下記のような書類が送付されてきますので、あとは個々の保険会社に電話で尋ね、保険金請求手続を進めることになります。
 

→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(生命保険協会)


 

5 借金

 

相続においては、上記のようなプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。

この点、一般的な金融機関、カード会社、消費者金融などは信用情報機関に登録する制度がありますので、当該信用情報機関に照会をすることで借金の状況を調べることができます。ただし、あくまで信用情報機関に登録しているものだけしか分からないため、個人間のお金の貸し借りなどについて調査する方法はありません

 

一般の金融機関 → 全国銀行個人信用情報センター

カード会社関係 → CIC

消費者金融関係 → 日本信用情報機構 
 

6 遺言

 

遺産そのものではありませんが、被相続人が遺言を作っていたかどうかを調べることができる場合があります。
 

まず、公正証書で遺言書を作成されている場合は、全国どこの公証役場でも被相続人が作成した遺言の有無についての検索ができます。ただし、昭和64年1月1日以降に作成されたものに限定され、さらに遺言者が130歳を迎える年になると削除されてしまいます。

→ 遺言検索(加古川公証役場)
 

また、自筆証書遺言で作成されている場合で、法務局の保管制度を利用している場合に限り、全国の法務局において「遺言書保管事実証明書」の請求をすることで、遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。

→ 自筆証書遺言書保管制度(法務省)
 
 

以上のような方法で、被相続人の遺産を調査していただき、相続手続を進めてください。また、最初に記載のとおり、当事務所では不動産の相続登記のみならず、遺産全般の相続手続も行っておりますので、ぜひご相談いただければと思います。

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12月 14 2021

相続登記の義務化の施行日が決まりました。

以前より相続登記等が義務化される旨をお知らせしておりましたが、このうち相続登記については令和6年4月1日からとなりました。
 

→ 法務省サイト
 

→ PDF
 


 
 

以下、相続登記等の義務化について大事な部分をまとめておきます。 
 

(1)義務化されたのは土地のみ

 

建物は対象外です。なので、土地はAさん所有、その土地上にBさんの建物が建っていたとして、Bさんが亡くなったとしてもBさんの相続人は建物の相続登記を行う義務はありません。ただ、引き続き相続人等が利用される場合は相続登記をされた方が良いかと思います。

 
 

(2)一定期間内に登記申請が必要

 

相続登記は土地の所有者が亡くなってから(自分が相続人であることを知った時から)3年以内にしなければなりません。さらに、住所移転や氏名変更についても変更してから2年以内に変更登記をしなければなりません。相続登記だけではなく住所や氏名が変わった場合でも登記が必要ですので注意が必要です。まだまだ相続とは無関係という方も住所変更等については大きな影響があります。

 
 

(3)住所変更等については未定

 

上記のとおり令和6年4月1日から施行されるのは相続登記のみとなっており、住所変更等については未定ですが遅くとも令和8年までには施行されることとなっております。

 
 

(4)上記に違反した場合は過料に処せられる可能性があります

 

義務に違反して登記を放置していた場合、相続登記については10万円以下、住所変更等は5万円以下の過料に処せられる可能性があります。ただし、あくまで可能性があるだけであり、違反したとしても必ず課されることが確定している訳ではありません。

 
 
 

最近、将来の義務化に備えて、住所変更だけのご依頼をいただくことが増えてきました。ご自宅であればあまり影響は無いと思いますが、別荘や実家など、居住地ではない不動産については変更登記がされていないことが多いため、時間的に余裕があるうちに進めていただければと思います。

以上、相続登記等の義務化についてでした。

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8月 31 2021

成年後見人選任によるメリット・デメリット

先日、遺産分割協議のために成年後見人を選任する手続についてご依頼いただき、私自身が家庭裁判所から成年後見人に選任されて就任いたしました。今後は、原則としてはご本人がお亡くなりになるまで私が成年後見人といてご本人の代理人として各種契約や意思表示を行ったり、財産管理を行っていくことになります。
 

さて、この成年後見人についてですが、世間的にはあまり良くない印象を持たれていることもあり、今回は成年後見人選任に関するメリットやデメリットについてまとめたいと思います。
 

 
 

1 成年後見人とは

 

認知症や精神疾患等により、ご自身で判断することができなくなった場合に、その代理人等として選任される者となります。

あくまで認知症や精神疾患等の意思判断に関わる力が衰えてきていること理由で無ければなりませんので、「交通事故で手が動かなくなってしまい筆記ができなくなった」、「足腰が弱くなってしまって銀行等に行けなくなった」等の身体的な理由で成年後見人等を選任してもらうことはできません
 

また、意思判断に関する力も人によって程度差がありますので、比較的軽い場合は補助、その次が保佐となり、一番重い場合が成年後見となります。

この点は、医師の判断になるため私どもでは明確な判断はできませんが、補助や保佐に該当する方の場合は、あまり申立てをする必要性が無いこともあり、結果としては成年後見のケースが一番多いと思います。 
 

2 成年後見人等の選任が必要になる場合

 

不動産の売買や贈与、相続や遺言など、こちらにまとめておりますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 成年後見手続が必要な場合 
 

3 成年後見人選任のメリットとデメリット

 
 

(1) 後見人選任の4大デメリット
 

成年後見に関するご相談をいただいた際に、必ず私は4大デメリットについて説明させていただいております。成年後見人の手続をご検討されている方は、当該手続のみでの選任をお考えの方が多いため、こちらの説明をすることで実際に手続を中止される方も多くいらっしゃいます。
 

①必ずしも候補者が選ばれるとは限らない。

申立てをする際に、候補者を立てることができ、「父親の成年後見人として長男を候補者として申立てをする」ということが可能です。

ただし、必ずしも候補者が選任されるとは限らず、まったく無関係な弁護士や司法書士等の専門職が選任されることもあります。候補者が選任されない場合としては、「父親の管理すべき財産がかなり多い」、「推定相続人(兄弟間など)で意見の相違がある」、「候補者が成年後見人としての資質が心配(金銭管理が弱い等)」などがあります。

さらに、候補者が選任されなかったことを理由として申立て自体を取り下げることはできませんし、成年後見人を別の人にしてほしいというような異議申し立てもできません

なお、一般的に、弁護士や司法書士を候補者とした場合には、当該専門家が選任されることが多く、少なくとも私が候補者として申立てをしたものについては全件私が選任されております。

また、このような場合に備えて、任意後見契約を締結しておくことで、事前に後見人になる方を決めておくという方法も考えられます。
 

②成年後見人は一生続く
 

上記のとおり、成年後見人の選任は売買のためだったり、遺産分割のために申し立てを行うことが多いかと思いますが、その手続が終わっても成年後見人が解任されるわけでは無く、その後もずっと続きます。

例外的に、成年後見人が横領などを行って解任、高齢や病気等で辞任という成年後見人側の事情で変わることや、ご本人さんの能力が回復して成年後見人が必要無くなるということはあり得ますが、そうでない限りはご本人さんがお亡くなりになるまでずっと続くことになります。
 

③成年後見人の費用がかかる
 

成年後見人等が専門職か親族かに関係なく、成年後見人等は家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立てることによりご本人さんの財産から報酬を受領することができます。報酬額は家庭裁判所が一方的に決めており、その金額に対して異議申し立てをすることはできませんので、私どもとしてもどのような基準で報酬が決められているのかよく分からない部分がありますが、いずれにしてもそれなりの費用がかかります。経験上、売買や遺産分割等が無く、平和的に1年過ごした場合で年額概ね20万円台から30万円台になることが多いと思います。

なお、勘違いされている方もいらっしゃるのですが、報酬は専門家に限らず親族の方でも受領することは可能です。ただ、家庭裁判所に報酬付与の審判の申立てをして、実際に報酬を請求されている方は多くない印象です。
 

④申立てに関する費用は申立人負担
 

上記のとおり、成年後見人が選任された後については、ご本人さんの財産から報酬が支払われますが、申立てに関する費用は申立人の方にご負担いただくこととなります。
 
 
(2)後見人選任のメリット
 

①財産が守られる
 

正直なところ、親族の方にとってはデメリットになるかもしれませんが、成年後見人は家庭裁判所(場合によっては後見監督人等)の監督を受けつつ、ご本人さんの財産を管理しますので、不当に失われることは少ないです。例えば、現金については通常の預貯金等で管理することとなり、株式投資や不動産投資などにお金が回ることはありません

一方で、相続対策などで生前贈与することも基本的にはできませんので、そういう意味で親族の方にとってはデメリットかもしれません。

あくまで、成年後見制度はご本人の財産を守る制度であって、親族のための制度では無いからです。
 

②様々な手続は後見人等がやってくれる
 

上記の売買や遺産分割等は当然のこと、病院での手続や施設との契約等についても成年後見人が代理で行うこととなります。

ただし、あくまで契約等を行うだけであって、現実的な生活援助や介護などを行うことはできません。 
 

4 成年後見人を非難するご意見について

 

ニュースサイトなどで、親族の方のご意見として成年後見人を非難するコメントをよく拝見します。

そもそも成年後見人等の横領等の犯罪行為は言語道断ですので、非難どころか刑事・民事の両面から徹底的に糾弾していただくべきかと思います。また、成年後見人がまったく仕事をしていないということであればもちろん非難していただいて良いかと思いますし、場合によっては解任の申立てをしても良いかと思います。

一方で、実際には上記3(2)①での非難が多いように思います。つまり、親族の方がご本人の方の財産を使えなくなることでの対立が多いと思います。

当事務所では幸いにして親族の方と対立したことは一度も無いのですが、過去には、無断でご本人の財産から親族の方が引き出していた預金については全額返還するようお願いして戻してもらいましたし、親族の方がご本人のためと思って色んな契約をしてきて、その請求書だけ後見人に送られてきたこともありましたが、ご本人さんにとって必要性が無いことを説明したうえで支払いを拒否し、解約してもらったこともあります。

やはり、この点については親族の方とも密に連絡を取り合って、相互に信頼関係を深めていくしかないと思います
 
 

以上、成年後見人等の選任に関するメリット・デメリットでした。

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6月 23 2021

相続人の一部の方が行方不明の場合

先日、相続手続を進める中で、相続人のうちの一部の方が行方不明であることが発覚いたしました。
 

件数としてはあまり多くはありませんが、当事務所では数年に一度程度の割合で行方不明の方がいらっしゃるケースがあり、特に被相続人が高齢の方でお子さんがいらっしゃらず、兄弟姉妹が相続人になるケースで比較的見かけます
 

今回は、相続人の一部の方が行方不明の場合に執りうる手続についてまとめたいと思います。
 
 

 
 

1 遺産分割協議の前提

 

Aさん(父親)がお亡くなりになり、相続人としてBさん(母親)及びお子さん3名(C~Eさん)の合計4名がいらっしゃったとします。
 

この場合、必ず相続人4名全員で協議する必要があり、協議がまとまった場合には遺産分割協議書を作成して、相続人全員がご署名とご実印でのご捺印を行います(印鑑証明書も必要となります。)。
 

例外的に、お子さんの中に未成年者がいらっしゃる場合は、母親であるBさんとの間で利益相反関係が生じますので、例えばEさんが未成年者である場合は、Eさんに関する特別代理人を家庭裁判所に選任してもらい、特別代理人がEさんに代わって協議に参加したり、ご署名等をされることとなります。
 

また、お子さんであるCさんがすでに亡くなっている場合、もしCにさらにお子さん(Aさんからすれば孫)がいらっしゃるようであれば、Cさんに代わって、そのお孫さんが協議に参加することになります。
 

一方、お子さんであるDさんは、すでに成人であるものの自由奔放に生活されており、何年も家に帰っておらず、連絡も取れないような状態が続いているとします。
 

この場合、Dさんは成人ですので特別代理人という話は出てきませんし、亡くなっている訳ではありませんのでDさんの相続人が協議に参加することもできません。となると、事実上、遺産分割協議を進めることができませんので、Aさん名義の遺産についてはどうすることもできないということになります。
 

なお、預貯金については、一部のみ払い戻しをすることができますが、それでも解約して全額を払い出すことはできません。

→ 一部の相続人からの預金の払い戻し
 

ということで、相続人の一部の方が行方不明となるとかなり困ってしまいます。
 

そこで、このような場合にいくつか手続が用意されています。 
 

2 不在者財産管理人の選任及び権限外行為許可

 

民法25条に、「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。」と規定されています。
 

端的に言えば、もともと住んでいた場所に容易に帰ってくる見込みがない方については、家庭裁判所は利害関係人の請求によって管理人を選任してもらうことができる、ということになります。
 

この、「容易に帰ってくる見込みがない」という点については、単に数日行方不明というだけでは足りず、郵便物を送付したもののの「宛所に尋ね当たらず」で返送されてくるとか、住民票が役所の判断によって消除されているなど、それなりに行方不明であることを証明しなければなりません。

→ 職権消除について
 

また、不在者財産管理人の権限は、あくまで財産を管理するだけであるため、遺産分割協議などの財産処分行為をすることができません
 

そこで、不在者財産管理人が遺産分割協議を行う場合は、裁判所に対して、本来の権限外ではあるものの例外的に遺産分割協議することの許可を得る必要があります(民法28条)。その際に、遺産分割協議書の案を提出する必要があり、加えて、不在者は最低限法定相続分は確保しなければ裁判所の許可が出ませんので、事実上は、不在者財産管理人が自由に判断する余地はあまりないということになります。
 

そして、裁判所から権限外行為許可が出ましたら、それに基づく遺産分割協議を正式に成立させ、あとは通常の相続のときと同様に名義変更等を進めていくことになります。
 

なお、その後にご本人が帰ってきた場合は、不在者財産管理人はご本人に財産を引き継ぎ、管理人の業務は終了することになります。

手続に要する期間は、3か月から半年程度となりますが、ご本人さんの不在について追加の調査が必要な場合はさらに時間がかかることがあります。 
 

3 失踪宣告の申立て

 

上記の不在者財産管理人は、本人が帰ってくるまで本人に代わって財産の管理を行う人であるため、基本的にはご本人が帰ってくるのを待つということになります。
 

一方、失踪宣告は、ご本人が(法律上)亡くなったとみなして、ご本人に対する相続手続を開始する手続となります。上記の例でいうと、Dさんに失踪宣告がされた場合には、Dさんの配偶者やお子さんがDさんに代わってAさんの相続手続に関与するとともに、Dさん自身の相続手続も進めることになります。
 

この失踪宣告は大きく分けて以下の2つの種類があります。
 

(1)普通失踪

例えば、いつもどおり会社に出勤したものの、その日の夜に家に戻ってこず、その日から行方不明という場合です。このような状況が7年以上続いた場合は家庭裁判所に失踪宣告の申立てができ、行方不明から7年が経過した日に亡くなったとみなされます。

この点、上記の不在者財産管理人の選任申立ては特段行方不明期間に関する条件はありませんが、普通失踪は7年という要件がありますので、相当長期間行方不明で無いと失踪宣告は進められないということになります。
 
 

(2)特別失踪
例えば、家族でフェリーに乗って旅をしていたところ、誤ってフェリーから落下してしまいました。その後、警察や海上保安庁などが捜索したものの見つからず、捜索が打ち切られたとします。

このような場合、残念ながらお亡くなりになった可能性が極めて高いため、その場合は、落下したときから1年経過後に失踪宣告の申立てが可能となります。また、亡くなったとみなされる日は1年経過後ではなく、落下した日に亡くなったとみなされます。

フェリーからの落下という事故はあまり無いかもしれませんが、災害でも適用されますので、例えば10年前の東日本大震災によって現時点でも行方不明になっていらっしゃる方や長野県の御嶽山の噴火によって行方不明になっていらっしゃる方も同じように失踪宣告の手続を行うことが可能となります。
 
 

上記の普通失踪と特別失踪によって法律上の効果に違いは無く、いずれの場合はご本人について相続手続が開始することになります。
 

なお、失踪宣告がなされたとしても、現実的にはご本人さんはご存命でどこか遠い地で生活されているかもしれませんが、その際の法律関係は特に問題なく通常どおりとなります。例えば、コンビニでお金を払っておにぎりを買ったとしても、その売買が無効になるということはありません。ただ、自動車や不動産を購入する際には住民票や印鑑証明書等が必要となりますので、現実的には購入することは難しいと思います。
 

また、ご本人が、自分に対する失踪宣告がされていることに気づいた場合は、その取り消しを家庭裁判所に申し立てて失踪宣告の効力を取り消してもらうことができます。これにより、法律上、一度は亡くなったとみなされたものの、生き返ることになります。逆に言えば、失踪宣告の取り消しがされない限りは、ずっと亡くなったものとみなされたままということになります。
 

失踪宣告がされるまでの期間としては、官報公告等が必要になる関係上、1年前後の時間がかかってしまいます。 
 

4 手続に要する費用

 

当事務所では上記手続について、以下のとおりとさせていただいております。
 

①不在者財産管理人の選任申立て

16万5000円(税別15万円)+実費(1万円~2万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 

②権限外行為許可

3万3000円(税別3万円)+実費(3000円程度)

※ただし、当事務所の司法書士が不在者財産管理人に就任している場合は、こちらの費用はかかりません。
 

③不在者財産管理人報酬

基本的には不在者の財産から受領いたしますので、依頼者の方に費用のご負担をお願いすることはありません

※ただし、不在者の財産から賄えない場合は、裁判所の決定により30万円~50万円程度の予納金を準備するよう指示される場合があります。
 

④失踪宣告の申立て

22万円(税別20万円)+実費(1万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 
 

以上、相続手続において相続人の一部の方が行方不明になっている場合でした。

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4月 21 2021

相続登記義務化法案が成立しました。

本日(令和3年4月21日)に、参院本会議を通過し、相続登記を義務化する法案(民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)が成立いたしました。
 

この法律によって、どのようなことをしなければならず、また相続登記等をしない場合にどうなってしまうかについて説明したいと思います。ただし、あくまで現時点での内容のみでの判断となりますので、実務上の運用等により変わる場合があります。
 

 
 

1 国に土地をもらってもらうことができる制度の創設

 

不動産を国や地方自治体に寄附することは従前からできておりましたが、実際には受け入れてくれることはほとんどありませんでした。その理由としては、不動産と言っても価値があるものだけとは限らず、逆に管理が大変な不動産もあり、そのような不動産をもらっても国や地方自治体としても困るという実情がありました。
 

この点、あくまで条件付きではありますが、相続等によって取得した不動産を国の所有(国庫への帰属)とする制度ができました。
 

(1)不動産は土地である必要があり、かつ、下記に該当しないこと 

建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
④基準を超える特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

(2)共有の場合は共有者全員で申請をすること

 

(3)承認申請に関する手数料を納めること

 

(4)国の承認が得られた場合は、管理に要する費用10年分を納めること

 

ただし、上記(1)~(3)に該当する場合でも崖があったり、地下に何かが埋まっている場合などは承認が得られないこともあります

 
 

例えば、遠方に存在している山などは所有していても使い道がほとんどなく、かといって売却するとしても買い手が現れる可能性はかなり低いうえ、万が一事故があった場合には責任が生じる可能性もありますので、そのような場合にはこの制度は使えると思います。

 
 

2 相続登記の義務化

 

今までいわゆる権利に関する登記をするかどうかはあくまで「権利」であり、登記をしなくても良いこととされていました。ただ、不動産を購入した場合や不動産を担保にお金を課した場合など、登記をしないと所有権を第三者に対抗できなくなる可能性がある場合には登記をしないことによる不利益が大きいため、このような場合には大多数の方が登記をされていました。
一方、相続登記については、売買の予定等が無ければ登記をしないことのデメリットがあまりないため、手つかずのままの相続が繰り返されて現在の所有者がどなたなのかが不明となってしまった不動産が日本中にたくさん存在しており、面積に換算すると日本の国土の20%程度にもなるそうです。
そこで、今回相続登記を義務化することにより、所有者を確定させて、土地を有効利用しようとするのが今回の法律ということになります。

 

この点についての注意点をまとめたいと思います。

 
 

(1)相続登記が義務化されたのは土地のみです。
→ 建物は対象外です。

 
 

(2)現時点ではまだ法律は施行されておらず、3年以内に施行される予定です。
→ 報道によれば2024年施行予定とのことです。

 

(3)土地の所有者が亡くなり、その土地の相続人であることを知ったときから3年以内に相続登記をする必要があります。
→ まったく疎遠になってしまった親族が亡くなり、自分が相続人だったとしても、その事実を認識していなければ3年の期限はスタートしません

 

(4)相続登記のみならず、住所移転や氏名変更についても2年以内に変更登記をする必要があります。
→ 住所や氏名が変わった場合でも所有者が不明になってしまうためです。

 

(5)上記に違反した場合10万円以下(住所変更等は5万円以下)の過料に処せられる可能性があります。
→ 同じような罰則規定が建物表題登記などにもありますが、現実には未登記の建物が無数に存在しており、過料の処分が課されたという話は聞いたことがありません。したがいまして、相続登記をしないことにより本当に過料に処せられるかどうかはまったく分かりません

 

(6)相続人申告登記制度(?)の創設
→ 登記官に対して、自身が相続人であることを申告することで、一時的に登記官が職権で登記をしてくれる制度が創設されました。実際に相続登記をするためには、戸籍謄本等を集めたり、相続人間で遺産分割協議をまとめなければなりませんが、協議がまとまらず3年以内に登記ができない場合もあります。そのようなときにとりあえず申告をすることで3年の期限をクリアすることができます。

 
 
 

その他たくさんの改正がありますので、順次追記していきたいと思います。

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3月 11 2021

親族が行う必要のある死後の手続と相続手続

これまで相続についての手続を数えきれないほどご依頼いただいてきましたが、突如、私自身が当事者となる相続が発生してしまいました。

なかなか精神的に大変な時期であってもある程度は進めざるを得ないため、精神的のみならず身体的にも大変ではありますが、「他に考える余裕が無い方がある意味精神的には少し助かるものなのかもしれない」と、よくわからない気持ちになりながら進めました。 

ということで、今回は相続手続というよりも、親族の死後になすべきことを私の備忘録も兼ねてまとめたいと思います。なお、四十九日法要などの宗教的な行事は各家庭によって異なりますので記載しておりません。
 

 
 

1 葬儀会社の決定

 

多くの方がまずは病院に駆けつけることになると思いますが、もし事件・事故の場合は警察署に駆けつけることもあります。

病院や警察において、通常は遺体を長期間安置することができないため、早急に葬儀社に依頼して、遺体を自宅、葬儀会館、寺院等に搬送していただく必要があります。
 

この点、私は病院に着くや否や病院からすぐに葬儀社に連絡してほしいと、いくつか提携している葬儀社のパンフレットをいただきましたが、仕事上お付き合いがあり、信頼できる葬儀社があったので、そちらにお願いしました。 

葬儀会社の選択肢として、大手葬儀会社(平安閣、ティアなど)、ネット系(小さなお葬式、イオンのお葬式など)、地域の葬儀会社などいくつかの選択肢があるかと思います。私の場合はそもそもお付き合いのある葬儀社があったので良かったのですが、そうでないとなかなか選ぶのが大変なので、変な話ではありますが事前にある程度リサーチしておくと良いと思います。
 

なお、私個人の印象ですが、以下のような感じです。
 

【大手葬儀会社】

安心できるが比較的費用が高い。たくさん参列される方だとこちらが安心できると思います。
 

【ネット系】

費用が一律となっていることが多いものの、あくまで各地の葬儀会社に振ってるだけなので、各地の葬儀会社の質によって当たり外れがある。さらに、追加オプションのトラブルなどもあり、直葬なら良いかもしれませんが、そうでないのであれば選びにくいように思います。
 

【地域の葬儀会社】

こちらも当たり外れがあるとは思いますが、地域での評判が悪くなると仕事ができなくなるので、決定前にある程度話ができると良いと思います。特に、過去にどなたかがすでに葬儀をされているようであれば、その方からご紹介いただくとおかしなことをされる可能性も低くなるので良いと思います。
 

また、費用が確定してからでないと、葬儀後にもめる可能性がありますので、必ず葬儀の内容が確定した時点で見積書をは受領すべきだと思います。私は、2つのパターンで見積書を作成してもらい、プラン決定後に正式な見積書を受領してからすべての手続を進めてもらいました。葬儀終了翌日に請求書をいただきましたが、見積書の金額とまったく同一金額でしたので、費用についてはとても安心した覚えがあります。
 

なお、直葬(通夜や告別式等の宗教的儀式をしない)の場合は、通夜や告別式等が無いので、いきなり火葬となりますが、少なくとも死亡時から24時間は火葬ができない(墓地、埋葬等に関する法律第3条)ので、直葬だとしてもご自宅または病院や葬儀会社等で遺体安置をしていただく必要があります。 
 

2 死亡届の提出

 

死亡届が受理されないと火葬許可証がもらえませんので、葬儀を行う前に死亡届をお亡くなりになった方の住所地の役所に死亡届を提出する必要があります。 
 

3 葬儀等

 

遺体が葬儀会館等に搬送され、早ければその日の夜、時間帯によっては翌日から2日後程度に通夜が行われ、通夜の翌日に葬儀・告別式・出棺となり、霊柩車で移動して火葬になると思います。
 

基本的にはすべて葬儀会社が進めてくれますので、何も考える必要はないと思います。多くの方が通夜に来られるような場合は、香典の管理なども大変なので、私個人としては香典を受け取らないとした方がいろいろと良いように思いました。
 
 

ここまでが怒涛の勢いで行われることであり、ここからは落ち着いてからでも大丈夫だと思います。

ただし、日程が決まっているものもありますのでご注意ください。 
 

4 医療費等の清算

 

入院されていらっしゃった場合は、医療費の清算や入院時の荷物等の引き取りはこのタイミングで行うと良いと思います。 
 

5 役所での手続

 

死亡届はすでに提出済みですので、あとは以下のような手続きが必要となります。
 

(1)健康保険関係

国保であれば役所に、健康保険であれば勤務先等に保険証を返却しなければなりません。

国保の場合は、葬祭費の請求も合わせて行うことができます。健康保険や共済組合の場合は各健康保険協会や共済組合に請求することとなります。
 

(2)その他の書類の返却

マイナンバーカード、医療証、介護保険証、敬老手帳、敬老パス、障害者手帳、愛護手帳、障害福祉サービス受給者証などをお持ちであればそれらの返却及び重度障害者手当、児童手当等を受給していた場合は喪失届等も必要になる場合があります。 
 

6 年金事務所での手続

 

年金を受給されて場合は10日から14日の間に年金事務所に死亡届が必要となりますが、現在はマイナンバーと連動しており、別途死亡届を出す必要は無いとのことです。

ただし、未支給年金がある場合は未支給年金の申請をする必要があります。こちらは郵送でもできる場合がありますので、一度年金事務所にお問い合わせいただいた方が良いと思います。 
 

7 戸籍謄本等の収集

 

遺産がある場合、手続の際に必ず戸籍関係が必要となりますので、戸籍謄本等の収集を開始すると良いです。ただし、死亡の旨の記載が戸籍にされるまでに1~2週間程度かかりますので、亡くなってから2週間程度経ってから開始されることになります。

戸籍謄本等の収集は司法書士等の専門家が代理して行うこともできますので、ご自身で行うのが難しい場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただいても良いかと思います。 
 

8 遺産の調査

 

不動産であれば不動産のある役所及び管轄法務局、預貯金があれば各金融機関、保険金であれば生命保険会社に調査を請求することになります。

これらの調査については戸籍謄本等が無いと進められないので、戸籍謄本等が揃ってからになります。 
 

9 遺産分割協議

 

遺産の全容が判明した後、相続人が複数いらっしゃる場合は、どのように遺産を分けるのかの協議をしていただく必要があります。ただし、生命保険金の受取人として相続人のどなたかが指定されていれば、その保険金はその相続人固有の財産となりますので、遺産とはならず遺産分割協議の対象に含めません。

最終的に協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成いたします。もちろん、司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。 
 

10 各種名義変更等の手続

 

上記の遺産分割協議に基づき、不動産であれば相続登記、株式であれば名義変更や売却・払戻手続、預貯金であれば解約手続等を行うことになります。繰り返しになりますが、こちらも司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。

なお、現時点(令和3年3月11日)では、上記手続について期限はありませんので、いつまでに行わなければならないというものではありません

しかし、相続登記については義務化する旨の法案が出ておりますので、近い将来一定期間内に申請しなければならなくなると思われます。 
 

11 相続税の申告

 

お亡くなりになった方の遺産が基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)以上ある場合は相続税の申告が必要になります。逆に言えば、基礎控除内であれば相続税の申告は必要ありませんし、基礎控除額を超えていても各種の特例(小規模宅地等の特例等)を使うことにより申告自体は必要であっても相続税はかからないということもあります。

相続税の申告は、原則としてお亡くなりになった日から10か月以内に行う必要があります。

こちらは、弁護士や司法書士では代理して行うことができず、税理士さんにご依頼いただくこととなります。
 
 

以上の次第で、通常は最長でも10か月以内に手続を行うことですべての相続手続が終了となります。

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