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11月 22 2017

地面師真っ盛り

先日,地面師の話を書きましたが,その後もたくさんの地面師事件が報道されています。
 

→ アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口
 

→ 弁護士まで騙されたのか——不動産詐欺事件の最高裁判断で問われる役割
 
 


 

地面師事件のキモの部分は,売主の本人確認であり,そのための書類としては免許証や権利証,印鑑証明書をどうやって地面師側が用意するかとなります。
このうち印鑑証明書については,方法は書きませんが比較的容易に手に入ると思われます(犯罪です)。しかも偽造ではなく本物を入手することが可能ですので,当然ながら何も事情を知らない司法書士が見抜くことは不可能です。もし,偽造したものであれば,コピーすることで見抜ける場合があります。
 

あとは免許証と権利証ということになりますが,免許証は精巧に偽造する組織があるそうですので,何らかの誤りがあれば別ですが,これもまた見抜くことはかなり厳しいかと思います。
なお,誤りを見抜く方法として,比較的有名な以下の方法で発覚する場合があります。
 

(1)最初の2桁は,最初の免許取得地
最初の2桁は初めて免許を取得した都道府県(北海道はさらに細かい)となっています。すべての都道府県の番号を覚えるのは大変ですが大まかな地方としては,10番台が北海道,20番台が東北,30番が東京,40番台が東京以外の関東甲信越,50番台が中部,60番台が関西,70番台が中国,80番台が四国,90番台が九州沖縄となっています。
このうち,30番台は東京の30番のみですので,31とか32とかであれば一発で偽造と判明します。また,2桁目が6以上の大きい数字は新潟(46),山梨(47),長野(48),静岡(49),鹿児島(96),沖縄(97)しかありませんので,40番台または90番台以外の大きい数字の時点で偽造と判明します。
もちろん,最初の免許取得地を聞いて,番号が異なれば偽造を疑う一つの要素となります。
 

(2)次の2桁は初めて免許を取得した西暦の下2桁
免許証番号の下に原付や自動車などの取得年月日が書いてありますが,そことのズレで偽造が判明する場合があります。
例えば,私が初めて免許を取得したのは平成8年(1996年)であるため,3桁目と4桁目は「96」になっています。
 

(3)最後の数字は発行回数
紛失等により再発行した回数が記載されます。多くても2くらいだと思いますので,7とか8だと疑った方が良いと思います。
 

残る権利証についてですが,権利証と言っても,従前の権利証と平成17年から始まった登記識別情報通知の2種類があり,そのどちらかによって対応が変わります。

まず,先に登記識別情報通知について説明すると,これは紙そのものが重要なのではなく,その紙に記載されているパスワードが重要となります。そして,登記申請をする前にそのパスワードがちゃんと発行されているのかどうか(失効確認),また,パスワードが分かれば登記申請前にそのパスワードが有効かどうかを確認することができます(有効確認)。登記申請の全件において有効確認をすることは無いと思いますが,地面師がかかわるような大きな金額の取引であれば,事前に有効確認をすることで未然に防ぐことができます。
もっとも,当該登記識別情報が盗まれたものだとすると,パスワードも正しいものですので司法書士が見抜くことは不可能です。
 

最後に,従前の権利証の場合,紙そのものが重要ではあり,特に偽造防止措置がとられているわけではありませんので,カラーコピーをすることは可能です。しかしながら,経年劣化による紙の質感の変化などで気付くことはあるかと思いますので,他の書類よりは比較的見抜きやすいと思います。
 
 

上記の弁護士さんが騙された事件は,権利証を偽造するのではなく,弁護士さんに本人確認情報を作成してもらい,登記申請をしています。

そもそも,本人確認情報とは,登記申請を代理人として申請する司法書士または弁護士が,売主さん本人であることを確認して「本人確認情報」という書類を作成すると,それが権利証の代わりになるというものです。正確には違いますが,一時的に権利証を再発行するようなものです。したがって,司法書士や弁護士が地面師側と組むと容易に権利証を作り出すことができることになります。実際に,地面師側についた司法書士が逮捕されている事件もあります(もちろん,犯罪です。)。
 

上記の弁護士さんの事件は,弁護士さんが地面師側だったのではなく地面師側に騙されたものですが,正直なところ,司法書士であればもっと深く調査をしたと思います。例えば,本人確認を行う場所を事務所ではなくこちらから売主さんの自宅にお伺いして室内に飾ってあるものなどからも情報を収集します。以前私が売主さんのご自宅にお伺いしたときは,賞状が飾ってあったのでその賞状の取得の経緯を聞いたり,置いてあるDVDを見てその話しの内容を伺ったりもしました。
 

もちろん,これにより100%防げるものでもありませんが,その可能性を少しでも減らすべく調査を行わなければなりません。
 

と,いろいろ書いておりますが,幸いにして私は地面師事件に巻き込まれたことが無いので偉そうなことを書いているにすぎず,実際に巻き込まれた時に本当に見抜けるかどうかは分かりません。ただ,そうなったときに見抜ける可能性を高めるよう,日々様々な情報を収集するしかありませんね。

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10月 12 2017

会社が勝手に解散させられてしまうかもしれません

司法書士は,不動産登記以外にも会社や法人に関する商業・法人登記を行っております。
 

不動産登記とは直接関係ありませんが,結構重要なお話なので記事を書きたいと思います。
 

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株式会社は12年以上,一般社団(財団)法人は5年以上,何も登記をせずに放置すると消えてしまう可能性があります。

 

株式会社の場合は,取締役等の役員の任期が最長で10年と定められており,かつ,役員変更等があったときから2週間以内に登記申請をしなければならないこととなっております。同様に,一般社団法人等については,任期が2年となっております。
 

とすると,少し余裕をみて株式会社であれば12年,一般社団法人等であれば5年もの間,何も登記がされていないとなると会社として存続していない可能性が高くなるため,強制的に会社が解散されてしまうこととなっております。なお,あくまで株式会社及び一般社団法人等に限った話ですので,(特例)有限会社,合同会社,合名会社,合資会社等,株式会社や一般社団法人等以外の会社や法人に関してはまったく関係ありません。というのは,これらの会社は任期を定めなくても良いこととなっているため,会社が運営されていても20年以上,登記がされないことも十分にあり得るためです。 
 

いつ解散させられてしまうのか

 

この強制的な解散は,随時行っているものではなく,年に1回公告をしたうえで毎年行っております。この公告が本日であり,2ヶ月後の平成29年12月13日に強制的に解散させられることになります。
 

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対象となっている場合はどうすれば良いのか

もし上記の条件に当てはまる場合で,かつ会社を存続させたい場合は管轄の法務局に対して「まだ事業を廃止していない」旨の届出を出すか,何らかの登記申請をすれば会社がまだ存続していることが分かりますので勝手に解散させられることはありません。
 

なお,仮に解散させられたとしても,事後的に「会社継続」の登記を行うことで復活させることもできますが,その分の登記費用がかかってしまいますので,対象になっている場合は早急に手続を行った方が良いかと思います。
 

→ 平成29年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について(法務省)

→ 休眠会社・休眠一般法人の整理作業の実施について(法務省)

→ 官報公告

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9月 21 2017

不動産屋さんを通さない不動産の売買について

最近,親族間での売買や友人知人,またはご近所さんなど,不動産業者を通さない不動産の売買についてのご相談を多くいただいておりますので,今日は不動産業者を通さないことのメリット及びデメリットについてまとめてみたいと思います。 

 

そもそも不動産屋さん(不動産仲介業者)とは何か

 

不動産を購入される方の多くが,自宅に入ったチラシやインターネットでの検索,場合によっては現地に立ててある看板などを見て購入されていると思います。中には,欲しい不動産の目星を付けて登記簿で所有者を確認し,直接売主さんと交渉を行うという方もいらっしゃるかもしれませんが,極々少数です。
 

一方,不動産を売却しようと思っている方も,インターネットや新聞広告などを行って自ら買主さんを探すこともできるでしょうが,現実的にはほぼあり得ません。
 

また,不動産を購入される方にとって,もともとお住まいの地域であればご存知かもしれませんが,小中学校の学区,用途地域(住居専用地域や商業地域など)などの調査も必要ですし,売買契約が成立した際の契約書もなかなかご自身で作成するのは難しいです。

このように,購入を希望される方と売却を希望される方の間を取り持って売買を仲介するのが不動産屋さん(不動産仲介業者)です。 
 

不動産屋さんに依頼するメリット

 

【売主さん】
 

①売買契約が成立するまで無料で買主さんを探してくれる

→仲介手数料は,原則として売買契約が成立したときに発生する費用であるため,広告費用などはすべて不動産屋さんが負担します。

②売買代金の妥当性

→不動産屋さんは過去の周辺相場を知ることが出来ますので,特殊な事情が無い限りある程度妥当な金額での価格で成立する可能性が高いです。

③買主さんに知らせるべき情報を調査して説明してもらえる

→不動産屋さんは,契約前に契約内容に関する「重要事項説明」を売主さん買主さん双方にしなければならないこととなっているため,様々な調査を行ったうえで説明してもらえます。
 

【買主さん】
 

①売買契約が成立するまで無料で案内してもらえる

→上記のとおり,仲介手数料は,原則として売買契約が成立しないと発生しませんので,気に入る不動産が出てくるまで何度でも無料で案内してもらえます。

②売買代金の妥当性

→上記のとおり,特殊な事情が無い限り妥当な金額での売買価格になります。

③必要な情報説明してもらえる

→上記のとおり,重要事項説明がありますので,ご自身で調べなくても不動産屋さんが説明してくれます。

④リスク回避

→まったく面識がない売主さんに対して直接大金を支払うことに躊躇する方が多いかと思いますが,不動産屋さんが入ることで詐欺などのリスクを軽減することができます。

⑤保証がある場合がある

→すべての不動産屋さんではありませんが,一部の不動産屋さんは耐震保証や地盤に関する保証をしてくれることがあります。

⑥責任追及できる場合がある

→購入した不動産に問題があった場合,売主さんに責任追及するのみならず仲介した不動産屋さんにも責任追及できる場合があります。一般的に売主さん個人よりも不動産屋さんの方が資金力があるため,売主さんと不動産屋さん双方に責任追及できた方が有利です。 

なお,売主さんが不動産屋さんに仲介を依頼している場合,買主さんが直接売主さんから購入することは非常に困難です。 
 

不動産屋さんに依頼するデメリット

 

売主さん及び買主さんともに不動産屋さんに仲介手数料を支払わなければならないことです。

仲介手数料は不動産の価格によって異なりますが,一般的には400万円を超える価格になることが多いため,「売買価格の3%+6万円+消費税」が上限となります。

例えば,1000万円の不動産であれば388,800円が上限となり,通常はこの金額を売主さん買主さんそれぞれが不動産屋さんに支払うこととなります。 
 

不動産屋さんを通さない売買を行うケース

 

最初に書いておりますが,親族間や知人間での売買であれば詐欺などのリスクはほとんどありませんし,小中学校の学区や用途地域などはすでにご存知かと思われます。また,知人間であれば違うかもしれませんが,親族間であれば売買価格の妥当性もあまり必要がありません(例えば,親が子どもに不動産を売却する場合,相場よりも安く売却することが多いかと思います。)。

とすると,税金の申告等の際に必要となる契約書の作成と不動産屋さんも関与しない不動産の名義変更(所有権移転登記)さえできれば,仲介手数料を支払ってまで不動産屋さんに仲介してもらう必要がないという方も多くいらっしゃると思います。
 

そこで,当事務所では,売主さん及び買主さんから直接ご依頼を受けて,①契約書の作成,②名義変更等の登記関係全般の業務を行っております。以下,かかる費用について記載いたします。なお,当事務所の報酬には別途消費税がかかります。
 

【売主さんにかかる費用】
 

・実費部分

①売買契約書に貼付する収入印紙

→売買価格によって変わりますが,多くのケースで1000円から3万円の範囲内になるかと思います。

②事前調査費用

→不動産の数などによって異なりますが,1000円から2000円程度です。

③郵送料

→数百円程度です。
 
 

・当事務所の報酬部分

④売買契約書作成費用

→ページ数や内容などに関係なく一律2万円

※ご自身で作成される場合は不要です。

⑤登記原因証明情報作成費用

→ページ数などに関係なく1万円

【場合によっては売主さんにかかる費用】

⑥住所やお名前の変更登記が必要な場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して1万円から2万円程度です。

⑦抵当権抹消登記が必要な場合

→内容次第となりますが,問題なく抹消できる場合は実費及び報酬を合計して1万円から2万円程度です。ただし,古い抵当権などの場合は簡単に抹消できませんので,費用や時間がかかります。詳細についてはこちらをご覧ください(遥か昔に登記された抵当権抹消登記)。 
 
⑧権利証が無い場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して5万円から10万円程度です。
 
 

【買主さんにかかる費用】

・実費部分

①売買契約書に貼付する収入印紙

→売買価格によって変わりますが,多くのケースで1000円から3万円の範囲内になるかと思います。

②登録免許税

→不動産の評価額や減税の可否によっても変わります。通常であれば,土地は評価額の1.5%,建物は評価額の2%となります。

③登記事項証明書

→不動産の数によって異なりますが,1000円~2000円前後になることが多いです。

④郵送料

→1500円程度です。
 
 

・報酬部分

⑤売買契約書作成費用

→ページ数や内容などに関係なく一律2万円

※ご自身で作成される場合は不要です。

⑥所有権移転登記報酬

→不動産の数に関係なく1登記申請当たり5万円

【場合によっては買主さんにかかる費用】

⑦抵当権設定登記がある場合

→内容次第となりますが,実費及び報酬を合計して数万円から15万円程度です。
 
 

なお,登記簿の内容によっては,上記では該当しないことも稀にございますので,お問い合わせいただければと思います<(_ _)>

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9月 04 2017

相続登記の登録免許税が無料になる(かも)

平成30年度の税制改正の要望で,不動産登記を所管する法務省が「(一部の)相続登記の登録免許税を無料に!」という要望をしています。 

→ 平成30年度税制改正要望(法務省)

 
 

ただ,正直なところ,内容がイマイチな気がしてなりません。 

要望によると,次の2つの場合に登録免許税が免除(無料)になるとされており,免除される期間は平成30年度から同32年度までとされております。 

(1)所有者が亡くなってから30年以上経過した土地に関する相続登記

(2)1筆あたり20万円以下土地に関する相続登記 
 

基本的に,この制度の導入目的は,長期間名義が変更されていない不動産が多くて有効利用できていない問題(いわゆる所有者不明土地問題)を解消するために,名義変更(相続登記)を促進しようというものです。

不動産には土地だけではなく建物もあるわけですし,そもそも建物の登録免許税は経年劣化によってかなり安いはずなので,建物も免除した方が相続登記の促進になるのではないでしょうか。

また,20万円以下の土地の場合も免除されるとのことですが,20万円以下の土地の登録免許税は一律で1000円です。「1000円の登録免許税が免除されるから相続登記しよう!」という方がはたしてどれほどいらっしゃるのか・・・。
 

ただ,いずれにしても税金が安くなるのは,登記申請される方にとってはメリットですので,税制改正が通ると良いですね。

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8月 04 2017

地面師暗躍

先日,司法書士業界が震撼した,全国的にも報道される大きな事件がありました。 


 

「積水ハウス,63億円詐欺被害・・・地面師か」
 

以下,読売新聞の記事( http://www.yomiuri.co.jp/national/20170802-OYT1T50136.html )を引用します。

大手住宅メーカー「積水ハウス」(本社・大阪市)が東京都内の土地取引を巡り、購入代金63億円を支払ったにもかかわらず、土地を取得できない事態になっていることが、同社などへの取材でわかった。同社から相談を受けた警視庁は詐欺事件として、捜査を始めた。関係者によると、所有者になりすまして不動産取引を持ちかける「地面師」の被害に遭った可能性が高いという。
 

以上引用終わり 

 

この事件について,様々な報道がされておりますが,取引には司法書士が関与していましたので,司法書士的な観点から書いてみようと思います。 
 

不動産取引に関する司法書士の関与

 

不動産の売買を行う場合,多くのケースでは不動産仲介業者が間に入って売買契約を締結し,その後金融機関などで代金の決済を行います。代金決済が終わったら,法務局にて現在は売主さん名義になっている不動産の所有者について買主さんに変更する登記を申請します。
 

このとき,司法書士が登記申請を代理して行いますが,その前の段階の代金決済にも関与し,その時に買主さんや売主さんご本人に間違いないか,物件は合っているかなどを確認して,関係書類にご署名ご捺印等をいただきます。通常,司法書士がすべての書類をチェックし,OKが出た時点で代金決済が行われますので,司法書士の確認というものはかなり重要であり,日本中で行われている不動産取引の大部分に司法書士が関与しています。 
 

名義変更に必要な書類

 

不動産の名義変更に必要な書類はいくつかありますが,その中でも重要なのは売主さんの書類であり,特に権利証と印鑑証明書は重要です。

そして,登記申請そのものに必要ありませんが,ご本人であることを確認しなければなりませんので,運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要となります。
 

以下,それぞれの書類について細かく書いていきます。
 

(1)権利証

「権利証」という名称は俗称であり,正式には「登記済証」または「登記識別情報通知」という書類になります。法務局によって移行時期は異なりますが,概ね平成17年から平成20年頃までに「登記済証」から「登記識別情報通知」に変わっております。

まず,登記済証という書類は,登記が完了したときに法務局から発行される書類であり,昭和の時代だと薄い和紙で作成されていることが多いと思います。権利証に有効期限等はありませんので,40年や50年前に作成された書類でも有効な書類となります。そのような時代に偽造防止技術は発達しておりませんので,悪い人が偽造しようとすると,比較的偽造しやすい書類かと思います。

一方,登記識別情報通知は,パスワードが記載された書類であり,書面そのものに効力があるわけではありません。また,事前にパスワードを教えてもらえれば,そのパスワードが有効か無効かを調べることもできますので,こちらの偽造という行為そのものにはあまり意味がなく,悪い人も登記識別情報通知を偽造するということを恐らく少ないと思われます。
 

(2)印鑑証明書

役所から発行してもらう書類であり,偽造防止が施されていますので,偽造することは簡単ではないと思いますが,悪い人は精巧に偽造するようです。

ただ,私の印象としては,印鑑証明書は偽造されるというよりも,本人に成りすまして勝手に印鑑証明書を取得するということの方が多いと思います。この場合は,当然本物の印鑑証明書です。
 

(3)本人確認書類

ご本人であることを確認するために,運転免許証やパスポートなどを拝見しますが,やはりこちらも偽造されたものが出回っているようです。完璧に偽造されてしまうと,弁護士や司法書士でも見抜くことは困難だと思います。 
 

司法書士の責任

 
 

司法書士は登記手続の専門家であるため,万が一,事故が起こってしまうと賠償責任を負うことがあります。

賠償責任を負うのはあくまで過失や故意がある場合に限られますので,司法書士がどう頑張っても見抜けないような場合には賠償責任を負わないこともあります。とはいえ,専門家である以上,まったくのゼロということは少ないと思われます。
 

以下,司法書士に賠償責任を認めた事例をいくつか挙げてみます。
 
①運転免許証の有効期限がおかしい

現在,運転免許証の有効期限は「誕生日の1ヶ月後まで」となっていますが,詐欺師が持っていた免許証は異なる日付でした。
 

②どこが偽造されているのか特定されていないがしっかり確認しなかった

免許証が偽造されていたものの,免許証ケースに入ったまま司法書士が確認し,OKと判断した。この裁判例は,どのような偽造がされていたのか,おかしな点があったのかはわからないのですが,司法書士の確認が甘かったということをもって賠償責任を負うこととなりました。

③免許証と印鑑証明書が偽造されていたが,住所などの部分に擦れやインクのシミがあり,しかも司法書士会が注意喚起をしていた

一見してすぐにわかるようなものではないのですが,注意深く見れば見抜ける内容であり,司法書士会が注意喚起をしていたので,司法書士としては見抜くべき事案ということでした。
 

①と③は見抜けなかった司法書士に落ち度があるのは分かるのですが,②についてはケースから出していたとしても見抜けたかどうかは不明であり,司法書士的にはなかなか厳しい判断です。 
 

司法書士は賠償できるのか

 

仮に裁判等で司法書士に賠償を命じる判決が出たとしても,その司法書士にお金が無ければ賠償することができません。特に不動産は高価な財産ですので,賠償できないケースもあると思います。
 

このような事態に備えて,司法書士は保険に入っており,通常はその保険から賠償されますので,万が一事故が起こったとしても被害者の方は保険会社から回収することができることになっています。もっとも,車の保険のように任意保険であるため,もしかしたら保険に加入していない司法書士もいるかもしれませんので,ご依頼される際には一応ご確認いただいた方が良いかもしれません。
 

なお,当事務所はしっかり保険に加入しております。もちろん,保険に頼らなければならないような事態に陥らないことがベストなのは言うまでもありません。 
 

今回の事件について

 

さて,今回の事件ですが,ネット上の記事によれば本人確認のためのパスポート及び印鑑証明書が偽造だったようです。

まだ捜査中の段階であるため,事件とは無関係な私ではどのような偽造をされていたのか知る由もありませんが,法務局の職員が見抜いたということは,司法書士でも見抜くべき事案だったと推測されます。そして,司法書士的に恐ろしいのは,賠償責任です。上記のとおり,司法書士は保険に入っていますが,最大で10億円程度です。この事件において司法書士の責任がどの程度認められるのかわかりませんが,保険で賄いきれない可能性も十分あると思います。 
 

いくつかの疑問点

 

ここからは,単に思うことを書き綴るだけですので,結論がないのですが,いくつかある疑問点について書いてみます。  
  
・仮登記は通っている

登記簿を見ると,I社の仮登記がされており,その後I社の仮登記の移転請求権仮登記が上記のS社名義でされています。仮登記は文字どおり「仮」の登記であるため,書類も少なくて済むのですが,それでも所有者の印鑑証明書が必要になります。この時は法務局は印鑑証明書の偽造を見抜けなかったのでしょうか。それとも,このときは本物の印鑑証明書があったのでしょうか。
 

・相続登記の早さ

この事件の後,真の所有者が亡くなっており,その後に相続人名義の登記がされているのですが,相続登記が亡くなってからわずか10日で申請されています。何か事情が無い限り,こんなに早く申請することはありません。もしかしたら,新たな被害者が生まれることを防ぐために,すぐに相続人名義に変えたのでしょうか。ちなみに,評価額が分からないので正確ではありませんが,この登記を申請する際に法務局に納める登録免許税だけでも1000万円以上の現金が必要です。
 

・中途半端な送金額

売買価格70億円に対して,63億円を送金しているようです。上記のとおり,代金決済とは全額支払うことを意味しますので,なぜ売買代金の9割だけしか払っていないのかよくわかりません。もしかしたら,買主側として登記ができるか怪しく思っており,全額の支払いを登記完了後とする合意をしていたのかもしれませんが,それだったら9割ではなく5割でも良かったはずです。いずれにしても売買代金の9割だけ払って登記申請をするというのは通常無い話です。
 

・犯人はどうやって現金を手にするのか

数十億円もの現金を引き出すことは現実的にかなり難しいですし,どこかの銀行に送金しているのであればすぐに凍結されてしまいます。記事によれば5億円は現金だったそうですので,その分は得ることができますが,残り数十億円はどうやって手に入れるんでしょうね。
 
 

幸いにして,私は地面師に遭遇したことはありませんが,今後も気を付けて業務を進めていきたいと思います。

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6月 09 2017

法定相続情報証明制度

なかなか記事を書く時間がなく,少し時機を逸した感がありますが,先月末から新しく始まった法定相続情報証明制度についてまとめたいと思います。 

 
 

法定相続情報証明制度とは?

 

端的に言えば,戸籍謄本などを基に家系図のような書面を作成して法務局に持っていくと,法務局が調査のうえ,その家系図が正しいものであることを証明してくれるという制度です。その証明された家系図のような図面のことを「法定相続情報」といいます。
通常,相続の手続を行う際には,亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になり,亡くなった方との関係が兄弟姉妹だったりすると,亡くなった方のご両親の出生から死亡までの戸籍が必要になるため,かなりの量の戸籍が必要になります。この大量の戸籍を金融機関や役所などに毎回提出しなければなりませんので大変な手間だったのですが,今後は法務局に一度戸籍を持って行って証明書が取得できれば,その後の手続は「法定相続情報証明」を1枚ですべて事足りることになるということです。 
 

メリットなど

 

この制度の大きなメリットは,相続手続に際して,法定相続情報証明1枚のみで足りるということであり,逆に言えばこれ以外のメリットはありません。強いて言えば,発行手数料が無料ということもメリットかもしれません。
 
 

一方,勘違いされる方が多い要素がありますので,むしろこちらの方が大事かもしれません。

(1)戸籍はやっぱり必要です
法定相続情報証明を法務局に発行してもらうためには,出生から死亡までの戸籍謄本等を法務局に提出する必要がありますので,戸籍謄本等の取得が楽になるわけではありません
 

(2)発行してもらえる法務局が決まっている
全国どこの法務局でも発行してもらえるわけではなく,以下の4つに限定されております。ただし,郵送でも申請(申出)をすることができます
・亡くなった方の最後の住所地を管轄する法務局
・亡くなった方の本籍地を管轄する法務局
・証明書を請求する方の住所地を管轄する法務局
・亡くなった方が所有していた不動産を管轄する法務局
 

(3)図面は自分で作成しなければなりません
法務局のサンプルだと下記のような書類となりますが,この家系図のような部分についてはご自身で作成する必要があります。私ども専門職は,作成するための専用のソフトがあるので簡単に作れるのですが,一般の方はエクセルで作成していただくか手書きで作成していただくことになると思います。
 


 

(4)外国籍の方は使えません
戸籍を基に作成するものであるため,外国籍の方はご利用できません。日本人の方が外国に住んでいて亡くなった場合は問題ありません。
 

(5)再交付は5年間
申出をしてから5年間は法務局に情報が保管されているため,何度でも再発行は可能ですが,5年経過後は改めて戸籍謄本等を添えて改めて申出をする必要があります。
 

(6)代理ができるのは親族か資格者代理人のみ
申出ができるのは相続人に限られておりますが,ご自身で手続ができない場合には親族または専門職(弁護士,司法書士,税理士等)に依頼する必要があります。
 

(7)亡くなった方毎に必要
不動産が祖父名義になっている場合などで,祖父と父親の両方の相続を同時に行うというような場合がありますが,その場合は祖父の法定相続情報と父の法定相続情報とでそれぞれ別に2件の申出をする必要があります。 
 

かかる費用について

 

上記のとおり,法定相続情報証明そのものについては発行手数料は無料です。しかしながら,戸籍謄本等を取得する必要がありますので,その取得費用はかかってしまいます。 

また,専門職に依頼した場合はその報酬がかかります。当事務所の場合は,法定相続情報証明の発行のみのご依頼をお受けした場合は,亡くなった方1名につき3万円及び戸籍謄本等取得の実費となり,相続登記等の相続業務をご依頼いただいた場合は,亡くなった方1名につき1万円(戸籍謄本等の取得費用は無料です。)となります。

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3月 30 2017

平成29年4月1日からの各種減税措置

去る3月27日に参院本会議にて平成29年度税制改正関連法案が可決成立いたしました。これにより,新たな減税措置が講じられることになったり,平成29年3月31日をもって期限切れになる各種減税措置について延長されることになりました。
 

上記のリンク先を辿っていくとどのような内容になるのかはわかるのですが,たどり着くのが大変なので,一般的に関係がありそうなものを以下にまとめておきます(日本酒造組合の特例などは省略しております。)。
 

 

(1)租税特別措置法72条関係(延長)

 

土地売買で取得する場合,本来は土地の評価額の2%の登録免許税を納めなければなりませんが,現在は1.5%に軽減されております。これが平成31年3月31日まで延長されました。
 

土地のみ関するものであり,かつ売買に限られます。したがって,建物については,下記(2)に該当しなければ減税措置はなく,取得原因が売買以外(贈与,相続など)の場合には減税されません。 
 

(2)租税特別措置法72条の2,73条,75条関係(延長)

 

建物新築した場合,本来は建物の評価額の0.4%の登録免許税を納めなければなりませんが,現在は0.15%(長期優良だと0.1%)に軽減されております。

また,建物売買で取得した場合,本来は建物の評価額の2%の登録免許税を納めなければなりませんが,0.3%(長期優良だと0.2%または0.1%)に軽減されております。

そして,建物の建築や売買での取得に際して住宅ローンを組む場合,本来は融資額の0.4%の登録免許税を納めなければなりませんが,0.1%に軽減されております。
 

以上について,平成32年3月31日まで延長されました。
こちらは平成32年までの延長です。 
 

(3)災害に関する税制上の措置(新設)

 

被災者生活再建支援法が摘要される自然災害の被災者等が当該自然災害で滅失した建物に代わるものとして新築等をした場合の保存登記や土地の取得に関する移転登記等,さらに新築等のための住宅ローンに関する抵当権設定登記について,当該自然災害が発生した日から5年間はすべて登録免許税を免税とする。 
 

この免税措置は平成28年4月1日以降に起こった自然災害に適用されますので熊本地震についても適用があります。また,あくまで平成29年4月1日以降に登記をする場合に免税されることとなっておりますが,平成28年4月1日から平成29年3月31日までに登記したものについては納めた登録免許税が還付されることとなっております(ただし,別途還付に関する申請が必要です。)。
 

なお,東日本大震災はこの免税措置には該当しませんが,そもそも東日本大震災に関しては,別途免税となる法律(震災特例法)がありますので,こちらをご覧ください(平成33年3月31日まで)。
東日本大震災で被災した建物・船舶・航空機を再取得した場合の登録免許税の免除特例について(PDF)

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3月 01 2017

登録免許税の減税について

こちらのページで簡単に紹介させていただいているとおり,一定の条件を満たすと登記の際の登録免許税が大幅に減税されます。

→ 減税のための条件

ただ,実際にはここで紹介させていただいている条件以外にも細かな条件があったりしますので,ここでまとめておきたいと思います。
 

 
 

どのような減税措置なのか

 
住宅用の家屋を取得を促進するため,一定の条件を満たした場合に登記の際に以下のとおり減税されます。
 

①建物保存登記

建物を新築した場合,本来であれば登録免許税は建物の評価額の0.4%となっておりますが,一般的な住宅の場合は0.15%に,長期優良住宅の場合は0.1%に減税されます。
 

②所有権移転登記

いわゆる建て売りの物件だったり中古の戸建て住宅を購入する場合,本来であれば登録免許税は評価額の2%となっておりますが,一般の住宅であれば0.3%に,長期有料住宅であれば0.1%に減税されます。本来の税率の約1/7~1/20ですので,かなり大きな減税になると思います。
 

③抵当権設定登記

住宅を購入される方の多くが住宅ローンを組まれると思いますが,その際の抵当権設定登記について,本来であれば登録免許税は融資額の0.4%のところ0.1%に減税されます。 
 

減税のための一般的な条件

 
減税のための条件のページより細かく条件を記載いたします。
 

①戸建ての家またはマンションを購入する場合であること

つまり,新築の家を建てるために土地を購入した場合は残念ですが土地の購入に関する所有権移転登記や抵当権設定登記に関しては減税されません

また,戸建ての一軒家(新築建売や中古物件問わず)を購入された場合やマンションを購入された場合でも,土地(敷地権)の所有権移転登記部分については減税されません。ただし,抵当権設定登記の登録免許税に関しては土地と建物の両方を購入するためのローンであっても全額減税されます。

さらに,取得の原因は「購入」に限られておりますので,「売買」または「競落(不動産競売で落札)」のみとなります。したがって,相続,遺贈,贈与,財産分与,共有物分割などの原因の場合は減税されません。
 

②購入される方がその建物に住むこと

そもそもこの減税措置は住宅用の家屋を購入する場合に減税されるものであるため,いわゆる別荘だったり賃貸用の投資物件を購入された場合には減税されません。

したがって,購入された方がその物件にお住まいになる必要があります。つまり,住民票を当該物件の住所に移す必要があります。なお,事後的に転勤や買い替えなどでその物件の住所から移転したとしても,減税分を納め直す必要はありません。また,住む予定ではあるものの何らかの事情で登記の時に住民票が移せない場合にはその理由を記載した申立書を提出することで認められる場合があります。
 

③建物の床面積が50㎡以上であること

あまりにも小さいワンルームのようなマンションの場合は減税されませんが,ほとんどの戸建てやマンションはこの条件は満たしていると思います。
 

④購入する建物が建築してから所定の年数以内であること

基本的には,新築されてから20年以内の建物しか減税されないものの,下記構造の建物に限り25年以内であれば減税されます。

※石造・れんが造・コンクリートブロック造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造

マンションの場合は鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造であることがほとんどであるため,マンションについてはほぼ25年であることが多いのですが,戸建ての場合だと木造や軽量鉄骨造の場合が多いため20年であるケースが多くなります。

なお,この日付は建築年月日の日付で判断するため,建築日からちょうど20年であれば減税されるものの1日でも超過してしまうと減税されなくなってしまいます。
 

⑤併用住宅の場合は床面積の90%超が居宅であること

条文では,「専ら個人の住宅に供する建物」と規定されており,この「専ら」が90%ということになります。

したがって,事務所兼自宅を建築された場合に,事務所部分が10%未満であれば減税されることとなります。

なお,減税されるのは居宅部分ではなく事務所部分も含めたすべてについて減税されますが,居宅部分が90%以下の場合は,居宅部分についてもすべて減税されないということになります。
 
 
ここからは,手続的な条件です。

⑥住宅用の家屋であることの証明書を役所から取得すること

名古屋市であれば市税事務所,他の地方自治体であれば役所の税務課で取得することができます。ほとんどの自治体で手数料は1300円となっております。
 

⑥1年以内に登記すること

建物を新築して,または建物を購入して1年以内に登記しなければ減税されません。 
 

特殊なケースあれこれ

 
①共有の場合

夫婦や親子など親族と共同で購入することがあるかと思います。この場合,購入される方全員がその物件にお住まいになるようであれば何も問題ありませんが,共有者の一部が当該物件に住まないケースもあります。その場合は,住む方の共有持分に限り減税されることになります。したがって,子どもの持分が2/3,親の持分が1/3で子だけが住むという場合は,2/3に限り減税されることとなります。
 

②共同住宅の場合

アパートを購入し,そのうちの一部屋に住むという場合は,「専ら個人の住宅に供する建物」ではないため減税されません。
 

③建築から20年または25年を超過している場合

基本的には減税されませんが,建築士さんなどが発行する「耐震基準適合証明書」があれば,期間を超過していても減税されます
 

④いわゆる借り換えの場合

マイナス金利の影響などで,住宅ローンの借り換えをされるケースがあるかと思いますが,この場合は,「新築または取得するための資金の貸付」ではないため,減税はされません。
 

⑤貸主が金融機関以外の場合

一般的には住宅ローンを組む際は銀行や信用金庫などの金融機関から借り入れると思いますが,特に貸主に関する制限はありませんので,例えば親から購入資金を借り,親名義で抵当権を設定する場合でも減税されます。
 

⑥根抵当権の場合

上記のとおり,「新築または取得するための資金の貸付」に限定されているところ,根抵当権だと債権の内容が特定できないため減税されません
 
 

このほかにも様々な細かい条件がありますが,多くの場合は上記内容で解決できると思います。

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2月 27 2017

贈与と遺贈

身寄りのない方が相続人とはならない親族に不動産を譲りたい場合に贈与と遺贈のどちらが良いかご相談をお受けしたため,備忘録の意味も込めて残しておきたいと思います。

 
 

贈与の場合

 

贈与とは,財産を譲る方ともらう方との契約によるもので,基本的には契約のときに効力が生じることとなります。したがって,後になって気が変わっても返してもらうということは原則としてできません。
ただし,効力発生日は必ずしも契約時に限定されているわけではなく,贈与の効力発生に条件を付けたり期限を定めたり,場合によっては一定の債務を負わせることもできます(負担付贈与)。
 

①登録免許税
登記を行う際に,法務局に対して登録免許税という税金を納めなければなりません。
贈与の場合,土地か建物かに関係なく,評価額に対して2%となります。したがって,例えば土地1000万円,建物500万円という評価額の不動産があった場合,名義を変えるために係る登録免許税は30万円ということになります。
 

②不動産取得税
不動産を取得した場合,最初に不動産取得税という税金が課され,基本的には評価額の4%となります。
しかし,様々な減税措置があるため,実際にはもう少し低くなります。
 

まず,住宅の場合は4%ではなく3%に減税されます(平成30年3月末まで)。
さらに,土地については評価額が1/2にされることなっています(平成30年3月末まで)。
さらにさらに,建物については新築の場合だと1200万円,中古の建物でも新築年によって100万円~1200万円が評価額から控除されます。
さらにさらにさらに,土地に対しては税額に対しての控除もあったりするため,不動産取得税がかからないケースもたくさんあります。
 

③贈与税
建物については評価額そのままの金額,土地については評価額ではなく路線価で土地の価格を算出し,金額に応じて贈与税を納めなければなりません。
仮に,土地の価格(路線価)が1200万円だとすると,建物の500万円を加えた1700万円から基礎控除の110万円を差し引いた1590万円に対する贈与税を支払わなければなりません。
国税庁のサイト( https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm )によると,545万円の贈与税がかかることとなります。 
 
 

遺贈の場合

 

遺贈とは,遺言で財産を譲るもので,財産をお持ちの方が亡くなったときに初めて効力が生じることになります。したがって,贈与と異なり,遺言を書いた後に気が変わって取り消すということも可能です。
 

①登録免許税
相続人に対する遺贈であれば0.4%となりますが,相続人以外の方に対する遺贈は2%となりますので,この点は贈与の場合と変わらないことになります。
 

②不動産取得税
包括遺贈か特定遺贈かによって変わり,包括遺贈の場合は非課税であり,特定遺贈の場合には原則として課税されます。ただし,上記のとおり,不動産取得税は減税措置がたくさんありますので,まったくかからないというケースもあるかと思います。
※包括遺贈とは,割合によって財産を譲渡するもの(例えば,「私の財産の1/2をAさんに遺贈する。」)であり,特定遺贈は特定の財産のみを譲渡するもの(例えば,「私の財産のうち○○市○○町○○番地の土地をAさんに遺贈する」)であり,包括遺贈については,相続人と同一の権利義務を有するものとされていますので,場合によっては債務も承継することもあります(民法990条)。
 

③相続税
遺贈の場合は,贈与税ではなく相続税が課税されることになります。贈与税と相続税では,基礎控除の額が110万円と3000万円という大きな差があり,しかも税率の基準も大きく異なります。具体的な金額は,譲り受ける財産の金額によって変わりますが,遺贈を受ける財産が上記の土地と建物しかなかった場合,基礎控除の3000万円以下ですので,相続税はまったくかからないということになります。 
 
 

贈与税の特例措置

 

上記の前提だと贈与税はかかってしまいますが,贈与をする方と譲渡を受ける方の関係によっては贈与税が事実上かからないケースもあります。

①夫婦間での贈与
以下の条件を満たすと最大で2000万円(暦年の110万円を含めると2110万円)が非課税となります。
・夫婦間の贈与であること
・居住用不動産(または居住用不動産取得のための金銭)の贈与であること
・贈与を受けた翌年3月15日までにその不動産に居住し,その後も居住し続ける予定であること。

②直系尊属からの贈与
以下の条件を満たすと省エネ住宅であれば1200万円,それ以外の住宅だと700万円の贈与が非課税となります。
・居住用の不動産の新築,増築等の費用に充てるための資金の贈与であること
・自己の父母や祖父母など直系尊属からの贈与であること
・贈与を受ける方が,贈与を受ける年の1月1日時点で20歳以上であること
・贈与を受ける方の所得が2000万円以下であること
・住宅の取得が親族所有のものではないこと(または工事業者が親族でないこと)
・贈与を受けたときに日本国内に在住していること
・贈与を受けた翌年3月15日までにその不動産に居住し,その後も居住し続ける予定であること。

③相続時精算課税制度を利用する場合
以下の条件を満たすと,贈与税ではなく相続時に相続税で精算することとなり,場合によっては非課税となります。
・贈与をする年の1月1日時点において,贈与する方が60歳以上,受ける方が20歳以上であり,受ける方が贈与する方の推定相続人または孫であること
・2500万円までの贈与であること(超過する場合は超過分に20%の税金がかかります。また暦年贈与の110万円も加算する必要があります。)

 

まとめ

 

したがって,登録免許税や不動産取得税についてはあまり差は無いのですが,贈与税(相続税)の部分で大きな差があり,単純に税金の多寡だけで考えると,遺贈の方がかなりお得ということになります。
もっとも,上記のとおり,贈与と遺贈では効力が生じる時点に差がありますし,遺贈の場合で他に相続人がいる場合は遺留分なども考慮する必要があることから,税金以外の部分も十分考慮してお決めいただいた方が良いかと思います。

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1月 19 2017

愛知県司法書士会主催の相談会のお知らせ

当事務所のある長久手市において,愛知県司法書士会主催の市民公開講座及び相続相談会が下記のとおり開催されます。

 

場所 長久手市福祉の家(長久手市前熊下田171番地・地図
日時 平成29年2月4日(土)10時~15時 

 

なお,下記のチラシには市民公開講座の時間が「午前10時から午後12時」となっておりますが,正確には「午前10時から午前12時(午後0時)」であり,相談会も「午前12時(午後0時)から午後3時」です。14時間も公演したら倒れてしまいます(笑)

お時間のある方はぜひお立ち寄りください<(_ _)>

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