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1月 04 2021

予備的遺言のススメ

当事務所では遺言書の作成のご依頼をお受けすることが多くありますが、ほとんどのケースで予備的遺言も書かれるようお願いしております。そうしないと、せっかくの遺言が無意味になったり、想定していた財産の承継が行われないことがあるためです。
 

今日は予備的遺言についてまとめたいと思います。
 

 
 

予備的遺言がない場合

 

遺言者であるAさん(夫)には妻Bさんと子Cさん、兄弟Dさんがいたとします。
特に遺言書が無ければ妻Bさんと子Cさんが1/2ずつ相続することになりますが、将来の財産の円滑な承継のために、Bさんも納得のうえでAさんのすべての遺産を子であるCさんが相続する内容の遺言書を書きました。なお、Aさん一家と兄弟であるDさんは疎遠になっており、数年に一度、年末年始に会う程度の関係性しかありません。
 

その後、もしAさんが亡くなったとすると、Aさんの財産は遺言の内容に基づきCさんがすべて相続することとなります。
もっとも、Bさんは法律上、Cさんに対して遺留分侵害額請求をすることができますが、Bさんも納得のうえの遺言なので、特に問題は起きないと思います。
 

しかし、仮にAさんが亡くなる前にCさんが亡くなってしまった場合はどうなるでしょうか。
この点、相続人ではなく遺贈の場合は、法律上無効になると定められているものの(民法994条)、相続人が先に亡くなった場合についての条文がありませんでしたが、最高裁判決により遺贈の場合と同様に遺言によって承継するはずだったBさんが先に亡くなってしまっているため、一部の例外を除き、亡くなった人が受け取る予定だった部分は無効になると判示しました。
 

→ 最高裁サイト(最高裁平成23年2月22日判決)

→ 判決全文(PDF)
 
 

したがって、上記の場合だとCさんが相続するという部分は無効になるため、結果として遺言書全体が無効になります。
 

そして、遺言が無かったという状況になりますので、妻であるBさんと疎遠になった兄弟であるDさんとの間で遺産分割協議をしていただく必要があり、協議の内容によってはAさんが想定していたものとは違う結論になってしまいます。 
 

予備的遺言がある場合

 

上記の最高裁判決の説明で「一部の例外を除き」とあります。正確には、「推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情」となります。
 

したがって、上記の例のCさんがAさんより先に亡くなった場合に備えて、別の条項を設けておけば良いということになります。
 

具体的には、「遺言者の死亡以前にCが死亡したときは、Cに相続させるとした財産はすべてBに相続させる。」というような記載しておけば、最高裁判決が言う特段の事情に当たりますので、この部分の遺言が有効になります。これを予備的遺言や予備的条項などと呼びます。
 

そして、予備的遺言があることによって、BさんがAさんのすべての財産を相続することとなりますが、Aさんの兄弟であるDさんには遺留分はありませんので、残されたBさんはDさんから遺留分侵害額請求を受けることもなく、Aさんの想定外の事態は起こらないこととなります。
 

なお、上記は遺言者の兄弟の場合ですが、子が複数いるような場合に先に子が亡くなったときにその子(遺言者の孫)が遺言書どおりに相続するわけではありませんので、子が複数いたり、代襲相続人がいるような場合にも予備的遺言は活用できると思います。
 

以上の次第で、遺言書を書かれる際は、財産を取得される方が先に亡くなるということもある程度は想定された上で進められた方が良いと思います。

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12月 25 2020

年末年始の業務時間について


 
 

コロナに始まり、コロナに終わるという過去に経験がない1年となりましたが、なんとか今年1年を無事終えることができそうです。今年1年、たくさんのご依頼をいただきまして誠にありがとうございました。
 

当事務所の年末年始の休業については以下のとおり予定しております。誠に申し訳ございませんが、事務所にお越しいただいてのご相談やお電話での簡単なご相談などにつきましては、年明け1月4日以降に対応させていただくこととなります。なお、決まった日時では無いものの、実際には休業としている日時でも事務所にいることがありますので、メールでのご相談やご連絡については、メールの内容を確認させていただき次第、随時返信させていただきます。
 
 

令和2年12月28日午後6時まで 通常業務
 

令和2年12月28日午後6時~令和3年1月4日午前9時 休業
 

令和3年1月4日午前9時から 通常業務
 
 

今月に入って益々寒さが厳しくなるとともに、新型コロナウイルスの拡大が止まない状況ですので、感染予防をしっかりとりつつ、体調を崩されませんよう年末年始をお過ごしください<(_ _)>

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11月 19 2020

売買契約書について

当事務所では、知人間や親族間での売買など、不動産業者を通さずに直接売買する場合の登記手続に関与させていただくことがあります。 

その際、登記手続に関する書類を当方で作成することはもちろんですが、登記手続には直接必要とはならないものの、売買契約書の作成も合わせて行うことが多く、当事務所でも今週だけで2件の不動産業者を通さない個人間の売買手続を行っています。
 

売買契約書の中には、定型で決まってほぼ変わることの無い条項もあれば、契約によって大きく変わる部分もありますので、今回はこの点についてまとめたいと思います。
 

 
 

1 売買契約書

 

法律上、不動産に限らず、売買契約を行う際には特に契約書等は必要ありません。例えば、コンビニで飲み物を購入する際に契約書など作成しませんよね。

ところが、自動車や不動産など比較的高価なものを購入される際は、ほとんどのケースで契約書を作成すると思います。その理由は、後でトラブルになったときに必要となるからです。
 

上記のとおり、コンビニで飲み物を買って、もしその飲み物が不良品だった場合は、恐らくコンビニに言えば対応してくれると思いますし、仮に対応してくれなかったとしても100円~200円程度の話ですので、それほど大事にはなりません。

しかし、自動車や不動産などの場合はトラブルになった場合は、対応するにも修理費や工事費など多額の費用がかかることがありますし、泣き寝入りするにもかなりの損失になってしまいます。

なので、そういったトラブルが起きたときのために、どのように対応するのかが契約書に書かれています。
 

もっとも、契約書が無くても民法等の法律によって当然に適用されるものもありますが、逆に契約によって民法の適用を排除することもできますので、そういう意味でも契約書を作成する意義があります。
 

また、不動産の場合は税金の関係もありますので、売買代金を税務署等の官公署に説明する証拠としても重要になり、まず間違いなく契約書は作成することになります。 
 

2 売買契約書で絶対必要な条項

 

不動産の売買契約書を作成するに当たって、どのような契約書にも必ず入っており、むしろ入っていないと契約書を作成した意味がないレベルで必ず必要な条項は以下のとおりです。
 

①当事者の氏名及び住所

→ 契約の当事者が誰であるかが分からないと、契約の内容を誰が守れば良いのか分かりません。
 

②売買の対象物

→ どの不動産を購入したのかを明確にする必要があります。
 

③売買価格

→ 売買価格が0円だと贈与になってしまいますし、税金の観点からも売買代金は必須です。
 

④日付

→ その日から契約の内容をお互いに守る必要があるからです。 
 

3 多くのケースで入っており、契約ごとにあまり内容が変わらない条項

 

定型の契約書等には必ず入っており、契約書ごとにあまり無いように差がない条項です。大きな理由がない限り、特に触れる必要はないと思います。
 

①引き渡し義務と登記手続

②所有権の移転時期

③負担消除

④契約費用・印紙税の負担

⑤危険負担

⑥債務不履行解除

⑦手付解除

⑧反社会的勢力の排除

⑨諸規約の承継

⑩管轄裁判所

⑪協議 
 

4 契約の内容によって大きく変わる条項

 

個々の契約によってまったく内容が異なる条項となります。この部分は、変更可能であることがほとんどですので、契約の条件として提示することもあると思います。
 

①実測売買または公簿売買
 

実測売買というのは、売買の前提として測量を行い、その測量結果によって売買価格を決定または精算するというものです。

一般的には、まずは公簿(登記簿)に記載されている地積(面積)や床面積を基に売買価格を決定したうえで、その後の測量によって増減があった場合は売買価格も増減するというものであり、売主さん買主さん双方にとって公平だと思います。ただ、測量するためには数十万円の費用がかかりますので、必ず行うという訳ではありません。

公簿売買というのは、登記簿に記載されている地積等のまま売買することであり、基本的には売買に際して測量は行いません。また、仮に測量の結果、登記簿の地積等と異なったとしても精算を行いません。売買価格や坪単価が低い場合は公簿売買が多い傾向があります。
 

したがって、より正確に不公平なく売買をしたいということであれば実測売買ということになりますし、あまり費用を掛けたくないということであれば公簿売買ということになります。

なお、実測売買の場合は売主さんが測量費用を負担することが多いですが、買主さんの希望で測量を行う場合は買主さんが負担することもあります。
 

②公租公課の負担・精算及び計算期間(起算日)
 

公租公課は、固定資産税及び都市計画税がほとんどであり、売買代金を決済する前日までを売主さんが負担し、決済日以降が買主さんの負担とすることが多いです。

ただし、法律上は毎年1月1日付の所有者に納税義務があるのであり、買主さんには納税義務はなく、精算することが義務付けられている訳でもありません。したがって、契約内において精算しないとすることも可能です。比較的価格が低い不動産の場合は年間の固定資産税が数千円という場合もありますし、親族間や知人間という関係性がある場合は精算しないこともあります。
 

また、仮に精算をすることとなった場合、年間の固定資産税等の起算日をいつにするか揉める場合があり、これは法律によって定められているのではなく地域の慣習によって分かれます。

愛知県や関西地方では4月1日から翌年3月31日までを計算期間とする傾向がありますが、関東地方や北海道などでは1月1日から12月31日までとする傾向があるもののどちらが正しいというものでもありませんので、この点は各契約によって定めることとなります。

なお、4月1日からと1月1日からとを比べた場合、前者の方が売主さんの負担が少なく(買主さんの負担が多く)なり、後者の方が売主さんの負担が多く(買主さんの負担が少なく)なります。

③特別な解除権
 

不動産の売買契約においては手付解除、債務不履行解除、危険負担による解除、反社に該当することによる解除が定型で定められていると思いますが、それ以外にも個々の契約で特別な解除を認める特約を定めることがあります。

よくあるのが「ローン特約」であり、住宅ローンが組めなかった場合には、契約を違約金等無しで白紙解除できます。もっとも、個人間の売買だと住宅ローンを組めないことが多いため、不動産業者が仲介しない場合はあまり見かけることはありません。

それ以外にも、「測量した結果〇〇㎡以下だった場合は白紙解除」、「土地の占有者が〇〇までに立ち退かなかったら白紙解除」、「〇月〇日までに転勤の辞令が出たら白紙解除」など、自由に定めることができます。もっとも、あくまで当事者が合意すればの話であるため、一方が認めない場合は特約とすることはできません。
 

④契約不適合責任
 

民法改正により今年の4月から新しく定められた責任ですが、従前も「瑕疵担保責任」として似たような条項が定められていました。

端的に言うと、購入した不動産に何らかの不具合があったときに、売主さんが代金の減額、修繕の負担をしたり、最悪の場合は契約自体を解除することができるというものです。

これは売主さんの負担が大きい責任であり、特約が無ければ最大で10年間も責任を負い続けることになるため、責任期間を短縮(1か月~1年程度)することが多く、さらには契約不適合責任自体を負わないとすることもあります。実際に、私が作成した契約書では、ほとんどのケースで契約不適合責任は負わないとしております。
 

ただし、これには例外があり、売主が不動産業者である場合は、最低でも引き渡しから2年間は契約不適合責任を負わなければならないとされています(宅建業法40条)。
 
 

親族間・知人間等の個人間での売買をされる際は、登記手続だけでなく、上記のような契約書についても当方で作成いたしますので、お考えの際はお問い合わせいただければと思います。
なお、個人間売買に要する費用についてはこちらをご覧ください。

→ 個人間売買について

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10月 21 2020

現住所を登記したくない場合(極めて例外的)

当事務所では,弁護士さんとのお付き合いもたくさんあり,弁護士さん経由で登記のご依頼をお受けすることがあります。

例えば,遺産分割調停が成立した後の相続を原因とする移転登記,離婚訴訟が終わった後の財産分与による移転登記,当事務所でも行っている訴訟を得た後の抵当権抹消登記など多岐に渡ります。
 

今回も弁護士さんが裁判手続を経た後,当事務所にご依頼があったのですが,当事者の欄を見ると住所が「秘匿」となっており,ご住所を明らかにしたくない何らかの事情があることが窺えました。

そこで,今回は住所を登記したくない場合についてまとめてみました。ただし,限定的,例外的な取り扱いであり,実際に該当するケースは極めて少ないと思います。
 

 
 

1 登記における「住所」

 

不動産を取得したり,抵当権を設定した場合など,誰が所有者(権利者)であることを登記簿上明らかにする必要がありますが,その際,誰が権利者であるかは原則として住所及び氏名で特定することになります。

例えば,不動産を購入された場合の所有権移転登記を申請する際には,新所有者となる買主さんがどなたであるかを証明するために住民票等の公的書面を添付して申請することになります。
 

また,不動産を売却する場合,名義が無くなる所有者本人が手続に関与していることを証明するために,権利書及び印鑑証明書(+実印が押印された書面)を添付して申請します。もし,登記されている住所が現住所と異なる場合は,所有権移転登記の前提として登記簿上の住所から現住所への住所変更登記を申請したうえで,その後に所有権移転登記を申請いたします。

これは,印鑑証明書をは現住所の役所で発行してもらう書類であり,登記簿上の住所を現住所に変更し,登記簿上の住所と現住所が一致していないと本当に登記された所有者が手続に関与しているか法務局が判断できないからです。
 

このように,住所というのは結構大事な情報となります。 
 

2 住所を登記しないことは特殊な事例を除きできない

 

上記のとおり,住所は誰が権利者であるかを特定するための大事な情報となりますので,住所を登記しないということは原則としてできません

例えば,まだ出生していない胎児の名義でも所有者として登記できる場合がありますが,その場合も住所の登記は必要になりますし,慶応生まれで昭和初期に亡くなった方への相続登記などで住所を証明する書類が一切ない場合もありますが,その場合でも本籍地を住所として登記することになります。
 

特殊な事例として住所の登記が不要な場合がありますが,これは国や地方公共団体が権利者になる場合です。

平成24年頃,一般の方が所有されていた尖閣諸島について,東京都が購入すると表明し,最終的には東京都ではなく国が購入することになりました。この場合,管轄する国土交通省の名義で購入したのですが,下記のとおり国土交通省の住所は登記されません。 

 
 

上記のとおり,住所は誰が権利者なのかを特定するための情報であり,逆に言えば,住所が無くても特定できるのであれば住所は不要ということになります。そして,国土交通省名義で登記してあれば,一見して国有化された土地だということは分かりますので,住所を登記する必要はないということになります。 
 

3 現住所ではなく,前住所の登記を例外的に認める場合(新たに権利を取得する場合)

 

ここからが今回の本題になるのですが,個人の方が様々な理由で自分の住所を登記したくないということがあります。例えば,「親族と仲が悪い」,「ストーカーやDVの被害に遭っている」,「芸能人などの有名人である」などいろいろあるかと思います。
 

一般的に,住所を証明する一番の書類は住民票となりますが,基本的に第三者の住民票を勝手に取得することはできません。しかし,不動産の登記簿は公開されるのが原則であり誰でも不動産の登記事項証明書を自由に取得することができますので,不動産の所有者として載っている住所を調べることで間接的に第三者が住所を調べることができてしまいます

とはいっても,住所を登記しないと誰が権利者なのかを特定することができなくなってしまいます。
 

そこで,極めて例外的ではありますが,下記の書類を提出した場合に限り,現住所ではなく前住所や前々住所を登記することによって現住所を特定されないようにすることができるようになっています(平成27年3月31日民二第196号)。
 

住民票上の住所を秘匿する必要があり「住民票に現住所として記載されている住所地は、配偶者等からの暴力を避けるために設けた臨時的な緊急避難地であり、あくまで申請情報として提供した住所が生活の本拠である」旨を内容とする上申書(登記権利者の実印で押印されたものであり,印鑑証明書も必要
上記の前住所や前々住所等が記載された住民票や戸籍の附票等
いわゆる「DV防止法」,「ストーカー規制法」及び「児童虐待防止法」で支援を受けていることを証明する書面
 

つまり,この制度を利用できるのはDV,ストーカー及び児童虐待の被害者の方に限定されているため,単に「有名人だから」という理由では利用できないということになります。 
 

4 住所変更を省略できる場合(権利を失う場合)

 

上記のとおり,不動産を売却等して名義が無くなる場合,現住所の役所から発行してもらう印鑑証明書に記載されている住所と登記簿上の住所が一致していなければなりませんので,登記簿上の住所が前住所である場合は,前提として現住所に変更したうえで名義変更の登記を申請する必要があります。
 

ただし,下記の書類を提出した場合に限り,住所変更登記をすることなく,名義変更の登記を申請することができるようになっています(平成25年12月12日民二第809号)。
 

登記簿上の住所と現住所までの変遷が分かる住民票や戸籍の附票等

いわゆる「DV防止法」,「ストーカー規制法」及び「児童虐待防止法」で支援を受けていることを証明する書面
 

こちらも,制度を利用できるのはDV,ストーカー及び児童虐待等の被害者の方に限定されているため,単に「有名人だから」という理由では利用できないということになります。 
 

5 まとめ

 

以上の次第で,現住所を登記しないで登記手続を行うというのはハードルが高いのですが,もし該当される方は,被害発生防止の観点からもぜひ利用すべき制度だと思いますので,ぜひご検討ください。

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10月 20 2020

抵当権抹消登記における不動産の個数について

住宅ローンを完済された際に,金融機関から抵当権抹消登記に関する書類を返却され,その中にご自身で行うか,司法書士にご依頼されて抵当権抹消登記をされるよう案内がされているかと思います。
 

そのような場合に当事務所にお見積りのご連絡をいただいた際に,当事務所の報酬は抵当権1つ当たり一律5000円と単純明快なのですが,法務局に納める登録免許税や事前調査の費用に関しては不動産の個数によって異なりますので,必ず不動産の個数をお伺いしております。
もっとも,関係書類をご覧いただいてもなかなか分からないケースもありますので,今回は不動産の個数のみに絞ってまとめたいと思います。
 

 
 

1 基本的なお話し

 


日本の法律では,民法86条において「物」について次のとおり定めています。

「第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。」

つまり,土地はもちろんのこと,その定着物(建物や立木など)は不動産とされております。立木については通常関係ありませんので,不動産と言えば,土地と建物だと思っていただければ良いです。
 

また,マンションに関しては,区分所有法1条において,専有部分(各お部屋部分)も所有権の対象になるとされており,加えて建物を所有している以上,必ず土地の利用権(敷地利用権)も有していることになります。 
 

2 戸建て住宅の場合

 


多くのケースで土地1つ,建物1つの合計2つとなる場合が多いと思います。

ただ,土地が複数の場合はその分土地の数が増えることになりますし,開発業者さんが一体を開発していると,自宅前の道路が私道になっており,その道路(土地)の持分を有していることも多いです。
 

また,あまり見かけませんが,借地上に建物を建築されている場合は土地は担保になることは通常ありませんので,建物だけの1つということもあり得ます。
 

いずれにしても,金融機関から返却された「抵当権設定契約証書」の対象となる物件が記載された箇所に不動産の表示がありますので,こちらをご覧いただければ個数をご確認いただけると思います。 
 

3 マンションの場合

 


上記のとおり,マンションの場合は専有部分とその敷地である土地の利用権を有しています。また,大部分のマンションにおいては「敷地権化」されており,専有部分と敷地利用権が一体となっていることが多いですが,昭和時代のマンションなどは敷地権化されていないこともあります。

→ 敷地権についてはこちら
 

この点についても,上記のとおり「抵当権設定契約証書」をご覧いただき,下記のように「敷地権の目的たる土地の表示」という欄があれば,敷地権化されているということであり,無ければ敷地権化されていないということになります。


 

もし,「敷地権の目的たる土地の表示」があれば,その次に「土地の符号」という項目がありますので,こちらの個数がそのまま土地の個数となります。

上記は「1」しかありませんので,土地の数も1つとなり,専有部分と合わせて不動産の個数は2つとなります。
 

また,下記のようなマンションであれば,「土地の符号」という項目が5つありますので,専有部分と合わせて不動産の個数は6つとなります。大規模なマンションだと敷地の個数が増える傾向にあると思います。


 

一方,敷地権化されていない場合は,上記のような表示がありませんので,戸建ての場合と同様となります。 
 

4 登録免許税等の実費

 


抵当権抹消登記の登録免許税は不動産の個数×1000円ですので,上記の戸建ての場合だと2000円なのに対し,敷地が5つもあるマンションだと専有部分と合わせて6000円になりますので,かなりの差が出てしまいますね。なお,抵当権抹消登記における登録免許税は最大で2万円となっておりますので,なかなかありませんが,敷地が19個以上のマンションの場合は常に2万円となります。
 

また,マンションに限った話となりますが,事前調査の際の登記情報や登記完了後の登記事項証明書について,敷地権化されているマンションの場合は専有部分と敷地が一体化された登記簿となっているため1通分で足りるのに対し,敷地権化されていないマンションの場合は戸建ての場合と同様に専有部分と敷地部分それぞれに費用がかかってしまいますので,敷地権化されているマンションと比べると実費が多くかかることになります。
 
 
 

正直なところ,生きていくに当たって「この知識があって良かった!」というシーンは無いと思いますが,抵当権抹消登記の際には必要となる知識ですので,頭の片隅の中の片隅に置いておいていただければと思います。

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9月 07 2020

農地について

絶対数として多い訳ではありませんが,当事務所においても農地(田や畑)に関する登記をご依頼いただくことがあります。 

農地については様々な制約があり,私どもとしてもかなり注意して取引に関与させていただくのですが,一般の方が勘違いされていることが多いので,一度まとめておきたいと思います。
 

 
 

1 農地とは

 

私どもが言う農地とは,端的に申し上げると耕作の目的に供される土地のこと(農地法2条1項)であり,用水を用いて耕作する土地が「田」,用水を用いないで耕作する土地が「畑」となります(不動産登記事務取扱手続準則第68条)。
 

この農地を売買や贈与をするためには,農地法所定の手続を踏まないと売買等をすることができないことになっており,もし,手続を踏まずに売買をしたとしても,法律上は無効となります。無効である以上,登記名義を変えることもできません。ただし,農地法所定の許可が得られることを条件とする条件付仮登記は可能です。
 

なお,登記手続においては,登記簿の地目が「田」や「畑」になっている場合はもちろんのこと,登記簿の地目が「宅地」や「雑種地」になっていても,評価証明書の現況地目が「田」や「畑」になっていれば農地と判断されますので,下記の手続を踏まないと登記申請は却下されてしまいます。 
 

2 農地法所定の手続

 

農地を売買等をする場合,以下のいずれかの手続が必要です。
 

農地法3条の許可 → 農地を農地のまま売買,贈与等をする。

農地法5条の許可 → 農地を農地ではないものに変更したうえで売買,贈与等をする。
 

なお,間にある農地法4条の許可は,農地を農地以外に変更するための許可であり,所有者は変わりません。したがって,農地法3条と4条の許可を合わせたものが5条の許可ということになります。
 

ただ,この許可はそう簡単に出るものではなく,特に5条の許可についてはやむを得ない事情がないと基本的には許可がされません。例えば,農地の所有者の子どもが家を建てようと思っているが,他の土地は無く,他の土地を取得するような費用も無いので,やむを得ず農地を宅地に変更したいというような場合になります。 
 

3 許可の例外

 

原則として上記のようにハードルが高い許可を取る必要があるのですが,許可が無くても良い場合があります。大きく分けて以下の2種類があります。
 


(1)市街化区域の場合

土地が所在する場所が市街化区域に指定されている土地の場合は,農業委員会に「宅地に変えますよ」という届出をすれば良いことになっております。許可だと農業委員会の判断を仰ぐことになりますが,届出は単に届出書を出せば良いだけですので,ほぼ無条件だと思ってもらって良いと思います。



 

(2)許可を必要としない原因等の場合

売買や贈与などで第三者に譲渡する場合は許可が必要になるのですが,許可が不要な原因があります。

例えば,相続の場合は許可は必要ありません。これは農地の所有者が亡くなることによって,民法の規定に基づき相続人が相続するのであって,農業委員会の判断が入る余地が無いからです。なので,相続人がまったく農業をやっていなくても農地を相続することはできます。
 

また,相続人と同じ権利義務を有することになる包括受遺者についても許可は必要ありません。しかし,相続人以外の者が特定遺贈として農地をもらい受ける場合は許可が必要になるので注意が必要です。
 

さらに,時効取得や共有持分の放棄なども農地法の許可は必要ありません
 

加えて,農地を担保として取る場合(抵当権設定)についても農地法の許可は不要です。というのは,あくまで担保に取るだけであって,実際に使っているのは元の所有者であって,現状と何も変更が無いからです。 
 

4 まとめ

 

上記を大まかにまとめると以下のとおりとなります。

【原則】

農地の名義を変えるためには許可が必要
 

【例外】

①市街化区域であれば許可は不要

②相続,包括遺贈,時効取得であれば許可は不要

③抵当権設定であれば許可は不要
 
 

つい先日も,借金が返せないということで,弁済してもらう代わりに債務者が所有する農地の名義を変えたい(代物弁済)というご相談があったのですが,こちらは農地法の許可が必要であり,かつ,許可が得られる見込みはないため,抵当権設定登記にしておくといった事例もあります。
 

農地は,当事者の思い通りに処分できないことの方が多いので,お近くの司法書士・行政書士にご相談ください。

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8月 07 2020

夏季休業について

 

当事務所では,下記の期間について夏季休業とさせていただきます。休業期間にお問い合わせいただきましたメール等につきましては,8月17日以降順次回答させていただきます。

 

8月12日18時まで  通常業務

 

8月13日から8月16日まで 夏季休業

 

8月17日9時から  通常業務

 

以上,よろしくお願いいたします。

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7月 02 2020

法務局における自筆証書遺言書保管制度について

相続手続を行う際に,「遺言書を作成しておいていただければ,こんな争いにはならずに済んだのに…」と思うことが何度もあります。

また,遺言書を作成されるとしても,可能な限り自筆証書遺言ではなく公正証書遺言をお勧めしており,当事務所で関与させていただいているものでもほとんどが公正証書遺言となります。
この遺言書について,新しい制度が今月10日(令和2年7月10日)から始まりますので,本日はこの点についてまとめてみたいと思います。 
 

 

1 遺言の種類

 

遺言書の作成に関しては,何種類か作成手段があるのですが,一般的には上記のとおり自筆証書遺言または公正証書遺言の二択になると思います。 
 

(1)自筆証書遺言

文字通り,自らの手で遺言書を作成するものです。
一部手書きではなくても良い部分がありますので,基本的にはすべて自筆で記載していただく必要があります。
自筆証書遺言のメリット及びデメリットは以下のとおりです。 

【メリット】
・第三者の関与が必要ではないので,すべて自由に決め,遺言書の存在自体も隠すことができます。
・紙に書くだけでできてしまいますので,ほとんど費用がかかりません

【デメリット】
・遺言書の存在が知られぬままの可能性があります。
紛失,改ざん,破棄等のリスクがあります。
・家庭裁判所において検認手続が必要であり,相続人全員に家庭裁判所から通知が行きます。
・法律に定められた方式で遺言書の作成をしなければなりませんので,せっかく作成した遺言書が無効になる恐れがあります。
 

(2)公正証書遺言 
 

遺言書の内容を公証人という役人さんに伝え,公証人が遺言書を作成するものです。基本的には作成したい内容が伝えられれば良いので,ご自身で多くの文章を書くということはありません(ただし,署名押印は必要になります。)。

公正証書遺言のメリット及びデメリットは以下のとおりです。 

【メリット】
・遺言書がどこにあるのか分からなくても,公証役場において検索することができます。
・原本が公証役場に保管されますので,紛失,改ざん,破棄等のリスクがありません
・家庭裁判所での検認手続が不要であり,すぐに遺言書の内容に書かれた手続を進めることができます。
・公証人という法律の専門家が作りますので,無効になる可能性が低いです(公証人の多くは,元裁判官,元検察官です。)。
 

【デメリット】
・ご自身以外に,公証人や証人2名が手続に関与しますので,一切第三者に知られずに作成することはできません

・基本的には公証役場を訪ねる必要があります(別途費用がかかりますが,出張してもらうこともできます。)。

・遺産の額に応じて費用がかかります。安くても数万円,高いと数十万円の費用がかかります。
 

(3)手続の比較


手続の費用については,明らかに自筆証書遺言の方が安上がりですので,費用を最優先とされる場合は自筆証書遺言の方が良いということになります。
しかし,自筆証書遺言は,紛失,改ざん,破棄のリスクに加えて,そもそも遺言書自体が無効になってしまうリスクがありますので,弁護士や司法書士といった法律専門職の立場としては,費用がかかったとしても,確実に遺言書どおりに進めることができる公正証書遺言をお勧めしているのが実情です。 
 

2 新しい制度

 

ここからが今回のメインです。

上記の自筆証書遺言と公正証書遺言の「良いとこ取り」という感じの手続が始まります。それが,法務局における自筆証書遺言書保管制度です。
 

(1)手続の概要

ご自身で自筆証書遺言を作成していただきますが,その遺言書の原本を法務局が保管するうえ,遺言書自体をデータ化して保管してくれる制度です。原本は常に法務局に保管され,何らかの手続を行う際には,遺言書の謄本等を交付してもらって手続を進めることとなります。
 

(2)メリット

・公正証書遺言ほどのレベルではないものの,民法上の形式的な要件が備わっているかの確認はしてくれますので,有効な遺言となる可能性が高くなります。

検認手続が不要です。

・法務局の保管手数料が3900円と,公正証書遺言と比べた場合では費用が格段に安いですし,毎年の保管料などもかかりません。

・法務局が保管しますので,紛失,改ざん,破棄等のリスクはありません(現物は50年,データは150年保管されます。)。

・公正証書遺言と異なり,証人は不要です。

・遺言書の保管について検索することができます
 

(3)デメリット

・公証人のように出張してもらうことができませんし,弁護士や司法書士を代理人に選任して手続をすることもできず,必ずご自身が法務局に行かなければなりません

・意思能力の有無などを厳格に確認しているわけではないので,公正証書遺言よりは無効になる可能性がある。
 

(4)まとめ

以上のとおり,メリットの方が目立ちます。特に,検認不要,費用が安い,紛失等のリスクなし,という点が大きいと思います。

一方で,必ずご本人が自筆で遺言書を作成したうえで法務局を訪ねる必要がありますので,ご記入が難しい方や入院等で外出が難しい方については,この手続は使いにくいと思います。特に自筆証書遺言の場合は,かなり書いていただく量が多くなってしまいますし,有効性という点では公正証書遺言の方が優れていますので,特にご希望が無いようであればこれからも公正証書遺言の方をお勧めするかと思いますが,自筆証書遺言の作成をお考えの方であれば,併せて法務局による自筆証書遺言書保管制度をご利用いただくことはメリットが盛りだくさんですので,ぜひお勧めしたいと思います。

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4月 24 2020

ご相談について(新型コロナウイルス感染症対策等)

新型コロナウイルス感染症の蔓延により,皆様のお仕事,生活に大変な支障が出ていることと思います。

一刻も早い,終息を願ってやみません。
 

さて,当事務所のご相談の対応方法について,新型コロナウイルス感染症対策も踏まえてまとめさせていただきましたので,事前にご確認いただければと思います。
 

 
 

1 お電話でのご相談について

 

今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延に関係なく,当事務所では簡単な内容であればお電話でも回答させていただいております。

この「簡単な」というのは,司法書士であれば誰に聞いても同じ回答ができるようなものであり,具体的には以下のような内容です。

・一般的な訴訟の流れ

・登記に必要な書類

・不動産売買に必要な書類

・概算での費用

となります。
 

したがいまして,ご相談者の個別具体的なご相談については,関係書類を拝見していない以上正確な回答をすることが困難であり,また,ちょっとしたことで結論が正反対になることもありますので,お電話での回答はしておりません

なお,お電話である関係上,相談料などの費用はかかりません。 
 

2 面談でのご相談について

 

(1)当事務所の対策

直接お会いする以上,お互いに感染するリスク,感染させてしまうリスクが生じることとなります。これを完全にゼロにすることはできませんが,当事務所では以下のとおり対策をとらせていただきます。
 

①アルコール消毒

当事務所にお越しいただいた際にアルコールスプレーでの消毒をお願いいたします。アルコールスプレーは当事務所で用意しております。
 

②マスクの着用

当事務所の司法書士,スタッフはマスクを着用しております。ご相談にお越しになる際はマスクを着用のうえお越しいただきたいと思いますが,もしお手元にない場合は当事務所のマスクをお渡しいたします(個包装のサージカルマスクです。)
 

③発熱や咳が出る場合

当事務所の司法書士やスタッフに発熱,咳等がある場合は,万全を期すために事務所を休業することがあります。その際は至急連絡させていただきますので日程の調整をお願いいたします。

また,ご相談に来られる際に,上記同様発熱や咳等がある場合は,申し訳ございませんがキャンセルをお願いいたします。その場合,別日を優先的に予約させていただきますので,体調を整えられることを最優先にしてください。
 

④アクリル板の設置

飛沫感染を可能な限り避けるため,応接室にはアクリル板によるパーテーションを設置いたします(現在発注済みであり,納品待ちです。)。
 
※5/11 納品され,設置いたしました。

 

⑤ペットボトルのお茶をお出ししております

感染防止のため一時期お茶をお出ししておりませんでしたが,現在はこちらでペットボトルのお茶を準備しております。なお,お出しいたしましたお茶についてはお持ち帰りをお願いいたします。
 

(2)ご予約について

当事務所の司法書士が裁判や不動産の売買手続等で事務所を不在にしていることが多々あります。お手数をお掛けいたしますが,事前にお電話やメール等でご相談のご予約をお願いいたします
 

(3)ご相談の内容について

ご相談いただいたものについては分かる範囲については原則としてお答えしております。ご依頼いただかないからと言ってご相談への回答を控えることはありません。しかしながら,下記のご相談については回答ができません。
 

①司法書士,行政書士,宅建業のご相談の範囲を超えるご相談

→ 例えば税金のご相談は税理士法において税理士以外の者が回答すると犯罪になってしまいますので,一般的な内容を除き当事務所では回答ができません。
 

②当事務所の業務そのものに関するご質問

→ 例えば具体的な登記申請書の書き方,訴状の書き方,証拠書類の請求方法などです。このような書類を作成したり,書類を集めることによって報酬をいただくことが当事務所の業務ですので,その具体的な内容を回答することはできません。
 

(4)費用について

初回に限らず,また相談時間に関係なく,当事務所でのご相談は無料です。
 
 

以上を踏まえて,ご相談いただけますと幸いです。

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4月 01 2020

令和2年4月1日から施行される改正民法(相続分野)

本日付で施行される民法改正があります。相続分野に関しては第2弾となり,債権法分野においても大きく変わる点があります。 

→ 第1弾(遺産分割に関するもの)

→ 第1弾(遺言・遺留分に関するもの)

→ 第1弾(その他)

→ 債権法分野
 

今回は,本日付で施行される相続法分野の改正についてまとめたいと思います。

 

1 配偶者居住権等

  
(1)配偶者居住権とは

配偶者居住権とは,簡単に言うと,「配偶者(例えば夫)が亡くなる前から住んでいた自宅について,自宅の所有者である配偶者(夫)が亡くなった後,妻がその自宅を相続せず他の相続人が相続したとしても,妻はその自宅に住むことができる権利。」ということになります。
 

(2)具体例

夫Aさんが亡くなり,相続人は妻Bさんと,長男Cさんの2人だとします。また,Aさんの遺産は自宅3000万円,その他の預貯金等が1000万円の合計2000万円だとします。BさんとCさんとで話が成立し,例えばCさんが「お母さんが全部相続していいよ」と言って全部Bさんが相続されるのであれば配偶者居住権の出番はありません。
 

しかし,BさんとCさんとの間で合意ができないとなると,法定相続割合で分けざるを得ず,最悪の場合は自宅を売却してお金を分けるということにもなりかねないことから,Bさんは住むところを失ってしまう可能性が出てきます。

そこで,今回の改正により自宅を「住む権利」と「その他の権利」に分け,「住む権利」を配偶者居住権としました。また,住む権利とその他の権利に分けたことにより,自宅の価値も分かれることになり,例えば3000万円のうち,「住む権利」部分が1500万円,「住む権利以外の所有権」が1500万円というようになります。
 

とすると,Bさんは預貯金500万円と自宅の「住む権利(配偶者居住権)」,Cさんは預貯金500万円と自宅の「住む権利以外の所有権」を相続し,平等に相続できます。
 

なお,住む権利以外の所有権は,住めないだけで売買等は自由ですので,いわゆるオーナーチェンジのような形でBさんの承諾なく,Cさんは第三者に売却して現金を得ることができます(購入した第三者は所有権は取得するものの住むことはできません。ただし,将来的に配偶者居住権が消滅した後は,完全な所有権を取得できますので,時間はかかりますが安く所有権を取得できるというメリットがあります。)。
 

(3)配偶者居住権の要件や内容等

配偶者居住権は,以下の要件を満たして初めて設定することができます。
 

①亡くなった配偶者の所有物であること。

→ 自宅がAさん名義またはAさんとBさん名義の共有であることが必要です。しかし,AさんとCさんの共有になっていた場合は配偶者居住権を設定することはできません。また,法律上の配偶者である必要があり,内縁関係(事実婚)では認められません。
 

②遺産分割または遺贈により,配偶者居住権を設定すること。

→ BさんとCさんとの話し合いで配偶者居住権を設定することができますし,Aさんが亡くなる前に配偶者居住権を設定する旨の遺言書を作成して,配偶者居住権を設定することもできます。ただし,遺贈の場合は,遺言書を作成した日付が本日以降である必要があります。
 

③登記をすること(対抗要件)

配偶者居住権を設定した場合には,その旨の登記をしなければ第三者に配偶者居住権を対抗することができません。自宅の所有者は登記をする義務を負いますので,速やかに登記を備えた方が良いです。
 
 

配偶者居住権が設定されると以下のような効果があります。
 

①配偶者が一定期間無償で居住することができます。

→ 一定期間については,期間を定めても良いですし,配偶者が亡くなるまで無期限でも構いません。また,住むことについて,賃料のような対価を支払う必要もありませんが,建物に関する固定資産税や修繕費などは負担しなければなりません(土地の分については土地の所有者が負担します。)。
 

②売却できない

→ 配偶者居住権は「配偶者」という地位に基づいて認められた権利ですので,Bさんは配偶者居住権を第三者に売却することはできません。一方,所有者であるCさんは所有権を第三者に売却することは可能です。
 
 

配偶者居住権は以下のような場合に消滅します。
 

①配偶者が死亡した場合
→ 配偶者のみに認められた権利であるため,配偶者の相続人などが相続することはできません。

②配偶者が自宅の所有権を取得した場合

→ 所有権を取得したのであれば配偶者居住権を認める必要がないからです。
 

③自宅が滅失した場合

→ 取り壊した場合など,自宅が物理的に無くなってしまうと権利も消滅してしまいます。
 

④所有者からの消滅請求

→ 配偶者居住権が認められていると言っても自己所有ではないので,賃貸借契約と同様にルールを守って使用しなければなりませんので,違反した場合には自宅の所有者が配偶者居住権の消滅を請求することができます。 
 

2 配偶者短期居住権

 
(1)配偶者短期居住権とは

配偶者居住権が「短期」に限り認められるものです。
上記の遺産分割協議についてはすぐにまとまるケースもあれば数か月,場合によっては数年かかるケースもあります。また,Aさんが自宅について配偶者居住権を設定せずに第三者に遺贈してしまうこともあります。
 

このような場合に,Aさんが亡くなった時点でBさんは自宅に住む権利が当然に認められるわけではなくBさんが途方に暮れてしまいますが,今回の改正により,要件を満たせば短期間に限り,自動的に居住できる権利が認められることとなりました。
 

(2)配偶者短期居住権の要件
 

以下のすべてを満たしたときに,自動的に認められます。

①配偶者(Aさん)が所有していた自宅であること

②配偶者が亡くなったときに,残された配偶者(Bさん)が無償でその自宅に居住していたこと

なお,当然に成立する権利であるため登記は不要ですし,そもそも登記する方法もありません。
 

(3)配偶者居住権の内容

①残された配偶者(Bさん)は,最低でも6か月間は無償で居住し続けることができます。

ただし,以下の場合は6か月を超えても居住し続けることができます

②自宅が遺贈されていない場合は,遺産分割協議がまとまるまで

③自宅が第三者に遺贈されている場合は,受贈者から退去の請求(配偶者短期居住権の消滅請求)を受けた日から6か月経過するまで

 

(4)配偶者短期居住権の消滅

以下の場合に,配偶者短期居住権は消滅します。

①上記所定期間が経過した場合

②配偶者が所有権または配偶者居住権を取得した場合

その他,配偶者居住権と同様に,配偶者自身が亡くなったり,建物自体が滅失したとき,消滅請求によっても消滅します。
 
 

果たしてどこまで使われる制度なのか分かりませんが,配偶者短期居住権については当事者の合意や登記などは一切不要ですので,覚えておいて損は無いと思います。

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