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1月 18 2022

亡くなった方の遺産や負債の調査

当事務所では、不動産の相続手続のみならず、預貯金や株式の相続手続、さらには負債の調査なども行っております。この点、専門家にご依頼いただければ、基本的にはすべて進めさせていただくのですが、ご自身で行う場合はどのように調べて良いか分からないことも多いかと思います。
 

そこで、今回は財産や負債の調査についてまとめてみたいと思います。なお、完璧にすべての財産を探し出す方法は存在しませんのでご注意ください
 

 
 

1 不動産

 

まず、一番大きな財産である不動産ですが、所有しているかどうかは基本的には法務局にある登記で確認することになります。

ただ、いわゆる登記簿謄本である登記事項証明書を請求する場合、正確な地番等が必要であり、ご自宅であればまだしも別荘だったり、田畑などの場合には番地が分からないことがあります。そのような場合、各市町村役場の税務課に対し、亡くなった方(被相続人)の「名寄帳」(なよせちょう)「名寄証明書」(なようせしょうめいしょ)を請求すると良いと思います。
 

なお、必ずしも「名寄(なよせ)」という名称ではなく、例えば名古屋市だと「課税明細書」という名称になりますが、役所の担当者に「名寄が欲しい」とお話しいただければ分からない人はいないと思います。

この名寄は、端的に言えば、「被相続人が当該市町村内に所有している不動産の一覧表」です。名寄には地番や家屋番号等が記載されていますので、こちらを基に登記事項証明書を取得していただければ、正確な所有関係が分かります。ただ、あくまで「当該市町村内」という限定がありますので、日本全国色んな場所に不動産をお持ちの場合は、それぞれの市町村で請求をしなければならず、まったく手掛かりが無いような市町村に不動産をお持ちの場合は、見つからないということもあり得ます。
 

さらに、この名寄は課税される不動産についてしか載らないことが多いため、非課税の不動産だと名寄でも見つからないこともあります。 
 

2 預貯金

 

預貯金の有無については、残念ですが全金融機関の一覧表などは存在しないため、資料が手元に無ければ手あたり次第調査をするしかありません
 

ただ、金融機関次第ではありますが、口座の有無についてだけであれば電話で聞いても答えてくれるところもありますし、1つの支店に聞くと全支店の口座の有無が分かりますので、まったくどうにもならないものではありません。
 

通帳等の資料があれば問題無いのですが、遠方に居住している兄弟の相続などのケースにおいてはまったく分からないということもありますので、被相続人の最後の住所地の近隣にある全金融機関を周って調査をすることも多いです。過去にご依頼いただいた件では、そのような調査をして相続人の方がまったく認識していなかった金融機関で1000万円以上の預金を見つけたこともあります。 
 

3 株式

 

証券保管振替機構において、個々の株式の銘柄までは分かりませんが、どこの証券会社に口座を持っているかということを調査することができます
 

この調査により証券会社名が分かりますので、あとは個々の証券会社において相続人から残高証明書を請求すれば個々の株式の銘柄等が判明します。

→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(証券保管振替機構) 
 

4 生命保険

 

生命保険も上記の株式と同様に、個々の保険の内容までは分かりませんが、どこの生命保険会社に契約があるかについて、生命保険協会において調査をすることができます。調査を請求すると下記のような書類が送付されてきますので、あとは個々の保険会社に電話で尋ね、保険金請求手続を進めることになります。
 

→ ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合(生命保険協会)


 

5 借金

 

相続においては、上記のようなプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。

この点、一般的な金融機関、カード会社、消費者金融などは信用情報機関に登録する制度がありますので、当該信用情報機関に照会をすることで借金の状況を調べることができます。ただし、あくまで信用情報機関に登録しているものだけしか分からないため、個人間のお金の貸し借りなどについて調査する方法はありません

 

一般の金融機関 → 全国銀行個人信用情報センター

カード会社関係 → CIC

消費者金融関係 → 日本信用情報機構 
 

6 遺言

 

遺産そのものではありませんが、被相続人が遺言を作っていたかどうかを調べることができる場合があります。
 

まず、公正証書で遺言書を作成されている場合は、全国どこの公証役場でも被相続人が作成した遺言の有無についての検索ができます。ただし、昭和64年1月1日以降に作成されたものに限定され、さらに遺言者が130歳を迎える年になると削除されてしまいます。

→ 遺言検索(加古川公証役場)
 

また、自筆証書遺言で作成されている場合で、法務局の保管制度を利用している場合に限り、全国の法務局において「遺言書保管事実証明書」の請求をすることで、遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。

→ 自筆証書遺言書保管制度(法務省)
 
 

以上のような方法で、被相続人の遺産を調査していただき、相続手続を進めてください。また、最初に記載のとおり、当事務所では不動産の相続登記のみならず、遺産全般の相続手続も行っておりますので、ぜひご相談いただければと思います。

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12月 28 2021

年末年始の業務について

本日をもって今年の業務がすべて終了となります。今年もご依頼いただきましてありがとうございました。
大変ありがたいことに本日も贈与の手続を進めさせていただき、年末最終日まで忙しくさせていただきました。

 
 


 
 

年末年始の業務時間は下記のとおりとなり、12月29日以降にご連絡いただきましたメールについては、1月4日以降に順次返信させていただきます
  
 
 

令和3年12月28日(火)18時まで 通常営業
 

令和3年12月29日(水)~令和4年1月3日(月) 冬期休業
 

令和4年1月4日(火)9時から 通常営業
 
 

以上、よろしくお願いいたします。

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12月 14 2021

相続登記の義務化の施行日が決まりました。

以前より相続登記等が義務化される旨をお知らせしておりましたが、このうち相続登記については令和6年4月1日からとなりました。
 

→ 法務省サイト
 

→ PDF
 


 
 

以下、相続登記等の義務化について大事な部分をまとめておきます。 
 

(1)義務化されたのは土地のみ

 

建物は対象外です。なので、土地はAさん所有、その土地上にBさんの建物が建っていたとして、Bさんが亡くなったとしてもBさんの相続人は建物の相続登記を行う義務はありません。ただ、引き続き相続人等が利用される場合は相続登記をされた方が良いかと思います。

 
 

(2)一定期間内に登記申請が必要

 

相続登記は土地の所有者が亡くなってから(自分が相続人であることを知った時から)3年以内にしなければなりません。さらに、住所移転や氏名変更についても変更してから2年以内に変更登記をしなければなりません。相続登記だけではなく住所や氏名が変わった場合でも登記が必要ですので注意が必要です。まだまだ相続とは無関係という方も住所変更等については大きな影響があります。

 
 

(3)住所変更等については未定

 

上記のとおり令和6年4月1日から施行されるのは相続登記のみとなっており、住所変更等については未定ですが遅くとも令和8年までには施行されることとなっております。

 
 

(4)上記に違反した場合は過料に処せられる可能性があります

 

義務に違反して登記を放置していた場合、相続登記については10万円以下、住所変更等は5万円以下の過料に処せられる可能性があります。ただし、あくまで可能性があるだけであり、違反したとしても必ず課されることが確定している訳ではありません。

 
 
 

最近、将来の義務化に備えて、住所変更だけのご依頼をいただくことが増えてきました。ご自宅であればあまり影響は無いと思いますが、別荘や実家など、居住地ではない不動産については変更登記がされていないことが多いため、時間的に余裕があるうちに進めていただければと思います。

以上、相続登記等の義務化についてでした。

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8月 31 2021

成年後見人選任によるメリット・デメリット

先日、遺産分割協議のために成年後見人を選任する手続についてご依頼いただき、私自身が家庭裁判所から成年後見人に選任されて就任いたしました。今後は、原則としてはご本人がお亡くなりになるまで私が成年後見人といてご本人の代理人として各種契約や意思表示を行ったり、財産管理を行っていくことになります。
 

さて、この成年後見人についてですが、世間的にはあまり良くない印象を持たれていることもあり、今回は成年後見人選任に関するメリットやデメリットについてまとめたいと思います。
 

 
 

1 成年後見人とは

 

認知症や精神疾患等により、ご自身で判断することができなくなった場合に、その代理人等として選任される者となります。

あくまで認知症や精神疾患等の意思判断に関わる力が衰えてきていること理由で無ければなりませんので、「交通事故で手が動かなくなってしまい筆記ができなくなった」、「足腰が弱くなってしまって銀行等に行けなくなった」等の身体的な理由で成年後見人等を選任してもらうことはできません
 

また、意思判断に関する力も人によって程度差がありますので、比較的軽い場合は補助、その次が保佐となり、一番重い場合が成年後見となります。

この点は、医師の判断になるため私どもでは明確な判断はできませんが、補助や保佐に該当する方の場合は、あまり申立てをする必要性が無いこともあり、結果としては成年後見のケースが一番多いと思います。 
 

2 成年後見人等の選任が必要になる場合

 

不動産の売買や贈与、相続や遺言など、こちらにまとめておりますので、こちらをご覧いただければと思います。

→ 成年後見手続が必要な場合 
 

3 成年後見人選任のメリットとデメリット

 
 

(1) 後見人選任の4大デメリット
 

成年後見に関するご相談をいただいた際に、必ず私は4大デメリットについて説明させていただいております。成年後見人の手続をご検討されている方は、当該手続のみでの選任をお考えの方が多いため、こちらの説明をすることで実際に手続を中止される方も多くいらっしゃいます。
 

①必ずしも候補者が選ばれるとは限らない。

申立てをする際に、候補者を立てることができ、「父親の成年後見人として長男を候補者として申立てをする」ということが可能です。

ただし、必ずしも候補者が選任されるとは限らず、まったく無関係な弁護士や司法書士等の専門職が選任されることもあります。候補者が選任されない場合としては、「父親の管理すべき財産がかなり多い」、「推定相続人(兄弟間など)で意見の相違がある」、「候補者が成年後見人としての資質が心配(金銭管理が弱い等)」などがあります。

さらに、候補者が選任されなかったことを理由として申立て自体を取り下げることはできませんし、成年後見人を別の人にしてほしいというような異議申し立てもできません

なお、一般的に、弁護士や司法書士を候補者とした場合には、当該専門家が選任されることが多く、少なくとも私が候補者として申立てをしたものについては全件私が選任されております。

また、このような場合に備えて、任意後見契約を締結しておくことで、事前に後見人になる方を決めておくという方法も考えられます。
 

②成年後見人は一生続く
 

上記のとおり、成年後見人の選任は売買のためだったり、遺産分割のために申し立てを行うことが多いかと思いますが、その手続が終わっても成年後見人が解任されるわけでは無く、その後もずっと続きます。

例外的に、成年後見人が横領などを行って解任、高齢や病気等で辞任という成年後見人側の事情で変わることや、ご本人さんの能力が回復して成年後見人が必要無くなるということはあり得ますが、そうでない限りはご本人さんがお亡くなりになるまでずっと続くことになります。
 

③成年後見人の費用がかかる
 

成年後見人等が専門職か親族かに関係なく、成年後見人等は家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立てることによりご本人さんの財産から報酬を受領することができます。報酬額は家庭裁判所が一方的に決めており、その金額に対して異議申し立てをすることはできませんので、私どもとしてもどのような基準で報酬が決められているのかよく分からない部分がありますが、いずれにしてもそれなりの費用がかかります。経験上、売買や遺産分割等が無く、平和的に1年過ごした場合で年額概ね20万円台から30万円台になることが多いと思います。

なお、勘違いされている方もいらっしゃるのですが、報酬は専門家に限らず親族の方でも受領することは可能です。ただ、家庭裁判所に報酬付与の審判の申立てをして、実際に報酬を請求されている方は多くない印象です。
 

④申立てに関する費用は申立人負担
 

上記のとおり、成年後見人が選任された後については、ご本人さんの財産から報酬が支払われますが、申立てに関する費用は申立人の方にご負担いただくこととなります。
 
 
(2)後見人選任のメリット
 

①財産が守られる
 

正直なところ、親族の方にとってはデメリットになるかもしれませんが、成年後見人は家庭裁判所(場合によっては後見監督人等)の監督を受けつつ、ご本人さんの財産を管理しますので、不当に失われることは少ないです。例えば、現金については通常の預貯金等で管理することとなり、株式投資や不動産投資などにお金が回ることはありません

一方で、相続対策などで生前贈与することも基本的にはできませんので、そういう意味で親族の方にとってはデメリットかもしれません。

あくまで、成年後見制度はご本人の財産を守る制度であって、親族のための制度では無いからです。
 

②様々な手続は後見人等がやってくれる
 

上記の売買や遺産分割等は当然のこと、病院での手続や施設との契約等についても成年後見人が代理で行うこととなります。

ただし、あくまで契約等を行うだけであって、現実的な生活援助や介護などを行うことはできません。 
 

4 成年後見人を非難するご意見について

 

ニュースサイトなどで、親族の方のご意見として成年後見人を非難するコメントをよく拝見します。

そもそも成年後見人等の横領等の犯罪行為は言語道断ですので、非難どころか刑事・民事の両面から徹底的に糾弾していただくべきかと思います。また、成年後見人がまったく仕事をしていないということであればもちろん非難していただいて良いかと思いますし、場合によっては解任の申立てをしても良いかと思います。

一方で、実際には上記3(2)①での非難が多いように思います。つまり、親族の方がご本人の方の財産を使えなくなることでの対立が多いと思います。

当事務所では幸いにして親族の方と対立したことは一度も無いのですが、過去には、無断でご本人の財産から親族の方が引き出していた預金については全額返還するようお願いして戻してもらいましたし、親族の方がご本人のためと思って色んな契約をしてきて、その請求書だけ後見人に送られてきたこともありましたが、ご本人さんにとって必要性が無いことを説明したうえで支払いを拒否し、解約してもらったこともあります。

やはり、この点については親族の方とも密に連絡を取り合って、相互に信頼関係を深めていくしかないと思います
 
 

以上、成年後見人等の選任に関するメリット・デメリットでした。

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6月 23 2021

相続人の一部の方が行方不明の場合

先日、相続手続を進める中で、相続人のうちの一部の方が行方不明であることが発覚いたしました。
 

件数としてはあまり多くはありませんが、当事務所では数年に一度程度の割合で行方不明の方がいらっしゃるケースがあり、特に被相続人が高齢の方でお子さんがいらっしゃらず、兄弟姉妹が相続人になるケースで比較的見かけます
 

今回は、相続人の一部の方が行方不明の場合に執りうる手続についてまとめたいと思います。
 
 

 
 

1 遺産分割協議の前提

 

Aさん(父親)がお亡くなりになり、相続人としてBさん(母親)及びお子さん3名(C~Eさん)の合計4名がいらっしゃったとします。
 

この場合、必ず相続人4名全員で協議する必要があり、協議がまとまった場合には遺産分割協議書を作成して、相続人全員がご署名とご実印でのご捺印を行います(印鑑証明書も必要となります。)。
 

例外的に、お子さんの中に未成年者がいらっしゃる場合は、母親であるBさんとの間で利益相反関係が生じますので、例えばEさんが未成年者である場合は、Eさんに関する特別代理人を家庭裁判所に選任してもらい、特別代理人がEさんに代わって協議に参加したり、ご署名等をされることとなります。
 

また、お子さんであるCさんがすでに亡くなっている場合、もしCにさらにお子さん(Aさんからすれば孫)がいらっしゃるようであれば、Cさんに代わって、そのお孫さんが協議に参加することになります。
 

一方、お子さんであるDさんは、すでに成人であるものの自由奔放に生活されており、何年も家に帰っておらず、連絡も取れないような状態が続いているとします。
 

この場合、Dさんは成人ですので特別代理人という話は出てきませんし、亡くなっている訳ではありませんのでDさんの相続人が協議に参加することもできません。となると、事実上、遺産分割協議を進めることができませんので、Aさん名義の遺産についてはどうすることもできないということになります。
 

なお、預貯金については、一部のみ払い戻しをすることができますが、それでも解約して全額を払い出すことはできません。

→ 一部の相続人からの預金の払い戻し
 

ということで、相続人の一部の方が行方不明となるとかなり困ってしまいます。
 

そこで、このような場合にいくつか手続が用意されています。 
 

2 不在者財産管理人の選任及び権限外行為許可

 

民法25条に、「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。」と規定されています。
 

端的に言えば、もともと住んでいた場所に容易に帰ってくる見込みがない方については、家庭裁判所は利害関係人の請求によって管理人を選任してもらうことができる、ということになります。
 

この、「容易に帰ってくる見込みがない」という点については、単に数日行方不明というだけでは足りず、郵便物を送付したもののの「宛所に尋ね当たらず」で返送されてくるとか、住民票が役所の判断によって消除されているなど、それなりに行方不明であることを証明しなければなりません。

→ 職権消除について
 

また、不在者財産管理人の権限は、あくまで財産を管理するだけであるため、遺産分割協議などの財産処分行為をすることができません
 

そこで、不在者財産管理人が遺産分割協議を行う場合は、裁判所に対して、本来の権限外ではあるものの例外的に遺産分割協議することの許可を得る必要があります(民法28条)。その際に、遺産分割協議書の案を提出する必要があり、加えて、不在者は最低限法定相続分は確保しなければ裁判所の許可が出ませんので、事実上は、不在者財産管理人が自由に判断する余地はあまりないということになります。
 

そして、裁判所から権限外行為許可が出ましたら、それに基づく遺産分割協議を正式に成立させ、あとは通常の相続のときと同様に名義変更等を進めていくことになります。
 

なお、その後にご本人が帰ってきた場合は、不在者財産管理人はご本人に財産を引き継ぎ、管理人の業務は終了することになります。

手続に要する期間は、3か月から半年程度となりますが、ご本人さんの不在について追加の調査が必要な場合はさらに時間がかかることがあります。 
 

3 失踪宣告の申立て

 

上記の不在者財産管理人は、本人が帰ってくるまで本人に代わって財産の管理を行う人であるため、基本的にはご本人が帰ってくるのを待つということになります。
 

一方、失踪宣告は、ご本人が(法律上)亡くなったとみなして、ご本人に対する相続手続を開始する手続となります。上記の例でいうと、Dさんに失踪宣告がされた場合には、Dさんの配偶者やお子さんがDさんに代わってAさんの相続手続に関与するとともに、Dさん自身の相続手続も進めることになります。
 

この失踪宣告は大きく分けて以下の2つの種類があります。
 

(1)普通失踪

例えば、いつもどおり会社に出勤したものの、その日の夜に家に戻ってこず、その日から行方不明という場合です。このような状況が7年以上続いた場合は家庭裁判所に失踪宣告の申立てができ、行方不明から7年が経過した日に亡くなったとみなされます。

この点、上記の不在者財産管理人の選任申立ては特段行方不明期間に関する条件はありませんが、普通失踪は7年という要件がありますので、相当長期間行方不明で無いと失踪宣告は進められないということになります。
 
 

(2)特別失踪
例えば、家族でフェリーに乗って旅をしていたところ、誤ってフェリーから落下してしまいました。その後、警察や海上保安庁などが捜索したものの見つからず、捜索が打ち切られたとします。

このような場合、残念ながらお亡くなりになった可能性が極めて高いため、その場合は、落下したときから1年経過後に失踪宣告の申立てが可能となります。また、亡くなったとみなされる日は1年経過後ではなく、落下した日に亡くなったとみなされます。

フェリーからの落下という事故はあまり無いかもしれませんが、災害でも適用されますので、例えば10年前の東日本大震災によって現時点でも行方不明になっていらっしゃる方や長野県の御嶽山の噴火によって行方不明になっていらっしゃる方も同じように失踪宣告の手続を行うことが可能となります。
 
 

上記の普通失踪と特別失踪によって法律上の効果に違いは無く、いずれの場合はご本人について相続手続が開始することになります。
 

なお、失踪宣告がなされたとしても、現実的にはご本人さんはご存命でどこか遠い地で生活されているかもしれませんが、その際の法律関係は特に問題なく通常どおりとなります。例えば、コンビニでお金を払っておにぎりを買ったとしても、その売買が無効になるということはありません。ただ、自動車や不動産を購入する際には住民票や印鑑証明書等が必要となりますので、現実的には購入することは難しいと思います。
 

また、ご本人が、自分に対する失踪宣告がされていることに気づいた場合は、その取り消しを家庭裁判所に申し立てて失踪宣告の効力を取り消してもらうことができます。これにより、法律上、一度は亡くなったとみなされたものの、生き返ることになります。逆に言えば、失踪宣告の取り消しがされない限りは、ずっと亡くなったものとみなされたままということになります。
 

失踪宣告がされるまでの期間としては、官報公告等が必要になる関係上、1年前後の時間がかかってしまいます。 
 

4 手続に要する費用

 

当事務所では上記手続について、以下のとおりとさせていただいております。
 

①不在者財産管理人の選任申立て

16万5000円(税別15万円)+実費(1万円~2万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 

②権限外行為許可

3万3000円(税別3万円)+実費(3000円程度)

※ただし、当事務所の司法書士が不在者財産管理人に就任している場合は、こちらの費用はかかりません。
 

③不在者財産管理人報酬

基本的には不在者の財産から受領いたしますので、依頼者の方に費用のご負担をお願いすることはありません

※ただし、不在者の財産から賄えない場合は、裁判所の決定により30万円~50万円程度の予納金を準備するよう指示される場合があります。
 

④失踪宣告の申立て

22万円(税別20万円)+実費(1万円程度)

※ただし、調査のため遠方への出張等が必要になる場合は、交通費や宿泊費等が必要になる場合があります。
 
 

以上、相続手続において相続人の一部の方が行方不明になっている場合でした。

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4月 21 2021

相続登記義務化法案が成立しました。

本日(令和3年4月21日)に、参院本会議を通過し、相続登記を義務化する法案(民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)が成立いたしました。
 

この法律によって、どのようなことをしなければならず、また相続登記等をしない場合にどうなってしまうかについて説明したいと思います。ただし、あくまで現時点での内容のみでの判断となりますので、実務上の運用等により変わる場合があります。
 

 
 

1 国に土地をもらってもらうことができる制度の創設

 

不動産を国や地方自治体に寄附することは従前からできておりましたが、実際には受け入れてくれることはほとんどありませんでした。その理由としては、不動産と言っても価値があるものだけとは限らず、逆に管理が大変な不動産もあり、そのような不動産をもらっても国や地方自治体としても困るという実情がありました。
 

この点、あくまで条件付きではありますが、相続等によって取得した不動産を国の所有(国庫への帰属)とする制度ができました。
 

(1)不動産は土地である必要があり、かつ、下記に該当しないこと 

建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
④基準を超える特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 

(2)共有の場合は共有者全員で申請をすること

 

(3)承認申請に関する手数料を納めること

 

(4)国の承認が得られた場合は、管理に要する費用10年分を納めること

 

ただし、上記(1)~(3)に該当する場合でも崖があったり、地下に何かが埋まっている場合などは承認が得られないこともあります

 
 

例えば、遠方に存在している山などは所有していても使い道がほとんどなく、かといって売却するとしても買い手が現れる可能性はかなり低いうえ、万が一事故があった場合には責任が生じる可能性もありますので、そのような場合にはこの制度は使えると思います。

 
 

2 相続登記の義務化

 

今までいわゆる権利に関する登記をするかどうかはあくまで「権利」であり、登記をしなくても良いこととされていました。ただ、不動産を購入した場合や不動産を担保にお金を課した場合など、登記をしないと所有権を第三者に対抗できなくなる可能性がある場合には登記をしないことによる不利益が大きいため、このような場合には大多数の方が登記をされていました。
一方、相続登記については、売買の予定等が無ければ登記をしないことのデメリットがあまりないため、手つかずのままの相続が繰り返されて現在の所有者がどなたなのかが不明となってしまった不動産が日本中にたくさん存在しており、面積に換算すると日本の国土の20%程度にもなるそうです。
そこで、今回相続登記を義務化することにより、所有者を確定させて、土地を有効利用しようとするのが今回の法律ということになります。

 

この点についての注意点をまとめたいと思います。

 
 

(1)相続登記が義務化されたのは土地のみです。
→ 建物は対象外です。

 
 

(2)現時点ではまだ法律は施行されておらず、3年以内に施行される予定です。
→ 報道によれば2024年施行予定とのことです。

 

(3)土地の所有者が亡くなり、その土地の相続人であることを知ったときから3年以内に相続登記をする必要があります。
→ まったく疎遠になってしまった親族が亡くなり、自分が相続人だったとしても、その事実を認識していなければ3年の期限はスタートしません

 

(4)相続登記のみならず、住所移転や氏名変更についても2年以内に変更登記をする必要があります。
→ 住所や氏名が変わった場合でも所有者が不明になってしまうためです。

 

(5)上記に違反した場合10万円以下(住所変更等は5万円以下)の過料に処せられる可能性があります。
→ 同じような罰則規定が建物表題登記などにもありますが、現実には未登記の建物が無数に存在しており、過料の処分が課されたという話は聞いたことがありません。したがいまして、相続登記をしないことにより本当に過料に処せられるかどうかはまったく分かりません

 

(6)相続人申告登記制度(?)の創設
→ 登記官に対して、自身が相続人であることを申告することで、一時的に登記官が職権で登記をしてくれる制度が創設されました。実際に相続登記をするためには、戸籍謄本等を集めたり、相続人間で遺産分割協議をまとめなければなりませんが、協議がまとまらず3年以内に登記ができない場合もあります。そのようなときにとりあえず申告をすることで3年の期限をクリアすることができます。

 
 
 

その他たくさんの改正がありますので、順次追記していきたいと思います。

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3月 17 2021

総額表示について

消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という長い長い法律の規定により、特例により令和3年3月31日までは消費税込みの総額表示をする必要がありませんでしたが、令和3年4月1日から総額表示が義務付けられることとなりました。 
 
 

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それに伴い、(税別)と表示していた当事務所の報酬等についてすべて税込み表示に変更いたしました。
なお、あくまで消費税のみの変更であり、純粋な当事務所の報酬については変更はございません。
 
以上、お知らせでした。

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3月 11 2021

親族が行う必要のある死後の手続と相続手続

これまで相続についての手続を数えきれないほどご依頼いただいてきましたが、突如、私自身が当事者となる相続が発生してしまいました。

なかなか精神的に大変な時期であってもある程度は進めざるを得ないため、精神的のみならず身体的にも大変ではありますが、「他に考える余裕が無い方がある意味精神的には少し助かるものなのかもしれない」と、よくわからない気持ちになりながら進めました。 

ということで、今回は相続手続というよりも、親族の死後になすべきことを私の備忘録も兼ねてまとめたいと思います。なお、四十九日法要などの宗教的な行事は各家庭によって異なりますので記載しておりません。
 

 
 

1 葬儀会社の決定

 

多くの方がまずは病院に駆けつけることになると思いますが、もし事件・事故の場合は警察署に駆けつけることもあります。

病院や警察において、通常は遺体を長期間安置することができないため、早急に葬儀社に依頼して、遺体を自宅、葬儀会館、寺院等に搬送していただく必要があります。
 

この点、私は病院に着くや否や病院からすぐに葬儀社に連絡してほしいと、いくつか提携している葬儀社のパンフレットをいただきましたが、仕事上お付き合いがあり、信頼できる葬儀社があったので、そちらにお願いしました。 

葬儀会社の選択肢として、大手葬儀会社(平安閣、ティアなど)、ネット系(小さなお葬式、イオンのお葬式など)、地域の葬儀会社などいくつかの選択肢があるかと思います。私の場合はそもそもお付き合いのある葬儀社があったので良かったのですが、そうでないとなかなか選ぶのが大変なので、変な話ではありますが事前にある程度リサーチしておくと良いと思います。
 

なお、私個人の印象ですが、以下のような感じです。
 

【大手葬儀会社】

安心できるが比較的費用が高い。たくさん参列される方だとこちらが安心できると思います。
 

【ネット系】

費用が一律となっていることが多いものの、あくまで各地の葬儀会社に振ってるだけなので、各地の葬儀会社の質によって当たり外れがある。さらに、追加オプションのトラブルなどもあり、直葬なら良いかもしれませんが、そうでないのであれば選びにくいように思います。
 

【地域の葬儀会社】

こちらも当たり外れがあるとは思いますが、地域での評判が悪くなると仕事ができなくなるので、決定前にある程度話ができると良いと思います。特に、過去にどなたかがすでに葬儀をされているようであれば、その方からご紹介いただくとおかしなことをされる可能性も低くなるので良いと思います。
 

また、費用が確定してからでないと、葬儀後にもめる可能性がありますので、必ず葬儀の内容が確定した時点で見積書をは受領すべきだと思います。私は、2つのパターンで見積書を作成してもらい、プラン決定後に正式な見積書を受領してからすべての手続を進めてもらいました。葬儀終了翌日に請求書をいただきましたが、見積書の金額とまったく同一金額でしたので、費用についてはとても安心した覚えがあります。
 

なお、直葬(通夜や告別式等の宗教的儀式をしない)の場合は、通夜や告別式等が無いので、いきなり火葬となりますが、少なくとも死亡時から24時間は火葬ができない(墓地、埋葬等に関する法律第3条)ので、直葬だとしてもご自宅または病院や葬儀会社等で遺体安置をしていただく必要があります。 
 

2 死亡届の提出

 

死亡届が受理されないと火葬許可証がもらえませんので、葬儀を行う前に死亡届をお亡くなりになった方の住所地の役所に死亡届を提出する必要があります。 
 

3 葬儀等

 

遺体が葬儀会館等に搬送され、早ければその日の夜、時間帯によっては翌日から2日後程度に通夜が行われ、通夜の翌日に葬儀・告別式・出棺となり、霊柩車で移動して火葬になると思います。
 

基本的にはすべて葬儀会社が進めてくれますので、何も考える必要はないと思います。多くの方が通夜に来られるような場合は、香典の管理なども大変なので、私個人としては香典を受け取らないとした方がいろいろと良いように思いました。
 
 

ここまでが怒涛の勢いで行われることであり、ここからは落ち着いてからでも大丈夫だと思います。

ただし、日程が決まっているものもありますのでご注意ください。 
 

4 医療費等の清算

 

入院されていらっしゃった場合は、医療費の清算や入院時の荷物等の引き取りはこのタイミングで行うと良いと思います。 
 

5 役所での手続

 

死亡届はすでに提出済みですので、あとは以下のような手続きが必要となります。
 

(1)健康保険関係

国保であれば役所に、健康保険であれば勤務先等に保険証を返却しなければなりません。

国保の場合は、葬祭費の請求も合わせて行うことができます。健康保険や共済組合の場合は各健康保険協会や共済組合に請求することとなります。
 

(2)その他の書類の返却

マイナンバーカード、医療証、介護保険証、敬老手帳、敬老パス、障害者手帳、愛護手帳、障害福祉サービス受給者証などをお持ちであればそれらの返却及び重度障害者手当、児童手当等を受給していた場合は喪失届等も必要になる場合があります。 
 

6 年金事務所での手続

 

年金を受給されて場合は10日から14日の間に年金事務所に死亡届が必要となりますが、現在はマイナンバーと連動しており、別途死亡届を出す必要は無いとのことです。

ただし、未支給年金がある場合は未支給年金の申請をする必要があります。こちらは郵送でもできる場合がありますので、一度年金事務所にお問い合わせいただいた方が良いと思います。 
 

7 戸籍謄本等の収集

 

遺産がある場合、手続の際に必ず戸籍関係が必要となりますので、戸籍謄本等の収集を開始すると良いです。ただし、死亡の旨の記載が戸籍にされるまでに1~2週間程度かかりますので、亡くなってから2週間程度経ってから開始されることになります。

戸籍謄本等の収集は司法書士等の専門家が代理して行うこともできますので、ご自身で行うのが難しい場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただいても良いかと思います。 
 

8 遺産の調査

 

不動産であれば不動産のある役所及び管轄法務局、預貯金があれば各金融機関、保険金であれば生命保険会社に調査を請求することになります。

これらの調査については戸籍謄本等が無いと進められないので、戸籍謄本等が揃ってからになります。 
 

9 遺産分割協議

 

遺産の全容が判明した後、相続人が複数いらっしゃる場合は、どのように遺産を分けるのかの協議をしていただく必要があります。ただし、生命保険金の受取人として相続人のどなたかが指定されていれば、その保険金はその相続人固有の財産となりますので、遺産とはならず遺産分割協議の対象に含めません。

最終的に協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成いたします。もちろん、司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。 
 

10 各種名義変更等の手続

 

上記の遺産分割協議に基づき、不動産であれば相続登記、株式であれば名義変更や売却・払戻手続、預貯金であれば解約手続等を行うことになります。繰り返しになりますが、こちらも司法書士等の専門家にご依頼いただくことも可能です。

なお、現時点(令和3年3月11日)では、上記手続について期限はありませんので、いつまでに行わなければならないというものではありません

しかし、相続登記については義務化する旨の法案が出ておりますので、近い将来一定期間内に申請しなければならなくなると思われます。 
 

11 相続税の申告

 

お亡くなりになった方の遺産が基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)以上ある場合は相続税の申告が必要になります。逆に言えば、基礎控除内であれば相続税の申告は必要ありませんし、基礎控除額を超えていても各種の特例(小規模宅地等の特例等)を使うことにより申告自体は必要であっても相続税はかからないということもあります。

相続税の申告は、原則としてお亡くなりになった日から10か月以内に行う必要があります。

こちらは、弁護士や司法書士では代理して行うことができず、税理士さんにご依頼いただくこととなります。
 
 

以上の次第で、通常は最長でも10か月以内に手続を行うことですべての相続手続が終了となります。

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3月 03 2021

土地の値段(一物四価)

売買や相続による所有権移転登記を申請する際に、登録免許税という税金を法務局に納めなければなりません。
 

この登録免許税は、土地の値段を基に移転する原因に応じた税率を掛けて算出します。

例えば、土地の値段が1000万円だとした場合に、売買で所有権移転をする場合は15万円(1.5%)、贈与で所有権移転する場合は20万円(2%)、相続で所有権移転する場合は4万円(0.4%)です。ただし、上記の税率は改正によって変わることがあり、土地の所有権移転については本来は2%であるところ租税特別措置法により1.5%に軽減されています。
 

さて、簡単に「土地の値段」と言いましたが、実は土地の値段は一律に決まっているものではなく、状況に応じて同じ土地なのにその値段が変わります

例えば、上記の登録免許税に用いる土地の値段は、正確には「固定資産課税評価額(通常は単に「評価額」と言います。)」を基に計算することになります。
 

また、相続税を計算する場合に用いる土地の値段は、「相続税路線価(通常は単に「路線価」といいます。)となり、贈与税でもこちらを用いることになります。

このように、単に「土地の値段」と言っても、どの意味で使っているかを誤るとトラブルになる可能性がありますので、今回はこの土地の値段についてまとめてみたいと思います。
 

 
 

一物四価

 

一般的に、土地の値段は4種類あると言われており、「一」つの土地(物)に「四」つの「価」格があるので、このことを指して一物四価と呼ばれることがあります。
 

この4つの種類は、一般的に高い順にならべると以下のとおりとなります。
 

①流通価格(市場価格・実勢価格)

②公示価格(公示地価)

③路線価(相続税路線価)

④固定資産税評価額
 

ただ、実際には上記の順番は逆転することがあります。例えば、まったく買い手が付かないような土地だと路線価や評価額よりも低い金額で取引されることはあります。 
 

流通価格(市場価格・実勢価格)

 

これは、一般的に取引される金額となります。不動産業者に仲介を依頼し、第三者から土地を購入するような場合はこちらの金額となります。

「隣の土地は借金をしても買え」という格言もあるくらいですので相場よりも高いこともあれば、親族間や知人間の売買等の理由により相場より安く取引されることもありますが、最終的には当事者が合意した金額が正しい金額となりますので、一言で言えば「時価」となります。
 

なお、他の価格と比べると一番高いことが多いと思います。 
 

公示価格

 

地価公示法を根拠として公示されるものであり、特定の地域等において標準的な場所を選定し、その場所に関する土地の値段を公示するものです。

つまり、個々の土地ごとの金額が出るのではなく、その周辺地域の目安となる金額ということになります。
 

一般的には、流通価格より低く、路線価より高い金額になる傾向にあります。

こちらの金額は、公共事業による土地の収用等の際の補償金を計算するのに用いられており、司法書士が関与することはあまりありません。

この公示価格は国土交通省のサイトで確認することができます。

→ 国土交通省地価公示・都道府県地価調査 
 

路線価(相続税路線価)

 

こちらは、道路に接した土地についての平米単価となり、国税局長によって定められたものです。

路線価は、接している道路を基準としていますので、国道などの大きな道路に接しているほど金額が高くなりますし、角地など複数の道路に接している場合も金額が高くなります。また、基本的には市街地にしか定められませんので、都市部から離れると路線価が無いことも多く、そのような土地は固定資産税評価額の1.1倍とされることが多いです(倍率地域)。
 

一般的には、公示価格より低く、固定資産税評価額よりは高くなり、概ね公示価格の8割程度になります。

相続税や贈与税の計算をする際には、こちらの金額を基に算出いたしますので、通常は税理士さんが一番目にするものとはなりますが、贈与の際にどの程度贈与税がかかるかを判断し、場合によっては贈与自体をキャンセルすることもありますので、司法書士もよく目にする価格となります。

この路線価は、国税庁のサイトで確認することができます。

→ 路線価図・評価倍率表 
 

固定資産税評価額

 

総務大臣が告示した固定資産評価基準を基に各自治体(市町村)が固定資産税を課すために個々の不動産(土地及び建物)について定めるものであり、この評価額に1.4%を掛けた金額が毎年1月1日時点の所有者に課されることとなります。なので、年の途中で所有者が変わったとしても1月1日時点の所有者が1年分を納める必要があるため、通常は日割計算をして新旧の所有者で精算することになります。
 

一般的には路線価よりも低くなる傾向があり、公示価格の7割程度になります。
 

登記申請の際に、不動産の価格を基に登録免許税を計算する場合は、まさにこの固定資産課税評価額を基に計算しますので、司法書士が毎日のように目にする価格となります。

公示価格や路線価は毎年変わるのに対し、固定資産課税評価額は3年に一度しか変わりません。そして、令和3年4月1日に新しい価格に変わりますので、現時点(令和3年3月時点)においては、4月1日以降に登記申請する場合の登録免許税の計算はできないことになります。とはいえ、それだと見積書が作成できないため、暫定的に現時点での固定資産課税評価額で費用を計算させていただき、4月1日以降に改めて正確な費用をお知らせすることとなります。
 

この固定資産課税評価額は、公示価格や路線価と異なり、ピンポイントで各不動産の価格がわかることとなるため、第三者が自由に調べることは基本的にはできません

不動産の所有者であれば毎年4月から5月頃に不動産のある自治体から固定資産税の通知書が送付されてきますので、こちらで固定資産課税評価額を確認することができますし、第三者であっても裁判に利用するなどの正当な理由があれば、自治体の税務課において評価証明書を取得することで評価額を調べることができます。
上記のとおり、司法書士は登記申請の際に利用しますので、すべての自治体ではないものの多くの自治体において所有者からの委任状を添付することなく評価証明書や評価通知書を取得することが認められています。 
 

まとめ

 

以上のとおり、単に「土地の値段」と言っても色々な意味がありますが、通常は流通価格を指すことが多いかと思います。ただ、万が一誤解して話を進めてしまうとトラベルになってしまうこともありますので、どの土地の値段のことを話しているかを確認してから話を進められた方が安全かと思います。

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2月 26 2021

遺言ができる能力(認知症等)

最近、立て続けに遺言書の作成に関するご相談をいただいております。 

遺言書の作成は、遺言書を書かれるご本人(以下、「遺言者」といいます。)自らが将来のために作成しておきたいとして書かれるケースが多いのですが、遺言者ではなく、将来相続されるであろう遺言者の推定相続人の方が主導して進められることがあります。

もちろん、最終的には遺言者ご自身の判断がすべてですので、推定相続人の方がいくら主導したとしても遺言者ご自身の本意であれば基本的にはどのような内容(例えば、遺言を主導した推定相続人が全部を相続する)であっても問題ありません。
 

先日も書きましたが、遺言書を作成する際に、日付を記載したり、署名をするなど、形式的な要件が厳しいためその点に注意が行きがちですが、遺言者に意思能力(遺言能力)がないと無効になってしまいます。

40代や50代であればまだまだ大丈夫だと思いますが、60代、70代、80代と年齢が上がるにつれて、判断能力が段々と衰えてきますので、遺言をするときの意思能力の有無が判然としない場合には、遺言者ご本人が亡くなったあとに遺言無効の訴訟を提起される可能性もあります。
 

今回は、年配の方(特に認知症の方)の遺言作成についてまとめたいと思います。
 

 
 

1 遺言能力

 

民法には、遺言ができる年齢として、15歳と定められております(民法961条)。したがって、15歳以上であれば未成年者であっても親権者の代理や同意なく遺言をすることができます民法962条5条)。
 

ただ、15歳以上であれば良いかというとそうではなく、認知症や精神障害などによって遺言の内容がまったく認識できないような方がした遺言は無効となってしまいます(民法963条民法3条の2)。
 

この点については、一般的には意思能力があれば良いと解されており、7歳前後の判断能力があれば良いとの考えもあれば、15歳以上でなければならないとの考えもあります。いずれにしても、比較的幼少期レベルで判断できる能力があれば良いということになります。特に、遺言というものは遺言者の人生最後の意思表示となりますので、どちらかと言えば有効になる方向で判断されることになります。 
 

2 成年後見人が選任されている場合

 

認知症や精神障害等によって成年後見の申立てがされ、成年後見人が選任されている場合があります。成年後見人が選任されると、日常生活に関するもの(例えば、コンビニで買い物をする等)以外は、ご本人に代わって成年後見人が代理して契約等を行うことになります。
 

ただし、身分行為に関する行為は除外されており、例えば結婚をされる場合には成年後見人が代理したり、同意(許可等)をする必要はなく、ご自身が自由に行うことができます(民法738条)。
 

この点、遺言については、大きな財産を贈与(遺贈)することができますので財産的な行為であると同時に、遺言によって認知等もできますので、身分行為のような性質もあります。
 

そこで、法律上は、①能力が一時的に回復した場合であり、②医師2名が立会い、③立ち会った医師が一時的に能力を回復していた旨を遺言書に付記して署名捺印する、という3つの要件を満たした場合に遺言をすることができることとされております(民法973条)。
 

ただし、あくまでこれは形式的な要件であり、実際に遺言能力が無かった場合には上記の要件を備えていたとしても無効になります。とはいえ、医師2名が立ち会っており、しかも問題なかった旨の記載と署名押印までされている訳ですから、実際上は遺言が無効になる可能性はかなり低いと思います。
 

なお、私は現在複数の方の成年後見人に選任されておりますが、やはりかなり個別事情かつその時の状況によって波があり、まったく遺言をするのは常に難しいという方もいれば、調子が良さそうなときには問題なく遺言ができそうな方もいらっしゃいます。 
 

3 成年後見人が選任されていない場合

 

上記の規定はあくまで成年後見人が選任されている場合であるため、認知症との診断をされていたとしても、医師の立会いなく遺言をすることができます。遺言の方式も特に定められていませんので、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも要件さえ備えていれば少なくとも形式的には有効ですし、公正証書遺言であれば形式的な違反で無効になる可能性は極めて少ないと思います。
 

したがって、あとは遺言能力があるかどうかがとなりますが、この点を100%完全にクリアした遺言書を作成する方法は残念ながら存在しません。というのは、そのときに遺言能力があったかどうかを100%証明する方法が無いからです。ただ、少しでも有効となる可能性を高めるため、私どもが関与させていただく際には、遺言をされる(遺言書を作成する)少し前に担当の医師にその時の診断書を作成してもらっております。加えて、公正証書遺言にすることにより、さらにその可能性を高めます(公正証書遺言は公証人が遺言者と面談をするため、意思疎通がまったくできないと公正証書遺言を進めることができません。)。
 
 

ということで、年配の方が遺言をされる際には、形式的な要件を備えることはもちろんのこと、遺言能力についても注意をする必要がありますので、ご心配な場合はお近くの弁護士や司法書士にご相談いただき、できれば公正証書遺言にて進められた方が良いと思います。

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