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相続に関すること

8月 31 2021

成年後見人選任によるメリット・デメリット

先日、遺産分割協議のために成年後見人を選任する手続についてご依頼いただき、私自身が家庭裁判所から成年後見人に選任されて就任いたしました。今後は、原則としてはご本人がお亡くなりになるまで私が成年後見人といてご本人の代理人として各種契約や意思表示を行ったり、財産管理を行っていくことになります。
 

さて、この成年後見人についてですが、世間的にはあまり良くない印象を持たれていることもあり、今回は成年後見人選任に関するメリットやデメリットについてまとめたいと思います。
 

 
 

1 成年後見人とは

 

認知症や精神疾患等により、ご自身で判断することができなくなった場合に、その代理人等として選任される者となります。

あくまで認知症や精神疾患等の意思判断に関わる力が衰えてきていること理由で無ければなりませんので、「交通事故で手が動かなくなってしまい筆記ができなくなった」、「足腰が弱くなってしまって銀行等に行けなくなった」等の身体的な理由で成年後見人等を選任してもらうことはできません
 

また、意思判断に関する力も人によって程度差がありますので、比較的軽い場合は補助、その次が保佐となり、一番重い場合が成年後見となります。

この点は、医師の判断になるため私どもでは明確な判断はできませんが、補助や保佐に該当する方の場合は、あまり申立てをする必要性が無いこともあり、結果としては成年後見のケースが一番多いと思います。 
 

2 成年後見人等の選任が必要になる場合

 

不動産の売買や贈与、相続や遺言など、こちらにまとめておりますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 成年後見手続が必要な場合 
 

3 成年後見人選任のメリットとデメリット

 
 

(1) 後見人選任の4大デメリット
 

成年後見に関するご相談をいただいた際に、必ず私は4大デメリットについて説明させていただいております。成年後見人の手続をご検討されている方は、当該手続のみでの選任をお考えの方が多いため、こちらの説明をすることで実際に手続を中止される方も多くいらっしゃいます。
 

①必ずしも候補者が選ばれるとは限らない。

申立てをする際に、候補者を立てることができ、「父親の成年後見人として長男を候補者として申立てをする」ということが可能です。

ただし、必ずしも候補者が選任されるとは限らず、まったく無関係な弁護士や司法書士等の専門職が選任されることもあります。候補者が選任されない場合としては、「父親の管理すべき財産がかなり多い」、「推定相続人(兄弟間など)で意見の相違がある」、「候補者が成年後見人としての資質が心配(金銭管理が弱い等)」などがあります。

さらに、候補者が選任されなかったことを理由として申立て自体を取り下げることはできませんし、成年後見人を別の人にしてほしいというような異議申し立てもできません

なお、一般的に、弁護士や司法書士を候補者とした場合には、当該専門家が選任されることが多く、少なくとも私が候補者として申立てをしたものについては全件私が選任されております。

また、このような場合に備えて、任意後見契約を締結しておくことで、事前に後見人になる方を決めておくという方法も考えられます。
 

②成年後見人は一生続く
 

上記のとおり、成年後見人の選任は売買のためだったり、遺産分割のために申し立てを行うことが多いかと思いますが、その手続が終わっても成年後見人が解任されるわけでは無く、その後もずっと続きます。

例外的に、成年後見人が横領などを行って解任、高齢や病気等で辞任という成年後見人側の事情で変わることや、ご本人さんの能力が回復して成年後見人が必要無くなるということはあり得ますが、そうでない限りはご本人さんがお亡くなりになるまでずっと続くことになります。
 

③成年後見人の費用がかかる
 

成年後見人等が専門職か親族かに関係なく、成年後見人等は家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立てることによりご本人さんの財産から報酬を受領することができます。報酬額は家庭裁判所が一方的に決めており、その金額に対して異議申し立てをすることはできませんので、私どもとしてもどのような基準で報酬が決められているのかよく分からない部分がありますが、いずれにしてもそれなりの費用がかかります。経験上、売買や遺産分割等が無く、平和的に1年過ごした場合で年額概ね20万円台から30万円台になることが多いと思います。

なお、勘違いされている方もいらっしゃるのですが、報酬は専門家に限らず親族の方でも受領することは可能です。ただ、家庭裁判所に報酬付与の審判の申立てをして、実際に報酬を請求されている方は多くない印象です。
 

④申立てに関する費用は申立人負担
 

上記のとおり、成年後見人が選任された後については、ご本人さんの財産から報酬が支払われますが、申立てに関する費用は申立人の方にご負担いただくこととなります。
 
 
(2)後見人選任のメリット
 

①財産が守られる
 

正直なところ、親族の方にとってはデメリットになるかもしれませんが、成年後見人は家庭裁判所(場合によっては後見監督人等)の監督を受けつつ、ご本人さんの財産を管理しますので、不当に失われることは少ないです。例えば、現金については通常の預貯金等で管理することとなり、株式投資や不動産投資などにお金が回ることはありません

一方で、相続対策などで生前贈与することも基本的にはできませんので、そういう意味で親族の方にとってはデメリットかもしれません。

あくまで、成年後見制度はご本人の財産を守る制度であって、親族のための制度では無いからです。
 

②様々な手続は後見人等がやってくれる
 

上記の売買や遺産分割等は当然のこと、病院での手続や施設との契約等についても成年後見人が代理で行うこととなります。

ただし、あくまで契約等を行うだけであって、現実的な生活援助や介護などを行うことはできません。 
 

4 成年後見人を非難するご意見について

 

ニュースサイトなどで、親族の方のご意見として成年後見人を非難するコメントをよく拝見します。

そもそも成年後見人等の横領等の犯罪行為は言語道断ですので、非難どころか刑事・民事の両面から徹底的に糾弾していただくべきかと思います。また、成年後見人がまったく仕事をしていないということであればもちろん非難していただいて良いかと思いますし、場合によっては解任の申立てをしても良いかと思います。

一方で、実際には上記3(2)①での非難が多いように思います。つまり、親族の方がご本人の方の財産を使えなくなることでの対立が多いと思います。

当事務所では幸いにして親族の方と対立したことは一度も無いのですが、過去には、無断でご本人の財産から親族の方が引き出していた預金については全額返還するようお願いして戻してもらいましたし、親族の方がご本人のためと思って色んな契約をしてきて、その請求書だけ後見人に送られてきたこともありましたが、ご本人さんにとって必要性が無いことを説明したうえで支払いを拒否し、解約してもらったこともあります。

やはり、この点については親族の方とも密に連絡を取り合って、相互に信頼関係を深めていくしかないと思います
 
 

以上、成年後見人等の選任に関するメリット・デメリットでした。

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6月 23 2021

相続人の一部の方が行方不明の場合

先日、相続手続を進める中で、相続人のうちの一部の方が行方不明であることが発覚いたしました。
 

件数としてはあまり多くはありませんが、当事務所では数年に一度程度の割合で行方不明の方がいらっしゃるケースがあり、特に被相続人が高齢の方でお子さんがいらっしゃらず、兄弟姉妹が相続人になるケースで比較的見かけます
 

今回は、相続人の一部の方が行方不明の場合に執りうる手続についてまとめたいと思います。
 
 

 
 

1 遺産分割協議の前提

 

Aさん(父親)がお亡くなりになり、相続人としてBさん(母親)及びお子さん3名(C~Eさん)の合計4名がいらっしゃったとします。
 

この場合、必ず相続人4名全員で協議する必要があり、協議がまとまった場合には遺産分割協議書を作成して、相続人全員がご署名とご実印でのご捺印を行います(印鑑証明書も必要となります。)。
 

例外的に、お子さんの中に未成年者がいらっしゃる場合は、母親であるBさんとの間で利益相反関係が生じますので、例えばEさんが未成年者である場合は、Eさんに関する特別代理人を家庭裁判所に選任してもらい、特別代理人がEさんに代わって協議に参加したり、ご署名等をされることとなります。
 

また、お子さんであるCさんがすでに亡くなっている場合、もしCにさらにお子さん(Aさんからすれば孫)がいらっしゃるようであれば、Cさんに代わって、そのお孫さんが協議に参加することになります。
 

一方、お子さんであるDさんは、すでに成人であるものの自由奔放に生活されており、何年も家に帰っておらず、連絡も取れないような状態が続いているとします。
 

この場合、Dさんは成人ですので特別代理人という話は出てきませんし、亡くなっている訳ではありませんのでDさんの相続人が協議に参加することもできません。となると、事実上、遺産分割協議を進めることができませんので、Aさん名義の遺産についてはどうすることもできないということになります。
 

なお、預貯金については、一部のみ払い戻しをすることができますが、それでも解約して全額を払い出すことはできません。

→ 一部の相続人からの預金の払い戻し
 

ということで、相続人の一部の方が行方不明となるとかなり困ってしまいます。
 

そこで、このような場合にいくつか手続が用意されています。 
 

2 不在者財産管理人の選任及び権限外行為許可

 

民法25条に、「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。」と規定されています。
 

端的に言えば、もともと住んでいた場所に容易に帰ってくる見込みがない方については、家庭裁判所は利害関係人の請求によって管理人を選任してもらうことができる、ということになります。
 

この、「容易に帰ってくる見込みがない」という点については、単に数日行方不明というだけでは足りず、郵便物を送付したもののの「宛所に尋ね当たらず」で返送されてくるとか、住民票が役所の判断によって消除されているなど、それなりに行方不明であることを証明しなければなりません。

→ 職権消除について
 

また、不在者財産管理人の権限は、あくまで財産を管理するだけであるため、遺産分割協議などの財産処分行為をすることができません
 

そこで、不在者財産管理人が遺産分割協議を行う場合は、裁判所に対して、本来の権限外ではあるものの例外的に遺産分割協議することの許可を得る必要があります(民法28条)。その際に、遺産分割協議書の案を提出する必要があり、加えて、不在者は最低限法定相続分は確保しなければ裁判所の許可が出ませんので、事実上は、不在者財産管理人が自由に判断する余地はあまりないということになります。
 

そして、裁判所から権限外行為許可が出ましたら、それに基づく遺産分割協議を正式に成立させ、あとは通常の相続のときと同様に名義変更等を進めていくことになります。
 

なお、その後にご本人が帰ってきた場合は、不在者財産管理人はご本人に財産を引き継ぎ、管理人の業務は終了することになります。

手続に要する期間は、3か月から半年程度となりますが、ご本人さんの不在について追加の調査が必要な場合はさらに時間がかかることがあります。 
 

3 失踪宣告の申立て

 

上記の不在者財産管理人は、本人が帰ってくるまで本人に代わって財産の管理を行う人であるため、基本的にはご本人が帰ってくるのを待つということになります。
 

一方、失踪宣告は、ご本人が(法律上)亡くなったとみなして、ご本人に対する相続手続を開始する手続となります。上記の例でいうと、Dさんに失踪宣告がされた場合には、Dさんの配偶者やお子さんがDさんに代わってAさんの相続手続に関与するとともに、Dさん自身の相続手続も進めることになります。
 

この失踪宣告は大きく分けて以下の2つの種類があります。
 

(1)普通失踪

例えば、いつもどおり会社に出勤したものの、その日の夜に家に戻ってこず、その日から行方不明という場合です。このような状況が7年以上続いた場合は家庭裁判所に失踪宣告の申立てができ、行方不明から7年が経過した日に亡くなったとみなされます。

この点、上記の不在者財産管理人の選任申立ては特段行方不明期間に関する条件はありませんが、普通失踪は7年という要件がありますので、相当長期間行方不明で無いと失踪宣告は進められないということになります。
 
 

(2)特別失踪
例えば、家族でフェリーに乗って旅をしていたところ、誤ってフェリーから落下してしまいました。その後、警察や海上保安庁などが捜索したものの見つからず、捜索が打ち切られたとします。

このような場合、残念ながらお亡くなりになった可能性が極めて高いため、その場合は、落下したときから1年経過後に失踪宣告の申立てが可能となります。また、亡くなったとみなされる日は1年経過後ではなく、落下した日に亡くなったとみなされます。

フェリーからの落下という事故はあまり無いかもしれませんが、災害でも適用されますので、例えば10年前の東日本大震災によって現時点でも行方不明になっていらっしゃる方や長野県の御嶽山の噴火によって行方不明になっていらっしゃる方も同じように失踪宣告の手続を行うことが可能となります。
 
 

上記の普通失踪と特別失踪によって法律上の効果に違いは無く、いずれの場合はご本人について相続手続が開始することになります。
 

なお、失踪宣告がなされたとしても、現実的にはご本人さんはご存命でどこか遠い地で生活されているかもしれませんが、その際の法律関係は特に問題なく通常どおりとなります。例えば、コンビニでお金を払っておにぎりを買ったとしても、その売買が無効になるということはありません。ただ、自動車や不動産を購入する際には住民票や印鑑証明書等が必要となりますので、現実的には購入することは難しいと思います。
 

また、ご本人が、自分に対する失踪宣告がされていることに気づいた場合は、その取り消しを家庭裁判所に申し立てて失踪宣告の効力を取り消してもらうことができます。これにより、法律上、一度は亡くなったとみなされたものの、生き返ることになります。逆に言えば、失踪宣告の取り消しがされない限りは、ずっと亡くなったものとみなされたままということになります。
 

失踪宣告がされるまでの期間としては、官報公告等が必要になる関係上、1年前後の時間がかかってしまいます。 
 

4 手続に要する費用

 

当事務所では上記手続について、以下のとおりとさせていただいております。
 

①不在者財産管理人の選任申立て

16万5000円(税別15万円)+実費(1万円~2万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 

②権限外行為許可

3万3000円(税別3万円)+実費(3000円程度)

※ただし、当事務所の司法書士が不在者財産管理人に就任している場合は、こちらの費用はかかりません。
 

③不在者財産管理人報酬

基本的には不在者の財産から受領いたしますので、依頼者の方に費用のご負担をお願いすることはありません

※ただし、不在者の財産から賄えない場合は、裁判所の決定により30万円~50万円程度の予納金を準備するよう指示される場合があります。
 

④失踪宣告の申立て

22万円(税別20万円)+実費(1万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 
 

以上、相続手続において相続人の一部の方が行方不明になっている場合でした。

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4月 21 2021

相続登記義務化法案が成立しました。

本日(令和3年4月21日)に、参院本会議を通過し、相続登記を義務化する法案(民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)が成立いたしました。
 

この法律によって、どのようなことをしなければならず、また相続登記等をしない場合にどうなってしまうかについて説明したいと思います。ただし、あくまで現時点での内容のみでの判断となりますので、実務上の運用等により変わる場合があります。
 

 
 

1 国に土地をもらってもらうことができる制度の創設

 

不動産を国や地方自治体に寄附することは従前からできておりましたが、実際には受け入れてくれることはほとんどありませんでした。その理由としては、不動産と言っても価値があるものだけとは限らず、逆に管理が大変な不動産もあり、そのような不動産をもらっても国や地方自治体としても困るという実情がありました。
 

この点、あくまで条件付きではありますが、相続等によって取得した不動産を国の所有(国庫への帰属)とする制度ができました。
 

(1)不動産は土地である必要があり、かつ、下記に該当しないこと 

建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
④基準を超える特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

(2)共有の場合は共有者全員で申請をすること

 

(3)承認申請に関する手数料を納めること

 

(4)国の承認が得られた場合は、管理に要する費用10年分を納めること

 

ただし、上記(1)~(3)に該当する場合でも崖があったり、地下に何かが埋まっている場合などは承認が得られないこともあります

 
 

例えば、遠方に存在している山などは所有していても使い道がほとんどなく、かといって売却するとしても買い手が現れる可能性はかなり低いうえ、万が一事故があった場合には責任が生じる可能性もありますので、そのような場合にはこの制度は使えると思います。

 
 

2 相続登記の義務化

 

今までいわゆる権利に関する登記をするかどうかはあくまで「権利」であり、登記をしなくても良いこととされていました。ただ、不動産を購入した場合や不動産を担保にお金を課した場合など、登記をしないと所有権を第三者に対抗できなくなる可能性がある場合には登記をしないことによる不利益が大きいため、このような場合には大多数の方が登記をされていました。
一方、相続登記については、売買の予定等が無ければ登記をしないことのデメリットがあまりないため、手つかずのままの相続が繰り返されて現在の所有者がどなたなのかが不明となってしまった不動産が日本中にたくさん存在しており、面積に換算すると日本の国土の20%程度にもなるそうです。
そこで、今回相続登記を義務化することにより、所有者を確定させて、土地を有効利用しようとするのが今回の法律ということになります。

 

この点についての注意点をまとめたいと思います。

 
 

(1)相続登記が義務化されたのは土地のみです。
→ 建物は対象外です。

 
 

(2)現時点ではまだ法律は施行されておらず、3年以内に施行される予定です。
→ 報道によれば2024年施行予定とのことです。

 

(3)土地の所有者が亡くなり、その土地の相続人であることを知ったときから3年以内に相続登記をする必要があります。
→ まったく疎遠になってしまった親族が亡くなり、自分が相続人だったとしても、その事実を認識していなければ3年の期限はスタートしません

 

(4)相続登記のみならず、住所移転や氏名変更についても2年以内に変更登記をする必要があります。
→ 住所や氏名が変わった場合でも所有者が不明になってしまうためです。

 

(5)上記に違反した場合10万円以下(住所変更等は5万円以下)の過料に処せられる可能性があります。
→ 同じような罰則規定が建物表題登記などにもありますが、現実には未登記の建物が無数に存在しており、過料の処分が課されたという話は聞いたことがありません。したがいまして、相続登記をしないことにより本当に過料に処せられるかどうかはまったく分かりません

 

(6)相続人申告登記制度(?)の創設
→ 登記官に対して、自身が相続人であることを申告することで、一時的に登記官が職権で登記をしてくれる制度が創設されました。実際に相続登記をするためには、戸籍謄本等を集めたり、相続人間で遺産分割協議をまとめなければなりませんが、協議がまとまらず3年以内に登記ができない場合もあります。そのようなときにとりあえず申告をすることで3年の期限をクリアすることができます。

 
 
 

その他たくさんの改正がありますので、順次追記していきたいと思います。

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3月 11 2021

親族が行う必要のある死後の手続と相続手続

これまで相続についての手続を数えきれないほどご依頼いただいてきましたが、突如、私自身が当事者となる相続が発生してしまいました。

なかなか精神的に大変な時期であってもある程度は進めざるを得ないため、精神的のみならず身体的にも大変ではありますが、「他に考える余裕が無い方がある意味精神的には少し助かるものなのかもしれない」と、よくわからない気持ちになりながら進めました。 

ということで、今回は相続手続というよりも、親族の死後になすべきことを私の備忘録も兼ねてまとめたいと思います。なお、四十九日法要などの宗教的な行事は各家庭によって異なりますので記載しておりません。
 

 
 

1 葬儀会社の決定

 

多くの方がまずは病院に駆けつけることになると思いますが、もし事件・事故の場合は警察署に駆けつけることもあります。

病院や警察において、通常は遺体を長期間安置することができないため、早急に葬儀社に依頼して、遺体を自宅、葬儀会館、寺院等に搬送していただく必要があります。
 

この点、私は病院に着くや否や病院からすぐに葬儀社に連絡してほしいと、いくつか提携している葬儀社のパンフレットをいただきましたが、仕事上お付き合いがあり、信頼できる葬儀社があったので、そちらにお願いしました。 

葬儀会社の選択肢として、大手葬儀会社(平安閣、ティアなど)、ネット系(小さなお葬式、イオンのお葬式など)、地域の葬儀会社などいくつかの選択肢があるかと思います。私の場合はそもそもお付き合いのある葬儀社があったので良かったのですが、そうでないとなかなか選ぶのが大変なので、変な話ではありますが事前にある程度リサーチしておくと良いと思います。
 

なお、私個人の印象ですが、以下のような感じです。
 

【大手葬儀会社】

安心できるが比較的費用が高い。たくさん参列される方だとこちらが安心できると思います。
 

【ネット系】

費用が一律となっていることが多いものの、あくまで各地の葬儀会社に振ってるだけなので、各地の葬儀会社の質によって当たり外れがある。さらに、追加オプションのトラブルなどもあり、直葬なら良いかもしれませんが、そうでないのであれば選びにくいように思います。
 

【地域の葬儀会社】

こちらも当たり外れがあるとは思いますが、地域での評判が悪くなると仕事ができなくなるので、決定前にある程度話ができると良いと思います。特に、過去にどなたかがすでに葬儀をされているようであれば、その方からご紹介いただくとおかしなことをされる可能性も低くなるので良いと思います。
 

また、費用が確定してからでないと、葬儀後にもめる可能性がありますので、必ず葬儀の内容が確定した時点で見積書をは受領すべきだと思います。私は、2つのパターンで見積書を作成してもらい、プラン決定後に正式な見積書を受領してからすべての手続を進めてもらいました。葬儀終了翌日に請求書をいただきましたが、見積書の金額とまったく同一金額でしたので、費用についてはとても安心した覚えがあります。
 

なお、直葬(通夜や告別式等の宗教的儀式をしない)の場合は、通夜や告別式等が無いので、いきなり火葬となりますが、少なくとも死亡時から24時間は火葬ができない(墓地、埋葬等に関する法律第3条)ので、直葬だとしてもご自宅または病院や葬儀会社等で遺体安置をしていただく必要があります。 
 

2 死亡届の提出

 

死亡届が受理されないと火葬許可証がもらえませんので、葬儀を行う前に死亡届をお亡くなりになった方の住所地の役所に死亡届を提出する必要があります。 
 

3 葬儀等

 

遺体が葬儀会館等に搬送され、早ければその日の夜、時間帯によっては翌日から2日後程度に通夜が行われ、通夜の翌日に葬儀・告別式・出棺となり、霊柩車で移動して火葬になると思います。
 

基本的にはすべて葬儀会社が進めてくれますので、何も考える必要はないと思います。多くの方が通夜に来られるような場合は、香典の管理なども大変なので、私個人としては香典を受け取らないとした方がいろいろと良いように思いました。
 
 

ここまでが怒涛の勢いで行われることであり、ここからは落ち着いてからでも大丈夫だと思います。

ただし、日程が決まっているものもありますのでご注意ください。 
 

4 医療費等の清算

 

入院されていらっしゃった場合は、医療費の清算や入院時の荷物等の引き取りはこのタイミングで行うと良いと思います。 
 

5 役所での手続

 

死亡届はすでに提出済みですので、あとは以下のような手続きが必要となります。
 

(1)健康保険関係

国保であれば役所に、健康保険であれば勤務先等に保険証を返却しなければなりません。

国保の場合は、葬祭費の請求も合わせて行うことができます。健康保険や共済組合の場合は各健康保険協会や共済組合に請求することとなります。
 

(2)その他の書類の返却

マイナンバーカード、医療証、介護保険証、敬老手帳、敬老パス、障害者手帳、愛護手帳、障害福祉サービス受給者証などをお持ちであればそれらの返却及び重度障害者手当、児童手当等を受給していた場合は喪失届等も必要になる場合があります。 
 

6 年金事務所での手続

 

年金を受給されて場合は10日から14日の間に年金事務所に死亡届が必要となりますが、現在はマイナンバーと連動しており、別途死亡届を出す必要は無いとのことです。

ただし、未支給年金がある場合は未支給年金の申請をする必要があります。こちらは郵送でもできる場合がありますので、一度年金事務所にお問い合わせいただいた方が良いと思います。 
 

7 戸籍謄本等の収集

 

遺産がある場合、手続の際に必ず戸籍関係が必要となりますので、戸籍謄本等の収集を開始すると良いです。ただし、死亡の旨の記載が戸籍にされるまでに1~2週間程度かかりますので、亡くなってから2週間程度経ってから開始されることになります。

戸籍謄本等の収集は司法書士等の専門家が代理して行うこともできますので、ご自身で行うのが難しい場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただいても良いかと思います。 
 

8 遺産の調査

 

不動産であれば不動産のある役所及び管轄法務局、預貯金があれば各金融機関、保険金であれば生命保険会社に調査を請求することになります。

これらの調査については戸籍謄本等が無いと進められないので、戸籍謄本等が揃ってからになります。 
 

9 遺産分割協議

 

遺産の全容が判明した後、相続人が複数いらっしゃる場合は、どのように遺産を分けるのかの協議をしていただく必要があります。ただし、生命保険金の受取人として相続人のどなたかが指定されていれば、その保険金はその相続人固有の財産となりますので、遺産とはならず遺産分割協議の対象に含めません。

最終的に協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成いたします。もちろん、司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。 
 

10 各種名義変更等の手続

 

上記の遺産分割協議に基づき、不動産であれば相続登記、株式であれば名義変更や売却・払戻手続、預貯金であれば解約手続等を行うことになります。繰り返しになりますが、こちらも司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。

なお、現時点(令和3年3月11日)では、上記手続について期限はありませんので、いつまでに行わなければならないというものではありません

しかし、相続登記については義務化する旨の法案が出ておりますので、近い将来一定期間内に申請しなければならなくなると思われます。 
 

11 相続税の申告

 

お亡くなりになった方の遺産が基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)以上ある場合は相続税の申告が必要になります。逆に言えば、基礎控除内であれば相続税の申告は必要ありませんし、基礎控除額を超えていても各種の特例(小規模宅地等の特例等)を使うことにより申告自体は必要であっても相続税はかからないということもあります。

相続税の申告は、原則としてお亡くなりになった日から10か月以内に行う必要があります。

こちらは、弁護士や司法書士では代理して行うことができず、税理士さんにご依頼いただくこととなります。
 
 

以上の次第で、通常は最長でも10か月以内に手続を行うことですべての相続手続が終了となります。

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3月 03 2021

土地の値段(一物四価)

売買や相続による所有権移転登記を申請する際に、登録免許税という税金を法務局に納めなければなりません。
 

この登録免許税は、土地の値段を基に移転する原因に応じた税率を掛けて算出します。

例えば、土地の値段が1000万円だとした場合に、売買で所有権移転をする場合は15万円(1.5%)、贈与で所有権移転する場合は20万円(2%)、相続で所有権移転する場合は4万円(0.4%)です。ただし、上記の税率は改正によって変わることがあり、土地の所有権移転については本来は2%であるところ租税特別措置法により1.5%に軽減されています。
 

さて、簡単に「土地の値段」と言いましたが、実は土地の値段は一律に決まっているものではなく、状況に応じて同じ土地なのにその値段が変わります

例えば、上記の登録免許税に用いる土地の値段は、正確には「固定資産課税評価額(通常は単に「評価額」と言います。)」を基に計算することになります。
 

また、相続税を計算する場合に用いる土地の値段は、「相続税路線価(通常は単に「路線価」といいます。)となり、贈与税でもこちらを用いることになります。

このように、単に「土地の値段」と言っても、どの意味で使っているかを誤るとトラブルになる可能性がありますので、今回はこの土地の値段についてまとめてみたいと思います。
 

 
 

一物四価

 

一般的に、土地の値段は4種類あると言われており、「一」つの土地(物)に「四」つの「価」格があるので、このことを指して一物四価と呼ばれることがあります。
 

この4つの種類は、一般的に高い順にならべると以下のとおりとなります。
 

①流通価格(市場価格・実勢価格)

②公示価格(公示地価)

③路線価(相続税路線価)

④固定資産税評価額
 

ただ、実際には上記の順番は逆転することがあります。例えば、まったく買い手が付かないような土地だと路線価や評価額よりも低い金額で取引されることはあります。 
 

流通価格(市場価格・実勢価格)

 

これは、一般的に取引される金額となります。不動産業者に仲介を依頼し、第三者から土地を購入するような場合はこちらの金額となります。

「隣の土地は借金をしても買え」という格言もあるくらいですので相場よりも高いこともあれば、親族間や知人間の売買等の理由により相場より安く取引されることもありますが、最終的には当事者が合意した金額が正しい金額となりますので、一言で言えば「時価」となります。
 

なお、他の価格と比べると一番高いことが多いと思います。 
 

公示価格

 

地価公示法を根拠として公示されるものであり、特定の地域等において標準的な場所を選定し、その場所に関する土地の値段を公示するものです。

つまり、個々の土地ごとの金額が出るのではなく、その周辺地域の目安となる金額ということになります。
 

一般的には、流通価格より低く、路線価より高い金額になる傾向にあります。

こちらの金額は、公共事業による土地の収用等の際の補償金を計算するのに用いられており、司法書士が関与することはあまりありません。

この公示価格は国土交通省のサイトで確認することができます。

→ 国土交通省地価公示・都道府県地価調査 
 

路線価(相続税路線価)

 

こちらは、道路に接した土地についての平米単価となり、国税局長によって定められたものです。

路線価は、接している道路を基準としていますので、国道などの大きな道路に接しているほど金額が高くなりますし、角地など複数の道路に接している場合も金額が高くなります。また、基本的には市街地にしか定められませんので、都市部から離れると路線価が無いことも多く、そのような土地は固定資産税評価額の1.1倍とされることが多いです(倍率地域)。
 

一般的には、公示価格より低く、固定資産税評価額よりは高くなり、概ね公示価格の8割程度になります。

相続税や贈与税の計算をする際には、こちらの金額を基に算出いたしますので、通常は税理士さんが一番目にするものとはなりますが、贈与の際にどの程度贈与税がかかるかを判断し、場合によっては贈与自体をキャンセルすることもありますので、司法書士もよく目にする価格となります。

この路線価は、国税庁のサイトで確認することができます。

→ 路線価図・評価倍率表 
 

固定資産税評価額

 

総務大臣が告示した固定資産評価基準を基に各自治体(市町村)が固定資産税を課すために個々の不動産(土地及び建物)について定めるものであり、この評価額に1.4%を掛けた金額が毎年1月1日時点の所有者に課されることとなります。なので、年の途中で所有者が変わったとしても1月1日時点の所有者が1年分を納める必要があるため、通常は日割計算をして新旧の所有者で精算することになります。
 

一般的には路線価よりも低くなる傾向があり、公示価格の7割程度になります。
 

登記申請の際に、不動産の価格を基に登録免許税を計算する場合は、まさにこの固定資産課税評価額を基に計算しますので、司法書士が毎日のように目にする価格となります。

公示価格や路線価は毎年変わるのに対し、固定資産課税評価額は3年に一度しか変わりません。そして、令和3年4月1日に新しい価格に変わりますので、現時点(令和3年3月時点)においては、4月1日以降に登記申請する場合の登録免許税の計算はできないことになります。とはいえ、それだと見積書が作成できないため、暫定的に現時点での固定資産課税評価額で費用を計算させていただき、4月1日以降に改めて正確な費用をお知らせすることとなります。
 

この固定資産課税評価額は、公示価格や路線価と異なり、ピンポイントで各不動産の価格がわかることとなるため、第三者が自由に調べることは基本的にはできません

不動産の所有者であれば毎年4月から5月頃に不動産のある自治体から固定資産税の通知書が送付されてきますので、こちらで固定資産課税評価額を確認することができますし、第三者であっても裁判に利用するなどの正当な理由があれば、自治体の税務課において評価証明書を取得することで評価額を調べることができます。
上記のとおり、司法書士は登記申請の際に利用しますので、すべての自治体ではないものの多くの自治体において所有者からの委任状を添付することなく評価証明書や評価通知書を取得することが認められています。 
 

まとめ

 

以上のとおり、単に「土地の値段」と言っても色々な意味がありますが、通常は流通価格を指すことが多いかと思います。ただ、万が一誤解して話を進めてしまうとトラベルになってしまうこともありますので、どの土地の値段のことを話しているかを確認してから話を進められた方が安全かと思います。

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2月 26 2021

遺言ができる能力(認知症等)

最近、立て続けに遺言書の作成に関するご相談をいただいております。 

遺言書の作成は、遺言書を書かれるご本人(以下、「遺言者」といいます。)自らが将来のために作成しておきたいとして書かれるケースが多いのですが、遺言者ではなく、将来相続されるであろう遺言者の推定相続人の方が主導して進められることがあります。

もちろん、最終的には遺言者ご自身の判断がすべてですので、推定相続人の方がいくら主導したとしても遺言者ご自身の本意であれば基本的にはどのような内容(例えば、遺言を主導した推定相続人が全部を相続する)であっても問題ありません。
 

先日も書きましたが、遺言書を作成する際に、日付を記載したり、署名をするなど、形式的な要件が厳しいためその点に注意が行きがちですが、遺言者に意思能力(遺言能力)がないと無効になってしまいます。

40代や50代であればまだまだ大丈夫だと思いますが、60代、70代、80代と年齢が上がるにつれて、判断能力が段々と衰えてきますので、遺言をするときの意思能力の有無が判然としない場合には、遺言者ご本人が亡くなったあとに遺言無効の訴訟を提起される可能性もあります。
 

今回は、年配の方(特に認知症の方)の遺言作成についてまとめたいと思います。
 

 
 

1 遺言能力

 

民法には、遺言ができる年齢として、15歳と定められております(民法961条)。したがって、15歳以上であれば未成年者であっても親権者の代理や同意なく遺言をすることができます民法962条5条)。
 

ただ、15歳以上であれば良いかというとそうではなく、認知症や精神障害などによって遺言の内容がまったく認識できないような方がした遺言は無効となってしまいます(民法963条民法3条の2)。
 

この点については、一般的には意思能力があれば良いと解されており、7歳前後の判断能力があれば良いとの考えもあれば、15歳以上でなければならないとの考えもあります。いずれにしても、比較的幼少期レベルで判断できる能力があれば良いということになります。特に、遺言というものは遺言者の人生最後の意思表示となりますので、どちらかと言えば有効になる方向で判断されることになります。 
 

2 成年後見人が選任されている場合

 

認知症や精神障害等によって成年後見の申立てがされ、成年後見人が選任されている場合があります。成年後見人が選任されると、日常生活に関するもの(例えば、コンビニで買い物をする等)以外は、ご本人に代わって成年後見人が代理して契約等を行うことになります。
 

ただし、身分行為に関する行為は除外されており、例えば結婚をされる場合には成年後見人が代理したり、同意(許可等)をする必要はなく、ご自身が自由に行うことができます(民法738条)。
 

この点、遺言については、大きな財産を贈与(遺贈)することができますので財産的な行為であると同時に、遺言によって認知等もできますので、身分行為のような性質もあります。
 

そこで、法律上は、①能力が一時的に回復した場合であり、②医師2名が立会い、③立ち会った医師が一時的に能力を回復していた旨を遺言書に付記して署名捺印する、という3つの要件を満たした場合に遺言をすることができることとされております(民法973条)。
 

ただし、あくまでこれは形式的な要件であり、実際に遺言能力が無かった場合には上記の要件を備えていたとしても無効になります。とはいえ、医師2名が立ち会っており、しかも問題なかった旨の記載と署名押印までされている訳ですから、実際上は遺言が無効になる可能性はかなり低いと思います。
 

なお、私は現在複数の方の成年後見人に選任されておりますが、やはりかなり個別事情かつその時の状況によって波があり、まったく遺言をするのは常に難しいという方もいれば、調子が良さそうなときには問題なく遺言ができそうな方もいらっしゃいます。 
 

3 成年後見人が選任されていない場合

 

上記の規定はあくまで成年後見人が選任されている場合であるため、認知症との診断をされていたとしても、医師の立会いなく遺言をすることができます。遺言の方式も特に定められていませんので、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも要件さえ備えていれば少なくとも形式的には有効ですし、公正証書遺言であれば形式的な違反で無効になる可能性は極めて少ないと思います。
 

したがって、あとは遺言能力があるかどうかがとなりますが、この点を100%完全にクリアした遺言書を作成する方法は残念ながら存在しません。というのは、そのときに遺言能力があったかどうかを100%証明する方法が無いからです。ただ、少しでも有効となる可能性を高めるため、私どもが関与させていただく際には、遺言をされる(遺言書を作成する)少し前に担当の医師にその時の診断書を作成してもらっております。加えて、公正証書遺言にすることにより、さらにその可能性を高めます(公正証書遺言は公証人が遺言者と面談をするため、意思疎通がまったくできないと公正証書遺言を進めることができません。)。
 
 

ということで、年配の方が遺言をされる際には、形式的な要件を備えることはもちろんのこと、遺言能力についても注意をする必要がありますので、ご心配な場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただき、できれば公正証書遺言にて進められた方が良いと思います。

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2月 01 2021

成年後見手続が必要な場合

当事務所では成年後見業務を行っており、累計で数十人、現時点でも数名の方の成年後見人に就任しております。
 

売買や贈与、相続等において、成年後見が関係することがあるため、今回はこの点に絞ってまとめたいと思います。
 

 
 

1 意思能力について

 

(1)意思能力とは
不動産の売買や贈与をする場合など、何らかの法律上の行為をする場合、その方に「意思能力」があることが必要です。
この意思能力を言い換えると判断能力のようなものであり、平たく言えば、自分が行っている行為がどういう意味なのかを理解できる能力ということになります。
 

意思能力は各個人によって異なりますが、一般的には10歳くらいになれば意思能力があると判断されます。また、成人においてもお酒を飲んで泥酔してしまっている場合や覚せい剤でおかしくなってしまった方も一時的に意思能力がないと判断されることがあります。
 

もっとも、10歳の子が不動産の売買をするということは考えにくいですし、泥酔している人が契約をすることは通常あり得ませんので、一番現実的なお話しとしては、①認知症の方、②精神障害がある方、のどちらだと思います。
ただし、認知症や精神障害については、いずれも症状の程度や波がありますので、あくまで契約等を行う際に意思能力があれば良いということになります。
 
したがって、例えば認知症とは言っても少し物忘れがあるという程度だったり、精神障害と言っても服薬によって特に問題ないということであれば、意思能力は大丈夫だと判断されやすいと思います。
 

(2)意思能力がない方が契約をするには
ご自身で判断することができない状態にある方(意思能力がない方)については、仮に契約を締結したとしても無効となってしまいます(民法3条の2)。
 
そこで、法律では意思能力がない方についても問題なく契約等ができるよう法定代理人という制度を定めており、ご本人に代わって法定代理人が契約等を行います
具体的には、未成年者であれば親権者(場合によっては未成年後見人)が、認知症や精神障害がある方については成年後見人(場合によっては任意後見人や保佐人等)が代理人として契約することで有効な契約等を行うことができます。 
 

2 売買や贈与で成年後見が必要となる場合

 

不動産の売買というのは極めて大きな財産が動くことになりますので、契約締結後に意思能力が問題になってしまうと大変なことになります

したがって、意思能力の判断は、かなり慎重に行う必要があります。
 

(1)売主側

ご本人が不動産を所有しており、売却や贈与をする場合、認知症等で意思能力に不安がある場合は成年後見制度を使って、成年後見人が代理人として売却することが考えられます。基本的には、成年後見人が売却の適否や価格等についてご自身で判断し、最終的に売却することは可能です。
 

ただし、成年後見人が選任されていたとしても、すべての不動産の売却等ができるわけではありません。
 

例えば、自宅等の居住用不動産について売却するためには、事前に裁判所の許可を得る必要があります(民法859条の3)。これは、一時的に施設等に入所されているときに、自宅を売却してしまうと戻る家がなくなってしまうからです。したがって、裁判所の許可を得るためには、①施設などの入所費用を工面する必要がある、②医師の判断によれば自宅に戻って生活できる見込みはかなり低い、③売却価格は周辺相場からいって妥当である、など売却が必要である旨を裁判所に説明して許可を得ることになります。
 

また、成年後見人はご本人の権利を守るために選任される者ですので、積極的に財産を減らす行為は認められません
 

とすると、ご本人が所有している財産を第三者に贈与するという行為は基本的には認められないことになります。
 

もっとも、贈与することが却ってが本人の資産を守ることになるのであれば贈与であっても認められます。当事務所が成年後見人になっている方について、ご本人が所有していた別荘(建物のみで土地は借地)があったのですが、当該別荘を利用する見込みが無かったので、裁判所に相談をしたうえで、第三者に贈与しました。このケースでは、そもそも何もしなくても毎月の借地料の支払いが必要になりますし、また、かなり建物が老朽化していたので取り壊すという選択肢があったものの数百万円の取り壊し費用がかかり、売却しようにも数百万円程度の費用をかけてリフォームをする必要があったことから、現状で引き受けてくれる方に贈与をしました。
 

なお、直接今回の記事とは関係ありませんが、親族に対するお年玉や結婚祝い、就職祝い等の社会生活上の妥当な範囲であれば贈与であっても認められます。
 

(2)買主側

成年後見人の選任がされている方が不動産を購入するというケースはあまり無いかと思いますが、もしそのような事態になったときには成年後見人が本人に代わって契約等をすることになり、この行為について裁判所の許可等は必要ありません。ただし、後見監督人が選任されているようであれば監督人の同意が必要となります(民法864条)。
 

もっとも、不動産を購入するということは、多額の現金を支出することになりますので、事前に裁判所に相談をした方が良いと思います。 
 

3 相続で成年後見人が必要となる場合

 

(1)相続人が1人のみの場合
相続人がお一人の場合、特に成年後見人を選任する必要はなく、ご本人が手続を進めることができるようであれば進めていただくことは可能です。ただし、相続の手続は難しいので誰かに依頼することが多いと思いますが、意思能力が無いとその依頼ができない(委任契約が締結できない)ので、結果として成年後見人の選任が必要になる場合が多いと思います。
 

なお、事実上親族の方がご本人に代わって手続を進めるということであれば、成年後見人を選任しないこともあるかと思います。
 

(2)相続人が複数いる場合
複数の相続人の中に、意思能力が問題になる方がいらっしゃる場合、相続人間の話し合いである遺産分割協議ができませんので、成年後見人を選任していただく必要があります。そして、ご本人に代わって、成年後見人が他の相続人との間で遺産分割について話し合いを行うことになります。
 

成年後見人はご本人の権利を守る立場にありますので、ご本人が遺産を一切取得しないという遺産分割は特別な理由がない限り難しいです。
 

また、成年後見人は弁護士や司法書士といった専門職ではなく、親族の方がなることができます。その際に、遺産分割協議に参加する方が成年後見人になってしまうと利益相反が生じているので別の手続が必要となります。
 

具体的には、父親Aさんが亡くなり、妻Bさんと子Cさんの2人が相続人である場合、Bさんの成年後見人としてCさんが就任することはできますが、BさんとCさんはAさんの遺産分割について利益相反の関係にありますので、Cさんは遺産分割協議においてBさんを代理することができません。

この場合、成年後見監督人が選任されていれば、当該監督人がBさんを代理することとなり、監督人が選任されていないようであれば裁判所に特別代理人を選任してもらってその特別代理人がBさんを代理することになります(民法851条4号)。
 

4 遺言について

 
遺言については、必ずご自身でする必要があり、第三者が代理して遺言をすることはできません。

したがって、遺言書の作成を目的として成年後見人の選任をすることはありませんし、すでに成年後見人が選任されていたとしても、成年後見人が代理することはできませんので、必ずご自身で遺言書を作成することになります。

ただ、意思能力が不安な方だからこそ成年後見人が選任されているのであり、なんとかしてご本人が遺言書を作成したとしても、意思能力がないときに作成したのであればやはり無効になってしまいます。 
 

そこで、法律では、成年後見人が選任されている場合においては、①意思能力が一時的に回復していること、②医師2名以上の立ち合いがあること、③当該立ち会った医師が「遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨」を遺言書に付記すること、の要件を備えれば遺言書を作成することが可能であるとしています(民法973条)。

 
 
  

以上のように、認知症の方や精神障害がある方について売買や相続が生じると成年後見が必要になる場合があり、何もせずに進めてしまうと事後的に無効となる可能性がありますので、契約や遺産分割をされる前に一度専門家にご相談された方が良いと思います。

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1月 18 2021

遺言書の日付が誤っている場合に無効になるか(最高裁判決)

自筆証書遺言(自分で紙に遺言を書く)の場合、法律上の厳しい要件を満たさなければなりません。
 

民法968条1項 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。

遺言書の作成については、法改正により一部は印刷したものでも良くなりましたが、基本的には遺言書の全文を自分で書かなければなりません
 
また、署名押印がない場合や日付が抜けている、日付は記載されているがその日が特定できない(「〇月吉日となっている」、「作成の年が記載されていない」など)、表現が曖昧である、夫婦二人分が1通で作成されているなど、自筆証書遺言の場合はいくつも無効になってしまう箇所がありますので、当事務所としては特別な事情が無い限り、公正証書遺言で作成されるようお勧めしております。

→ 自筆証書遺言と公正証書遺言
 
 

さて、本日上記の無効になる要素のうち、日付の記載について最高裁判決がありましたので、今回はこの点についてまとめたいと思います。

 
 

前提

 

遺言者Aさんは法律上の妻Bさん及びBさんとの間にできた子Cさんがいます。

しかし、Aさんには内縁の妻Dさん及びDさんとの間にできたEさんがいます。

平成27年4月13日、Aさんは入院先の病院で遺言書の全文を自署し、日付を記載し、署名を行いましたが、押印はしていませんでした。なお、内容は内縁の妻であるDさんとその子Eさんに全財産を相続または遺贈するという内容です。

同年5月10日、弁護士さんの立ち合いのもと、上記の遺言書に押印をして遺言書は完成しました。

同月13日、Aさんが亡くなりました。

Aさんの法律上の妻であるBさん及びCさんは、「遺言書に記載してある日付は4月13日だが、押印して完成したのは5月10日なのだから、実際の日付とは異なっており、遺言書は無効である。」と主張して訴えを提起しました。 
 

他の裁判例

 

今回の判決とは別に、過去類似する事件として以下のようなものがあります。

遺言者が全文の自書及び署名押印のみ行い、その8日後にその日の日付を記載した→日付を記載した日に完成したとして有効

 

昭和6年7月10日大審院判決
全文を自書した後、翌日に前日の日付記載→有効

 

平成5年3月23日東京高裁判決
実際に作成された日より2年近く遡った日付記載→不実の日付の記載のある遺言書は日付の記載がないものとして無効

 

もちろん、個別の事案によって判断が異なることもありますが、日付だけを見た場合は数日程度であれば問題ないものの2年も遡ってしまうと無効になるという感じがします。

 
 

今回の最高裁判決

 

 

要旨としては以下のとおりです。

 

「民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は,遺言者の真意を確保すること等にあるところ,必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは,かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある。したがって,Aが,入院中の平成27年4月13日に本件遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後の同年5月10日に押印したなどの本件の事実関係の下では,本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきである。」

 

凄く端的に申し上げると、確かに厳格な方式が求められているけど、やりすぎるとおかしな結果になってしまい、今回に相違程度であれば無効にするのは相当ではない、ということです。
他の裁判例にあるとおり2年も前だと無効になり、今回の判決だと1か月程度であれば無効にならないとのことであるため、どこまでであれば有効なのか無効なのかという問題は続くことになりますが、ケースバイケースで個々に判断されることになると思います。

 

そして、最初にも記載しましたが、初めから公正証書遺言で進めればこんな問題は起こらなかったわけですから、やはり公正証書遺言で進めるべきだと思います。

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1月 04 2021

予備的遺言のススメ

当事務所では遺言書の作成のご依頼をお受けすることが多くありますが、ほとんどのケースで予備的遺言も書かれるようお願いしております。そうしないと、せっかくの遺言が無意味になったり、想定していた財産の承継が行われないことがあるためです。
 

今日は予備的遺言についてまとめたいと思います。
 

 
 

予備的遺言がない場合

 

遺言者であるAさん(夫)には妻Bさんと子Cさん、兄弟Dさんがいたとします。
特に遺言書が無ければ妻Bさんと子Cさんが1/2ずつ相続することになりますが、将来の財産の円滑な承継のために、Bさんも納得のうえでAさんのすべての遺産を子であるCさんが相続する内容の遺言書を書きました。なお、Aさん一家と兄弟であるDさんは疎遠になっており、数年に一度、年末年始に会う程度の関係性しかありません。
 

その後、もしAさんが亡くなったとすると、Aさんの財産は遺言の内容に基づきCさんがすべて相続することとなります。
もっとも、Bさんは法律上、Cさんに対して遺留分侵害額請求をすることができますが、Bさんも納得のうえの遺言なので、特に問題は起きないと思います。
 

しかし、仮にAさんが亡くなる前にCさんが亡くなってしまった場合はどうなるでしょうか。
この点、相続人ではなく遺贈の場合は、法律上無効になると定められているものの(民法994条)、相続人が先に亡くなった場合についての条文がありませんでしたが、最高裁判決により遺贈の場合と同様に遺言によって承継するはずだったBさんが先に亡くなってしまっているため、一部の例外を除き、亡くなった人が受け取る予定だった部分は無効になると判示しました。
 

→ 最高裁サイト(最高裁平成23年2月22日判決)

→ 判決全文(PDF)
 
 

したがって、上記の場合だとCさんが相続するという部分は無効になるため、結果として遺言書全体が無効になります。
 

そして、遺言が無かったという状況になりますので、妻であるBさんと疎遠になった兄弟であるDさんとの間で遺産分割協議をしていただく必要があり、協議の内容によってはAさんが想定していたものとは違う結論になってしまいます。 
 

予備的遺言がある場合

 

上記の最高裁判決の説明で「一部の例外を除き」とあります。正確には、「推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情」となります。
 

したがって、上記の例のCさんがAさんより先に亡くなった場合に備えて、別の条項を設けておけば良いということになります。
 

具体的には、「遺言者の死亡以前にCが死亡したときは、Cに相続させるとした財産はすべてBに相続させる。」というような記載しておけば、最高裁判決が言う特段の事情に当たりますので、この部分の遺言が有効になります。これを予備的遺言や予備的条項などと呼びます。
 

そして、予備的遺言があることによって、BさんがAさんのすべての財産を相続することとなりますが、Aさんの兄弟であるDさんには遺留分はありませんので、残されたBさんはDさんから遺留分侵害額請求を受けることもなく、Aさんの想定外の事態は起こらないこととなります。
 

なお、上記は遺言者の兄弟の場合ですが、子が複数いるような場合に先に子が亡くなったときにその子(遺言者の孫)が遺言書どおりに相続するわけではありませんので、子が複数いたり、代襲相続人がいるような場合にも予備的遺言は活用できると思います。
 

以上の次第で、遺言書を書かれる際は、財産を取得される方が先に亡くなるということもある程度は想定された上で進められた方が良いと思います。

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7月 02 2020

法務局における自筆証書遺言書保管制度について

相続手続を行う際に,「遺言書を作成しておいていただければ,こんな争いにはならずに済んだのに…」と思うことが何度もあります。

また,遺言書を作成されるとしても,可能な限り自筆証書遺言ではなく公正証書遺言をお勧めしており,当事務所で関与させていただいているものでもほとんどが公正証書遺言となります。
この遺言書について,新しい制度が今月10日(令和2年7月10日)から始まりますので,本日はこの点についてまとめてみたいと思います。 
 

 

1 遺言の種類

 

遺言書の作成に関しては,何種類か作成手段があるのですが,一般的には上記のとおり自筆証書遺言または公正証書遺言の二択になると思います。 
 

(1)自筆証書遺言

文字通り,自らの手で遺言書を作成するものです。
一部手書きではなくても良い部分がありますので,基本的にはすべて自筆で記載していただく必要があります。
自筆証書遺言のメリット及びデメリットは以下のとおりです。 

【メリット】
・第三者の関与が必要ではないので,すべて自由に決め,遺言書の存在自体も隠すことができます。
・紙に書くだけでできてしまいますので,ほとんど費用がかかりません

【デメリット】
・遺言書の存在が知られぬままの可能性があります。
紛失,改ざん,破棄等のリスクがあります。
・家庭裁判所において検認手続が必要であり,相続人全員に家庭裁判所から通知が行きます。
・法律に定められた方式で遺言書の作成をしなければなりませんので,せっかく作成した遺言書が無効になる恐れがあります。
 

(2)公正証書遺言 
 

遺言書の内容を公証人という役人さんに伝え,公証人が遺言書を作成するものです。基本的には作成したい内容が伝えられれば良いので,ご自身で多くの文章を書くということはありません(ただし,署名押印は必要になります。)。

公正証書遺言のメリット及びデメリットは以下のとおりです。 

【メリット】
・遺言書がどこにあるのか分からなくても,公証役場において検索することができます。
・原本が公証役場に保管されますので,紛失,改ざん,破棄等のリスクがありません
・家庭裁判所での検認手続が不要であり,すぐに遺言書の内容に書かれた手続を進めることができます。
・公証人という法律の専門家が作りますので,無効になる可能性が低いです(公証人の多くは,元裁判官,元検察官です。)。
 

【デメリット】
・ご自身以外に,公証人や証人2名が手続に関与しますので,一切第三者に知られずに作成することはできません

・基本的には公証役場を訪ねる必要があります(別途費用がかかりますが,出張してもらうこともできます。)。

・遺産の額に応じて費用がかかります。安くても数万円,高いと数十万円の費用がかかります。
 

(3)手続の比較


手続の費用については,明らかに自筆証書遺言の方が安上がりですので,費用を最優先とされる場合は自筆証書遺言の方が良いということになります。
しかし,自筆証書遺言は,紛失,改ざん,破棄のリスクに加えて,そもそも遺言書自体が無効になってしまうリスクがありますので,弁護士や司法書士といった法律専門職の立場としては,費用がかかったとしても,確実に遺言書どおりに進めることができる公正証書遺言をお勧めしているのが実情です。 
 

2 新しい制度

 

ここからが今回のメインです。

上記の自筆証書遺言と公正証書遺言の「良いとこ取り」という感じの手続が始まります。それが,法務局における自筆証書遺言書保管制度です。
 

(1)手続の概要

ご自身で自筆証書遺言を作成していただきますが,その遺言書の原本を法務局が保管するうえ,遺言書自体をデータ化して保管してくれる制度です。原本は常に法務局に保管され,何らかの手続を行う際には,遺言書の謄本等を交付してもらって手続を進めることとなります。
 

(2)メリット

・公正証書遺言ほどのレベルではないものの,民法上の形式的な要件が備わっているかの確認はしてくれますので,有効な遺言となる可能性が高くなります。

検認手続が不要です。

・法務局の保管手数料が3900円と,公正証書遺言と比べた場合では費用が格段に安いですし,毎年の保管料などもかかりません。

・法務局が保管しますので,紛失,改ざん,破棄等のリスクはありません(現物は50年,データは150年保管されます。)。

・公正証書遺言と異なり,証人は不要です。

・遺言書の保管について検索することができます
 

(3)デメリット

・公証人のように出張してもらうことができませんし,弁護士や司法書士を代理人に選任して手続をすることもできず,必ずご自身が法務局に行かなければなりません

・意思能力の有無などを厳格に確認しているわけではないので,公正証書遺言よりは無効になる可能性がある。
 

(4)まとめ

以上のとおり,メリットの方が目立ちます。特に,検認不要,費用が安い,紛失等のリスクなし,という点が大きいと思います。

一方で,必ずご本人が自筆で遺言書を作成したうえで法務局を訪ねる必要がありますので,ご記入が難しい方や入院等で外出が難しい方については,この手続は使いにくいと思います。特に自筆証書遺言の場合は,かなり書いていただく量が多くなってしまいますし,有効性という点では公正証書遺言の方が優れていますので,特にご希望が無いようであればこれからも公正証書遺言の方をお勧めするかと思いますが,自筆証書遺言の作成をお考えの方であれば,併せて法務局による自筆証書遺言書保管制度をご利用いただくことはメリットが盛りだくさんですので,ぜひお勧めしたいと思います。

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